10月例会 戦争と科学者&再エネ出力カット問題

10月例会


日時:2018年10月20日(土)10:00〜12:30
話題:(1)「戦争と科学者
       ー戦争に関わった科学者,拒否した科学者とその冒険談など」
     (話題提供:豊島耕一氏) 報告資料
   (2)「九州電力による再エネ出力制御問題」
     (話題提供:岡本良治氏) 報告資料

<報告>

9月例会 琉球大学平和教育&非化石価値取引市場

9月例会


日時:2018年9月22日(土)15:00〜17:30
話題:(1)「琉球大学おける平和教育『核の科学』の実践報告」
     (話題提供:堺英二郎氏) 
報告資料
   (2)「非化石価値取引市場についての問題」
     (話題提供:中西正之氏) 
報告資料

<報告>



例会終了後,参加者全員で西鉄・白木原駅近くの居酒屋で暑気払いを行いました.

公開質問書に対する九電からの回答

九州電力からの公開質問書に対する回答



九州電力との交渉の報告8(2018.8.28)

九州電力からやっと回答が,8月23日にありました.回答は文書ではなく,いつものことではありますが,口頭でなされました.そのために録音したデジタルデータから「文字起こし」をするのに若干の時間がかかりました.以下に,九州電力の回答(A1〜A!0)をこちらからの質問(Q1〜Q!0)とそれぞれペアで掲載します.なお,九州電力から回答に対する質疑応答については,さらに「文字起こし」をして,公開いたします.(EM)

九州電力との交渉の報告9(2018.8.31)
「文字起こし」において不明部分を九州電力に問い合わせを行い,九州電力からの回答がありましたので,疑問符を付けて表示していた部分を回答いただいた文言に変更しました.(EM)


(Q1) 原発の審査基準について
原子力規制委員会設置法と電気事業法の目的は「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」と「公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」である.そのために,福島原発事故の様な原子力災害を確実に防止することが政府と九州電力に求められている.
福島原発事故の教訓の最も大切な点は,滅多に起きないが影響の大きい,いわゆる「低頻度・高影響」の事象への対策を無視したことである.原子力規制委員会(以下,規制委)は,国際原子力機関(IAEA)の深層防護における第4層の過酷事故対策の実践を「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」とする「新規制基準の考え方」[1]で審査を行い,水蒸気爆発や航空機激突等の対策を要求していない.この「可能性が小さければ対策しない」という審査基準は,福島で「大地震・大津波対策」を怠り未曾有の公害・人災を招いた考え方と同一である.そもそも,過酷事故のシーケンスの発生確率を精確に見積もることは,容易なことではない.「可能性が小さければ対策しない」との考え方だけでなく,「可能性の小ささ」を単純に信用してしまう態度も大いに問題である.
このように,過酷事故対策は「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」であるという規制委の極めて楽観的な審査基準について九州電力はどう考えているか?

(A1)
当社、福島第一事故を受けまして、核原料物質、核燃料物質および原子炉等規制に関する法律が改正されまして、事故の教訓や最新の技術的知見、海外の規制動向等を踏まえた、原子力発電施設にかかる、新たな規制基準が策定され、その中で新たにシビアアクシデント対策と、-- これがIAEAで言う第四層の過酷事故対策と言うものと考えております。-- それが新設され、その項目として、意図的な航空機衝突への対応、格納容器破損対策、炉心損傷防止、こういったことが重大事故等対策として明記されていると。それと、あと当社の原子力発電所としては、原子力規制委員会より深層防護を基本とした新規制規準に適合しているとの判断を受けていると言うことと考えております。

(Q2) 過酷事故時の住民避難等の対策について
 規制委の任務として,設置法では「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全」(第3条)が掲げられている.しかし,過酷事故時の住民避難等の対策(原子力防災)は規制委の審査の対象になっていないため,再稼働の審査は規制委の目的・任務からして重大な欠陥があるといわざるを得ない.原子力施設周辺における放射線影響緩和は,IAEAの深層防護の第5層としても求められており,国際的な観点から見ても原発の稼働にとって不可欠の条件であるが,原発周辺自治体に「丸投げ」され,その有効性についていかなる公的な第三者機関による検証もなされていない.以上の点は,規制委の無責任性を物語るのもではあるが,そのような中で,ひとたび原発の過酷事故が発生すれば,その被害に対する全責任を取るべきは九州電力である.この点について九州電力はどのように考えているか?

(A2)
IAEAによる第五の壁、放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和については、その前段階である第四の壁、事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響緩和、過酷なプラント状態の制御の対策として、放射性物質の放出防止対策として、格納容器破損防止対策として、格納容器の冷却、減圧対策、溶融炉心冷却対策、水素爆発防止対策を講じております。また、万が一放射性物質が放出されるような事象が発生した場合に備え、格納容器の漏洩箇所へ放水することにより、放射性物質の周辺環境への放出を極力抑える対策、あるいは放出された放射性物質を含む水が海水に流れても、外洋への拡散を抑制するシルトフェンス等を設置することとしております。第五の壁については、内閣府にて法体系上整理されておりまして、ご指摘の通り、自治体主導となっております。自治体が作成する原子力防災にかかる地域防災計画、避難計画等について、原子力発電所が所在する地域ごとに、課題解決のためのワーキングチームとして設置された、地域原子力防災協議会がその具体化、充実化を支援しております。協議会では要支援者、避難先への移動手段の確保、国の実働組織の支援、原子力事業者に協力を要請する内容等の具体策について、協議、連絡、調整を行なっております。当社は協議会に積極的に参加するとともに、協議会からの支援要請に誠意を持って対応して行くこととしております。また、協議会においては、避難計画を含む、原子力防災対策の実効性を向上させて行くため、防災訓練の反省点等を関係機関で共有して、改善を図ることとしており、当社においても、住民避難支援にかかる教育を継続的に実施するとともに、原子力防災訓練の結果等も踏まえ、取り組み内容の継続的改善に努めております。

(Q3) 過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について
AEAの深層防護の第4層にあたる安全規則では,必ず想定すべき格納容器破損モードとして水素燃焼や溶融炉心・コンクリート相互作用とともに原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用(Molten Fuel Coolant Interaction, FCI)が含まれている.九州電力は,実機において想定される溶融物(UO2,ZrO2)を用いた「大規模実験」として,COTELS,FARO,KROTOS及びTROIを例に挙げながら,原子炉容器外のFCIのうち,水蒸気爆発は,実機において発生する可能性は極めて低いと申請書に結論して,これを規制委の「審査書」では,無批判に認めている.
しかしFCIは,いわゆる「複雑系」に関わる現象であり,条件のほんの微小な変化により結果が大きく変わることが分かっている[2, 3].KROTOSなど幾つかの「大規模実験」の結果で,FCIの全容が分かるわけではない.KROTOSなどの「大規模実験」とは比較にならないほど大規模な実機でメルトダウンを伴う過酷事故が起きたときには,何が起きるのかは分からないのが現状である.
軽水炉の安全性についての研究において世界的な権威であるB.R. Sehgal教授の編集による最新の報告書[3]や経済開発協力機構(OECD)のSERENAプロジェクト(FCIに関する研究)に参加する研究者達[4]の了解事項は,FCIを伴うメルトダウンの実際の場面(「実機条件」)では,「水蒸気爆発は必ず起きると考えよう」である.
何故に,九州電力はこのような最新の知見を無視して,「実機において発生する可能性は極めて低い」とする結論を強引に下すのか? 規制委の審査書では,溶融した炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策を容認している.しかし,この事故対策は,明らかに「液-液直接接触が生じるような外乱を与え水蒸気爆発を誘発する」ことにほかならず,水蒸気爆発が起こることを覚悟しなければならない.過酷事故をさらに酷くする水蒸気爆発を誘発する恐れがある事故対策をあえて実施する理由は何か?

(A3)
国内の実験では、水プール底から圧縮ガスを供給し、強制的に外乱を与えた実験の結果、一部のケースにおいて水蒸気爆発の発生が観測されており、外乱となりうる要素として圧縮ガスの供給が考えられる。実機の原子力発電所においては、原子炉下部キャビティにおいては圧縮ガスの供給源となるものはなく、また、炉心損傷時には、格納容器下部キャビティによる冷却水の流れ込みで、蒸気膜を壊すような外乱となりうる要因が考えにくいことから、水蒸気爆発が発生する可能性は低い、極めて低いと考えております。また、細粒化した燃料どうしが水中で接触したとしても、溶けた燃料を覆う蒸気膜は安定した状態にあることから、水蒸気爆発に至ることはないと考えております。
水蒸気爆発に関する大規模実験として、COTELS、FARO、およびKROTOSを参照に大規模実験と実機条件を比較した上で、実機においては水蒸気爆発の発生の可能性が極めて低いということを確認しております。加えて、JASMINEコードを用いた水蒸気爆発の評価に置ける条件と、実機の条件との相違を踏まえると、実機においては、水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いことを確認しております。これから、原子炉圧力容器外の溶融燃料・一次冷却材相互作用で想定される物理現象のうち、水蒸気爆発は除外可能であるということを確認しており、規制委員会のパブコメでも回答しております。なお、当社は今後も法令、規格、基準への適合はもとより、新たな知見等があれば積極的に取り入れ、原子力発電所の自主的かつ継続的な安全性向上に取り組んで行きたいというふうに考えております。

(Q4) 再臨界の可能性について
過酷事故時においては,炉心から熔融し,炉心外に貫通(メルトスルー)した燃料デブリが格納容器のコンクリート床に落下する.このため溶融炉心コンクリート相互作用(MCCI)生成物の臨界特性が問題となる.ケイ素を主成分とするコンクリートは中性子吸収が少なく,水には劣るが中性子減速効果も持つ.減速された中性子(熱中性子)はウラン235に吸収されやすく核分裂反応を促進する.このように,MCCI生成物がごく少量の水分と共存することで再臨界の可能性を高めることが報告されている[5].
メルトスルーした燃料デブリを水で張った格納容器で受け取るという今回の事故対策では,そのことで水蒸気爆発が起きなかったとしても,この点についての検討が十分になされているとはいい難い.燃料デブリがコンクリート床に次々に落下し,核分裂物質を含む燃料デブリの量が増加し,ケイ素や水の中性子減速効果により核分裂反応が促進され,再臨界の可能性が高まることがありうると考えられる.さらにこの新たな再臨界によって新たな水蒸気爆発が発生することもあるかもしれない.このような危険性に対して,九州電力はどのような対策を考えているのかを教えて欲しい.

(A4)
コア・コンクリート 反応については、万が一大口径配管等の破断により原子炉の冷却水が喪失し、さらに全ての交流動力電源の喪失に伴い、非常用炉心冷却装置や格納容器スプレイ設備が動作しなような過酷事故が発生した場合でも、新たに設置した大容量空冷式発電機や、常設電動注入ポンプによる格納容器スプレイを用いて、原子炉の真下にある原子炉下部キャビティに水を張ることで、落下した溶融燃料を冷却することとしています。従って、炉心溶融、コンクリート相互作用による原子炉格納容器の健全性が失われることはないと考えています。
臨界性については、冠水している残存した溶融炉心については、冠水させている水はホウ酸水と海水の混合水であり、ホウ素濃度が十分確保出来ている状態では、臨界に至る可能性は低いと考えています。なお、海水にホウ素濃度換算で200ppm程度の中性子吸収効果が見込まれると考えております。露出している残存した溶融炉心については、減速材不足のため臨界に至る可能性は低いと。仮に、溶融燃料中に冷却材が侵入し、中性子の最適減速条件が形成されることを想定した場合には、臨界に至ることは考えられますが、炉心形状の崩壊などの要因も考慮すると、その可能性は低いものと考えられます。
以上のように、溶融炉心が臨界になる可能性は低いものの、溶融の形態が特定できないことから、溶融炉心が無制限な臨界状態に至る可能性もできる限り少なくするため、注水に当たっては可能な限りホウ酸水を用いることとしております。
なお炉心の臨界状態はモニタリングポスト、CV内サンプリングによる核分裂性希ガス濃度の測定等により行うこととしております。

(Q5) 通常運転時の健康被害について
玄海原発の再稼働によって,過酷事故がありうることは明確であるといわざるをえない.しかし,もしその危険性を無視できるほど小さなものと仮定できるとしても,玄海3,4号機が稼働を再開すれば,通常運転においても原発周辺では健康被害が生じる恐れが大きいことが明らかになっている.玄海原発周辺では,同原発の稼働によって住民の白血病死亡率が高くなったとの報告があり[6],通常運転時に原発から環境に放出されるトリチウムが原因として疑われている.実際,玄海原発は過去の稼働時の 2002年から 2012年に 826テラベクレルと,わが国の原発では最も多量のトリチウムを放出している.これは福島原発事故で発生した汚染水中のトリチウムの量とほぼ等しい.
トリチウムの危険性については,ベータ線のエネルギーが小さいためベクレル当たりの吸収線量は小さい.しかし,トリチウムは生化学的に重要な元素としての水素の同位元素として,生体に容易に取り込まれるため,特別な内部被ばくのリスクがあることを,欧州放射線リスク委員会(ECRR)は2010年勧告[7]で指摘している.このトリチウムの危険性は,まだ科学的に確定されたことではないが,トリチウムの周辺住民への健康影響の危険性が完全に払拭されない限り,玄海原発の再稼働はするべきではないと考えるが,九州電力はこの点をどうのように考えているのか? また,九州電力は玄海原発周辺市町村における白血病の死亡率のデータを調査しているのか?

(A5)
玄海原子力発電所から放出されるトリチウム濃度は国が定める基準値を十分満足している。また年間のトリチウム放出量をもとに発電所周辺の人が受ける放射線量を国が示す指針に従って算出した結果、1年間で0.001ミリシーベルト未満と評価され、自然放射線の1000分の1以下となっております。このため、玄海原子力発電所から放出されるトリチウムは周辺住民の健康に影響を与えるレベルにないと考えています。
これらの調査結果については、定期的に開催される自治体主催の会議において、学識経験者からの指導と助言をいただきながら、検討・評価を行っており、これまで問題がないことを確認しています。
原子力発電所から放出されるトリチウムは、原子炉の型式や原子炉基数などによりトリチウムの放出量が異なっております。このため、玄海原子力発電所と同型を導入している発電所で同数の原子炉を設置している高浜発電所、大飯発電所と放出量を比較したところ、同程度であり、玄海原子力発電所が突出して大きい訳ではないと考えています。

(Q6) 破壊行為から原発等を守る対策について
玄海原発において,① 使用済み核燃料を水冷保管していることや② 格納容器を空気で充填していること,そして③ 見て分かる航空機対策をしていないことは,疑いようなく周知されている事実である.
海外では取り組みが進んでいる使用済み核燃料の乾式貯蔵は,安全性を格段に高める.玄海原発等の加圧水型原発の格納容器には,沸騰水型に比較して容量が大きいことを理由に窒素充填していない.しかし,加圧水型原発の格納容器に窒素充填することは,格納容器内での水素爆発を抑止するなど安全性を高めることに有効である.航空機の対策については,規制委は「確率」による計算と判断から審査対象から外した.わが国の航空機の対策は,欧米各国の対策・考え方から大きく遅れている.米国での9•11事件や飛行機の墜落を深刻にとらえた欧米各国は,現実的な検討をして具体的で公開された,大型航空機の衝突に耐える2重構造の格納容器などを備える原発を建設されている[8].こうした頑強な構造を持つ原発は従来の原発より安全性は高く,天災等による事故の被害拡大や破壊行為への抵抗性も高いと考えられる.
これらの乾式貯蔵や格納容器への窒素充填,2重構造の格納容器などは,破壊行為から守るためにもこれらの対策が有効である.(使用済み)燃料プールが無ければそれを破壊して冷却を阻害できないし,格納容器に窒素充填していれば内部に侵入するにも酸素ボンベがいるし,窒素を排除するにも時間がかかる.2重構造の格納容器は飛行機で破壊することは困難であろう.このように,原発の安全性を高めることが,破壊行為の抑止にも確実に有効な手段となる.このような高い安全性を持たない玄海原発は,破壊工作によって容易に破壊される危険性が高いと考えられるが,この点について九州電力はどのように考えているか?

(A6)
乾式貯蔵については,プール方式と併用することにより,保管方法が多様化するなど,発電所のさらなる安全向上をはかれることから,国内外の事例の事情収集や貯蔵方法等についての技術的な検討を行っております.格納容器への窒素充填については,水素爆発等について格納容器内の雰囲気が窒素雰囲気であれば,水素・酸素反応による爆発の可能性に比べ著しくその可能性が低くなることは理解できます.ただ,一方,現在のPWRプラントにおいて,燃料被覆管全てが溶融して,それにともない発生する水素量と格納容器内の容量から導き出される酸素量を考慮した結果,水素爆発の濃度に達しないことは,評価されておりまして,原子力規制委員会によっても了承されています.また,原子炉格納容器内での作業に関しても窒素雰囲気である場合,ボンベ等を用いての作業となり作業性が悪くなるという面もございます.また,原子力発電所に航空機が衝突した場合,被害の有無・程度について一概に言及することはできません.ただし,当社の原子力発電所は耐震性や遮蔽の観点から十分な強度と厚さを持った堅固な構造物となっており,外部からの衝撃に対しても相当の耐力を持っていると考えています.また,異常を検知した場合,原子炉は直ちに自動停止するように設計されています.また,破壊工作については当社は,国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)に基づいて指定公共機関として国民の保護に関する業務計画を定めており,その計画の中で原子力関連の運転停止について次のように想定しております.武力攻撃等について,発電所所在地域が警報の発令地域となった場合または地域を定めずに警報が発令された場合には,当社は直ちに原子炉の運転停止に向けて必要な措置を実施しする.原子力規制委員会からの運転停止命令が発表された時には,運転を停止します.突発的な武力攻撃が発生した場合等,特に緊急を要する時には警報の発令や運転停止命令の発動を待たずに自らの判断により運転を停止することになります.あと,航空機衝突における攻撃については,米国の非営利の連合研究体である電力研究所が,2002年に米国内の原子力施設の代表的なタイプをモデルに,米国同時多発テロ事件のように大型旅客機衝突による影響をコンピュータ解析によりまとめています.これ解析の結果,原子炉格納容器等の施設に多少の損傷を受けたとしても貫通することなく,放射性物質の外部へ放出する危険性は小さいと結論しています.

(Q7) 基準地震動の設定値について
基準地震動についても問題としたい.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発の基準地震動は620ガルと低く設定されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合があるが,2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市では1494ガルの地震動を観測している.
玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある[9].これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.このような基準地震動について過小評価になっているとの多数の地震学者の警告を九州電力はどのように考えているか?

(A7)
玄海原子力発電所の基準地震動は,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動としてSs-1(540ガル),Ss-2(268ガル),Ss-3(524ガル),震源を特定せずに策定する地震動としてSs-4(620ガル),Ss-5(531ガル)を設定しています.当社は敷地ごとに震源を特定して策定する地震動において徹底した調査により,活断層をもれなく把握しており,直下に活断層がないことも確認しています.また,震源を特定して策定する地震動における地震動評価は,詳細な調査に基づき地下の断層の断層の形状を策定し,放出されるエネルギー,断層の動く方向を決定し,具体的な地震動の計算を行うという一連の流れで実施します.この一連の評価におきましては,まず,実際の地震による原子力発電所敷地で揺れの観測記録と計算による揺れを比較し地震動の計算手法の精度を確認します.その上で,調査結果よりも断層の長さをなおす,あるいは断層を傾斜させることによって面積を大きくする,アスペリティーと呼ばれる地震の際に特に強いエネルギーが放出される領域を断層の中で敷地に最も近い位置に,地下の断層が揺れ動く向きを放出されるエネルギーが敷地に向かう方向にする,など地震動が過小評価にならないよう配慮を行っています.このため当社の地震動評価は十分安全側の評価と考えています.しかしながら,震源を特定する(ママ)策定する地震動は過去に震源断層の全てが地表に現れなかった地震において震源近傍の観測記録が得られていることを踏まえ,その観測記録も耐震設計に極力活用していくという観点で行動が必要なものです.新規制基準では震源を特定せず策定する地震動の策定にあたり観測記録を用いることが求められており,当社は2004年北海道留萌支庁南部地震および2000年鳥取県西部地震の観測記録を反映させSs-4およびSs-5を追加しています.当社は平成30年4月に川内・玄海原子力周辺における地震観測強化の取り組みとして川内原子力発電所周辺において12箇所の地震観測点の増設,合計31箇所で観測し観測結果について観測した地震の数・規模・位置,過去からの変化などを平成31年度から年一回の頻度で公開します.また,玄海原子力発電所周辺については23箇所で平成30年4月から地震観測点の設置を開始し平成31年から地震観測を開始予定としております.当社は,今後とも法令・規格・基準の適合はもとより新たな知見を積極的に取り入れ原子力発電所の自主的・継続的安全性向上に取り組んでまいりたいと考えています.

(Q8) 玄海原発の「立地の適・不適」について
規制委の審査内規である「火山影響評価ガイド」では,160 km火山を検討対象として,火山の噴火にともなう火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合には,原発の立地は不適であるとしている.その噴火の規模が推定できない場合には,過去最大の噴火を想定するとしている.そして,去る12月13日の広島高裁判決では,伊方原発から130km離れている阿蘇カルデラの約9万年前の噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」として,「伊方原発の立地は不適」と判断し,四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定を出した.この広島高裁の決定を基準に考えれば,玄海原発も川内原発も阿蘇カルデラからの距離が伊方原発の場合と同程度であることから,九州電力の「2つの原発の立地は不適」と判断されることになる.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A8)
当社は,九州のカルデラ火山について,噴火履歴の特徴やマグマ溜まり状況などを検討し,いづれのカルデラ火山も運用期間中に破局的に噴火が発生する可能性は極めて低いと評価しており原子力発電所の安全性に問題はないと考えています.さらに自然現象の仕方を踏まえた,万が一の備えということで,カルデラ火山の活動状況に変化がないことを継続的に確認するためのモニタリングを行い,火山専門家との助言を受けながら行っています.なお,5つのカルデラ,阿蘇カルデラ,加久藤カルデラ,小林カルデラ,姶良カルデラ,阿多カルデラ,鬼界カルデラについては,原子炉施設保安規定に基づき平成28年度については6月9日,平成29年度は30年の6月15日に活動状況に変化がないと評価し結果を公表しています.

(Q9) 世代間倫理に反する行為について
原発の再稼働には世代間倫理についての問題もあると考える.原発の稼働により発生する使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業(九州電力)の利益のために作り出されるものであるが,この管理保管には10万年余を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A9)
高レベル放射性廃棄物は地層処分を行う方針としております.この地層処分とは,しかし日本では法律で300メートルより深い地層に高レベル放射性廃棄物を人工バリアを施したうえで処分し人間の生活環境に影響を及ぼさないように,長期にわたり安全確実に閉じ込め処分する処分方法です.人間による長期管理の継続は困難であることから,最終的には人間による管理がなくなったとしても安全に処分できる方法として選択されたものが地層処分です.地層処分は深い地層の岩盤が本来持っている物質を閉じ込めるという性質を利用して高レベル放射性廃棄物を生活環境から離れた地下深部に隔離して,その管理を最終的に自然に委ねる方法です.恒久的な人間による管理が必要ないということで,将来世代に管理の負担を負わせることはないと考えています.当社としては,原子力発電所については安全性の確保を大前提にエネルギーセキュリティー面や地球温暖化対策面等から,その重要性は変わらないと考えており,原子力発電所のさらなる安全性・信頼性向上に取り組んでいくとしています.

(Q10) 原発再稼働の民主的手続きについて
最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否について,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.いくら国(規制委)が認めたとしても,このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない,玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されないと考える.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A10)
福島原子力発電所の事故を踏まえますと,地域の皆様が原子力発電所に対して不安を抱かれていることは当然のことと受け止めています.原子力発電所の拡張にあたりましては自主的・継続的な安全対策を積み重ね,絶えず安全性向上に取り組んでいくとともに,地域の皆様に安全対策等についてご理解いただき安心していただくことが何より重要と考えている.今後もface to faceのコミュニケーション活動を継続してまいりたいと考えています.原子力発電所については経営の最重要課題として規制基準への適合性はもとより,安全性・信頼性のさらなる向上のために自主的・継続的な取り組みを進めていきたいと考えています.

8月例会 吉岡斉氏が残したもの

8月例会


日時:2018年8月25日(土)10:00〜12:30
話題:「吉岡斉氏が残したもの」
   (話題提供:三好永作) 
報告資料

<報告>

7月例会 海底地滑り&2000ワット社会

7月例会


日時:2018年7月14日(土)10:00〜12:30
話題:(1)「地震が起きなくとも津波は発生する-海底地すべり津波について」
     (話題提供:森永徹氏) 
報告資料
   (2)「スイス2000ワット社会について-意義と解説-」
     (話題提供:岡本良治氏) 
報告資料

<報告>

 まず,森永氏が,海底地滑りによる津波という珍しい話題を報告した.津波の原因のほとんどは海底地震である.しかし,まれにではあるが海底地滑りによって津波が生じるという.1790年から1990年の間に生じた津波のうちで地滑りによるものは3.3%であった.海底地滑りは小さな地震などがきっかけで発生する可能性もある.1026年,島根県益田地方を集中的に襲った「万寿の大津波」は,地震被害の報告がなく,日本海の海底斜面の崩壊(地滑り)による可能性が高く,崩壊したと指摘される島根県沖の崩壊面が益田に向けて凹状になっていることからフォーカシング効果で益田地方に津波被害が集中したと考えられるという(竹本京大名誉教授,JSA京都支部ニュースNo.408).地上での地滑りでは,崩落土塊の体積は大きいものでも数十km3程度であるのに対して,海底地滑りでは数千〜数万km3に及ぶものもあるという.駿河湾や徳島県沖でも海底地滑りの痕跡が発見されている.また,1586年の天正地震で若狭湾に津波の被害があったとの古文書がある.天正地震の震央は内陸であるという見方があり,そのことから津波を否定する説もあるが,それだけで古文書にある津波被害を消すことには無理がある.地震が引き金となり,若狭湾沖で海底地滑りが起き津波が発生したというシナリオを否定できないからである.実際,若狭湾沖の日本海は海底斜面崩壊が多発する海域の一つという.若狭湾沿岸では,これとは別に600〜800年前にも津波があったという調査がある.日本の近海では,海底地滑りによる津波の危険性にも着目する必要があるということである.

 次に,岡本氏はスイスで先進的に進められている「2000ワット社会」についてその解説と意義を報告された.エネルギーの80%を輸入しているスイスでは,増え続ける一次エネルギー消費の問題に取り組むために,1998年にスイス連邦工科大学(ETHZ)の科学者たちが「2000ワット社会」という総合的政策を考案し,2016年2月時点で,スイス連邦エネルギー庁が奨励する「2000ワットエリア」の認証を受けている住宅地はスイスにおいて9地区もあるという.「2000ワット社会」とは,1次エネルギー消費率(単位時間あたりの1次エネルギー消費量)を一人あたり2000ワットに抑える社会ということである.この社会のコンセプトは,生活の質を低下させることなく,地球の全領域において持続的かつ公平なエネルギー供給を可能とし,地球の気温上昇を産業革命以前に比べて1.5〜2℃に留めるということである.この一人あたり2000ワットという消費率は,一人あたり年間CO2排出量を1トン未満に抑えることに対応している.現在のスイスの一人あたり1次エネルギー消費率は,5000ワットを超えており(内訳:居住とオフィス空間30%,食料・消費財22%,公共インフラ18%,電力12%,自動車10%),それらを半減以下にする必要がある.そのためには,省エネとエネルギーの高効率化を基本としつつ再生可能エネルギーの普及が必要である.エネルギー効率を向上させる新技術を実用化し,一連の対策を実行すれば,今の快適な暮らしを手放すことなくこの目標の達成が可能であるという.スイスの環境相M.ロイエンベルガーはこのビジョンを実現するために問題なのは技術面ではなく政治的意志であると述べている.日本のエネルギー消費率もスイスとほぼ同様であり,スイスの「2000ワット社会」に学ぶ必要があろう.

6月例会 日米原子力協定&脱炭素社会

6月例会


日時:2018年6月2日(土)10:00〜12:30
話題:(1)「日米原子力協定の自動延長について」(話題提供:伊佐智子氏)
      
報告資料 1988年協定
   (2)「原発ゼロと脱炭素の社会を目指して」(話題提供:中西正之氏)
      
報告資料

<報告>

まず,伊佐氏は,本年7月以降に自動延長される予定である日米原子力協定を取り上げた.現在の日米原子力協定は1988年協定である.その前の1968年協定から,第8条を「非軍事的目的に限る」を「平和的目的に限る」と文言が変えられた.この変更により現協定では「軍事的目的」を含めうると解釈できるという.日米間に限らず米国が締結する原子力協定は,核不拡散の観点から米国が規制をかけるものであるが,現協定では,米国が日本に対して使用済み燃料の再処理を柱とする核燃料サイクルを事実上自由に行うことを認める内容となっている.日本は現在,国の内外に約47トンのプルトニウムを保有しており,六ヶ所村の再処理工場が稼働すれば新たなプルトニウムが追加されることになる.日本にこのようなプルトニウム保有を認めることは,悪い先例となるだけでなく核セキュリティー上も問題であり,協定の自動延長時ににも何らかの是正措置あるいは代償措置を求めてくる可能性もあるという.現協定の第16条の3で「いかなる理由によるこの協定又はその下での協力の停止又は終了の後においても,第1条,第2条4,第3条から第9条まで,第11条,第12条及び第14条の規定は,適用可能な限り引き続き効力を有する」とある.あまり気にする必要はないのかもしれないが,協定を廃棄しても,その内容が生き残るようなこの条文は不気味である.

次に,中西氏は「原発ゼロと脱炭素の社会を目指して」と題して話された.まず問題とすべきは,排出CO2の総量の削減をいかになすかということであると強調された.現在,日本が輸入している化石燃料は,大雑把に原油2億トン,液化天然ガス(LNG)1億トン,石炭(一般炭と原料炭)2億トンであるという.これらの使用によりCO2が排出されるので,これらの使用をいかに減らすかが大切であろう.パリ協定での先進国の目標は,2050年に温室効果ガス排出量を80%削減するというものであり,脱炭素化の方針が明確に策定された.日本の1990年における温室効果ガス排出量は,12.6億トンであり,これを基準にすると80%削減による2050年の温室効果ガス排出量は2.5億トンとなるが,政府は基準年を2013年(CO2排出量:14.1億トン)とすることで2050年の温室効果ガス排出量は2.8億トンとしている.あまり大した差ではないが,中間の2030年目標をCO2排出量10.4億トンとすると,1990年基準では17%削減となり,2013年基準では26%削減となる.2030年の中間年削減目標が17%削減ではあまりにもみっともないので基準年を2013年にしたのであろう.経産省のもとで行われたエネルギー情勢懇談会の議論が紹介された.日本においても,2000年には火力・原子力に対する投資と再生可能エネルギーに対する投資と拮抗していたが,2016年には後者への投資が前者への投資の2倍以上となり,脱炭素化の動きが始まっているとしている.また,現状では電力の調整機能を,CO2排出を伴う火力発電に頼っているが,将来はCO2フリーの様々な蓄電池や揚水発電を含めた水力発電などを使うことを考えるべきとの指摘があった.後半に「クリーンエネルギーを活用した水素社会」の紹介と,石炭のガス化炉で水素を製造し発生したCO2を分離して海底下の油層に圧入する稼働中のプロジェクトの紹介があった.その有効性について若干の議論があった.

北朝鮮との対話に対するイラン核合意からの教訓

北朝鮮との対話に対するイラン核合意からの教訓


 解題:ここで紹介するのは鈴木達治郎氏(長崎大学核兵器廃絶研究センター長,日本パグウォッシュ会議代表)から御教示いただいた情報,すなわち,韓国のソウルで2018年4月14日〜17日に開催された国際核分裂性物質パネル(International Panel on Fissile Materials: IPFM)(注1)のワークショップにて,イランの元政府高官ムサビアン大使が,北朝鮮との交渉に際して,イラン核合意(Joint Comprehensive Plan of Action: JCPOA)からの教訓について発表したことについての記事(http://www.irna.ir/en/News/82890039)が時宜にかない,かつ周知される意義があると考えて,その翻訳を行い,関連する注釈を加えたものである.

2018年4月21日 福岡核問題研究会有志(O, M, T, N).


北朝鮮との対話に対するイラン核合意からの教訓

フセイン・ムサビアン


 イランと6つの世界大国,すなわちEU3プラス3(フランス,ドイツ,英国と中国,ロシア,米国)は,2015年7月に20ヶ月の交渉を経て,イランの核危機を解決する共同行動計画(JCPOA)に合意した.この取り決めは,たとえイランが協定を破ったとしても,核兵器のために十分な核分裂性物質を生産するには少なくとも1年かかるだろうという確かな保証を提供した.これは,これまでに交渉された核の透明性(注2)と査察に関する最高の水準によって検証されている.それと引き換えに,米国政府およびその他の世界大国と国連は,イランに関する核関連の制裁を解除することを約束した.この取り決めは国際社会によって歓迎され,国連安全保障理事会決議によって支持された.

 この共同行動計画(JCPOA)は,イランの脱退までの猶予期間を約1年にまで延長した一方で,イランの核計画のしっかりした監視,検証,検査を含むため,EU3プラス3の勝利となった.同時に,イランにとっては,すべての一方的で多国的な核制裁が解除され,濃縮と重水生産についてのイランの権利が尊重され,国際社会が平和的な核技術に関してイランと協力し,イランの対外関係は劇的に改善されたので,イランにとっても勝利であった.

 米国と北朝鮮の交渉において見習うことのできるJCPOAにつながった7つの主要原則は次のとおりである.

1. 戦争と制裁に関する外交に対する信念.圧力を増加させることが相手側の降伏をもたらすという認識は,イランにとってもこれからの北朝鮮にとっても当てはまらない.

2. 交渉は真剣に行うべきであり,相互妥協に基づく結果に到達することを目指すべきである.2013年のイランの核交渉の開始時点で,両者は,彼らが望む交渉の最終状態を明確にした:イランにとっては,核制裁の撤廃,ウラン濃縮と核燃料サイクルへの権利の尊重であり,米国とその他の世界大国にとっては,イランが核兵器を作らないということであった.
 双方の外交官や指導者も,交渉を成功させるためのコミットメントを明白に示した.これは最終交渉において例証された.ジョン・ケリー米国務長官が18日間連続してウィーンにおいて相手方ジャバード・ザリフと交渉していた.この連続18日間というのは,米国外交官が外国の地において交渉のために過ごした期間としては,第一次世界大戦後の1919年のベルサイユ会議以来最長であった.

3. 最大限の要求を断念し,面子を立てる解決策を模索すること.どんな取り決めも両者にとって政治的に擁護できるものでなければならない.両者は勝利としてそれを国内で国民を納得させることができなければならない.

4. 包括的な外交的解決策は,あらゆる側面から段階的に,相互にやりとりされて実施される.今日,JCPOAが揺らぐ理由の1つは,トランプ・ホワイトハウスがこの原則を守らなかったためである.イランは,低濃縮ウランの備蓄量を削減し,遠心分離機の数を削減し,IAEA(注3)保障措置協定の追加議定書を実施するという,JCPOAの実施の第一段階で大部分の譲歩を実施した.その後,イランは相手方が経済協力のコミットメントを遵守するのを待たなければならなかったが,これはトランプ政権下において日ごとに衰えている.最初の年に脅かされていない北朝鮮との間でJCPOAのような長期的な合意に達するためには,合意の下での相互作用は慎重に調整され,段階的に実施されなければならない.

5. 特に,政治的リーダーシップや政策の変化により,米国は核合意における義務を守ることができないことをJCPOAでは経験しているので,北朝鮮にとっては,どんな取り決めも米国への完全不信を基本に設計されるに違いない.

6. 交渉は多国間でなければならない.JCPOAにつながる交渉には,国連安全保障理事会の5つの常任理事国とドイツが参加した.二国間の北朝鮮-米国交渉は不可欠であるが,韓国,日本およびその他の関係国も出席しなければならない.米国と北朝鮮の間だけのどんな合意もそれほど持続的ではないだろう.

7. 国連安全保障理事会は,最終的な合意を支持しなければならない.国連安全保障理事会の支援を受けた取り決めは,北朝鮮をはじめとするすべての当事者が他国がその約束を履行するとの確信を強める.

(注釈)
1)
国際核分裂性物質パネル(International Panel on Fissile Materials: IPFM).
 関連した文献:
フランク・フォンヒッペル(編集),国際核分裂性物質パネル(編集),田窪雅文(翻訳)「徹底検証・使用済み核燃料 再処理か乾式貯蔵か:最終処分への道を世界の経験から探る」(合同出版,2014年).
2)「核の透明性」は,核兵器開発やその関連情報についての透明性の意味で,以下の資料などがある.
平成20年度外務省委託研究「核軍縮を巡る新たな動向」研究報告書 平成20年(2008年)3月.特に,第7章 透明性,不可逆性,検証可能性.
Sharon Squassoni, "Transparency: Nuclear Weapons and Fissile Material", April 2017

3)IAEAとは
国際原子力機関(International Atomic Energy Agency)のこと.


イランの元政府高官ムサビアン大使の講演(原文)

The full text of Mousavian's speech is as follows:

In July 2015, after 20 months of negotiations, Iran and six global powers, the EU3 +3 (France, Germany and the UK plus China, Russia and the United States) agreed on a Joint Comprehensive Plan of Action (JCPOA) to resolve the Iranian nuclear crisis. The deal provided verifiable assurances that, even if Iran broke out of the agreement, it would take at least a year for it to produce enough fissile material for a nuclear weapon. It is verified by the highest standards on nuclear transparency and inspections ever negotiated. In exchange, the US
و, other world powers and United Nations committed to lift their nuclear-related sanctions on Iran. The agreement was welcomed by the international community and endorsed by a UN Security Council resolution.

The JCPOA was a win for the EU3+3 because it included robust monitoring, verification, and inspection of Iran’s nuclear program while increasing Iran’s breakout time to about a year. At the same time, it was a win for Iran because all unilateral and multilateral nuclear sanctions were lifted, Iran’s right to enrichment and heavy water production were respected, the international community would cooperate with Iran on peaceful nuclear technologies, and Iran’s foreign relations would be dramatically improved.

The following are the seven primary principles that led to the JCPOA that could be emulated in US-North Korea negotiations:

1. A belief in diplomacy over war and sanctions. The perception that increasing pressure will result in the capitulation of the opposing side did not hold true for Iran nor will it for North Korea.

2. Negotiations should be serious and have the aim of reaching a result based on mutual compromise. At the onset of the Iran nuclear negotiations, in 2013, both sides made clear their desired end state for the negotiations: for Iran, the removal of nuclear sanctions and respect for its right to uranium enrichment and the nuclear fuel cycle; for the US and the other world powers that Iran does not build nuclear weapons.

Diplomats and leaders on each side also demonstrably displayed their commitment to make the negotiations a success. This was exemplified in the final round of negotiations, which saw U.S. Secretary of State John Kerry negotiating in Vienna with his counterpart Javad Zarif for 18 days straight—the longest consecutive stretch American diplomats had spent negotiating on foreign soil since the 1919 Versailles conference after World War I.

3. Dropping maximalist demands and seeking face-saving solutions. Any deal will have to be politically defensible for each side back home. Both sides must be able to sell it domestically as a win.

4. A comprehensive diplomatic solution that is implemented in step-by-step, reciprocal fashion by all sides. One reason the JCPOA is faltering today is because the Trump White House has not abided by this principle. Iran implemented most of its concessions in the first stage of the JCPOA’s implementation: reducing its stockpile of low-enriched uranium, cutting the number of its centrifuges, and implementing the Additional Protocol to its IAEA safeguards agreement. Iran then had to wait for the other side to abide by its commitment for economic cooperation, which has been dwindling by the day under the Trump administration. In order to reach a long term agreement such as the JCPOA with North Korea that is not threatened in its first years, the reciprocal actions under a deal must be carefully coordinated and implemented in a phased, step-by-step fashion.

5. For North Korea, any deal must be designed based on complete distrust in the United States, especially since the JCPOA experience has shown that, due to changes in political leadership or policy, the United States cannot be trusted to follow through on its obligations in a nuclear agreement.

6. Negotiations must be multilateral. The negotiations leading to the JCPOA involved all five permanent members of the UN Security Council as well as Germany. While bilateral North Korea-US negotiations are vital, South Korea, Japan and the other concerned powers must also be present. Any agreement between just the United States and North Korea would be less sustainable.

7. The UN Security Council must endorse any final agreement. A deal backed by the UN Security Council will bolster the confidence of all parties, especially North Korea, that the other side will implement its commitments.

3月例会 脱原発,気候変動対策とライフスタイル革命

3月例会


日時:2018年3月24日(土)10:00〜12:30
話題:脱原発,気候変動対策とライフスタイル革命
   (話題提供:岡本良治氏) 
発表資料

<報告>

 本年の1月例会において中西氏が「日本のエネルギー基本計画の検討」を報告され,いわゆる「エネルギー問題」が取り上げられたが,今回はそれに続いて,岡本氏によって「脱原発,気候変動対策とライフスタイル革命」と題した「エネルギー問題」が再び取り上げられた.
 まず,岡本氏は,気候変動対策に対して,①消費エネルギー削減,②エネルギー高効率化,③再生可能エネルギー普及,④原発廃止の4本柱で対処するという基本方針が高い説得力をもつと強調された.省エネルギーやエネルギー高効率化はエネルギー問題の中心的な課題であり,原発は決して温暖化対策の切り札ではない(吉岡斉,岩波ブックレットNo.802).
 ジャレッド・ダイアモンドによれば,持続不能に至る道を進んでいる現代社会は「50年以下の導火線をつけた時限爆弾のようなもの」という(「文明崩壊」第16章).
 スイスなどで先進的に進められている,快適な生活を維持しながら,一次エネルギー消費量を1人当たり2000ワットに抑えるプロジェクトなども大いに参考にすべきであろう.2014年度における日本の1人当たりの一次エネルギー消費量は4,660ワットであり,カナダや米国では,それぞれ,10,500ワット,9,200ワットである.日本で「2000ワット社会」を実現するには,エネルギー効率の悪い原発の廃止はもちろんのこと,大いなる省エネとエネルギー高効率化の推進が必要であろう.これらのエネルギーには,社会活動全般,生産や輸送に必要なエネルギーも含まれており,また,体内に取り込む食物のエネルギーも含まれている.一日2500 kcalを食物として取り入れていれば,2500x1000x4.19 J/(24x3600 sec) = 121 (J/sec) = 121ワットとなる.
 最後に水素エネルギーに関わる技術や「水素戦略」をどのように評価するのか,また,CO2分離貯蔵(CSS)技術の現状と近未来をどのように評価するか,などについて議論が必要であるとの発言があった.

2月例会 米国の核態勢見直し&ネバダ核実験の深刻な影響

2月例会


日時:2018年2月17日(土)10:00〜12:30
話題:
(1)米国の「核態勢見直し(NPR2018)」と「国防戦略2018」を読む
   (話題提供:岡本良治氏) 
発表資料
(2)ネバダ核実験場の地上核実験による死者数について
   (話題提供:菊川 清氏) 
発表関連論文

<報告>

はじめに岡本氏が,今年1月19日に米国防省が発表した「国家防衛戦略」と2月2日に発表した「核態勢見直し」(NPR: Nuclear Posture Review)を批判的に紹介された.「国家防衛戦略」では対テロよりも中ロを長期的な競合相手と位置付け,抑止力拡大のため,米軍を強化する必要性を強調している.同時に,集団防衛に公平な負担を期待するとして同盟国に防衛強化を求めている.河野外務大臣が高く評価するというNPRは「国家防衛戦略」の中核である.しかし,これは非核攻撃への報復にも核使用を明言したり,新型の小型核弾頭の開発など核兵器の役割を拡大させ,核兵器のない世界を願う国際世論に冷水を浴びせるものとなっている.

次に,菊川氏により,ネバダ核実験場の地上核実験によって深刻な影響を受けた人数を実証的アプローチで推定したK. Meyersの論文 ”Some unintended fallout from defense policy: measuring the effect of atmospheric-nuclear testing on American mortality patterns” の紹介がなされた.これまでの累積死亡者数の推定値(甲状腺がんによる)は4.9万人であったが,本論文では34〜46万人と推定している.これまでの研究ではネバダ核実験場の周辺(数カウンティーの)住民のみを対象としていたが,この論文では米国全土のカウンティーを対象として調査している.ネバダ核実験場での1951〜1963年の実験で放出された放射能は,チェルノブイリ事故で放出された量の150倍程度であるという.

1月例会 破局的噴火の間隔&エネルギー基本計画の検討

1月例会


日時:2018年1月20日(土)14:00〜16:30
話題:
(1)破局的噴火の間隔についての研究とカルデラ噴火の影響の範囲
   (話題提供:森永 徹氏)  
発表資料
(2)日本のエネルギー基本計画の検討
   (話題提供:中西正之氏) 
発表資料

<報告>

はじめに森永氏が,地球惑星科学の専門誌Earth and Planetary Science Lettersに昨年末に掲載されたRougier氏らの論文 ”The global magnitude–frequency relationship for large explosive volcanic eruptions” を,火山の超巨大噴火がこれまで考えられてきた以上に高い頻度で起きていると紹介された.これまで超巨大噴火は,4.5万年から71.4万年ごとに発生すると考えられてきたが,この論文では0.5万年から4.8万年ごとに超巨大噴火が発生しているという結果が得られているという.その上で,日本における超巨大噴火の歴史についてのレビューをされた.日本における超巨大噴火の発生は1万年に1回程度と極めて低いが,最後の鬼界カルデラの超巨大噴火(マグニチュード8.1)から7300年経ていることを考えれば,あり得ないことと安心することは決してできないことであるという.

 次に,中西氏が「日本のエネルギー基本計画の検討」を報告された.2014年における日本の一次エネルギーの中で,再生可能エネルギーの占める割合は7.8%と少なく,どう急速に割合を増加させるかが課題である.しかし,今の安倍政権は,発電ボイラー用石炭の使用量を増やし,世界の流れに逆行している.中西氏は,豪州で褐炭から水素を製造し,液化水素運搬船により日本に輸送するプロジェクト(豪州褐炭水素プロジェクト)を有望な方法として紹介された.この過程で生ずるCO2は,将来的には地下に貯留することを見据えているという.これは基本的にはエネルギーの自給には寄与しないプロジェクトであり,大きな期待を寄せれるかどうかは検討を要するように思われる.

九州電力への公開質問書

九州電力への公開質問書


2018年1月16日(火)午前11時に玄海原発3・4号機の再稼働に関する九州電力への公開質問書を提出しました.公開質問書の内容は下記の通りです.
なお,九州電力へは,
4年前にも玄海原発3・4号機の再稼働に関する公開質問書を提出していますが,その回答についてはまだ貰っていません.

九州電力との交渉の報告1(2018.2.27)
こちらが公開質問書の回答期限が2月末であったので,2月27日に電話で九州電力に問い合わせたところ,回答は3月中旬にしてほしいということでした.2月末という回答期限もこちらが一方的に設定したものであるのでと思い「3月中旬」という言葉を信じて,では,回答の日時を3月7日(水)までに連絡して貰うことにして電話を切りました.(EM)

九州電力との交渉の報告2(2018.3.7)
3月7日(水)は,九州電力からの連絡を逃さないように,街には出かけず静かに家で過ごしていました.午後3時頃やっと連絡があり,会場などのことで調整ができないので,回答の期日を「3月中旬」ではなく,4月にしてほしいと言い出しました.3月中に再稼働をしてしまってから,再稼働に関する公開質問書に対する回答をするというのは,不誠実きわまる態度であり,受け入れられないと主張しました.しかし,それがどれだけ九州電力に届いたかは不明です.回答の期日と会場を3月12日の午前中(10〜12時)に連絡することを約束して電話を切りました.(EM)

九州電力との交渉の報告3(2018.3.12)
約束した午前中(10〜12時)には連絡はなかった.(EM)
今日はもう電話はないな,と思い始めた夕方の6時過ぎに電話が掛かってきて,「どうしても3月中に回答をする日程を組むことは困難なので,回答は4月になってからにしてほしい」と言ってきました.それなら,4月の何日を考えているのかと尋ねたところ,「今日は回答を4月にすることで了解いただく連絡をしている」とのことでした.再稼働に関する公開質問書に対する回答を再稼働後にするというのは,決して誠意のある態度ではないと念を押して,回答が4月になることを了解しました.そのうえで,4月の何日に回答をするかと尋ねたところ,4月の中旬を考えているが,その日時の回答は,3月15日(木)の午前中(10〜12時)にするということで,その点を了解しました.(EM)

九州電力との交渉の報告4(2018.3.15)
本日も約束した午前中(10〜12時)には連絡はなかった.先日のように午後に連絡があるのかも知れない.(EM)
ついに,本日は,九電からの電話はなかった.やはり,誠実さに欠ける姿勢としか言いようがない.(EM)

九州電力との交渉の報告5(2018.3.16)
午後1時になるが,まだ,九電からの電話はない.(EM)
本日も,九電からの電話はなかった.いったいどうなっているのか.(EM)

九州電力との交渉の報告6(2018.3.30)
本日まで,孫たちがわが家に一週間ほど滞在していてくれていたが,その間も九電からの電話が何時あるか,ずっと気に掛かり,孫たちともじっくり付き合うこともできなかったが,昼過ぎに帰って行った.
4月の中旬には回答したいと言っていたので,3月の末日(営業日)である今日中には,連絡があるかもしてないとかすかな期待を持ったが,その期待もむなしいものとなった.(EM)

九州電力との交渉の報告7(2018.4.6)
連絡がないのは,いくら何でも,誠実さに欠けるとの憤りの気持ちを抑えながら,こちらから電話したところ,「気になってはいたが,あたふたしており連絡しないでごめんなさい」とのこと.随分気楽である.ごたごたがあり「会場のやりくりが付かない」と好い加減なことを言う.3号機の問題で大変なのかと聞いてみたところ,「そうだ」とのことである.事実であるかどうかはわからない.公開質問書に対する回答をいま「書いている」とも言っていたように思う.随分,非力な九電ではないか.
いずれにしろ,いまの状態では4月中の回答は無理で,5月のはじめに回答したいとのことであったが,「5月のはじめ」はGWだがと言えば,GW明けにしたいとのことである.
そちらの設定した日時が,こちらの主要メンバーの都合がつくかどうかも分からないので,その点を考慮して複数の時間設定が必要,あるいは,日時についての決定は,多少のやり取り必要であるとの釘をさしておいた.(EM)

九州電力との交渉の報告8(2018.8.28)
九州電力からやっと回答が,8月23日にありました.回答は文書ではなく,いつものことではありますが,口頭でなされました.そのために録音したデジタルデータから「文字起こし」をするのに若干の時間がかかりました.九州電力の回答(A1〜A!0)をこちらからの質問(Q1〜Q!0)とそれぞれペアで以下の「公開質問書に対する九州電力からの回答」のページに掲載します.なお,九州電力から回答に対する質疑応答については,さらに「文字起こし」をして,公開いたします.(EM)

公開質問書に対する九州電力からの回答


九州電力への公開質問書のpdfファイル

1月16日夕方のFBSの報道(YouTube)



2018年1月16日

日本科学者会議 福岡核問題研究会
連絡先:三好永作
メール:eisaku.miyoshi@icloud.com

九州電力株式会社
代表取締役社長 瓜生道明 様

当研究会は,核兵器や原発の問題を含めた,いわゆる「核問題」を日常的に研究している大学教員やそのOB,元技術者を中心とする研究会です.九州電力は今春の3月と5月に玄海原発3・4号機の再稼働を計画していると新聞が報道しています.これまでの当研究会での研究の成果に基づいて,この再稼働に関連して私たちが疑問に感じている問題点について公開で質問をしますので,2月末までに回答いただくようお願いします.

(1)原発の審査基準について
原子力規制委員会設置法と電気事業法の目的は「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」と「公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」である.そのために,福島原発事故の様な原子力災害を確実に防止することが政府と九州電力に求められている.
福島原発事故の教訓の最も大切な点は,滅多に起きないが影響の大きい,いわゆる「低頻度・高影響」の事象への対策を無視したことである.原子力規制委員会(以下,規制委)は,国際原子力機関(IAEA)の深層防護における第4層の過酷事故対策の実践を「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」とする「新規制基準の考え方」[1]で審査を行い,水蒸気爆発や航空機激突等の対策を要求していない.この「可能性が小さければ対策しない」という審査基準は,福島で「大地震・大津波対策」を怠り未曾有の公害・人災を招いた考え方と同一である.そもそも,過酷事故のシーケンスの発生確率を精確に見積もることは,容易なことではない.「可能性が小さければ対策しない」との考え方だけでなく,「可能性の小ささ」を単純に信用してしまう態度も大いに問題である.
このように,過酷事故対策は「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」であるという規制委の極めて楽観的な審査基準について九州電力はどう考えているか?

(2)過酷事故時の住民避難等の対策について
規制委の任務として,設置法では「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全」(第3条)が掲げられている.しかし,過酷事故時の住民避難等の対策(原子力防災)は規制委の審査の対象になっていないため,再稼働の審査は規制委の目的・任務からして重大な欠陥があるといわざるを得ない.原子力施設周辺における放射線影響緩和は,IAEAの深層防護の第5層としても求められており,国際的な観点から見ても原発の稼働にとって不可欠の条件であるが,原発周辺自治体に「丸投げ」され,その有効性についていかなる公的な第三者機関による検証もなされていない.以上の点は,規制委の無責任性を物語るのもではあるが,そのような中で,ひとたび原発の過酷事故が発生すれば,その被害に対する全責任を取るべきは九州電力である.この点について九州電力はどのように考えているか?

(3)過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について
IAEAの深層防護の第4層にあたる安全規則では,必ず想定すべき格納容器破損モードとして水素燃焼や溶融炉心・コンクリート相互作用とともに原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用(Molten Fuel Coolant Interaction, FCI)が含まれている.九州電力は,実機において想定される溶融物(UO2,ZrO2)を用いた「大規模実験」として,COTELS,FARO,KROTOS及びTROIを例に挙げながら,原子炉容器外のFCIのうち,水蒸気爆発は,実機において発生する可能性は極めて低いと申請書に結論して,これを規制委の「審査書」では,無批判に認めている.
しかしFCIは,いわゆる「複雑系」に関わる現象であり,条件のほんの微小な変化により結果が大きく変わることが分かっている[2, 3].KROTOSなど幾つかの「大規模実験」の結果で,FCIの全容が分かるわけではない.KROTOSなどの「大規模実験」とは比較にならないほど大規模な実機でメルトダウンを伴う過酷事故が起きたときには,何が起きるのかは分からないのが現状である.
軽水炉の安全性についての研究において世界的な権威であるB.R. Sehgal教授の編集による最新の報告書[3]や経済開発協力機構(OECD)のSERENAプロジェクト(FCIに関する研究)に参加する研究者達[4]の了解事項は,FCIを伴うメルトダウンの実際の場面(「実機条件」)では,「水蒸気爆発は必ず起きると考えよう」である.
何故に,九州電力はこのような最新の知見を無視して,「実機において発生する可能性は極めて低い」とする結論を強引に下すのか? 規制委の審査書では,溶融した炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策を容認している.しかし,この事故対策は,明らかに「液-液直接接触が生じるような外乱を与え水蒸気爆発を誘発する」ことにほかならず,水蒸気爆発が起こることを覚悟しなければならない.過酷事故をさらに酷くする水蒸気爆発を誘発する恐れがある事故対策をあえて実施する理由は何か?

(4)再臨界の可能性について
過酷事故時においては,炉心から熔融し,炉心外に貫通(メルトスルー)した燃料デブリが格納容器のコンクリート床に落下する.このため溶融炉心コンクリート相互作用(MCCI)生成物の臨界特性が問題となる.ケイ素を主成分とするコンクリートは中性子吸収が少なく,水には劣るが中性子減速効果も持つ.減速された中性子(熱中性子)はウラン235に吸収されやすく核分裂反応を促進する.このように,MCCI生成物がごく少量の水分と共存することで再臨界の可能性を高めることが報告されている[5].
メルトスルーした燃料デブリを水で張った格納容器で受け取るという今回の事故対策では,そのことで水蒸気爆発が起きなかったとしても,この点についての検討が十分になされているとはいい難い.燃料デブリがコンクリート床に次々に落下し,核分裂物質を含む燃料デブリの量が増加し,ケイ素や水の中性子減速効果により核分裂反応が促進され,再臨界の可能性が高まることがありうると考えられる.さらにこの新たな再臨界によって新たな水蒸気爆発が発生することもあるかもしれない.このような危険性に対して,九州電力はどのような対策を考えているのかを教えて欲しい.

(5)通常運転時の健康被害について
玄海原発の再稼働によって,過酷事故がありうることは明確であるといわざるをえない.しかし,もしその危険性を無視できるほど小さなものと仮定できるとしても,玄海3,4号機が稼働を再開すれば,通常運転においても原発周辺では健康被害が生じる恐れが大きいことが明らかになっている.玄海原発周辺では,同原発の稼働によって住民の白血病死亡率が高くなったとの報告があり[6],通常運転時に原発から環境に放出されるトリチウムが原因として疑われている.実際,玄海原発は過去の稼働時の 2002年から 2012年に 826テラベクレルと,わが国の原発では最も多量のトリチウムを放出している.これは福島原発事故で発生した汚染水中のトリチウムの量とほぼ等しい.
トリチウムの危険性については,ベータ線のエネルギーが小さいためベクレル当たりの吸収線量は小さい.しかし,トリチウムは生化学的に重要な元素としての水素の同位元素として,生体に容易に取り込まれるため,特別な内部被ばくのリスクがあることを,欧州放射線リスク委員会(ECRR)は2010年勧告[7]で指摘している.このトリチウムの危険性は,まだ科学的に確定されたことではないが,トリチウムの周辺住民への健康影響の危険性が完全に払拭されない限り,玄海原発の再稼働はするべきではないと考えるが,九州電力はこの点をどうのように考えているのか? また,九州電力は玄海原発周辺市町村における白血病の死亡率のデータを調査しているのか?

(6)破壊行為から原発等を守る対策について
玄海原発において,① 使用済み核燃料を水冷保管していることや② 格納容器を空気で充填していること,そして③ 見て分かる航空機対策をしていないことは,疑いようなく周知されている事実である.
海外では取り組みが進んでいる使用済み核燃料の乾式貯蔵は,安全性を格段に高める.玄海原発等の加圧水型原発の格納容器には,沸騰水型に比較して容量が大きいことを理由に窒素充填していない.しかし,加圧水型原発の格納容器に窒素充填することは,格納容器内での水素爆発を抑止するなど安全性を高めることに有効である.航空機の対策については,規制委は「確率」による計算と判断から審査対象から外した.わが国の航空機の対策は,欧米各国の対策・考え方から大きく遅れている.米国での9•11事件や飛行機の墜落を深刻にとらえた欧米各国は,現実的な検討をして具体的で公開された,大型航空機の衝突に耐える2重構造の格納容器などを備える原発を建設されている[8].こうした頑強な構造を持つ原発は従来の原発より安全性は高く,天災等による事故の被害拡大や破壊行為への抵抗性も高いと考えられる.
これらの乾式貯蔵や格納容器への窒素充填,2重構造の格納容器などは,破壊行為から守るためにもこれらの対策が有効である.(使用済み)燃料プールが無ければそれを破壊して冷却を阻害できないし,格納容器に窒素充填していれば内部に侵入するにも酸素ボンベがいるし,窒素を排除するにも時間がかかる.2重構造の格納容器は飛行機で破壊することは困難であろう.このように,原発の安全性を高めることが,破壊行為の抑止にも確実に有効な手段となる.このような高い安全性を持たない玄海原発は,破壊工作によって容易に破壊される危険性が高いと考えられるが,この点について九州電力はどのように考えているか?

(7)基準地震動の設定値について
基準地震動についても問題としたい.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発の基準地震動は620ガルと低く設定されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合があるが,2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市では1494ガルの地震動を観測している.
玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある[9].これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.このような基準地震動について過小評価になっているとの多数の地震学者の警告を九州電力はどのように考えているか?

(8)玄海原発の「立地の適・不適」について
規制委の審査内規である「火山影響評価ガイド」では,160 km火山を検討対象として,火山の噴火にともなう火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合には,原発の立地は不適であるとしている.その噴火の規模が推定できない場合には,過去最大の噴火を想定するとしている.そして,去る12月13日の広島高裁判決では,伊方原発から130km離れている阿蘇カルデラの約9万年前の噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」として,「伊方原発の立地は不適」と判断し,四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定を出した.この広島高裁の決定を基準に考えれば,玄海原発も川内原発も阿蘇カルデラからの距離が伊方原発の場合と同程度であることから,九州電力の「2つの原発の立地は不適」と判断されることになる.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(9)世代間倫理に反する行為について
原発の再稼働には世代間倫理についての問題もあると考える.原発の稼働により発生する使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業(九州電力)の利益のために作り出されるものであるが,この管理保管には10万年余を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(10)原発再稼働の民主的手続きについて
最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否について,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.いくら国(規制委)が認めたとしても,このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない,玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されないと考える.この点を九州電力はどのように考えているのか?

参考文献
[1] 原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(平成28年6月29日,同8月24日改訂).
http://www.nsr.go.jp/data/000208520.pdf
[2] 高島武雄・飯田嘉宏,「蒸気爆発の科学-原子力安全から火山噴火まで」(裳華房,1998年).
[3] “Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology” ed. by B.R. Sehgal (Academic Press, 2011).
[4] J.H. Kim et al., Nucl. Technol. 158, 378-395 (2007). S. Leskovar and M. Ursic, Nucl. Eng. Technol. 48, 72-86 (2016).
[5] K. Izawa et al., J. Nucl. Sci. Technol. 49, 1043-1047 (2012).
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/search/servlet/search?5036965
[6] 森永徹,「玄海原発と白血病の関連の検討」,社会医学研究,第56回日本社会医学会総会講演集(2015)p.94.
http://jssm.umin.jp/lectures/2015.pdf
[7] C. Basby et al., “ECRR 2010 Recommendations of the European Committee on Radiation Risk: The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation” (May 2010).
[8] 原子力安全保安院 「シビアアクシデント対策規制の基本的考え方に関する検討」(平成24年7月12日).
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3532877/www.nisa.meti.go.jp/shingikai/
800/34/006/6-1.pdf
[9] 毎日新聞 2016年6月17日 東京朝刊.
https://mainichi.jp/articles/20160617/ddm/008/040/036000c

12月例会 九電への公開質問書&深層防護

12月例会


日時:2017年12月16日(土)14:00〜16:30
話題:(1)九州電力への公開質問書について
   (2)山本章夫氏(名大)「深層防護を改めて考える」(原子力学会)の紹介
     (話題提供:岡本良治氏)

<報告>

本例会では,玄海原発の再稼働に際しての九州電力への公開質問書の原案が示され,(1) 原子力利用における国際的な基準について,(2)過酷事故時の住民避難等の対策について,(3)過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について,(4)再臨界の可能性について,(5)通常運転時の健康被害について,(6)破壊工作から原発等を守る対策について,(7)基準地震動の設定値について,(8)玄海原発の「立地の適・不適」についてなどの項目についての検討がなされ,また,新たな項目について,世代間倫理の問題(「負の遺産」)や民主主義の問題についても入れるべきとの意見も出された.公開質問書は年内かあるいは年明け早々に提出する予定である.
次に,山本章夫氏(名大)の「深層防護を改めて考える」の講演スライドを用いての同氏の論考の紹介を岡本氏が行った.研究会終了後に,親睦のため忘年会を行った.

11月例会 北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析2

11月例会


日時:2017年11月2日(土)14:00〜16:30
話題:北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析ノート2—ICBM用「水爆」とその多核弾頭化 
発表資料
報告:岡本良治氏

<報告>

 11月例会では,岡本氏が,『日本の科学者』11月号の論文「北朝鮮の核兵器はどこまで進んだか」の続編ともいうべき「水爆」開発に対する分析を詳細に述べられた.『日本の科学者』来年2月号の「科学者つうしん」欄のために,この例会を要領よくまとめた伊佐氏の文書があるので,これを例会報告として以下に掲載する.
-------------------------------------------------------------------
 2017年11月4日開催の福岡核問題研究会では,九州工業大学名誉教授・岡本良治氏により「北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析ノート2—ICBM用『水爆』とその多核弾頭化」が報告された.
 岡本氏は,本誌投稿論文「北朝鮮の核兵器開発はどこまで進んだか」(2017年11月,598号,24頁~30頁)において,北朝鮮による過去5回の核実験を分析し,その核開発技術が十分に進歩し,爆発威力も着実に伸びており,実際の軍事配備の実現も間近にしつつあると説示した.
 そして,本年9月3日にも核実験が行われた.これを受け,韓米合同軍事演習が継続され,双方の挑発行動が続く.軍事的威嚇や経済制裁が真の問題解決になるとは思えないが,北朝鮮の軍事動向を客観的に分析・把握することも不可欠だと岡本氏は述べる.
水爆は,核分裂主体の1次系と核融合主体の2次系で構成される.Gsponerらの熱核爆弾に関する文献(2009年)によれば,現代の水爆の一次系(核分裂系)では,少量の核融合物質(重水素及び三重水素)を添加して,核分裂連鎖反応を促進するブースター原理を採用し,飛躍的に爆発効率を向上させる技術は想定されているよりは容易であるという.米国の水爆(W88)は,2次系を球対称にすることで,熱核融合燃焼を最高度に効率化できるようになっている.
2017年9月3日,6回目核実験が公表され,北朝鮮・核兵器研究所が声明を発表した.そこでは,1次系と2次系からなる「水爆」の中核的な技術的要素目標を高い精度で達成したとしており、岡本氏によれば,北朝鮮の水爆実験は基本的に成功したと見てよいという.北朝鮮の核開発技術は看過できないほど進んでいる可能性も払拭できないということだ.(伊佐智子)

10月例会 原発運転差し止め裁判における論旨の問題

10月例会


日時:2017年10月7日(土)10:00〜12:30
話題:原発運転差し止め裁判における論旨の問題
報告:中西正之氏

<報告>

 10月例会では,中西氏により,脱原発弁護団全国連絡会が,2017年6月1日に策定した「『新規制基準の考え方』検討報告書—原子力規制委員会の欺瞞」(以下,「検討報告書」)の解読・解説を行なった.昨年,原子力規制委員会が策定・改訂した「実用発電用原子炉に係わる新規制基準の考え方について」(以下,「考え方」)は,福岡核問題研究会でも取り上げ,批判的に検討してきた.
 「検討報告書」においても,「考え方」は原発訴訟・裁判対策として作成されたものとして捉えている.実際,大阪高裁は,大津地裁の高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定の控訴審において,「考え方」の内容の当否を検討することなく,「原子力規制委員会がそのように結論付けている」という理由だけで「考え方」を安易に採用し,2017年3月28日,高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定を取り消したという.ここから,裁判に勝利する上でも「考え方」を適切に批判することの重要性が浮かび上がる.「考え方」では,福島原発事故は津波によって発生したと決めつけているが,国会事故調や政府事故調は,地震を契機として事故が起きた可能性を認めている.
 福岡核問題研究会でも「新規制基準は世界で最も厳しい水準」という虚言を厳しく批判して来たが,「検討報告書」においてもこの点を指摘している(p.40).原子力規制委員会の「考え方」では,原子力規制委員会は,同種の事故を防止するための教訓としては現時点までに明らかになっている事象で十分であるとしている.
 しかし,新規制基準を策定するにあたって最も重要である事故の原因ですら,各報告書等によっても確定できておらず,「検討報告書」では,「原子力規制委員会は,事故原因を正確に把握しないままに新規制基準を策定したのであり,この点からも新規制基準は不合理である」と批判している.また,「検討報告書」では,新規制基準は,IAEAの安全基準に整合していないこと,さらに深層防護の考え方を踏まえていないことを厳しく指摘している.

9月例会 核兵器禁止条約の意義と課題について

9月例会


日時:2017年9月2日(土)10:00〜12:30
内容:
核兵器禁止条約の意義と課題について 発表ファイル
報告:岡本良治氏

<報告>

岡本氏は,はじめに,核兵器禁止条約の意義と課題について以下のようにまとめられた.
(1)核兵器禁止条約は,軍事力による国家安全保障概念を実現する道具としての核兵器を全面的に禁止した歴史的快挙であり,核兵器の廃絶を直接に目指すわけではないが、非合法化する条約である.
(2)核兵器禁止条約は,国家安全保障概念の中心的戦略としての核抑止論を
人道的な見地から否定した.
(3)核抑止論の補完政策としての拡大核抑止論(=核の傘論)の有効性については実証的な裏付けは十分ではない.日米安保条約に核兵器使用は明記されてはいない.
(4)核抑止論のより深い理論的批判とともに現在の具体的な課題(北朝鮮による核ミサイル開発問題など)にも説得力のあるアプローチが必要である.

その上で以下の項目について詳細に報告された.
§1 はじめに
§2 核兵器禁止条約の意義と課題
§3 国家安全保障の中心政策としての「核抑止論」の系譜
§4 核の傘ー期待と幻想ー
§5 当面する課題-ミサイル攻撃・ミサイル防衛論の虚実ー

報告の詳細については上の発表ファイルを参照されたい.

7月例会 JAEA Research 2007-072報告書について

7月例会


日時:2017年7月22日(土)10:00〜12:30
内容:
JAEA Research 2007-072報告書について レジュメ
報告:中西正之氏

<報告>
 中西氏により,日本原子力開発機構(JAEA)の森山らによる報告書「軽水炉シビアアクシデント時の炉外水蒸気爆発により格納容器破損確率の評価」(JAEA-Research 2007-072)の紹介があった.JAEAの森山らは,開発した水蒸気爆発シミュレーションのためのJASMINEコードを使って沸騰水型原発(BWR)と加圧水型原発(PWR)の格納容器のメルトダウン発生時における格納容器破損確率の評価を行なっている.PWRについては,関西電力から格納容器構造に関するデータを提供してもらい,溶融貫通した炉心溶融物が原子炉下部キャビティに形成された水プールに落下し水蒸気爆発が発生するというシナリオを考えている.キャビティのコンクリート壁の外側への変異が壁厚の20%に達した時を損傷と設定している.PWRのキャビティ内水蒸気爆発について様々なシミュレーションを行い,平均的に6.8%の損傷確率があると報告している.水蒸気爆発に関して特に注意を要することは,直径数ミクロンから数十ミクロンの微粒子が生成され,わずかな気流によって運ばれるということである.この微粒子には溶融炉心のほぼ全ての成分があり,したがって放射能の高い核分裂生成物を含み,体内に取り込むと重大な内部被曝を起こすことになる.

6月例会 日本の原子力政策&SERENA-2プロジェクト

6月例会


日時:2017年6月17日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 日米原子力協定と日本の原子力政策の歴史的経緯(報告:伊佐智子氏)
    
発表ファイル
   (2) TROI 2007年論文とSERENA-2プロジェクト(報告:中西正之氏)
    
レジュメ

<報告>
 はじめに,伊佐氏は日本の原子力政策の歴史を理研・仁科研究室のGHQによるサイクロトロン没収・破壊命令から始め,24枚のパワーポイントファイルを使って包括的に語られた.1953年12月の国連でのアイゼンハワーの”atoms for peace”演説の後,1954年3月1日に第五福竜丸などがビキニ環礁で被ばくし,中曽根康弘氏らの提案によって同年3月4日に原子力関連予算が可決される.同年9月に第五福竜丸の機関長・久保山愛吉氏の死亡に対して,現在まで米国政府は「放射能が直接の原因ではない」との見解を示しているという.1955年12月に米国から日本へ濃縮ウランを貸与するための日米原子力協力協定が締結され,1956年1月には日本では,原子力委員会が発足することになる.委員長は読売新聞社主の正力松太郎氏であった.湯川秀樹博士は委員の一員であったが,委員長が1957年1月に「原発を5年後に建設する構想」を発表したことに対して「慎重な上にも慎重でなければならない」と強く訴え抗議のために辞任した.1970年代〜80年代に世界においてスリーマイル島(1979年)やチェルノブイリ(1986年)で原発事故が起きるとともに,日本でも原子力船むつの放射能漏れ事故(1974年)や「もんじゅ」のナトリウム事故(1995年)など事故が続出し,2011年3月には福島原発事故が起きることになった.2018年に日米原子力協定が改定予定であるが,自動更新の可能性が高いという.

 次に,中西氏が韓国の原子力研究所で行われているTROI実験についての2007年の論文(Kim et al., Nucl. Technol. 158, 378 (2007))及び経済協力開発機構(OECD)のSERENAプロジェクト2の実験とシミュレーションの論文について報告された.TROI実験は,経済協力開発機構(OECD)の主要な実験の一つであり,融点の高い二酸化ウランUO2と二酸化ジルコニウムZrO2の混合溶融物(擬似デブリ)を使っている点に特徴がある.UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは自発的な水蒸気爆発があったが,他の組成では水蒸気爆発は存在しなかった.実機の過酷事故時には外部トリガーありうるので外部トリガーを加えた実験を行い,UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは,UO2 80%:ZrO2 20%の擬似デブリの時の水蒸気爆発の発生圧力は大きくなったという.SERENAプロジェクト2のシミュレーションの論文(M. Leskovar and M. Ursic, Nucl. Eng. Technol. 48, 72 (2016))では,OECDのSERENAプロジェクトで開発されたMC3Dコードを使用して,水蒸気爆発の圧力をシミュレートしている.それによれば加圧水型原子炉でキャビティを満水にしておくと,水蒸気爆発が起きた場合には,キャビティの側壁に約150気圧の爆発圧力がかかる危険があると報告されている.この圧力でキャビティ側壁が破壊されるかどうかが問題である.

5月例会 川内原発と白血病&TROI実験無視

5月例会


日時:2017年5月20日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 川内原発と白血病の関連(報告:森永氏) 発表ファイル
   (2) 加圧水型原発を保有する4電力会社のTROI論文無視問題(報告:中西氏)
    
レジュメ  発表ファイル

<報告>

 はじめに,森永氏より川内原発の運転と周辺市町村の白血病死亡者数に統計的に有意な差があることが報告された.森永氏はすでに玄海原発の稼働前後に玄海町や唐津市における白血病死亡率が,原発に近い市町村ほど高いというデータを示しており,同様な統計的データが川内原発の周辺でも得られたということで,ことは重大である.
 次に,中西氏により加圧水型原発を保有する関西電力,九州電力,四国電力および北海道電力の電力4社がいわゆる「TROI論文」の研究結果を無視していることが報告された.「TROI論文」は,OECDのSERENAプロジェクトのなかの1つであり,韓国の原子力研究所で継続的に行われている,溶融炉心と冷却材(水)との相互作用に関する実験である.これまで,TROI実験以外に,FARO実験,KROTOS実験などがあるが,溶融炉心として大量の酸化ウラン(UO2)などを使った実験で水蒸気爆発が観測されたのは,外部トリガーを使用したKROTOS実験の3件だけであることから,電力4社は実機の過酷事故に際して外部トリガーはないので,水蒸気爆発は実機ではないとしている.実機の過酷事故に際して水蒸気爆発に対するトリガーがないと楽観できるのは驚くばかりであるが,それ以上に驚くのはトリガー無しで自発的な水蒸気爆発を観測したTROI実験を無視していることである.パブリックコメントでTROI実験の無視が指摘されると,規制委員会は水蒸気爆発を観測したTROI実験では溶融温度が高く(3800K),現実的な条件に近い温度では起きないことが確認されているとしている.TROI実験では確かに温度測定に正確でない部分もあり,これらの点には今後検討すべきことがあると思われる.しかし,4電力会社は規制委員会からお墨付きを得られということでTROI論文の無視を続け,水蒸気爆発は起きないとい前提で再稼働が続けられている.

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」


2017年5月3日,福岡核問題研究会の有志は,最近の朝鮮半島の危機を憂い,「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」との声明を発表しました.

pdfファイル


朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける

2017年5月3日
福岡核問題研究会有志(世話人:三好永作)
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/index.html

 私たちは1970年代から,核・原子力問題を分析し,研究発表並びに講演会を重ねてきました.朝鮮半島における緊張と戦争の危険が高まっているいま,核・原子力問題に取り組んできた者として,そして市民として,本声明を発表し,広く戦争反対の行動を呼びかけます.
 現在,朝鮮半島における軍事的緊張の高まりにより第二次朝鮮戦争が危惧されています.朝鮮民主主義人民共和国(以下,北朝鮮と略)による核兵器やミサイルの開発は,我が国,特に北部九州への脅威にとどまらず,東アジア全体の平和への脅威です.しかし,北朝鮮を包囲する米軍,基地を提供する日本,米軍と一体となって演習する自衛隊の行動もまた,同様に東アジア和平を脅かすものであり、両者は挑発行動を自粛するべきだと考えます.
 北朝鮮政府関係の声明や米国大統領のツイッター等では,挑発的意見表明がなされ,日本のマスコミは過剰に「危機」を演出しています.しかしながら,軍事的な合理性が関係諸国の指導層に貫徹している限り,この「危機」が「有事」に進展する可能性は低く,冷静かつ沈着な対応が求められます.
 とはいえ,かかる米国の「抑止行為」が,北朝鮮の「捨て身の反撃」を誘発し,核兵器の使用,ひいては,核戦争に進展するリスクが全くないともいえません.影響の及ぶ範囲や予測される戦場が朝鮮半島に限られる保証もなく,日本や東南アジアが巻き込まれる危険性もあります.
 北朝鮮の「挑発」だけを非難し,2ヶ月にもわたる米韓合同軍事演習など米国側の戦争準備行為を問題にしない我が国のメディアや国会の態度は一方的です.特定の国家だけを一方的に「悪」とする言説は,戦争準備行為の一つと見なされます.
 4月末,日本政府は,海上自衛隊に米国艦船を防護する命令を出しました.米艦が他国を威嚇する場合,海上自衛隊の米軍との一体行動は,「武力による威嚇」を放棄した憲法9条に抵触する可能性も生じます.
 私たちは朝鮮半島における現在の危機は,軍事的手段でなく,以下に述べる平和的手段によって解決するべきと考えます.
 第1に,関係する国家の政府間交渉です.旧6ヵ国協議の有効性には異論もありますが,ローマ法王フランシスコが提案したように,旧6ヵ国に,「調停国」としてノルウェーを加えることも検討に値するといえます.
 第2に,政府間交渉だけではなく,われわれ市民も声をあげ,戦争防止のための意見表明と具体的な意志表示や行動をとることです.
 第3に,関連分野の科学者や技術者も,説得力ある提言をし,側面から,米朝両国の緊張緩和や実効的解決のために積極的に行動することです.例えば,長崎大学核兵器廃絶研究センターの提案「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」(注1)はその一例です.
 朝鮮半島の危機と戦争回避のために,多くの方の協力と行動とを呼びかけます.
(注1)http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35475/1/Proposal_J_original.pdf

4月例会 玄海許可処分の審査請求&軍学共同反対について

4月例会


日時:2017年4月29日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 玄海原発許可処分の審査請求について(報告:北岡逸人氏)
    
発表ファイル
   (2) 軍学共同反対について(報告:豊島耕一氏)
レジュメ

<報告>

 はじめに,北岡氏より「玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更の許可処分」に対する審査請求書を原子力規制委員会に送付したことの説明があった.審査請求とは,行政処分などに不服がる場合に請求できるものである.審査請求が認められれば,その行政処分(今の場合は,玄海原発3,4号炉の設置変更許可処分)は取り消されることになる.裁判では,司法機関に行政処分の違法性を問うことになるが,審査請求では,行政処分を行った当事者以外の行政機関に行政処分の違法性あるいは不当性を問うことになる.裁判に比べて簡易であり経費は安く,かつ迅速であることが期待される.審査請求は単なる抗議や意見表明ではなく,法的根拠のある不服申立てで詳しく解説した「問題点」が公的資料に残る点に意義がある.

 次に,豊島氏により「軍学共同反対について」の話題提供があった.






玄海原発の設置変更許可処分に対する審査請求

玄海原発の設置変更許可処分に対する審査請求


2017年4月17日,福岡核問題研究会の有志は,行政不服審査法に基づいて,「玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)の許可処分」に対する審査請求書を以下のように原子力規制委員会に,送付した.審査手続き中に再稼働が行われないように,許可効力の執行停止も求めた.

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審 査 請 求 書

2017(平成29)年4月17日

原子力規制委員会 御中

1.審査請求人及び総代の氏名及び住所等
  別紙「審査請求人一覧表」及び「総代の選任届出書」を参照。
2.審査請求に係る処分
  玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(3号及び4号発電用原子炉施設
  の変更)の許可処分
 (平成29年1月18日。原規規発第 1701182 号)
3.審査請求に係る処分があったことを知った年月日
4.審査請求の趣旨
  「2.記載の処分を取り消す」との決定を求める。
5.審査請求の理由
  本件処分の審査基準及び審査内容に違法性・不当性がある。理由の詳細は別紙
  「資料」を参照。
6.口頭意見陳述会の開催及び質問
  希望する。質問内容の詳細は別紙「質問事項一覧表」を参照。
7.執行停止の申立て
  執行停止を申立てる。
8.処分庁の教示内容
 ・当該処分が不服申立てをすることができる処分であるか ⇒ できます。
 ・不服申立てをすべき行政庁 ⇒ 原子力規制委員会になります。
 ・不服申立てをすることができる期間 ⇒ 処分があることを知った日の翌日から
  起算して三月です。
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なお,「審査請求の理由詳細」を説明する別紙資料(以下参照)については,同日,電子メールでpdfファイルとして送信した(4月21日,一部訂正).

資料(1)原子力利用における国際的な基準ついて
資料(2)原子力防災の有効性が全く検証されていな問題について
資料(3)過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策において瑕疵がある
資料(4)再臨界の可能性について
資料(5)通常運転時の健康被害について全く検討していない
資料(6)審査書(案)に対する御意見への考え方問題
資料(7)原発等を破壊行為から守る対策について
資料(8)基準地震動の設定値の問題
資料全体

この審査請求に関して佐賀県庁記者クラブで記者会見を行ったところ,NHKをはじめとして数社の記者に集まって
いただいた.NHKのニュース番組で放映したものが,以下のYouTubeで見ることができる.
https://www.youtube.com/watch?v=Jl6zYv1Itlg

kaiken201704a

また,翌日(4/18)の朝刊で佐賀新聞をはじめ朝日新聞,毎日新聞,読売新聞,西日本新聞が私たちが記者会見で発表した内容を記事にした.それらの記事は以下の通り.
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(佐賀新聞,写真入り)

nisinihonshasin
 

 九州電力玄海原発3,4号機(東松浦郡玄海町)が,新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だとして,大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は,規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めた.
 研究会の有志5人が,行政不服審査法に基づき,許可の取り消しや,執行停止(再稼働の停止)を求める.審査期限の18日までに手続きする.
 理由として,福島第一原発事故の後,フランスは総勢300の緊急対応部隊を新設したが,日本の新規制基準には対応する措置がなく,「世界基準に程遠いこと」や,規制委がそもそも重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないことが,「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などと主に8項目を挙げている.
 研究会メンバーが17日,佐賀県庁で会見を開き,豊島耕一佐賀大学名誉教授は,「県議会は安全が認められたとしれいるが,実際には程遠い状況」と批判した.(川﨑久美子)

(朝日新聞佐賀地方版)
 原子力規制委員会が九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)について新規制基準を満たすとする設置変更の許可を出したのに対し,学術経験者ら5人が17日,県庁で会見し,行政不服審査法に基づき,許可取り消しを求める審査請求と,許可処分の執行停止を申し立てると発表した.
 5人は学識経験者などでつくる福岡核問題研究会の有志.1月に出された許可について,事故時の住民避難を対象にしていない▽水蒸気爆発対策が不十分▽通常運転時の健康被害について検討していない▽原発を破壊行為から守る対策に不備がある▽基準地震動に設定値に問題がある−−などの理由から取り消しを求めている.請求人の岡本良治・九州工業大学名誉教授(原子核物理学)は,何重にも安全対策を取るという深層防護の考え方について,国際的基準に照らして不備を指摘.「政府などは『世界最高水準』というが,そうではない」と,許可の取り消しを訴えた.

(毎日新聞佐賀地方版)
 原子力規制委員会が新規制基準に適合した判断した九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)の設置変更許可について,九州大名誉教授らが17日,許可の取り消しを求める審査請求書を規制委に出すと発表した.
 審査請求は2016年4月に見直された行政不服審査法に基づくもので,従来の異議申し立てに当たる手続き.
 審査請求書は九州大の三好永作名誉教授や佐賀大の豊島耕一名誉教授ら5人で提出するという.許可の取り消しを求める理由について,原子力利用の国際的な基準を満たしていない▽原子力防災の有効性が全く検証されていない▽水蒸気爆発のリスク対策に瑕疵がある▽原発を破壊行為から守る対策が不十分−−など8項目にわたって挙げている.(石井尚)

(読売新聞佐賀地方版)
 九州電力玄海原子力発電所3,4号機(玄海町)の再稼働を巡り,大学の研究者のOBらでつくる「福岡核問題研究会」(世話人=三好永作・九大名誉教授)の有志は17日,原子力規制委員会に対し,規制委が1月に出した「原子炉設置変更許可」を取り消すよう求める審査請求を行うと発表した.
 請求は17日付.5人が県庁で記者会見して明らかにした.審査請求は行政不服審査法に基づくもの.審査請求書では▽規制委が九電に求める安全審査が不十分で,国際基準から逸脱している▽原子力防災の有効性が検証されていない −−など8項目にわたって挙げている.

(西日本新聞佐賀地方版)
 脱原発を求める大学名誉教授らでつくる「福岡核問題研究会」は17日,行政不服審査法に基づいて,九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)の安全対策をまとめた「設置変更」の許可を取り消すよう求める審査請求書を原子力規制委員会に送付したと発表した.
 審査請求書は,①重大事故時の住民避難など原子力防災対策が検証されていない ②再臨界の可能性についての審査が不十分 ③航空機の激突に対して現実的な検討,対策がない−−ことなどを挙げ,原子力規制委の審査内容に違法性や不当性があると主張している.
 審査請求書は研究会メンバー5人の連名.審査手続き中に再稼働が行われないように許可の効力の執行停止も求めている.(長田周三)
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3月例会 「書籍」ソフト&ブースター爆弾

3月例会


日時:2017年3月25日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 自作フリーウェアの活用法(報告:竹下幸一氏) 発表ファイル
   (2) 北朝鮮の核実験の到達点と意図の技術的分析
     ―ブースター弾頭の小型化(報告:岡本良治氏)
発表ファイル(5.12更新)

<報告>
三好が佐賀県知事への要請とその後の記者会見の様子を報告した後,
(1) 竹下幸一氏がみずから開発されたフリーソフト「電子書庫・書籍・ノート」について,その有用性と活用性について報告された.書籍を用いた調査や研究において目的の情報を入手するまでには,書籍の入手,目次や索引の参照,ページ捲り,情報の解読や取得などに,多大な労力と時間が必要となるが,書籍のデジタル化,すなわちパソコンと情報処理技術を利用することにより,それに必要な労力と時間を大幅に短縮を可能にするのがソフト「電子書庫・書籍・ノート」であるという.これにより,労力や時間の短縮のみならず,情報の見落なく迅速で的確な情報取得が可能である点も大きな利点である.本ソフトでは,画像データpdfファイルなどから「電子書籍」用ファイルを準備し,それに対応する文字コードファイル「電子ノート」を作成し,この「電子ノート」を対象にキーワード検索が可能である.さらに,複数の「電子書籍」を対象にしてキーワード検索を行うことも可能である.使用されている言語はVisual Basicで,そのコンパイラーで実行形式にしたもので稼働しているという.使い方次第で大変便利なものであるように思われた.

(2) 次に,岡本良治氏により,「北朝鮮の核実験の到達点と意図の技術的分析」と題した報告していただいた.岡本氏は,1984年に『日本の科学者』誌上に核兵器に関する2つの論文「核分裂兵器と爆縮技術」および「水爆とは何か-ブースター効果とテラー・ウラム配置」を書いている.「実戦における唯一の被爆国としての日本では核兵器への反対の世論は根強いが,必ずしも核兵器の理解を深めること,あるいは科学的,技術的分析や核戦争の想定される被害の具体的検討は,残念ながら,十分には行われていない.核兵器廃絶の運動の発展,特に節目ごとの課題設定を適切に行うためにも」核兵器を正確に理解することが必要と岡本氏はいう.ブースター核弾頭とは,より具体的にはトリチウムが関与するDT核融合反応を媒介として, 核分裂反応を強化する仕組みをもつ弾頭であるという.DT核融合反応により発生する14 MeVの高速中性子がPu239やU238に衝突することで,通常の核分裂で発生する中性子の1.5倍程度発生することで,通常の核分裂爆弾より高効率となる.岡本氏は,すべての核兵器国がすでに獲得し実戦配備している,このブースター核分裂弾頭の生産と配備を開始できるようになった可能性が高いとみている.核兵器が危険で非人道的な兵器であるとすれば,単に北朝鮮指導部に対してだけではなく,米国を初め,核兵器保有国の全てに対して廃棄を要求するべきである.日本国内でも,北朝鮮と米国の双方による軍事活動の停止などを求めるなど,軍事的緊張を高める機運や試みには慎重で抑制するように,時宜を逸せずに運動すべきであろう.
                            (以上,E.M.)

佐賀県知事への要請と記者会見(3/7)

玄佐賀県知事への要請と記者会見(3/7)


 3月1日付の福岡核問題研究会の声明文「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」を玄海原発再稼働についての判断の材料として使用してもらうように,以下の要請文を添えて佐賀県知事への要請を, 3月7日に行った.
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                         2017年3月7日
佐賀県知事
山口祥義 様
 九州電力は,玄海原発3,4号機について原子力規制委員会に認められた対策工事を年度内にも終え,佐賀県知事の同意を得て,この夏ごろには再稼働をする予定であると聞いています.私たち福岡核問題研究会は,さる3月1日に別紙のような「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」と題する声明文を公表しました.玄海原発3,4号機の再稼働に関連して,考えられるさまざまな問題点を指摘したものです.
 知事が九州電力への対応を考えられる際に,別紙の声明文の内容を参考にしていただければ幸いです.事故時に被害を被る原発周辺住民が過酷事故を覚悟して避難計画を立ててまで,一私企業の利益のために玄海原発3,4号機の再稼働を認めなければならない理由はないのではないでしょうか.
                         福岡核問題研究会
                         世話人:三好永作
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 その後,佐賀県政記者クラブにおいて記者会見を行った.記者会見にはNHKと数社の新聞社の記者に集まっていただいた.同日には,岸本秀雄・玄海町長の再稼働に同意したというニュースがあり,それとの関連で読売新聞,佐賀新聞,西日本新聞が記者会見で発表した内容を記事にしてもらった.それらの記事は以下の通り.

(3月8日,読売新聞佐賀地方版)
 大学教員のOBらでつくる「福岡核問題研究会」(世話人=三好永作・九大名誉教授)は7日,県庁を訪れ,九州電力原子力発電所3,4号機(玄海町)の再稼働に反対する山口知事宛ての意見書を提出した.
 研究会は核に関する研究会を行ったり,シンポジウムを開いたりしている.玄海原発を巡り,今月1日には▶今必要なのは原発受け入れの根本的見直し▶新規制基準は「世界最高水準の安全基準」ではない,などとする声明文を公表していた.
 この日,県に提出した意見書では「事故時に被害を被る周辺住民が避難計画を立ててまで,一私企業の利益のために再稼働を認めなければならない理由はないのではないでしょうか」などと主張している.
 岸本秀雄・玄海町長の同意表明について,研究会の豊島耕一・佐賀大名誉教授は「町の同意だけで動かしていいはずがない」と批判した.
(3月8日,佐賀新聞)
 専門家らでつくる「福岡核問題研究会」は同日,県に再稼働の問題点を指摘する文書を提出した.世話人の三好永作九州大学名誉教授(物理学)は「原子力規制委員会の新規制基準は世界から笑われるようなレベルで,日本の科学技術の劣化を物語る.安全性をないがしろにするのは許せない」と話した.
(3月8日,西日本新聞佐賀地方版)
福岡県内の大学教員や医師でつくる「福岡核問題研究会」は,過酷事故対策の不備などを指摘する声明文を県庁に提出した.佐賀大名誉教授の豊島耕一さん(69)は会見で「町の同意だけで動かすべきではない.県内や福岡,長崎両県も含めて広範囲の自治体の同意が必要だ」と訴えた.



声明「玄海原発 3, 4号機の再稼働は許されない」

玄海原発3, 4号機の再稼働は許されない

pdfファイル

2017年3月1日
福岡核問題研究会


1.はじめに


 原子力規制委員会は,さる1月18日,九州電力の玄海原発3,4号機が新規制基準を満たすと認める審査書を正式決定した.九州電力は,認められた対策工事を年度内にも終えて,この夏ごろには再稼働をする予定という.私たちは,2014年の夏,川内原発の再稼働に反対する声明を発表したが,原発をめぐる状況は当時と変わらない.
 福島原発事故により「決して起きない」と言われてきた過酷事故は容易く起きることが明らかになり,「安いから使う」と言われてきた原発が決して安くないことが明らかになった.福島原発事故の処理費用が21.5兆円にもなることが発表され,この額がさらに増加することが確実視されている.原発は,意図的破壊行為も想定しなければならず,安全性からも経済性からも他の発電設備に比較して格段に劣るものと言わざるを得ない.福島原発事故の真相究明がなされていない現状では,原発の再稼働が許されないのは当然である.玄海原発3,4号機の再稼働をめぐる問題点を指摘しておきたい.

2.いま必要なのは原発受け入れの根本的見直し


 まず第一に,玄海原発を含めて日本に現存する原発は,事故が起きても周辺の公衆に「著しい放射線被ばくのリスクを与えない」との前提で設計され,「過酷事故は起きない」,念のため計画するが「住民避難は必要ない」との説明で建設されてきた.福島原発事故のように炉心が損傷して冷却が難しくなれば,設計条件を超える温度,圧力および放射線レベルになるので,本来なら全面的・根本的・総合的に設計を見直す必要がある.「過酷事故は起きる」「大量の放射能がまき散らされる」「避難も必要」と分かった訳であるが,これらは電気のための余りにも過大な代償であり,原発受入れ拒否の理由とさえなるものである.

3.新規制基準は「世界最高水準の安全基準」ではない


 第二に,再稼働の審査に使った新規制基準が決して「世界最高水準の安全基準」ではなく,大変甘い基準である点は見逃せない.例えば,新規制基準では,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして,「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的である.相対的に安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述がまったくない.このことは,この「新規制基準」が原発の安全性よりもその再稼働を優先するためのものであることを物語っている.新規制基準が原発の安全を保証するものにはなっていない.

4.水蒸気爆発,ずさんな過酷事故対策


 第三に,過酷事故対策がずさんであることも重大である.一例だけを挙げれば,溶融した炉心を水張りした格納容器に受けて冷却するという「過酷事故対策」がある.この「対策」は水蒸気爆発を誘発する恐れがある.水蒸気爆発が起きれば,福島原発事故をはるかに超える放射性物質が環境に放出される恐れがある.過酷事故対策は,国際原子力機関 (IAEA) の深層防護のうち「重大事故の影響緩和を目的」とした第4層に属する対策の1つであるが,これでは「影響緩和」ではなく,「影響拡大」または「影響の深刻化」をもたらす.「過酷事故現象学」という分野の世界的権威B.R. Sehgal教授の編集による国際会議報告集(*)における合意は,「過酷事故のなかで溶融炉心と冷却材(水) が接触すれば,水蒸気爆発が必ず起きると考えよう」ということである.文字通り,溶融炉心だけを受止め,水から隔離する「コアキャッチャー」という装置のアイデアは,このような認識から出発したものである.

5.原発の耐震性の問題


 第四に,基準地震動についての問題も重大である.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発では 620 ガルである.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合がある.2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録した.玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委員会による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある.これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.

6.避難計画および移住の問題


 第五に,避難計画についての審査が今回の再稼働審査にないことも重大である.IAEAの深層防護では,第5層で「放射性物質が放出したとしても,公衆被ばくを抑制するように備える」ことを提案し,第1層から第5層までの各層はそれぞれ独立に対策を立てるべきであるということを強調している.今回の審査では,公衆被ばくを抑制するための避難計画は審査の対象から外し,原発周辺自治体まかせになっている.一私企業の利益のための原発の稼働により事故が起きたからと言って,周辺自治体がそのための避難計画作成の責任を負わされること自身,道理に合うことではないが,避難計画を審査対象から外すことは,IAEA深層防護の第5層無視といえる.
 福岡市の西隣の糸島市の避難計画は,福岡市に避難するということのようであるが,糸島市から避難しなければならない状況では,福岡市からも避難しなければならない確率が極めて高い.しかし,150万人を擁する福岡市の避難計画はない.事故時に被害を被る原発周辺住民が過酷事故を覚悟して避難計画を立て,一私企業の利益のために玄海原発3,4号機の再稼働を認めなければならない理由はない.
 福島原発事故で最も深刻な問題の一つは,故郷を喪失した人々の移住の問題であった.再稼働にあたって,この点について一言のコメントもないのは大変気になる.避難計画を法的に義務付けられ,実害を被る危険にさらされることになる原発周辺自治体と住民の同意なしに再稼働をすることは許されることではない.

7.世代間倫理に反する行為は許されない


 第六に,世代間倫理についての問題もある.原発の稼働により発生する使用済核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業の利益のために作り出されるものであるが,10万年余の管理保管を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.

8.原発再稼働の決定は民主主義的な手続きで


 最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否を尋ねたところ,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されない.
(*) “Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology” ed. by B.R. Sehgal, (Academic Press, 2012).

以上

2月例会 声明文の検討

2月例会


日時:2017年2月25日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 佐賀県原子力専門部会への申し込みの検討
   (2) 玄海原発再稼働についての反対声明文の検討

<報告>
(1) はじめに,佐賀県原子力専門部会を数回にわたって傍聴した方から,その専門部会における討論内容が報告された.専門部会は,総じて緩いもので,県の事務局(原子力安全対策課)からの説明に対して専門部会の委員が素朴な質問をしてそれに県の職員が答えるというようなものであるとのこと.中には,鋭い質問もあり,県の職員がその場では答えられないこともあったという.福岡核問題研究会として,佐賀県の原子力安全対策課あるいは原子力安全専門部会への申込を行うことも検討したが,結果として見送ることになった.

(2) 次に海原発再稼働に反対する声明の原案について討議し,たくさんの修正意見が出され,それらの検討の結果,
声明文「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」の骨子が確定された.細かな字句の修正などはメーリングリストで詰めることとなった.
                            (以上,E.M.)

虚言「新規制基準は世界で最も厳しい水準」を批判

繰り返される虚言「新規制基準は世界で最も厳しい水準」ー国際原子力機関の「深層防護」からも逸脱ー


pdfファイル

2017年2月24日
福岡核問題研究委員会有志*


1.嘘も百回言えば本当に?


今月初めに佐賀県議会の特別委員会で配布された九電のビラや,現在佐賀県内各地で行われている「県民説明会」の資料に,「『世界で最も厳しい水準にある新規制基準』に適合」と書かれていますが,これは全く事実に反します.「最も厳しい」どころか,いくつもの重大な点で甘く,それどころかメルトダウン対策は世界では非常識とされるものです.また,同じビラには,万が一の事故でも放射性物質は福島事故の時の2,000分の1などと書かれています.しかし,これを保証する確たる根拠もなく,まさに「安全神話」の復活そのものです.
私たちは科学者として,このようなデマの横行を見過ごすことは出来ません.詳細は2年ほど前の文書「原子力規制世界最高水準という虚言の批判」[1]に書いていますが,そのポイントを短くまとめてみます.

2.国際原子力機関(IAEA)の「深層防護」の考え方と新規制基準の比較


原発推進の総本山である国際原子力機関(IAEA)は,過酷事故発生が原発推進の一番の妨げになるので過酷事故に厳しい立場を取っています.そのIAEAの「深層防護」の考え方[2,3]は,異常や事故の深刻さ,進展の度合いを5段階にわけ,そのそれぞれの段階に対して,それぞれ独立に対策を立てておく,というものです.我が国の規制基準も,これに倣っていると称していますが,実際は違います.
設計基準内の事故,つまり「想定内」の事態については,想定された発端事象ごとにそれがより悪化しないための対策が一応とられています.発端事象(「引き金」的な事象)は外部事象と内部事象に分けられます.外部事象は地震,津波,火災,テロなどであり,内部事象は機器,部品の故障などです.
他方,設計基準では想定されていない事故が過酷事故(シビアアクシデント)ですが,これに対する対策がいい加減か,または全く欠けています.次の表の第4層と第5層です.日本の新規制基準[4]をこれで評価してみます.
fig20170224
 右欄の記号の意味:○=要求あり △=要求はあるが極めて不十分 ×=要求なし

なぜ,このような評価をするか.この判断根拠は,規制委員会の「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」という文書[4]の中で,深層防護思想の第4層について説明している65ページに,「早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できる」として,規制委員会は第4層を不要であるという立場を表明しているからです.これはIAEAの深層防護思想からの逸脱,または恣意的な解釈と言わざるを得ません.
IAEA福島原発事故報告書[3]では,低頻度・高影響の外部事象(自然現象など)に十分備えるべきと繰り返し勧告されています.さらに,「ブラック・スワン―リスクと不確実性」について系統的に分析した文献[5]には,人間や組織も関与するシステムにおける低頻度・高影響の事象が多数分析され,事前にそれらの予兆は観察されないこと,そして,人間の認知機構は反復されるもの,規則的なものに主として注目し,低頻度のものは存在しないと見なすことも鋭く指摘されています.
また,過酷事故対策として審議されてきた格納容器下部キャビティの水張りと水素燃焼のイグナイタ(着火装置)は労働安全衛生規則に反しています[6].
周知のように,第5層の緊急時対応は規制対象ではありません.米国では規制対象であり,ニューヨーク州のショーラム原発は緊急時対応の実効性が不十分という理由で新設の原子炉が稼働することなく閉鎖されました.地方自治体が義務づけられている原発防災対策は,事故の影響と自然災害を同列視しているだけではなく,福島原発事故後,不可避になった長期間にわたる移住の措置は考慮の対象外になっています.

3.新規制基準は世界で最も厳しい水準とはとても言えない!


4層,特に過酷事故(シビアアクシデント)の影響緩和策は無いか,極めて不十分です.燃料や制御棒などの高温の溶融物に対して,チェルノブイリ事故後の緊急対応の一環として,耐熱レンガなどを用いたコアーキャッチャーが構築され,地下水への接触を防護しました.その後,ヨーロッパやロシア,中国の新型原発では徐々に装備されています.過酷事故は設計想定外の事故であり,設計をやり直すことが筋です.
5層の緊急時対応は規制対象ではありません.以上より明らかなように,新規制基準は世界で最も厳しい水準とはとてもいえません.

4.再稼働される原発の「安全性」は誰も保証していない


安倍首相は,原子力規制委員会が「再稼働の安全性を確保できているかどうかの確認審査をしている」と言い,九電も「新規制基準審査に合格したから安全性が高まった」と主張しています.しかし,原子力規制委員会の田中俊一委員長は,委員会は原発が新規制基準に適合しているかどうかを判断しているのであって,「原発の安全性を担保しているものではない」との姿勢を変えていません.つまり,安倍首相や九電は「規制基準合格」に過ぎないものを「安全性」にすり替えていると言わざるを得ません.

[引用文献]
[1]福岡核問題研究会「原子力規制世界最高水準という虚言の批判―世界一楽観的な進展シナリオに沿った、世界一奇妙な評価―」, 2014年12月1日.
  http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/kikaku/files/673c6fc5ee122b961e25fb24ffe1190b-31.html
[2] IAEA, INSAG-10「原子力安全における多重防護」1996年.
  http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1013e_web.pdf
[3]IAEA, 福島第一原子力発電所事故-事務局長報告書, 2015年8月.
  http://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/SupplementaryMaterials/P1710/Languages/Japanese.pdf
[4]原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」2015年6月29日策定,2015年8月24日改訂.
  https://www.nsr.go.jp/data/000155788.pdf
[5]N.N.タレブ 「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」ダイヤモンド社,2009年.
[6]滝谷紘一「労働安全衛生規則に反する過酷事故対策の原子炉下部キャビティの水張りと水素燃焼のイグナイタ」科学Vol.86, No.6 (2016), 513.
  http://toyokeizai.net/articles/print/129616

* 岡本良治(九工大名誉教授),豊島耕一(佐賀大学名誉教授),中西正之(元燃焼炉設計技術者),三好永作(九州大学名誉教授)

玄海原発パブコメで記者会見

玄海原発パブコメで記者会見


玄海原発3,4号炉の適合性審査書案に対してパブリックコメントを提出した研究会メンバー4名が佐賀県庁記者クラブで記者会見を行いました.

日時:2016年12月27日 午後2時30分〜3時30分
場所:佐賀県庁記者クラブ
内容:玄海原発3,4号炉の適合性審査書案に対するパブリックコメント
   パブリックコメント28件の要約は以下を参照のこと

pressconf161227saga-c

パブリックコメント28件の一覧表
パブリックコメント28件の要約
記者会見のプレゼントファイル
記者会見の音声



12月例会 北部九州の活断層と地震

12月例会


日時:2016年12月24日(土)14:00〜17:00
内容:
北部九州の活断層と地震
講師:半田 駿 佐賀大学名誉教授

<報告>

玄海原発再稼働審査パブリックコメント

玄海原発再稼働審査パブリックコメント


2016年11月10日から一ヶ月の間に玄海原発再稼働についての審査書案についてパブリックコメント(パブコメ)が募集されているいます.本研究会のメンバーが提出したパブコメをここに紹介します. 

パブコメ1 水蒸気爆発に対するIAEAの安全基準の対策を無視(中西)
パブコメ2 カベンスキー等の水蒸気対策の新知識を無視(中西)
パブコメ3 水蒸気爆発防止についての労働安全衛生規則を無視(中西)
パブコメ4 北九州市で2015年に起きた水蒸気爆発事故を無視(中西)
パブコメ5 チェルノブイリでは水蒸気爆発防止のため水抜きをした(中西) 関連資料
パブコメ6 東電柏崎刈羽原発では水蒸気爆発の危険を認めている(中西)
パブコメ7 水蒸気爆発対策の不備(中西) 関連資料
パブコメ8 水中の溶融核燃料のクレスト破壊モデルを無視(中西) 関連資料
パブコメ9 TROI実験の検討をしていない(中西)
パブコメ10 格納容器下部をモルタル補強計画は不適切(中西) 関連資料
パブコメ11 モルタル補強はコリウムシールドより劣悪(中西) 関連資料
パブコメ12 加圧器逃し弁の耐久計算が杜撰(中西) 関連資料
パブコメ13 フィルター付きベントの問題(中西) 関連資料
パブコメ14 爆燃も爆轟も水素爆発(中西)
パブコメ15 水素爆発をめぐる問題(中西) 関連資料
パブコメ16 地震動をめぐる問題(中西) 関連資料
パブコメ17 耐震重要度分類の変更を行わなかった問題(中西) 関連資料
パブコメ18 4重の壁しかない問題(中西) 関連資料
パブコメ19 セシウム137の放散限界目標値をめぐる問題(中西)
パブコメ20 免震重要棟の設置は3回も緩和された(中西)
パブコメ21 圧力容器の炭素偏析による強度不足の検査無し(中西)
パブコメ22 再臨界が引き金となり水蒸気爆発が起きる危険性(北岡)
パブコメ23 水蒸気爆発についての最新の科学的認識を無視(三好)
パブコメ24 「新規制基準」は事故の進展に楽観的に過ぎる(三好)
パブコメ25 飛行機落下による核被害の危険(豊島)
パブコメ26 事故時の住民避難についての審査がない(豊島)
パブコメ27 通常運転時の健康被害について審査すべき(豊島)
パブコメ28
パブコメ29
パブコメ30
パブコメ31 破壊行為から核物質を守るのは不可能(北岡)
パブコメ32

11月例会 玄海原発再稼働の問題点整理

11月例会


日時:2016年11月26日(土)10:00〜12:30
内容:
玄海原発再稼働の問題点整理

<報告>

玄海原発再稼働の問題点を整理した.以下,それらを箇条的に述べていく.これらは,玄海原発再稼働に関連して予定している当研究会の声明の基調となるものである.
① 過酷事故対策が義務化されて安全になったか
 福島原発事故以降,新たな規制基準に過酷事故対策が義務化された.しかし,玄海原発を含めて日本に現存する原発は,事故が起きても「炉心が著しい損傷に至らず,冷却可能な形状が保たれることや周辺の公衆に対し著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと」を前提に設計され,「過酷事故は起きない.放射能漏れ事故が起きても重大な被ばく影響は原発敷地内に収まる程度で,住民避難は(念のため計画するが)必要ない」との説明で建設されてきた.福島原発事故のように炉心が損傷して冷却が難しくなれば,設計条件を超える温度,圧力および放射線レベルになる.それは結果として,格納容器などの変形量や密封機能,電気部品,計装器システムなどに影響するので,本来なら全面的・根本的・総合的に設計を見直す必要がある.「過酷事故は起きる.大量の放射能がまき散らされる.避難も必要」と分かった以上,いま必要なことは根本的な見直しであり,原発再稼働そのものの是非である.また,使用済核燃料を安全に保管しこれ以上増やさないことも重要である.
② 基準地震動の問題
 基準地震動の問題も重大である.玄海原発は620ガルという基準地震動を設定のもとでの耐震設計により審査されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合がある.これらの2つのタイプの地震に対する耐震性を考えなければならない.2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市で1494ガルの最大加速度を観測している.玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるがゆえに,逆にこのような未発見の断層による地震が起きる危険度が高い.玄海原発の直下で鳥取県中部地震と同程度の地震が起きれば,620ガルという基準地震動をはるかに超える地震動を覚悟しなければならない.もう一つ別のタイプの地震,つまり,既知の活断層が震源となる場合もあり得る.この点は,10月の例会でも取り上げたように九州電力や原子力規制委員会は西日本に多い断層では過小評価になることが明らかな入倉・三宅式を使って地震の揺れの予測を行っている.これでは今回の玄海原発再稼働審査によって,原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えないのではないだろうか.
③ 杜撰な過酷事故対策
 過酷事故対策が杜撰であることも重大である.一例だけを挙げれば,溶融した炉心を水張りした格納容器に受けて冷却するという「過酷事故対策」がある.この「対策」は水蒸気爆発を誘発する恐れがある.この爆発が起きれば,福島原発事故をはるかに超える放射性物質が環境に放出されることになる.チェルノブイリ事故で大量の放射性物質が環境に放出されたのは水蒸気爆発による.過酷事故対策は,IAEAの深層防護のうち「重大事故の影響緩和を目的」とした第4層に属する対策の1つであるが,これでは「影響緩和」ではなく「影響拡大」あるいは「影響の深刻化」をめざしているとしか思えない.「過酷事故現象学」という学問分野における現時点での国際的合意は,「過酷事故のなかで溶融炉心と冷却剤(水)が接触すれば,水蒸気爆発が必ず起きる」である.溶融炉心だけを隔離するコアキャッチャーという装置のアイデアは,この認識から出発したものである.
④ 避難計画が審査の対象になっていないのはIAEA深層防護の第5層違反
 避難計画についての審査が今回の再稼働審査にないことも重大である.IAEAの深層防護では,第5層で「放射性物質が放出したとしても,公衆被ばくを抑制するように備える」ことを提案し,第1層から第5層までの各層はそれぞれ独立に対策を立てるべきであるということを強調している.今回の審査では,公衆被ばくを抑制するための避難計画は審査の対象から外し,原発周辺自治体まかせになっている.一私企業の利益のための原発の稼働により事故が起きたからと言って,周辺自治体がそのための避難計画作成の責任を負わされること自身,道理に合うことではないが,避難計画を審査対象から外すことは,IAEA深層防護の第5層違反といえる.福岡市の西隣の糸島市の避難計画は,福岡市に避難するということのようであるが,糸島市が避難しなければならい状況では,福岡市からも避難しなければならない確率が極めて高い.しかし,150万人を擁する福岡市の避難計画はない.
⑤ これ以上の「負の遺産」を未来の世代に残すことは許されない
 世代間倫理についての問題もある.原発のかどうに伴い作られる使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,10万年余の管理保管を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.世代間倫理には「この大地は私たちの子孫からの借りもの」であるという考えが大切である.再稼働によりこれ以上の高レベル放射性廃棄物を生産することは許されない.
⑥ 「新規制基準」は大変甘い基準である
 再稼働の審査に使った「新規制基準」は,決して「世界最高水準の安全基準」ではなく,大変甘い基準である点も見逃せない.例えば,「新規制基準」では,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして,「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質 の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的である.より安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述がまったくない.このことは,この「新規制基準」が原発の安全性よりもその再稼働を優先するためのものであることを物語っている.「新規制基準」が原発の安全を保証するものにはなっていない.
⑦ 再稼働反対は民意
 民主主義の問題もある.朝日新聞社が2016年10月15, 16日に実施した全国世論調査(電話)では,原子力発電所の運転再開の賛否を尋ねたところ,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もないなかで,多くの国民の納得が得られない玄海原発の再稼働は,民主主義の問題としても許されない.

10月例会 島崎氏による基準地震動の過小評価指摘問題

10月例会


日時:2016年10月22日(土)14:00〜16:30
内容:
島崎氏(元規制委委員長代理)による基準地震動の過小評価指摘問題
   報告:中西正之氏

<報告>

 島崎・元規制委委員長代理により提起された,入倉・三宅式による地震動の過小評価の問題を中西正之氏が報告された.原発サイトにおける地震による最大の地震動を予測するには,2つの課題がある.一つは,①震源の大きさ,すなわち,地震モーメントを動いた断層の面積あるいは長さと関連させてどう予測するかという課題と,もう一つは,②その震源からどのようなシナリオで原発サイトまで地震動が伝播していくか(それをレシピと呼んでいる)という課題である.この第2の課題はかなり複雑である.原発の耐震性に関係するのは,0.02〜1秒の短周期の振動である.そのシナリオにより最大の地震動がおおよそ地震モーメントの何乗に比例するかが決定されることになる.
 ①の課題には,さまざまな経験式が提出されているが,②の課題については,まだ十分に研究がなされているとはいえないのが現状であるようだ.①の課題に関して,地震モーメントと断層の面積あるいは断層の長さとの間には,入倉・三宅式の他にも武村式などさまざまな経験式がある.入倉・三宅式は世界の地震データによる経験式であり,その他の武村式などは日本の地震データによる経験式であるという.
 島崎氏は,西日本に多い垂直断層あるいは垂直に近い断層の場合,入倉・三宅式は,武村式など他の式に比較して地震モーメントが3.4分の1程度小さくなるという.この点は,原子力規制庁も「入倉・三宅式が他の関係式に比べて,同じ断層長さに対する地震モーメントを小さく算出する可能性を有している」ことを認めている.
 島崎氏は,2016年4月の熊本地震においても,国土地理院による断層面の暫定的推定を基にして,入倉・三宅式による地震モーメントが過小評価になっていることを指摘している.入倉氏(京都大学名誉教授)は,それに対して学問的に反論しているが,「地震の揺れの予測に使う場合には,(西日本に多い)断層面が垂直に近いと地震規模が小さくなる可能性はある.行政判断として,過小評価にならないよう注意しながら使うべきだ」として自分の式が過小評価になることは認めている.入倉氏は,入倉・三宅式を防災目的に使用すること事態が間違いであるとも主張している.
 ②の課題に関しては,地震動は地震モーメントの1/3乗に比例するという関係式が壇らにより提案されているが,1/2乗に近いというシナリオもあるようだ.
 島崎氏は原子力規制委員会に,過小評価の恐れのある入倉・三宅式とは別の式を使って計算することを求めた.原子力規制委員会は原子力規制庁の職員(おそらく地震学の専門的知識を有しない)に武村式を使って計算させたが,常識的な数値とは異なる結果が出たという.そして,島崎氏の提起した入倉・三宅式の過小評価問題に対して,専門家の間でも決着がついていないという理由を挙げて,今後とも,過小評価があることを承知のうえで入倉・三宅式を使って地震モーメントを予測し地震動の計算を行うということにしたという(7月27日,第23回会議).
 ここに原子力規制委員会の無責任な特質が現れている.まず,武村式を使っての計算で異常な数値が出てきたのであれば,少なくとも,この分野の専門家に計算についての検証を依頼すべきであるが,それをしていない.原子力規制委員会の中には地震学の専門家はいないのである.また,西日本に多い断層では過小評価になることが明らかな入倉・三宅式を使って地震の揺れの予測を行うということは,原子力規制委員会がより安全の側に立って地震の揺れを予測しようという考えがないということである.玄海原発では620ガルという低い基準地震動のもとで,ともかく再稼働を進めようという姿勢としか思えない.

9月例会 パブリックコメントの為の基準地震動問題調査報告

9月例会


日時:2016年9月24日(土)14:00〜16:30
内容:(1)玄海原発3, 4号炉のパブリックコメントの為の基準地震動問題調査
      報告:中西氏 レジュメ
   (2)西尾正道氏の九州講演について
      報告:佐藤氏

<報告>

はじめに中西氏より「玄海原発3, 4号炉のパブリックコメントの為の基準地振動問題調査報告」と題して,報告いただいた.氏の問題意識は,2014年9月まで規制委の委員長代理をしていた島崎邦彦氏(地震学)が「原発が大地震に見舞われた場合の実際の揺れは現在の基準地震動(想定される最大の揺れ)を上回る可能性が高い」と明らかにしたのに対して,規制委の田中俊一委員長の対応に納得できない点であったという.この問題を調べていくうちに2つの大切なことに気付いたという.一つは,地震学と地質学の違いであった.地震学は,地震の発生機構とそれに伴う諸現象を解明する学問であり,地面より下の地層・岩石を研究する地質学とは異なる.原発の基準地震動に深く関わるのはもちろん地震学である.島崎氏の専門は,地震学であるが,島崎氏と入れ替わって規制委委員となった石渡明氏の専門は地質学である.現在,規制委には地震学についての専門家がいないという異常な状況であるという.

 もう一つは,玄海原発は敷地周辺に活断層が少ないので大地震には比較的安全であると思われてきたが,日本では,地表に活断層が現れていない大地震が頻発しており,玄海原発は決して大地震に安全であるといえる訳ではないということである.その意味で専門家は,「震源を特定せずに策定する地震動」の策定を重視するようになってきているという.「震源を特定せずに策定する地震動」は,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に策定するという.そして,2008年の岩手・宮城内陸地震(マグニチュード6.9)や2000年の鳥取県西部地震(マグニチュード6.6)などの16の地震だけが対象になっているようである.

 「原発なくそう!九州玄海訴訟」においても玄海原発3, 4号炉の基準地震動の問題が,九州電力の方から持ち出され,この訴訟の重要な争点になってきている.この問題についての正確な理解がますます重要になってきている.次の10月例会でもこの問題について解説いただくことになっている.

 次に,佐藤氏により西尾正道氏(医師,北海道)による「内部被ばく・低線量被ばく・放射線治療について」の講演会についての報告があった.講演会は,福岡市(7月22日),北九州市(7月23日)および鹿児島市(7月24日)で行われ,それぞれ,50名,150名,150名の参加があったという.

8月例会 原子力規制委員会「新規制基準の考え方」

8月例会



原子力規制委員会は,行政訴訟に対応するため原発の新規制基準に関して内容や
根拠となる考え方について解説した資料「実用発電用原子炉に係る新規制基準の
考え方について」を作成し,さる6月29日に発表しました.
以下の核問題研究会においてこの「新規制基準の考え方」の内容を紹介するとと
もに,批判的に検討したいと思います.興味のある方はご出席ください.


日時:2016年8月27日(土)14:00〜16:30
場所:九州大学筑紫キャンパス総合研究棟5階511室
内容:原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」
   なお,原子力規制委員会のその文章は以下からなっています.

第一部(pp.1-49)
発表資料(岡本
○原子力規制委員会の専門技術的裁量と安全性に対する考え方(1項目)
○設置許可基準規則等の策定経緯(1項目)
○国際原子力機関の安全基準と我が国の規制基準の関係(1項目)
○深層防護の考え方(1項目)
○深層防護の考え方 避難計画(2項目)
○共通要因に起因する設備の故障を防止する考え方(4項目)
第二部(pp.50-85)
発表資料(北岡)
○重大事故等対処施設(8項目)
第三部(pp.86-111)
発表資料(三好)
○電源確保対策(3項目)
○使用済燃料の貯蔵施設(4項目)

<報告>
 原子力規制委員会が行政訴訟に対応するため原発の新規制基準に関して内容や根拠となる考え方について解説した「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(2016.6.29)の内容を紹介するとともに,批判的に検討した.この文章は,以下の項目について規制委の見解を述べている.第一部を岡本氏が,第二部を北岡氏が,第三部を三好が報告した.

 まず,規制委の専門技術的能力の自己評価は主観的であって具体的内容の呈示はなく,「『絶対的な安全性』というものは、達成することも要求することもできない」として,一般の技術システムとは異なる原発システムの異質性(①莫大な放射能を内蔵するという巨大な潜在的危険性,②過酷事故が起きたら時間的、空間的に限定することが不可能であることなど)をまったく無視している.また,「IAEA安全基準が既存の施設に適用されるか否かも個々の加盟国の決定事項であるとされている」として,日本の既存の原発にはIAEAの安全基準を適用しないと弁解している.深層防護の第4の防護レベル(過酷事故の影響緩和など)に関して,「早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できることを要求するものである」としている.この文章は明確には表現していないが,「実質的に排除できる」ものは第4の防護レベルであろう.第1から第3の防護レベルをしっかりすることで,第4の防護レベルを十分にしないでもよいということを意味している.このことは,我が国の原子力規制法の第1条(目的)には事故発生防止は記されているが,重大事故(過酷事故)が発生した場合の影響緩和が明記されていないことと符合する.

 重大事故対処設備の要求事項として,炉心の損傷に際して,格納容器の急激な温度・圧力の上昇や溶融炉心・コンクリート反応(MCCI),水素爆発等については記述されているが,水蒸気爆発や一酸化炭素(CO)爆発につては(これらの危険性については,今の段階では未解明であり,特別な配慮が必要であるにもかかわらず),軽視ないし無視されている.また,「想定する事故シーケンスグループの重畳を検討する必要はあるか」との問いに対して,「重畳する様な事故の発生頻度は低いと考えられ,仮に重畳したとしても,それぞれの防止対策を柔軟に活用することができる」と極めて単純で楽観的な見通しである.

 外部電源系を,異常発生防止系(PS)として安全重要度の最も低いPS-3クラスに分類し,さらに耐震設計上の重要度おいても最も低いCクラスに分類しているのを,「事故発生時は,外部電源系による電力供給は期待すべきではない」ので合理的であると居直っているが,外部電源の喪失が福島原発事故の一要因であったことを考えれば,疑問が残る「考え方」ではないだろうか.また,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的な「考え方」といえる.より安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述はまったくない.

 結論的にいえば,新規制基準は3.11以前の基準に比較すれば原発の潜在的危険性を直視している面もあるが,過酷事故や破壊行為による影響を緩和できず、大量の放射能を環境中に放出する危険性を容認する甘い基準と言えるのではないか.

7月例会 電力会社による最近の格納容器補強工事

7月例会


日時:2016年7月23日(土)14:00〜16:30
内容:電力会社による最近の格納容器補強工事について
   ー玄海原発の格納容器補強工事計画と新潟原発の格納容器補強工事終了が示した新しい過酷事故対策問題ー

   報告:中西氏 
レジュメ

<報告>

7月例会において,中西氏より電力会社が最近行なっている自主的な新しい過酷事故対策についての報告があった.例えば,東京電力は,柏崎刈羽原発7号機(沸騰水型)の圧力容器直下の格納容器内に溶融炉心(コリウム)の流入を防ぐためのコリウムシールド工事を本年5 月27 日までに完了したと発表した.このコリウムシールド壁には融点2715℃のジルコニア煉瓦が使用されているという.溶融炉心がMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により薄いコンクリート底面(厚さ20 cmしかない)を溶かし格納容器境界を突き破り大量の放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があり,これを防ぐことを目的としている.

また,九州電力も過酷事故時に溶融炉心の格納容器外への漏洩を防ぐことを目的にして,玄海原発3,4号機(加圧水型)の格納容器のキャビティ側壁に高さ1.2 m,厚さ30 cm のコンクリート壁を増設する補強工事を行なうことを申請している.この補強はキャビティ側壁には6.4 mm の鋼板がむき出しになっており,流れ込んだ大量の溶融炉心により鋼板が損傷して放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があるからである.ただ中西氏によれば,九州電力が予定しているのは融点が1200℃のコンクリートであるという.これで2600℃以上にもなると想定される溶融炉心に耐えられるかは疑問である.

これらの電力会社の過酷事故対策は,現在の原発には過酷事故に耐えられない欠陥があることを自ら認めたことになる一方で,比較的安価に実行できる対策の一つのみを行い,安全対策を行なっているというポーズをとる意図が見え隠れしている.なお,九州電力はメルトダウンした溶融炉心を水張りした格納容器で受け止める対策を基本としているが,その水量が多い時には水蒸気爆発の危険が高く,少ない時にはMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により多量の水素ガスや一酸化炭素を発生しながらコンクリートが浸食される危険がある.九州電力は,これらの水蒸気爆発やMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)については複雑で「現状では知見が十分あるとはいえない」と認めている.この分野の研究者の中では,高温の溶融炉心が大量の水と接触すれば確率1で,つまり,必ず水蒸気爆発が起こるということが国際的合意となっている.水を張った格納容器で溶融炉心を受け止めるという原子力規制委員会が認めた対策は,明らかにこの国際的合意を無視あるいは軽んじている.このような不十分な知識の中でさらに,一部の安価な過酷事故対策のみで玄海原発の再稼働を急ぐのは冷静に見て危険ではないか.

6月例会 六ヶ所村の白血病&川内原発行政訴訟

6月例会


日時:2016年6月25日(土)14:00〜16:30
内容:(1)
六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連
      報告:森永氏 レジュメ
   (2)川内原発の行政訴訟について
      報告:三好氏 
発表資料

<報告>

6月例会において,はじめに森永氏より六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連に関して実証データに基づく報告があった.六ヶ所村の核燃料再処理工場は,2006 年から実際の使用済み核燃料を用いた運転による施設の調整(いわゆる「アクティブ試験」)を行っている.アクティブ試験が終了すれば本格運転となるが,さまざまな理由からアクティブ試験終了は延期に次ぐ延期となって,2009年終了予定が現時点では2018年終了となっている.このアクティブ試験中にも核燃料再処理で出るトリチウムは海洋に垂れ流される.2006, 2007, 2008年の3年間で海洋に垂れ流されたトリチウムの量は,それぞれ,490, 1300, 360テラベクレルと大量である(加圧水型で比較的トリチウム放出の多い玄海原発でも年間放出量は100 テラベクレル以下の程度).核燃料再処理施設から放出される放射性物質のほとんどはトリチウムであるという.英国のセラフィールド再処理工場からの距離が離れるにしたがって白血病発症の危険度が低下することがM.Gardner らの研究で確かめられている.また,トリチウム放出量が六ヶ所村再処理工場より少ない玄海原発周辺でも稼働後に白血病死亡率が増加していることが確かめられている.六ヶ所村ではトリチウム大量放出後に白血病死亡率が増加傾向であることが実証データにより確かめられたという.

次に三好が,原告33名で6月10日に福岡地裁に提訴された川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟について報告を行った.三好本人も原告になっているこの行政訴訟は,原子力規制委員会が許可した川内原発1号炉及び2号炉に対する設置変更許可を取り消すことを請求している.弁護団の共同代表は,河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士である.訴訟までの経過は以下のとおりである.
①原子力規制委員会は,九電の川内原発の設置変更申請について許可した(2014年9月10日)
②原告らは,原子力規制委員会に対し,前記①の設置変更許可に対し,行政不服審査法による異議申立てを行った(2014年11月7日)
③原子力規制委員会は,前記②の異議申立てを棄却する旨の決定を行った(2015年12月11日).
④本件設置変更許可は,設置許可基準規則6条1項などに違反し違法であり,訴訟をおこした(2016年6月10日).

本年4月6日に福岡高裁宮崎支部は「川内原発1, 2 号機の運転差止めを求める仮処分」にたいして抗告棄却の(差止めを認めない)決定を出した.しかし,この決定の中には,火山ガイドは噴火予測が可能であることを前提としている点において不合理であること,過去に火砕物密度流が到達した原発は原則として立地不適であること,5つのカルデラ火山が破局的噴火を起こす可能性が十分低いとした判断過程が不合理であること,姶良カルデラが近いうちに噴火する可能性がありそれが破局的噴火に発展する可能性が否定できないことなど,正当な認識が含まれている.これらの正当な認識にも係わらず,この裁判が民事であったことから「リスクはあるが社会通念上無視しうる程度の危険である」という不当な理由で差止めが認められなかった.弁護団は,川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟であれば,裁判所は同じレトリックは使えないはずであるとして,論点を火山の問題に絞り,早期の勝訴判決をめざすとしている.

5月例会 松山集会&IAEA深層防護第5層

5月例会


日時:2016年5月21日(土)14:00〜16:30
内容:(1)
再稼働阻止ネット主催「全国相談会」@松山の報告
      報告:豊島耕一氏 
レジュメ
   (2)
IAEA深層防護の第5層について
      報告:中西正之氏 
レジュメ

<報告>

5月例会において,はじめに,4月23-24日に四国・松山で行われた再稼働阻止全国ネットワーク「全国相談会」の様子を豊島氏より報告をいただいた.2日間の参加者は100名程度で,「原発現地」など17グループからの報告があり,討論時間は8時間半におよんだという.伊方原発の伊方町では,「50km圏内住民有志の会」によるはがきアンケートを昨年9月に実施(回収率36%)し,再稼働反対が52.3%であったとのこと.全国一斉の共同行動が呼びかけられた.「中央構造線に火がついた!! 川内原発止めろ! 伊方原発動かすな!」の全国共同行動を毎月11日前後に行う.23日の午後に行われた集会デモでは,2800人の参加(主催者発表)があったという.

次に中西氏より「IAEA深層防護の第5層について」の報告をいただいた.IAEA深層防護の第5層は,過酷事故発生時の住民の避難計画だけでなく,原発内で働く作業者や消防士,警官などの救援者の被ばく防止,放射能汚染した食物の処置,被ばくした人の医療処置などについても詳細に検討されている.しかし,原子力規制委員会が策定した「原子力災害対策指針」は,4月例会での吉岡氏の指摘にもあるように,最悪の事態が重なった場合の防災計画がないなど全体として不十分なものである.したがって,この「原子力災害対策指針」を参考にして作成された佐賀県の「地域防災計画,原子力災害対策」は,ほとんど実効性のある防災対策とはなっていないという.

4月例会「非常事態のもとでの原子力防災体制」

4月例会


日時:2016年4月23日(土)14:00〜16:30
内容:非常事態のもとでの原子力防災体制 
発表スライド
報告者:吉岡 斉氏(九州大学教授,原子力市民委員会座長)

<報告>

4月例会において,吉岡氏から「非常事態のもとでの原子力防災体制」についての以下のような内容で詳細な報告を受けた.
 1. 日本の原子力安全規制行政の歴史と現在
 2. 原子力安全規制改革の要点
 3. 原子力危機管理の考え方
 4. 福島事故における原子力危機管理の失敗
 5. 原子力危機管理体制は再構築されたか
 6. 放射能の拡散予測とモニタリング
 7. 武力攻撃・破壊工作対策
福島原発事故で期待された機能を果さなかった3つの組織系統レベル(政府中枢,オンサイト,オフサイト)の危機管理体制は,その反省をふまえて3つの組織系統レベルでさまざまの改善策が導入されたが,本質的な改善になっていない.例えば,オンサイトレベルでは,過酷事故対策の設備・機器が増強されが,破壊工作とに対しては全く無力であり,放射能の大量放出を防ぐ最後の壁が破れるか,その瀬戸際に至った場合の危機管理体制についても配慮されていない.また,オフサイトレベルでは,国家レベルでの防災・避難計画がなく,輸送手段の崩壊など最悪の事態が重なった場合の防災計画がないことは重大な問題であるという.
福島原発事故では,放射線モニタリングシステムが崩壊した.ほとんどのモニタリングポストは使用不能となり,SPEEDIと一体的に運用すべき緊急時対策支援システムERSSが使えなくなった.SPEEDIは使用可能であったが,その活用についての行政上のルールが未整備のために有効には使われなかった.原発再稼働に際しては,これらの教訓を踏まえて,放射線モニタリングシステムの事故・災害に対する抵抗力の抜本的強化が必要であるという.

3月例会 大津判決&玄海原発再稼働問題

3月例会


日時:2016年3月26日(土)14:00〜16:30
内容:(1)大津判決の内容について 
レジュメ 判決要旨
   報告者:伊佐智子氏(久留米大学講師)
   (2)玄海原発の再稼働を阻止するために レジュメ
   報告者:中西正志氏(元燃焼炉設計技術者)

<報告>

(1)大津判決の内容について
伊佐智子氏に,3月9日に大津地裁において出された高浜原発3, 4号機についての再稼働禁止仮処分決定の内容を報告いただいた.大津地裁は,高浜原発のある福井県の隣県の地裁である.その決定内容は,「1.債務者(関西電力)は高浜原発3, 4号機を運転してはならない.2.申立費用は,債務者の負担とする」というものである.裁判は,①主張立証責任の所在,②過酷事故対策,③耐震性能,④津波に対する安全性能,⑤テロ対策,⑥避難計画などに対して争われた.主要な点での判決内容を以下に示しておく.
①主張立証責任の所在について,決定では,最終的な主張立証責任は債権者(住民側)にあるが,原子炉施設の安全性に関する資料をすべて保持している債務者(関西電力)は,自ら依拠した根拠や資料を明らかにすべきで,その点についての主張・疎明(裁判用語,説明のこと)が十分になされないのであれば,その判断に不合理な点があると推論せざるを得ないとしている.また,原子力規制委員会の設置許可は,十分な検討をした主張・疎明にはならないとしている.
②過酷事故対策について,決定はまず,甚大な災禍をもたらした福島原発事故は原発の危険性を具現化したものであり,原因究明も進んでいないとし,明確になったのは,津波対策が不十分だったことのみで,他の対策がすべて検討されたか不明であるとしている.その上で,過酷事故発生に備え,一定の安全対策はあるが,その備えで十分とはいえない,相当の根拠・資料に基づいた疎明がなされていないとしている.
④津波に対する安全性能については,1586年の天正地震により大津波が押し寄せたとの記載があり,津波堆積物調査やボーリング調査の結果で,大規模な津波が発生したと考えられないと言っていいか,疑問なしとしないとしている.⑤テロ対策については,第三者の不法侵入などについての安全対策は必要であるが,大規模テロ攻撃への対応策は国によって対応されるべきものとしている.
本事案の今後予想される司法手続きは,関西電力が異議申し立てをすれば大津地裁で異議審となり,その判決のあと敗者が抗告すればさらに大阪高裁での抗告審での裁判ということになるということである.
今回の大津判決の意義は,決して小さいものではない.これまで私たちは再稼働させないためにどう運動するかという観点でものを考えてきたよう思うが,それがすべてではないということが明らかになったということである.運転差し止め仮処分決定で再稼働されてからでも仮処分を勝ち取ることができる可能性があるということが分かったということである.さらに言えば,玄海原発の佐賀県の隣県である福岡県民であってもそのような差し止め訴訟を福岡地裁に提訴することができるということである.もちろん,長崎県民でも熊本県民でも可能です.電力会社は,そのようなすべての裁判に全勝しなければ運転を続けることはできないということである.

(2)玄海原発の再稼働を阻止するために
次に,中西正之氏に玄海原発の再稼働を阻止するための戦略戦術についての報告をしていただいた.国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方を正確に理解することが大切である.深層防護は,次の5つの層からなる.
第一層:異常運転および故障の防止
第二層:異常運転の制御および故障の検出
第三層:設計基準内の事故の制御
第四層:事故進展の防止およびシビアアクシデントの影響緩和策
第五層:放射性物質の放出による放射線影響の緩和
この5つの各層の防護は,それぞれが独立して効力を発揮することが深層防護の基本である.例えば,第三層までの防護があるからといって,第四層の防護が十分でなくてよいということにはならない.同様に,第四層までの防護があるからといって,避難計画を含む第五層の防護を考えなくてよいということにはならない.しかし,日本の原子力規制委員会が策定した新規制基準には第四層の対策が不十分にしか対策されていない.また,第五層は,はじめから考慮されていない.このような点を正確にたくさんの市民に講演会や公開討論会などで伝えていくことが大切である.さらに,関係する地方自治体の議会や首長などへの積極的な要請活動なども重要であろう.

2月例会「いわゆる増田論文問題について」

2月例会


日時:2016年2月20日(土)14:00〜16:00
内容:いわゆる「増田論文問題」について 
レジュメ 報告パワーポイント
報告者:三好永作

<報告>

 2月例会では,いわゆる「増田論文問題」について三好が報告した.「増田論文問題」とは,『日本の科学者』2015年10月号pp.38-41に掲載された「福島原発事故による放射性ヨウ素の拡散と小児甲状腺がんとの関連性,およびその危険性」と題した増田善信氏の論文が自分たちの著書『放射線被曝の理科・社会』を批判する目的で書かれたものであると判断した清水修二・野口邦和・児玉一八の3氏が「放射線被曝の影響評価は科学的な手法で 甲状腺がんをめぐる増田善信氏の論稿について」という論文を『日本の科学者』に投稿したが,編集委員会により掲載を見送るという決定を受けたため起きている,JSA内外の一連の動きである.
 3氏は,この措置を非民主的であるとしてJSAを退会届けを提出し,そのうち一人は東京支部で届けが受理された.この問題に関連して他のJSA会員の一人も退会を表明していると聞く.
 これら2つの論文(以下、掲載されなかった清水・野口・児玉論稿も論文と呼ぶ)を読み冷静に問題点を検討してみた.検討の結果を結論的に言えば以下の3点にまとめられる.①清水・野口・児玉論文は,「増田論文のターゲットは『放射線被曝の理科・社会』を批判すること」という妄想のもとで書かれたものである.増田論文のターゲットは県民健康調査検討委員会の「中間とりまとめ」である.②清水・野口・児玉論文では,「放射線被ばくの影響評価は科学的な手法で」というタイトルにもかかわらず,科学的ではない主張や枝葉末節での「批判」が展開されている.③『日本の科学者』編集委員会が清水・野口・児玉論文を掲載を見送るという決定をしたのは妥当である.

1月例会「原発と地震・火山」

1月例会


日時:2016年1月12日(土)14:00〜16:30
講師:山崎文人氏(元名古屋大学地震火山研究センター)
講演:「原発と地震・火山 地球科学的時間スケールと日常的時間スケール」

<報告>

 1月例会において,山崎文人氏に「原発と地震・火山 地球科学的時間スケールと日常的時間スケール」というタイトルで講演頂いた.まず,山崎氏は,原発の設計・審査は地震学の新しい知見が反映されておらず,原発は地震学の古い知識で運転していると警告した.1966年11月の福島第一原発1号炉の審査では,「この地域は地震が少ない地域である」とされていた.1950年代は地震の静閑期であった.地球科学は,ウィルソンによるプレートテクトニクス(1965年)など1960年代に大きく発展したという.地震学者の率直な思いは「活発な地殻変動帯である日本になぜ原発を作るのか」ということだと言われた.
 九州の火山の噴火は予知できるのか? という問いに対して,噴火の予知に繋がるデータを持ち合わせていないのが現実だと言う.
 高レベル放射性廃棄物の「地層処分」に関して,昨年5月に国が候補地を選定することを閣議決定したが,地下300m以深に多重バリアを築くという「地層処分」は未確立の技術であり,しかも,活発な地殻変動帯である日本において長期にわたり安定な埋設場所に関する学問的根拠はないと明言した.

 講演の後,参加された人よりメールで以下のような質問があり、それに対して山崎氏は大変丁寧な回答を寄せられましたので,ここに質問者と回答者の承諾のもとに紹介します.
質問:昨日聞き忘れたことですが,群馬大学の早川由紀夫教授(火山学)という方が,震災直後からツイッターを駆使して,大衆にアプローチされています.国会質問で採用された,最初の汚染地図を公表された方です.仕事中も,ツイッターに熱心で,どうしてこういう時間がおありなのかと疑問を禁じ得ませんでした.一部の東大教授も実は同様の行動を取られておりました.多くは「原発大丈夫,再稼働しないと未来はない」という発言を繰り返しておられたように思います.当初,早川教授は,原発事故による放射能汚染,避難の必要,そして福島の食べ物を食べるべきではない,という警告をされていました.その後,福島で子どもの甲状腺が多発すると,突然のように,主張を変えられ,「甲状腺癌の原因は,原発事故由来の放射能ではない.検査の精度が上がったための,スクリーニング効果だ」という主張をされております.
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-598.html#comment4402
http://togetter.com/li/581505
医師や医学者でない方が,「被曝影響ではない」との発言を繰り返されることに,不安を感じております.また,早川教授という方が,地震学会ではどのような位置づけであられるのか,もしご存じの先生がおられましたら,ぜひ,ご意見を賜れればありがたく存じます.

回答:土曜日のおしゃべりはあんなものでよかったのでしょうか.どのような方々が参加されておられるか,全く情報が無かったもので,戸惑っていたものでした.さて,早川由紀夫氏の件ですが,個人的には全く面識が無いもので責任を持ってお答えすることはできません.ネット上で多少フォローした範囲での感想を若干だけ記しておきます.見当違いがあるかもしれません.
①ネット論争について
ネット固有のぐちゃぐちゃなやり取りの世界がもろに出ているようで,私はそのような世界は避けて通ることにしています.ただ,研究者というのは(というか,正確には「研究者の中には」)多かれ少なかれ,こだわり屋で自分を過信するきらいがあって,自分の研究対象への科学性はしっかり貫かれていても,それと離れた日常においても実証性を忘れて自分の「科学性」が貫徹されていると思い込み,自分の判断に固執することがままあるのではないでしょうか.それが昂じると・・・・.彼は多分にそのようなきらいがあるように思います.
②「放射能拡散の図」と「甲状腺がんの原因」について
放射能がどのように拡散していったかを彼がいち早く公表したことに関しては(どのようなデータを取り扱ったか詳しくは知りませんが)彼の専門を生かした結果と思われますので,高く評価できると思います.甲状腺がんに関わる結論を彼がどの様な根拠をもとに結論づけたのか私には理解できません(←そこまでフォローできません.また,彼の専門とは直接には関係ないのではとも思います).ただ,私たちに「都合の良い」結果を出す研究者は「味方」,「不都合な」結果を出す研究者は「味方でない」と色分けするのは避けるべきでしょう.留意すべきは,それらの「結果」がどのような根拠とプロセスを経て出され,それが適切なのかどうかをしっかり見極めることだと思います.
③小児甲状腺がんの原因について
福島における20才以下の検査で甲状腺がんが多数見いだされたこと,2巡目の検査で前回異常なしとされた人からも見いだされた件について,その原因は「過剰診断」や「スクリーニング効果」であって,原発事故による被曝が原因ではないと発表されたことについて.その発表で,当事者は大変だなと思いつつ,なんで「被曝が原因ではない」と結論付けられのか,原発事故の影響がないと考えられる別の場所での同じレベルのスクリーニングをやって,その比較を行うのがイロハな常識だろうということです.スクリーニング効果で増加するのは当たり前で,それがどの程度で,全体を説明できるのか,あるいは説明できない部分が残るのかを調べて初めて結論付けることができるのであって,多少でも研究に携わったことのある人なら常識も常識です.まさかこの分野の「第一人者」というのは本当にこんなレベルなのだろうかと.
 ただし,一言.これについての論文の結論には「・・・・, our descriptive analysis suggests the possibility of overdiagnosis.」すなわち,「過剰診断の可能性を示唆している」と断定的ではない表現になっています.これが論文のスタイルだとは思いますが.この論文のタイトルは,
Quantification of the increase in thyroid cancer prevalence in Fukushima after the nuclear disaster in 2011—a potential over diagnosis?
というもので,
http://jjco.oxfordjournals.org/content/early/2016/01/10/jjco.hyv191.long
で見ることができます.
 因みに,これと全く逆の結論(原因は被曝によるもの)を出しているのが,
Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014.
という論文で,そのURLは,
http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Detection_by_Ultrasound_Among.99115.aspx#
で,その日本語抄が,下記URLに載っています.
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1984
さらにびっくりしたのは,この原発には関係ないという結論を出すにあたって,「内部被曝」を全く考慮外としていることです.私はてっきり考慮したうえでの結論であって,むしろ一体どうやって内部被曝のデータを得られたのかなと考えました.かなりに困難だからです.そうしたら,実は,内部被曝については良く判らないから最初から考慮外としていたと「堂々と」表明したとのことで,さすがに「え゛ー,嘘でしょ!」と.そうだとすれば「原発は関係ない」との結論を出しようがないはずです.こと甲状腺がんに関しては,内部被曝こそが「最重要参考人」だと考えるのが普通だからです.だいたいヨード液を飲めというのは放射性ヨードが甲状腺に集まって内部被曝をおこすのを防ぐためで,これまたイロハの問題です.最重要参考人のことは良く判らないからと除外しておいて,「原発は関係ない」という結論を出すのは論理的にも手続的にも全くの誤りです.以上,参考になりましたら.

12月例会「世界の原発産業と日本の原発産業」

12月例会


日時:2015年12月12日(土)14:00〜16:30
講師:中野洋一氏(九州国際大学)
講演:「世界の原発産業と日本の原発産業」

<報告>

 12月例会において,中野洋一氏(九州国際大学)に「世界の原発産業と日本の原発産業」というタイトルで講演をして頂いた.中野氏の専門は国際経済学である.核問題研究会で経済学者の話を聞くのははじめてである.氏によれば,石油危機の発生が,米国をはじめとした先進国における原発の本格的導入の契機となったという.
 1973年の第一次石油危機では,OPEC(石油輸出国機構)は原油価格を1バレルあたり3ドルから12ドルに跳ね上げ,1979年の第一次石油危機では36ドルにまで高騰させた.先進国が原発依存を急速に進めたのは,このようなOPECに対抗して,中東湾岸諸国の原油への依存を低下させるためであったという.そのために,原発は安全であり発電コストが低いというプロパガンダを大規模に展開した.その後,1979年のスリーマイル島の原発事故,1986年のチェルノブイリ原発事故により,市民の反発や電力自由化により初期投資の大きな原発は避けられ,米国やヨーロッパでは原発の新設は困難となる.
 しかし,日本ではこれらの事故にもかかわらず原発の新設が続いた.2005年,米国発の「原子力ルネサンス」により原発新設の波が発生し,2006年には東芝は米国のウェスチンハウス社を買収した.2009年に政権交代した民主党政府も自民党の原発推進政策を踏襲した.そのような中で2011年3月に福島原発事故が起きた.この原発事故にもかかわらず,安倍政権は原発輸出政策を強力に押し進めている.2013年には,トルコおよびUAEと二国間原子力協定を結び,2015年12月には,インドとの間で原子力協定の早期妥結で原則合意した.
 中野氏は,日本の原発輸出に関連する問題点として次の点をあげた.①インドでは原子力損害賠償法があり,そこには製造者責任が明記されている.インドは核不拡散条約の未加盟国であることも問題である.②日本は原発輸出促進のため「原子力損害の補完的な補償条約」(CSC)に加盟した.この条約には,「異常に巨大な天災地変」の免責事由が明記されているが,この免責事由は「改定パリ条約」や「改定ウィーン条約」では含まれていない.③米国のサンオノレフ原発の水漏れ事故に関連して,三菱重工業に巨額(約9300億円との見通し)の賠償請求がなされている.④日本の輸出原発の安全確認が形だけという問題もあるという.⑤原発メーカーの安倍政権への政治献金は倍増している.

学習講演会「玄海原発の再稼働の是非を問う」

学習講演会のご案内
「玄海原発の再稼働の是非を問う」

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これまでの川内原発,高浜原発および伊方原発の再稼働に向けた原子力規制委員会(規制委)の安全基準審査は,原発事故からの安全性を担保するものではなく,再稼働へのお墨付きを与えるためのものであることが明白になっています.
川内原発の1,2号機を再稼働させた九州電力は,次には玄海原発3,4号機の来年度の再稼働に向けて準備を急いでいます.その再稼働についての規制委の審査は昨年12月を最後に開かれていませんが,九州電力はその審査に向けて社員の「玄海シフト」を進めているとの報道もあります.玄海原発で重大事故が起これば,場合によっては,福岡都市圏は重大な被害を被ることを覚悟しなければなりません.
下記のように玄海原発の再稼働に関わるさまざまな問題を学ぶための学習講演会を企画しました.多数の市民の参加を期待します.ただし,会場の制限により先着76名までとさせていただきます.



日 時:2015年11月14日(土)18:00~20:30
場 所:福岡市立中央市民センター 第一会議室(福岡市中央区赤坂2丁目5-8)
    地下鉄空港線「赤坂駅」2番出口より赤坂西交差点を左折(徒歩5分)
資料代: 500円
内 容:A講演
    (1)「世界最高水準の原子力規制基準ってほんと?」(20分)
レジュメ
      報告:岡本良治氏(九工大名誉教授)  
発表スライド
    (2)「水蒸気爆発及び水素爆発の危険性」(20分)     
レジュメ
      報告:中西正之氏(元燃焼炉設計技術者)
発表スライド
    (3)「佐賀県議会における奈良林参考人陳述への批判」(20分)
レジュメ
      報告:豊島耕一氏(佐賀大名誉教授)  
発表スライド
    (4)「玄海原発と白血病」(20分)            
レジュメ
      報告:森永 徹氏(元純真短期大学講師)発表スライド
    B休憩(10分)
    C質問と討論(60分)
主 催:福岡核問題研究会
問合先:三好永作(電話:092-522-8401,メール:eisaku.miyoshi@kyudai.jp)

<報告>

 夜にも拘わらず35名の参加があった.岡本氏は,「日本の原子力規制基準は起因事象の設定だけは厳しいが,その設定に対する評価が極端に甘く,世界一楽観的な進展シナリオに沿った,世界一奇妙な評価が行われている」と厳しい評価を下した.
 中西氏は,西欧やソ連/ロシアにおける過酷事故対策の基本は水蒸気爆発や水素爆発を回避するため水を使わない対策であり,溶融した核燃料を格納容器に貯めた水で冷却するという規制委員会推薦の対策は,危険であるとした.
 豊島氏は,佐賀県議会・特別委員会での奈良林直氏による放射線の人体への影響を軽視するなどの発言に対して批判を行った.
 最後に,森永氏は,佐賀県内の20自治体について玄海原発稼働前および稼働後の白血病死亡率と玄海原発から自治体までの距離の関連を調べ,玄海原発からの距離が小さい自治体ほど稼働後の白血病死亡率が高くなっていることを示した.様々な要因を検討した結果として,この白血病死亡率の増加は玄海原発から放出されるトリチウム以外には考えられないと結論した.
 休憩後,森永氏の講演に関連した質疑・討論を中心に,これらのデータをどのように再稼働に反対する運動に生かしていくかという議論も含めて活発な討論があった.
 「さよなら原発!佐賀連絡会」から,佐賀市において12月12日に同様な原発問題学習会を開催したいという提案があり,協力することになった.
 学習講演会について参加者に尋ねたアンケートの結果は以下の通りであった.
(1)あなたの性別を答えてください.
  a. 女性:27%   b. 男性:73%
(2)あなたの年代を選んでください.
  a. 20代:0% b. 30代:9% c. 40代:0% d. 50代;18% e. 60代:55% f. 70代以上:18%
(3)このシンポジウムを何で知りましたか.
  a. 友人・親族:27% b. ウェブサイト:9% d. メール:55% e. その他:9%
(4)この学習講演会の感想を次から選んでください.
  a. 大変有用であった:55% b. まあまあであった:18% 無回答:18%  難しかった:9%
(5)日本科学者会議の原発シンポジウムや講演会に出席されたことがありますか.
  a. 参加したことがある:55%    b. 今回が初めて:45%
(6)今後,講演会などで取り上げてほしいテーマは何ですか(複数選択可).
  a. 放射線被ばくの健康被害:55%    b. 福島第一原発の現状:45%
  c. 原子力発電への地震の影響:27%   d. 引き続き,玄海原発の再稼働問題:45%
  e. 原子力発電の廃炉問題:55%     f. 再生可能エネルギーの展望:45%
  g. 日本の原発輸出政策について:36%  h. 安保法制に関する問題:27%
(7)その他,ご自由にお書きください.
 ・重要な話を有難う御座いました
 ・九電,国との交渉内容とレベルが違いすぎる.学習会,研究会をたくさん行ってたくさんの人に知ってもらう以外に方法はないのかも知れません.
 ・原子力,核分裂等について素人なので専門的な話はなかなか理解が困難ですが,安倍晋三や菅義偉がいう「世界最高水準の安全性」がデタラメであることだけは理解できる.政府の原発政策を止めさせるような運動の理論武装となるような話を聞きたい.
 ・今回初参加です.ぜひ,次回も参加させていただきたい.
 ・自分には難しすぎてほとんどわからなかった.いただいた資料や研究会のHPをみて,少しでも理解できるようになりたい.科学者の先生たちが主催してくれた学習会なので,「科学」の話は「科学」の話として,また,「科学以外の部分」の話,たとえば,「政治とか行政」の話はそういうもんですよと分けて話してもらえて,そこはよくわかった(でも実際は,その理屈をそのまま押し通すことはできません).

Liebe KKW-KritikerInnen

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Liebe KKW-KritikerInnen,

Wir, Fukuoka-Kaku (Kern)-Mondai (Probleme)-Kenkyu (Untersuchung)-Kai (Gruppe), appelieren schon lange in Fukuoka/Japan an Gefaerlichkeiten und Sorgen uebers Kernkraft-Werk.

Jetzt plant die Japanische Regierung die Wieder-In-Betrieb-Setzung (Japanisch: Ssai-Kadou) von KKW Ssendai in Kyushu/Japan. Wir organisieren mit anderen Initiativen die Aktivitaeten dagegen und moechten heute Sie, KKW-KritikerInnen in der Welt, herzlichst um die Mitwirkungen bitten, uns zu helfen und Kritik gegen Ssai-Kadou an die Organisationen auf der naechsten Seite zu schicken.

Das Atomkraft-Regulierung-Komitee, die eigentlich fuer die Sicherheit der Bevoelkerungen von KKW-Problemen unabhaengig und wissenschaftlich urteilen soll, hat unter dem Druck der Atom-Kraft-Foererungsgruppen die Sicherheiten von KKW widerrechtlich und unrecht, d.h. ganz nachlaessig, geprueft und der Kyushu Elektrizitaetsgesellschaft (Kyuden) die Ssai-Kadou vom Ssendai KKW genehmigt. Sie hat der Kyuden die notwendigen Sicherheitmassnahmen, die nach der Regulierungnorm fuer die KKW-Sicherheiten unbedingt gefordert sind, nachgesehen und die Gueltigkeiten des Evakulierungsplans fuer die Bevoelkerung in der Naehe von demKKW bei der Super-GAU nicht untersucht.

Das Atomkraft-Regulierung-Komitee, dem BuergerInnen den Widerruf der Genehmigung der Ssai-Kadou und das Aufhoeren der Pruefungsmassnahme darboten hatten, hat bis jetzt keine Antwort gegeben. Das hoert nur die Stimmen der Regierung und Elektrizitaetsgesellschaften hat ganz und gar Forderungen der Bevoelkerungen vernachlsessigt.

Die Kyuden hat eben abgelegt, die Erklaerungsmeetings fuer die Bevoelkerungen in der Naehe von KKW zu veranstalten, die die Parlamente der Gemeinden um das KKW gefordert hatten.

Das Ministerium fuer Internationalen Handel und Industrie, das die Aufsicht ueber die Aktivitaeten von Kyuden fuehren soll, hat dafuer nichts getan, um die Kyuden sich demokratisch und freundlich fuer Leute um KKW verhalten und auf sich soziale Verantwortungen nehmen zu lassen.

Der Plan der Ssai-Kadou ist wissenschaftlich,und technisch nicht recht, sondern auch unmoralisch und unsittlich, weil wir nicht mehr nuklearen Rest als Altlast weiter uebriglasen sollen und wir wieder die Super-Gau, die groesser als Fukushima sein kann, haben koennten, wenn Ssendai KKW wieder in Betrieb gesetzt wird. Wir alle wissen, dass Voraussehen und Gegenmassregeln der natuerlichen Unfaelle und Geschehen, die Ungluecke des Reaktors mitbringen wuerden, allzu locker sind und Gegenmassregeln des Reaktors gegen Absturz der Maschine oder Terroristen ganz unausreichend sind und unter dem internationalen Niveaur liegen. Und weiter sind Vorraete fuer die Bedruefnisse des Alltagslebens und Trainierung der Zuflucht beim nuklearen Unfall allzu ungenuegend. Wir finden nicht, dass der Plaene ernst diskutiert worden sind, besonders der Plan bei zusammengesetzten Unfaellen aus natuerlichen Ungluecke und nuklearem Schaden, z.B. bei dem Erdbeben oder Vulkanausbruch und der Plan der Zuflucht der Bevoelkerungen.

Fehler, die die Super-GAU Fukushimas verursachtet haben, muessen nicht mehr wiederholt werden. Das Wichtigste, den natuerlichen und menschlichen Unfaellen zu steuern, ist das Sicherheitshalten und die Achtung der Moral bei allen technischen, politischen Faellen. Wir duerfen keinen oekonomischen Vorteil dem moralischen Standpunkt vorziehen. Wir muessen das System haben, das richtige Urteile und Verhalten bewahren und hoch schaetzen kann.

Die Japanische Nukleare Politik ist bis jetzt unter 3E-Begriffen gefoerdert: Energy Security, Economy und Environmental Conservation. Nach Fukushima ist der Begriff Safety hinzugefuet. Man sagt es “ 3E + S ”. Aber in Fukushima hat die Safety fast keinen Sinn. Vielmehr gibt es immer und ueberall Gefahren: in den Wasserspeichern fuer Bewahrung des Brennstoffs gibt es Moeglichkeiten der Brennung des Brennstoffs Zirkonium, radioaktive verschmuetziges Wasser fliesst jeden Tag in die Umwelt, niemand kennt die Umstaende der zusammenschmolzenen Brennstoffe und alle fuerchten deren Wieder-Kritikalitaet, die Situationen in Fukushima sind nie „under controll“, Fluechtlinge aus Fukushima zaehlen jetzt auch nach ueber 100,000 usw.,usw.

Die jetzige japanische Abe-Regierung hat kein Gewissen, so dass sie die japanische Reaktoren exportiern will. Warum laesst man richtige wissenschaftliche, technische Behauptungen mit Unrecht und Trug ausser Acht, uebersieht Umweltzerstoerungen und Leid des anders, sieht nur den kurzsichtigen Vorteil? Weil es dort die Moralitaet fehlt!

In Japan muss man an die Nukleare Politik vom Standpunkt der Ethik, d.h. mit “4E+S”, denken, wie in Deutschland, das sich mit dem ethischen Ausschuss fuer den Ausstieg von AKW entschlossen hat.

Ssendai KKW liegt in der gefaehrlichsten Gegend in der Naehe von einem Vulkan, der die Moeglichkeiten des grossen Ausbruchs hat. Wenn es Ausbrueche des Vulkans und damit die Auper-GAU vom KKW gibt, faellt die radioaktive vulkanische Asche in der Welt. Wie kann man der radioaktiven Aschen abwehren? Nieman kann sich gegen den Fall der radioaktiven Asche wehren. Die einfache und beste Loesung gegen die radioaktive Asche ist der Stopp des Betriebs vom KKW, d.h. das Aufhoeren des Plans von der Ssai-Kadou. Das ist ein echt ethischer Urteil von Jetzt.

Die jetztige Japanische Regierung unter dem Premierminister Abe will die Japanische Armee zum anderen Land schicken, was gegen die Japanische friedliche Verfassung ist. Wenn die japanische Armee wirklich nach aussen geschickt wird, vermehren sich Kraefte gegen Japan und Moeglichkeiten, dass sie japanische KKW attakieren wollen. Es gibt Leute, die meinen, dass man die nuklearen Ausruestungen haben muessen, wenn es Moeglichkeiten der nuklearen Attackierung gibt. Sie sind nicht recht.

Wir sollen auf die Kontrolle durch die Kraft versichten, weil sie das Ende der menschlichen Lebens auf der Erde fuehren koennten. Wir muessen sie mit der Kontrolle mit Gewissen und Vernunft wechseln. Damit die Menschheit, die immer Fehrer macht, immer egoistisch und boese mit andern ist, die friedliche Welt hat, in der alle Weltbuerger ruhig leben, ist das Verbot von Produktion, Aufbewahrung und Benutzung der Nuklearstoffe der einzige und rechte Weg. Weil die Nuklearestoffe allzu gefaehrlich sind und Menschheit unmoeglich ist, sie zu kontrollieren, was jeder schon ganz gut kennt.

Japan kann in der Welt die Hoffnung auf den Aufzicht darauf erwecken, wenn Japan, das Hiroshima, Nagasaki, und weiter Fukushima erfahren hat, bei diesem Verzicht die Leitung uebernommen haette. Trotzdem haben die japanische Regierung und die Kyuden leider schon offenbart, dass Ssendai KKW am 11. August in Ssai-Kadou setzt wird.

Wir bitten Sie darum herzlichst, dass Sie an die Organisationen auf der naechsten Seite Mail schreiben und die Ssai-Kadou vom Ssendai KKW kritisieren und den Atomausstieg in Japan apellieren.

Am 27. Juli 2015, Kern-Probleme-Untersuchung-Gruppe, Fukuoka/Japan.

Petition Against Restarting Sendai Nuclear Power Plant

Petition Against Restarting Sendai Nuclear Power Plant


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Fukuoka Study Group for Nuclear Issue
July 30, 2015


Restarting the Sendai Nuclear Power Plant (Sendai NPP) in Kyushu Island, Japan, under the current circumstances is a grave mistake, not only from the scientific and technical point of views, but also legally and institutionally. Ethically and morally it is bankrupt.
First of all, as the “negative legacy”, the amount of nuclear wastes should not be increased above the present level. Restarting the Sendai NPP would also lead to a nuclear catastrophe worse than that of the Fukushima nuclear accident. This is because the present assumptions about and the prepared countermeasures against expected disasters that would result in nuclear accidents are totally inadequate, and especially the countermeasures against severe accidents including aircraft collisions and terrorist strikes do not fill even the international standards. Preparations and drills for the nuclear disaster prevention and evacuation plans are alarmingly insufficient. In particular, responses to combined NPP accidents arisen from natural disasters such as volcanic eruptions and earthquakes and the evacuation plans for disaster-vulnerable people are far from satisfactory.
The Nuclear Regulation Authority (NRA) subservient to the logic of the nuclear proponents has approved the application of Kyushu Electric Power Company (KyEPCO) in an illegal and unjust manner. The NRA allowed grace periods even for the safety measures required under the regulatory standards and is reluctant to review the validity of the evacuation plan. Concerned citizens felt compelled to file a legal injunction against the NRA to have the restart approval rescinded and the review process suspended, but there has been no response to the injunction to this day. Ignoring the many council resolutions of the surrounding municipalities, KyEPCO has not held meetings to explain their position to local residents. The Ministry of Economy, Trade and Industry (METI), which should be supervising KyEPCO, has not issued orders for improvement of KyEPCO’s inappropriate business management, which shows abandoning its social responsibility and a bold disrespect for democratic civil society.
We must not repeat mistakes similar to the Fukushima nuclear disaster. In order to prevent accidents caused by human errors or natural disasters, we must respect ethical requirements in all situations with respect to technical and political judgments so that the safety will be the top priority over economic and other considerations. It is necessary for us to have a social mechanism in that fair and correct judgment, speech, and action will not be suppressed but will positively be evaluated.
As the goal of Japan’s energy policy, “3E”, standing for “Energy Security, Economy, and Environmental Conservation”, have been emphasized, but, after the Fukushima nuclear disaster, the goal should be “3E+S” by adding “Safety” to “3E”. At the Fukushima site, however, the danger of the spent -fuel pools (fires caused by the zirconium around the nuclear fuel) still exists, and the total mount of radioactive contaminated water continues to increase. The state of the molten nuclear fuel has not yet been ascertained and there is the fear of reaching the critical condition again. Thus, the overall situation is not yet far from being under secure control. The total number of the nuclear accident evacuees, including voluntary evacuees, is still well over 100,000, and these evacuees are not being properly taken care of.
Yet, the Abe administration and the nuclear power plant manufacturers are intending to restart Japan’s NPPs and export NPPs to other countries, a clear sign of their conscience paralyzed. Whenever certain scientific and technical problems are exposed in specific terms, they tend to react to the matter inappropriately. Especially if the nature of the issues turns out to be embarrassing for them, they may even try to deceive the public at large. They neglect the public safety and environmental damages for the sake of shortsighted profits and protecting their position. They have no ethical integrity.
Germany has decided to move toward the phaseout of NPPs in compliance to the conclusion of the ethics committee. Learning from Germany, it is very necessary for Japan to work out Japan’s energy policy in a framework of “4E+S” by adding one more E, meaning “Ethics”, to “3E+S”. It would be very difficult for Japanese people and the government to shake off inappropriate customs persisted up to the present and to reflect on their faults and weaknesses. But it is imperative to respect ethical rectitude and to make judgment that puts the safety to the top priority. The Sendai NPP has the risk of the world’s greatest volcanic activity in the region and major eruptions are also serious possibility. If a nuclear accident occurs by the impact of an eruption, there is the fear that volcanic ash heavily contaminated with radioactive substances will fall all over the world. Stopping the restart of NPPs is much a simpler and more feasible way than any countermeasures of disasters. This is also the judgment that pays due respect for the ethical aspect of the issue.
The Japanese government, even at the expense of violating the so-called peace constitution, is eager to recognize the right to collective self-defense and is advancing along the path to dispatch troops overseas. However, this will increase the number of powers that view Japan as an enemy and heighten the danger that NPPs might be attacked. What we need to do is a shift from a kind of control, relying on the nuclear power that would bring about the danger of human extinction, to the control based on conscience and rationality. Humanity is prone to makes mistakes and to harbor self-serving and evil intentions. We believe firmly that, in order to materialize a peaceful world where people can continue to live in security, the only path forward such world is precisely to ban manufacture, storage, and use of nuclear materials which are dangerous and hard-to-manage.
It will become the hope of the world that Japan, that has experienced Hiroshima, Nagasaki and Fukushima, will lead the way in implementing this ban. Verdicts to suspend the operation of the Ohi and Takahama NPPs have been handed down by the courts. On the other hand, in the trial demanding suspension of the restart of the Sendai NPP, the court rejected the suspension in an unjust decision. In the current situation, where the restart of the Sendai NPP may be forcibly implemented as early as sometime in August, the last potential hope that we have is the voices of citizens all over the world against the implementation. We request that you lobby the relevant organizations by referring to the materials and the list of contacts on the following pages.

References

Organizations Protest Approval of Sendai Nuclear Power Plant’s Conformation to Regulatory Standards
http://greenaction-japan.org/en/2014/07/joint-statement-protesting-nuclear-regulatory-authoritys-draft-approval-of-sendai-nuclear-power-plants-conformation-to-new-nuclear-regulatory-standards/

Greenpeace releases confidential IAEA Fukushima-Daiichi accident report
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/IAEA-Fukushima-Daiichi-accident-report/blog/53055/

Technical Issues of Japanese Seismic Evaluations from the Point of Global and Japanese Standards
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20150428-seismic-evaluation-en.pdf

Implications of Tephra (volcanic ash) Fall-out on the Operational Safety of the Sendai Nuclear Power Plant
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/Volcano_Ash_report_by_John_Large.pdf

The Application and Conformity of the Nuclear Regulation Authority’s New Safety Standards for Nuclear Power Plants with the International Atomic Energy Specific Safety Guide SSG-21, 2012
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/large_submission_Sendai_injunction_case.pdf

Public Comments for the Draft Report on Compliance of Sendai Nuclear Power Station with the New Regulatory Requirements Nuke Info Tokyo No. 162 
http://www.cnic.jp/english/?p=2951

Citizens’ Commission on Nuclear Energy http://www.ccnejapan.com/?page_id=1416

Ishibashi & Sato: Concerns over Restarting the Sendai Reactors
Katsuhiko Ishibashi: Seismologist, Emeritus professor, Kobe University / Satoshi Sato: Nuclear Engineer, Consultant & Former GE Engineer
http://historical.seismology.jp/ishibashi/archive/150427FCCJ,pc.png
https://www.youtube.com/watch?v=TkTorYkD3zI https://www.youtube.com/watch?v=3nV018TVMec
https://www.youtube.com/watch?v=4RH3fVIU5_M&feature=youtu.be&_yput=16557
http://historical.seismology.jp/ishibashi/archive/150427FCCJ,ishibashi.pdf

Japan Earthquake Expert Says Nuclear Watchdog Ignoring Risk
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-04-30/japan-earthquake-expert-says-nuclear-watchdog-ignoring-risk

Japanese Governor Ito ignores lessons of Fukushima to approve the Sendai reactor restarts
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/japanese-governor-ito-ignores-lessons-of-fuku/blog/51281/

Japanese regulator caves to the nuclear industry and government pressure – but still no restart for Sendai
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/Sendai-reactor-restart/blog/50534/


List of Contacts

Prime Minister of Japan and His Cabinet 
https://www.kantei.go.jp/foreign/forms/comment_ssl.html
(Information on contaminated water leakage at TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Station)
http://japan.kantei.go.jp/ongoingtopics/waterissues.html

KYUSHU ELECTRIC POWER CO. INC. 
http://www.kyuden.co.jp/en_index.html
http://www.kyuden.co.jp/library/image/img_book/ebook/sendai_gaiyou_ei/wysiweb_std_viewer.html
https://www.facebook.com/kyuden.jp

Nuclear Regulation Authority 
http://www.nsr.go.jp/english/index.html qainfo@nsr.go.jp

Ministry of Economy, Trade and Industry 
https://wwws.meti.go.jp/honsho/comment_form/comments_send.htm
(Status of Nuclear Power Stations) http://www.meti.go.jp/english/earthquake/nuclear/index.html

Kagoshima Prefecture Government 
http://www.pref.kagoshima.jp/foreign/english/index.html
(International Affairs Division) mzma@po.pref.kagoshima.jp

Satsumasendai City 
kokusai@city.satsumasendai.lg.jp koho@city.satsumasendai.lg.jp
https://www.facebook.com/SatsumasendaiCity

Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. (Manufacturer in Sendai nuclear power plant)
(Inquiry: Nuclear Power Generation) http://www.mhi-global.com/inquiry/inquiry_nuclear.html







川内原発が動く前に声をあげ行動しよう

川内原発が動く前に声をあげ行動しよう

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福岡核問題研究会
2015年7月25日


 現状での再稼働は科学的・技術的にはもちろん、法的にも制度的にも、さらには倫理的・道義的にも間違っています。まず、「負の遺産」としての核廃棄物をこれ以上増やすべきではありません。また、このまま川内原発を再稼働すれば、福島原発事故を上回る大災害を招く恐れがあります。それは、原発事故の原因となる災害や問題などの想定と対策が甘過ぎ、過酷事故対策や航空機の衝突・テロ対策などが国際基準にも満たないためです。原子力防災・避難計画の備えと訓練などが全く不十分だからです。特に、噴火・地震等による原発事故と天災の複合災害への対応や、災害弱者の避難計画などが問題です。
 原子力規制委員会は推進側の論理に負けて、違法で不当な審査で九州電力の申請を許可し、規制基準が必要とする安全対策にさえ猶予期間を与え避難計画の有効性は審査していません。やむを得ず市民が原子力規制委員会に許可取消しと審査手続き中止を法的に昨年申立てましたが、申立ての回答はいまだに放置されたままです。九州電力は多くの周辺自治体の議会決議を無視して住民説明会を開催しません。九州電力を監督すべき経済産業省は、民主社会を冒涜し社会的責任を放棄する不適切な事業運営の改善を命令していません。
 福島原発事故を招いた過ちを繰り返してはなりません。人災や自然災害などによる事故を防ぐためには、安全性を経済性などより優先するように、技術的・政治的判断などのあらゆる場面で倫理性を尊重しなければなりません。正しい判断と言動が立場を損ない潰される代わりに、守られ評価される仕組みが必要です。
 日本のエネルギー政策の目標は「3E」、つまり「エネルギー安全保障(Energy Security)」「経済性(Economy)」「環境適合性(Environmental Conservation)」を重視しましたが、福島原発事故の後に「安全性(Safety)」を入れて「3E+S」と言われています。しかし、福島では核燃料保管プール(核燃料のジルコニウム火災など)の危険性が残り、放射能汚染水は増え続けています。溶けた核燃料の状況は把握されておらず再臨界の恐れがあり、状況はコントロールされていません。自主避難者含め十数万人以上の原発避難者が救われていません。
 それでも安倍政権や原発メーカーなどが原発の稼働と輸出を企てているのは、良心がマヒしている証拠です。科学的・技術的に具体的な問題が指摘されても都合悪ければ不正やごまかしが横行し、目先の利益と立場を守るために他者の犠牲や環境破壊を見過ごす原因は倫理性の欠如です。
 よって、倫理委員会の結論で脱原発を決断したドイツに見倣い、日本でも倫理(Ethics)を加えて(4E+Sで)エネルギー政策を考える必要があります。これまでの悪しき慣習を断ち切り自らの欠点や弱さを反省し、倫理的な正しさを尊重し、安全性を優先して判断することは大変で難しいことです。川内原発は世界で一番の火山リスクがあり大噴火も想定されます。噴火の影響で原発事故が起きた場合、放射能まみれの火山灰が世界中に降り注ぐ恐れがあります。再稼働中止は、こうした災害に対処するよりは簡単で実現可能な道であり、倫理性を尊重する判断です。
 日本政府は平和憲法に違反してでも集団的自衛権を認めさせて、海外に派兵できる道を進めていますが、これは日本を敵視する勢力が増えて原発が攻撃される危険性を増します。核攻撃を防ぐために核武装すべきとの考えもありますが、人類絶滅の危険さえある可能性が高い力によるコントロールから、良心と理性に基づいたコントロールに転換すべきです。間違いを犯し利己的で悪意を抱いてしまう人類が、安心して住み続けられる平和な世界を実現するためには、危険で管理の難しい核物質の製造・保管・利用の禁止こそが唯一の正しい道であると考えます。
 ヒロシマ・ナガサキ・フクシマを経験した日本が、率先してこれを実行することが世界の希望になります。大飯・高浜原発では運転を差し止める判決が出ましたが、川内原発の再稼働中止を求めた裁判は不当な判断で否決されました。川内原発の再稼働が8月早々に強行されうる現状で、最後に期待できるのは国内外の市民の声です。次頁からの内容とリストを参考に、関係各所への働きかけをお願いします。



「川内原発の再稼働問題などに関する参考サイト」

・福岡核問題研究会
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/
・原子力市民委員会
http://www.ccnejapan.com/
・再稼働阻止全国ネットワーク
http://saikadososhinet.sakura.ne.jp/ss/
・川内原発に関する異議申立て
http://objection-to-nuclear-regulation.jimdo.com/
 1月21日意見陳述(録音)
http://1drv.ms/1zMSmOf
 5月26日意見陳述(録音)
http://1drv.ms/1dEn7e2
 保安規定の認可取消を求める異議申立書
http://1drv.ms/1HXU4Lq
・原子力規制を監視する市民の会
http://kiseikanshi.main.jp/
・原発なくそう!九州川内訴訟
http://no-sendaigenpatsu.a.la9.jp/
・国際環境NGOグリーンピース
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/53052/
・3.16 - さよなら原発!かごしまパレード
http://goodbyenukes-kagoshima.jimdo.com/
・原子力資料情報室
http://www.cnic.jp/
・さよなら原発!福岡
http://sayonaragenpatu.jimdo.com/


「再稼働中止を働きかけて頂きたい関係機関」

・首相官邸(ご意見・ご要望)
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html
・九州電力 092-761-3031 (原子力情報)
http://www.kyuden.co.jp/nuclear_index.html
 (お問い合わせ)
https://www1.kyuden.co.jp/php/inquires/index.php/form/input/104
・原子力規制委員会 (問い合わせ先)03-5114-2190
https://www.nsr.go.jp/ssl/contact/
・経済産業省(ご意見)
https://wwws.meti.go.jp/honsho/comment_form/comments_send.htm
 9月12日付_経済産業大臣から鹿児島県知事への再稼働要請文書(鹿児島県HP)
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/infra/energy/atomic/documents/42584_20141118140619-1.pdf
・鹿児島県(知事への便り)
http://www.pref.kagoshima.jp/chiji/tayori/tayori/index.html
 (知事公室広報課)099-286-2093 FAX: 099-286-2119 メール: kohoka@pref.kagoshima.lg.jp
 川内原子力発電所 再稼働について
http://www.pref.kagoshima.jp/infra/energy/atomic/index.html
・薩摩川内市(広聴広報グループ)0996-23-5111 FAX: 0996-20-5570 メール: koho@city.satsumasendai.lg.jp
http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/contents/1096868307578/index.html
 (原子力)
http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/genre/0000000000000/1209705472764/index.html
https://www.facebook.com/SatsumasendaiCity
・三菱重工(川内原発のメーカー)
http://www.mhi.co.jp/inquiry/inquiry_nuclear.html

7.25核問題研究会例会

7月25日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)2015年NPT会議について(報告:佐藤)
(2)福岡の断層と液状化問題(報告:森田)
(3)川内原発再稼働をめぐる状況について(報告:豊島,中西)
(4)川内原発再稼働に反対する声明文について(報告:北岡)

7.11核問題研究会例会

7月11日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)脱原発と動的エネルギーミックス(報告:岡本良治氏)
(2)エクセルギー(有効エネルギー)の有用性について(報告:岡本良治氏)


伊方原発審査書案についてのパブコメ関連情報

伊方原発審査書案へのパブリックコメント(パブコメ)の提出は,2015.6.19日に終了しました.この間に福岡核問題研究会会員から提出されたパブコメおよび書き上げたけれど提出にまでは至らなかったパブコメをここにアップロードします.

パブコメ12 (中西)  28E5   <イグナイタによる水素爆燃は危険>
             31E11  <フィルター付きベントの無い伊方原発3号炉は危険>
パブコメ3  (豊島)  19E289  <水素爆発および溶融炉心・コンクリート相互作用>
パブコメ4  (三好)  19E381  <水蒸気爆発が実機において発生する可能性>
パブコメ未提出(北岡)        <飛来物(航空機落下等)について>





福岡核問題研究会5/23

5月23日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)「水素エネルギー利用における技術的諸問題」(話題提供:森田)
(2)「2030年のエネルギーミックスについて」(話題提供:中西)

(1)について
水素エネルギー利用についてキーとなる燃料電池の動作温度は一般に高い.その中で30〜100℃と動作温度が比較的低い固体高分子形燃料電池(PEFC)は,自動車用などに使われている.しかし,自動車用燃料電池では1台あたり100g以上の白金(Pt)が必要といわれ,資源およびコストの面から問題となっている.燃料電池車で使われている水素貯蔵タンク内の圧力は通常350気圧であり,かなり高気圧である.400kmの連続運転を可能にするためには700気圧が必要となる.気圧が高くなれば,水素の漏れる量は多くなる.タンクからの水素の漏れは基本的には解決できていない.また,九州大学の水素ステーションは一度爆発しており,原因不明のまま研究は続けられているが,高圧水素貯蔵タンクの破裂の危険性もあるといわざるをえない.これらの問題の他にも,水素ステーションのインフラ整備の問題や水素自体の値段もガソリン並みに下がる見込みはなく,燃料電池自動車が市場に拡がるには多くの問題があるように思える.

(2)について
経産省は,4月28日,2030年度の電源構成目標について,原発依存度を20〜22%程度とする方針を示した.
原発        20〜22%
再生可能エネルギー 22〜24%
LNG          〜27%
石炭火力       〜26%
石油火力       3%
ほとんどの原発が停止していた2013年の実績が以下であることを考えると
原発         1%
再生可能エネルギー    11%
LNG          43%
石炭火力       30%
石油火力       15%
昨年の4月には「原発は可能な限り低減する」と言っていた安倍政権がはっきり原発回帰へのシナリオを発表したと言える(因みに福島事故前の2010年の原発依存度が28.6%であった).40年廃炉ルールを厳格に運用し,新増設や建て替えがない場合の2030年時点原発依存度は15%程度となるという試算がある.新増設がないのであれば,40年廃炉ルールの厳格運用を止める以外になく,原発の安全性についての検討が不十分にならないか.再生可能エネルギーについては,地熱1.0〜1.1%,バイオマス3.7〜4.6%,風力1.7%,太陽光7.0%,水力8.8〜9.2%となっており,特に風力の割合が低い.CO2排出の多い石炭火力の依存度がそれほど減少していないのも気になる.

中西氏の報告  
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異議申立「川内原発工事の認可取り消しを」

研究会メンバーの一人が中心となって原子力規制委員会に「川内原発工事の認可取り消しを」 という異議申し立てを行いました(2015.5.15)

この件について,西日本新聞経済電子版では以下のように報道しています.
◆◆◆◆◆(ここから引用)
九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する九州や首都圏の市民24人が15日、原子力規制委員会に対し、行政不服審査法に基づき川内1号機の工事計画認可の取り消しを求める異議申し立てをした。
申立書では「基準地震動を270ガルで設計した川内1号機が(新規制基準に対応した)620ガルを達成することは非常に困難」,「規制委は工事計画認可に関する全資料の公開を拒否している」などと審査の不備を指摘している。市民らは昨年11月、川内原発の原子炉設置変更許可についても異議申し立てを行った。
◆◆◆◆◆(ここまで引用)
http://qbiz.jp/article/62312/1/


異議申立書は以下の通り.
----------------------------------------------------------------------------------------

       異 議 申 立 書


2015年(平成27年)5月15日


原子力規制委員会 御中

異議申立人 総代
北 岡 逸 人
木 村 雅 英
鳥 原 良 子


行政不服審査法第6条の規定に基づき、次のとおり異議申立てを行う。

1 異議申立人の氏名及び年齢並びに住所
別紙参照

2 異議申立てに係る処分
川内原子力発電所第1号機の工事の計画の認可処分(平成27年3月18日。原規規発第1503181号)

3 異議申立てに係る処分があったことを知った年月日
2015年(平成27年)3月18日

4 異議申立ての趣旨
 「2記載の処分を取り消す。」との決定を求める。

5 異議申立ての理由

一 行政不服審査法に関する違法性

本件処分は「川内原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(1号及び2号発電用原子炉施設の変更)の許可処分(平成26年9月10日。原規規発第 1409102 号)」を前提になされたものである。しかし、この川内原発の設置変更許可処分は違法で不当な取消が求められる処分なので、当然に本件工事計画の処分は無効である。
実際、昨年11月7日に全国1,500名の異議申立人により前記設置変更許可処分の取消と執行停止が求められている(この時の異議申立書は昨年11月12日開催の第38回原子力規制委員会の配布資料で公開されている)。そして本年1月21日には、原子力規制庁の会議室にて口頭意見陳述会が開催され、全国15名の市民や専門家による意見陳述が約3時間行われた(この意見陳述会は異議申立人の意に反して非公開とされたが、右記サイトに当日の資料と意見陳述の録音などが公開されている http://sayonaragenpatu.jimdo.com/ )。
これら川内原発の設置変更許可の取消を求めた異議申立人による問題指摘の多くは、明確な法律違反を含む具体的かつ重大な内容である。かたや、原子力規制委員会は川内原発の審査を進めていながら、これら異議申立てにいまだに返答(決定書の作成と送付)をしていない。加えて、川内原発に関する審査手続きの執行停止は昨年12月18日に申立てられたが、既にそれからおよそ5か月が経過している。
この「執行停止」の申立ては行政不服審査法(第34条)の規定に基づいており、本法律は「執行停止の申立てがあつたときは、審査庁(原子力規制委員会)は、すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。」とある。そのため原子力規制委員会が5か月間も決定しないで放置していることは、本法律の「行政の適正な運営を確保することを目的とする」との趣旨に反しており違法である。

二 原子力規制委員会設置法と国会決議に関する違法性

加えて、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」とする)は「原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない」と規定している。しかし、原子力規制委員会は本件処分に係る非常に多くの重要資料を非公開としており違法である。
この設置法に関する国会決議は「原子力規制行政は、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として行うこと」を求めている。実態は、「メーカーの総合的エンジニアリング業務の成果だから」といった理由で、九電からの提出資料の多くの重要な箇所に「黒枠白抜き」マスキングをして非公開にしており、法律と同様の重みがある国会決議を無視している。
また、30年以上前に基準地震動270ガルで設計した川内原発1号機が新規制基準で設定された基準地震動620ガルを達成することは非常に困難なはずである。根本的な耐震補強工事をすることなく、強度計算も耐震計算も十分にせずに、基準地震動620ガルを達成したとは信じられない。このことについての説明責任を全く果たしていないばかりか、後述するように多くの問題点が明らかになった。これでは、設置法が目的とする「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全」を達成することができない。
本来、本件処分の前に工事計画の認可に関する全資料を公開した上で、パブリックコメントを実施、公聴会を開催し、川内原発の再稼働に批判的な方を含む専門家による充分な審議等が必要であった。

三 耐震性に重大な欠陥

原子力規制委員会が本件処分に係る情報の多くを非公開とする本当の理由は、公開すると川内原発が耐震性に欠けることなど重大な欠陥や問題の発覚を恐れているためと疑うに足る理由がある。
たとえば、1977年に270ガルで設計された余熱除去冷却器・ホウ酸注入タンク・原子炉補機冷却水冷却器などは安全上極めて重要な機器類に当たるにもかかわらず、独自に強度計算をしない。強度計算と耐震計算とを分離して評価し、九州電力によるコンピュータ計算のみで現地確認せずに評価する。30年を経た機器の経年劣化を考慮し現在の寸法などを確認するのではなく、設計値だけで評価してしまうなどの問題点がある。さらに、制御棒クラスタ挿入時間が規定以内である根拠が不明で、弾性範囲を大きく超えた機器があるのにその弾塑性解析方法も不明だ。特に安全注入設備配管(具体的に何処を指すのかは明らかにされていない)で、評価基準値の実に2.5倍もの応力が生ずる箇所があり、基準地震動以下でも破損の恐れがある。しかも緊急炉心冷却系統においてである。
加圧水型軽水炉に特有の蒸気発生器についても、一次系の冷却を継続するため、この二次側に注水して一次系の自然循環により冷却を継続するとしているが、一次側逆U字管内部に気体が滞留した場合は自然循環は成立しないが、との問いに対し規制庁は「その場合は一次側に注水する」と回答した。そもそも一次側に注水できなかったケースで自然循環でも一次側冷却が継続できるとの判断だったのに、それが成立しない場合は一次系の注水と、当初の前提を覆す答えでは、到底承認できない。
にもかかわらず、九州電力の工事計画の妥当性を原子力規制委員会は認めた。これは前記した国会決議の懸念する、根本的な耐震補強による莫大な経費負担と工事期間の長期化などを避けたい「推進側の論理」に影響された、「国民の安全の確保を第一として行う」ことの放棄である。

四 情報公開の拒否

これら工事計画の妥当性は、申請文書を広く一般に公開し、幅広く意見を聞くべきものである。ところが規制委員会は事業者による大規模な「黒枠白抜き」などのマスキングをした工事計画書を公表している。これでは第三者検証など不可能であり、ただ疑問が重なるのみであり、規制委員会による審査の妥当性も確認のしようがない内容になっている。
原子力規制委員会は、工事計画の認可に関する全資料の公開も、パブリックコメントも、公聴会開催も、川内原発の再稼働に批判的な方を含む専門家による充分な審議も拒否した。
再三にわたり、あるいは個別具体的に情報の公開を求めてきたにもかかわらず、規制委員会はこれを全て拒否した。このことをもっても工事計画の認可は妥当性に欠ける。

五 航空機事故や破壊行為の防止対策が不十分

また、設置法に「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」とあるのに、航空機などの衝突事故や原発施設の破壊行為等の防止を怠っている。国内の原発付近で起きている米軍機の墜落事故や、最近世界各地で起きている大型航空機の墜落事故ならびに航空機を使った破壊行為に対して、少なくとも安全上最重要な施設である原子炉格納容器の強度評価とそれに伴う火災対策を検討していないことは、発生した場合に対策の困難な事態に対する評価を怠っていることになり許されない。
福島第一原発事故から学んだことは、稀に起こることでも安全上重要な設備に対する対策は、自然現象、人為的事象に関わらず「想定外」として無視してはならないということである。
技術基準規則第44条(原子炉格納容器)の規定について、「本申請において原子炉格納容器貫通部を新たに設置しない設計としており、原子炉格納容器隔離弁の設置状況を変更しない設計としていることを確認したことから、第44条の規定に適合していると認める。」と構造上の変更がないから適合しているとの評価である。だが、航空機落下した場合の強度ならびに火災に対する評価を実施していないことは、欧州における基準に照らしても不十分であり、世界最高水準レベルとは程遠い緩い規制基準の適用である。事故の発生想定とその防止に最善かつ最大の努力をしていないことから設置法に反しており、第44条(原子炉格納容器)の規定に適合しているとは認められない。
また、最近はドイツ機墜落事故が操縦士による意図的行為により墜落したとの報道がなされているが、こうした内部関係者による意図的な墜落事故と思われる事故は、実は日本での「逆噴射」事故など世界中で何度も起きてきた。しかし、川内原発の審査において内部関係者等による破壊行為を想定して備えていない。

六 重大事故対策が不十分。むしろ事故を拡大することが懸念される

新規性基準の柱のひとつは、炉心溶融等が発生した後の重大事故対策である。福島第一原発事故では、水素の大量発生により格納容器から漏れた水素が、原子炉建屋内で爆発したことが事故の拡大につながった。福島第一原発は沸騰水型であり、格納容器外で水素爆発を起こしたが、運転時には格納容器内に窒素を封入し酸素がないので、格納容器内では水素爆発は極めて起こりにくい設計であった。それにも関わらず、設計上想定していなかった水素が配管または格納容器のフランジ部や電気配線貫通部等から大量に漏れて、窒素封入していない原子炉建屋内で爆発したことが事故の封じ込めを余計困難なものにした。それでも、格納容器内で水素爆発を起こさなかったことが不幸中の幸いであった。水素爆発対策は加圧水型の川内原発でも極めて重要である。
第67条(水素爆発による原子炉格納容器の破損を防止するための設備)では、水素爆発対策として触媒式水素結合装置を設置しているが、処理能力が極めて小さいため、炉心損傷事故時に発生する900kgオーダーの水素の処理にはあまりに非力である。さらに、水素燃焼装置(イグナイタ)は、機器の故障や復旧のタイミングによっては自爆装置になりかねない。したがって、福島事故の反省に立つなら、当てにならない水素対策装置に頼るのではなく、まず、格納容器内に窒素を封入し、その上で水素の漏えい経路に応じた対策を検討すべきである。
次に、第66条(原子炉格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備)は、冷却設備としての十分な性能を備えているとはいいがたい。格納容器内で配管破断等が起きた場合には、破断部の配管の保温材やジェットによる周囲の配管、ダクトその他機器類の損傷により様々な形状・材質の大小のゴミが流出することが考えられる。特に、格納容器スプレーから流れ落ちた水が、いくつかの細い流路を通って格納容器下部の原子炉キャビティに流れ込むとしているが、上記の保温材等のゴミが狭い流路を塞いでしまい、想定した時間内に格納容器下部に注水できるかどうかは極めて疑わしい。どのように「原子炉格納容器下部注水設備は多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図っている」と言えるのか? 流路閉塞についての評価を実施しないと、「溶融炉心を冷却するための設備」として機能が保証されていないことになる。
また、仮に溶融炉心が落下する前に、水張りが成功すると、水プールに大量の溶融炉心が落下することになり、水蒸気爆発のリスクを著しく高める。水蒸気爆発は、過去の研究から未解明の部分が大きく、その爆発規模の大きさや影響が不確定であるから、まずその発生を避けることが重要である。水蒸気爆発の発生に関する科学的知見を捻じ曲げて、水蒸気爆発が起きにくいとか、実機では試験とは条件が違うので水蒸気爆発を起こす環境にないなどと、長年懸念されてきた水蒸気爆発の科学的知見を無視することは原子力安全の根幹をないがしろにするに等しく許されることではない。これらの問題は、工事認可の問題というだけではなく、その基となる新規制基準の抜本的な大問題である。
以上、異議申立て理由の概略を記載したが、別紙参考資料と口頭意見陳述会で詳細に説明する。

6 口頭意見陳述会の開催
行政不服審査法第48条によって準用される同法第25条第1項の規定に基づいて、口頭意見陳述を求める。
この口頭意見陳述の実施において、本来原子力規制委員会が開催すべきであった公聴会に近づけるため、異議申立人以外にも公開し取材を許可することを求める(本年1月21日に開催された口頭意見陳述会では、異議申立人の要請にもかかわらず非公開とされ、異議申立人以外の傍聴や取材が拒否された)。

7 執行停止の申立て
 本件処分は上述のとおり違法で不当な行政処分であるため、本件異議申立てとともに、行政不服審査法第48条によって準用される同法第34条第2項の規定により、本件処分の執行停止を申し立てる。

8 処分庁の教示
「○不服申立てすることができる処分であるかどうかについて
 原子力規制委員会が行った川内原子力発電所第1号機の工事の計画の認可処分(平成27年3月18日。原規規発第1503181号)について、異議申立てをすることができる。
○不服申立てをすべき行政庁
 原子力規制委員会
○不服申立てをすることができる期間
 処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内(ただし、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内であっても、処分の日の翌日から起算して1年を経過すると、処分の異議申立てをすることができなくなる。)」との教示があった。

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