9月例会 核兵器禁止条約の意義と課題について

9月例会


日時:2016年9月2日(土)10:00〜12:30
内容:
核兵器禁止条約の意義と課題について 発表ファイル
報告:岡本良治氏

<報告>

岡本氏は,はじめに,核兵器禁止条約の意義と課題について以下のようにまとめられた.
(1)核兵器禁止条約は,軍事力による国家安全保障概念を実現する道具としての核兵器を全面的に禁止した歴史的快挙であり,核兵器の廃絶を直接に目指すわけではないが、非合法化する条約である.
(2)核兵器禁止条約は,国家安全保障概念の中心的戦略としての核抑止論を
人道的な見地から否定した.
(3)核抑止論の補完政策としての拡大核抑止論(=核の傘論)の有効性については実証的な裏付けは十分ではない.日米安保条約に核兵器使用は明記されてはいない.
(4)核抑止論のより深い理論的批判とともに現在の具体的な課題(北朝鮮による核ミサイル開発問題など)にも説得力のあるアプローチが必要である.

その上で以下の項目について詳細に報告された.
§1 はじめに
§2 核兵器禁止条約の意義と課題
§3 国家安全保障の中心政策としての「核抑止論」の系譜
§4 核の傘ー期待と幻想ー
§5 当面する課題-ミサイル攻撃・ミサイル防衛論の虚実ー

報告の詳細については上の発表ファイルを参照されたい.

7月例会 JAEA Research 2007-072報告書について

7月例会


日時:2016年7月22日(土)10:00〜12:30
内容:
JAEA Research 2007-072報告書について レジュメ
報告:中西正之氏

<報告>
 中西氏により,日本原子力開発機構(JAEA)の森山らによる報告書「軽水炉シビアアクシデント時の炉外水蒸気爆発により格納容器破損確率の評価」(JAEA-Research 2007-072)の紹介があった.JAEAの森山らは,開発した水蒸気爆発シミュレーションのためのJASMINEコードを使って沸騰水型原発(BWR)と加圧水型原発(PWR)の格納容器のメルトダウン発生時における格納容器破損確率の評価を行なっている.PWRについては,関西電力から格納容器構造に関するデータを提供してもらい,溶融貫通した炉心溶融物が原子炉下部キャビティに形成された水プールに落下し水蒸気爆発が発生するというシナリオを考えている.キャビティのコンクリート壁の外側への変異が壁厚の20%に達した時を損傷と設定している.PWRのキャビティ内水蒸気爆発について様々なシミュレーションを行い,平均的に6.8%の損傷確率があると報告している.水蒸気爆発に関して特に注意を要することは,直径数ミクロンから数十ミクロンの微粒子が生成され,わずかな気流によって運ばれるということである.この微粒子には溶融炉心のほぼ全ての成分があり,したがって放射能の高い核分裂生成物を含み,体内に取り込むと重大な内部被曝を起こすことになる.

6月例会 日本の原子力政策&SERENA-2プロジェクト

6月例会


日時:2016年6月17日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 日米原子力協定と日本の原子力政策の歴史的経緯(報告:伊佐智子氏)
    
発表ファイル
   (2) TROI 2007年論文とSERENA-2プロジェクト(報告:中西正之氏)
    
レジュメ

<報告>
 はじめに,伊佐氏は日本の原子力政策の歴史を理研・仁科研究室のGHQによるサイクロトロン没収・破壊命令から始め,24枚のパワーポイントファイルを使って包括的に語られた.1953年12月の国連でのアイゼンハワーの”atoms for peace”演説の後,1954年3月1日に第五福竜丸などがビキニ環礁で被ばくし,中曽根康弘氏らの提案によって同年3月4日に原子力関連予算が可決される.同年9月に第五福竜丸の機関長・久保山愛吉氏の死亡に対して,現在まで米国政府は「放射能が直接の原因ではない」との見解を示しているという.1955年12月に米国から日本へ濃縮ウランを貸与するための日米原子力協力協定が締結され,1956年1月には日本では,原子力委員会が発足することになる.委員長は読売新聞社主の正力松太郎氏であった.湯川秀樹博士は委員の一員であったが,委員長が1957年1月に「原発を5年後に建設する構想」を発表したことに対して「慎重な上にも慎重でなければならない」と強く訴え抗議のために辞任した.1970年代〜80年代に世界においてスリーマイル島(1979年)やチェルノブイリ(1986年)で原発事故が起きるとともに,日本でも原子力船むつの放射能漏れ事故(1974年)や「もんじゅ」のナトリウム事故(1995年)など事故が続出し,2011年3月には福島原発事故が起きることになった.2018年に日米原子力協定が改定予定であるが,自動更新の可能性が高いという.

 次に,中西氏が韓国の原子力研究所で行われているTROI実験についての2007年の論文(Kim et al., Nucl. Technol. 158, 378 (2007))及び経済協力開発機構(OECD)のSERENAプロジェクト2の実験とシミュレーションの論文について報告された.TROI実験は,経済協力開発機構(OECD)の主要な実験の一つであり,融点の高い二酸化ウランUO2と二酸化ジルコニウムZrO2の混合溶融物(擬似デブリ)を使っている点に特徴がある.UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは自発的な水蒸気爆発があったが,他の組成では水蒸気爆発は存在しなかった.実機の過酷事故時には外部トリガーありうるので外部トリガーを加えた実験を行い,UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは,UO2 80%:ZrO2 20%の擬似デブリの時の水蒸気爆発の発生圧力は大きくなったという.SERENAプロジェクト2のシミュレーションの論文(M. Leskovar and M. Ursic, Nucl. Eng. Technol. 48, 72 (2016))では,OECDのSERENAプロジェクトで開発されたMC3Dコードを使用して,水蒸気爆発の圧力をシミュレートしている.それによれば加圧水型原子炉でキャビティを満水にしておくと,水蒸気爆発が起きた場合には,キャビティの側壁に約150気圧の爆発圧力がかかる危険があると報告されている.この圧力でキャビティ側壁が破壊されるかどうかが問題である.

5月例会 川内原発と白血病&TROI実験無視

5月例会


日時:2016年5月20日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 川内原発と白血病の関連(報告:森永氏) 発表ファイル
   (2) 加圧水型原発を保有する4電力会社のTROI論文無視問題(報告:中西氏)
    
レジュメ  発表ファイル

<報告>

 はじめに,森永氏より川内原発の運転と周辺市町村の白血病死亡者数に統計的に有意な差があることが報告された.森永氏はすでに玄海原発の稼働前後に玄海町や唐津市における白血病死亡率が,原発に近い市町村ほど高いというデータを示しており,同様な統計的データが川内原発の周辺でも得られたということで,ことは重大である.
 次に,中西氏により加圧水型原発を保有する関西電力,九州電力,四国電力および北海道電力の電力4社がいわゆる「TROI論文」の研究結果を無視していることが報告された.「TROI論文」は,OECDのSERENAプロジェクトのなかの1つであり,韓国の原子力研究所で継続的に行われている,溶融炉心と冷却材(水)との相互作用に関する実験である.これまで,TROI実験以外に,FARO実験,KROTOS実験などがあるが,溶融炉心として大量の酸化ウラン(UO2)などを使った実験で水蒸気爆発が観測されたのは,外部トリガーを使用したKROTOS実験の3件だけであることから,電力4社は実機の過酷事故に際して外部トリガーはないので,水蒸気爆発は実機ではないとしている.実機の過酷事故に際して水蒸気爆発に対するトリガーがないと楽観できるのは驚くばかりであるが,それ以上に驚くのはトリガー無しで自発的な水蒸気爆発を観測したTROI実験を無視していることである.パブリックコメントでTROI実験の無視が指摘されると,規制委員会は水蒸気爆発を観測したTROI実験では溶融温度が高く(3800K),現実的な条件に近い温度では起きないことが確認されているとしている.TROI実験では確かに温度測定に正確でない部分もあり,これらの点には今後検討すべきことがあると思われる.しかし,4電力会社は規制委員会からお墨付きを得られということでTROI論文の無視を続け,水蒸気爆発は起きないとい前提で再稼働が続けられている.

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」


2017年5月3日,福岡核問題研究会の有志は,最近の朝鮮半島の危機を憂い,「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」との声明を発表しました.

pdfファイル


朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける

2017年5月3日
福岡核問題研究会有志(世話人:三好永作)
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/index.html

 私たちは1970年代から,核・原子力問題を分析し,研究発表並びに講演会を重ねてきました.朝鮮半島における緊張と戦争の危険が高まっているいま,核・原子力問題に取り組んできた者として,そして市民として,本声明を発表し,広く戦争反対の行動を呼びかけます.
 現在,朝鮮半島における軍事的緊張の高まりにより第二次朝鮮戦争が危惧されています.朝鮮民主主義人民共和国(以下,北朝鮮と略)による核兵器やミサイルの開発は,我が国,特に北部九州への脅威にとどまらず,東アジア全体の平和への脅威です.しかし,北朝鮮を包囲する米軍,基地を提供する日本,米軍と一体となって演習する自衛隊の行動もまた,同様に東アジア和平を脅かすものであり、両者は挑発行動を自粛するべきだと考えます.
 北朝鮮政府関係の声明や米国大統領のツイッター等では,挑発的意見表明がなされ,日本のマスコミは過剰に「危機」を演出しています.しかしながら,軍事的な合理性が関係諸国の指導層に貫徹している限り,この「危機」が「有事」に進展する可能性は低く,冷静かつ沈着な対応が求められます.
 とはいえ,かかる米国の「抑止行為」が,北朝鮮の「捨て身の反撃」を誘発し,核兵器の使用,ひいては,核戦争に進展するリスクが全くないともいえません.影響の及ぶ範囲や予測される戦場が朝鮮半島に限られる保証もなく,日本や東南アジアが巻き込まれる危険性もあります.
 北朝鮮の「挑発」だけを非難し,2ヶ月にもわたる米韓合同軍事演習など米国側の戦争準備行為を問題にしない我が国のメディアや国会の態度は一方的です.特定の国家だけを一方的に「悪」とする言説は,戦争準備行為の一つと見なされます.
 4月末,日本政府は,海上自衛隊に米国艦船を防護する命令を出しました.米艦が他国を威嚇する場合,海上自衛隊の米軍との一体行動は,「武力による威嚇」を放棄した憲法9条に抵触する可能性も生じます.
 私たちは朝鮮半島における現在の危機は,軍事的手段でなく,以下に述べる平和的手段によって解決するべきと考えます.
 第1に,関係する国家の政府間交渉です.旧6ヵ国協議の有効性には異論もありますが,ローマ法王フランシスコが提案したように,旧6ヵ国に,「調停国」としてノルウェーを加えることも検討に値するといえます.
 第2に,政府間交渉だけではなく,われわれ市民も声をあげ,戦争防止のための意見表明と具体的な意志表示や行動をとることです.
 第3に,関連分野の科学者や技術者も,説得力ある提言をし,側面から,米朝両国の緊張緩和や実効的解決のために積極的に行動することです.例えば,長崎大学核兵器廃絶研究センターの提案「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」(注1)はその一例です.
 朝鮮半島の危機と戦争回避のために,多くの方の協力と行動とを呼びかけます.
(注1)http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35475/1/Proposal_J_original.pdf

4月例会 玄海許可処分の審査請求&軍学共同反対について

4月例会


日時:2016年4月29日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 玄海原発許可処分の審査請求について(報告:北岡逸人氏)
    
発表ファイル
   (2) 軍学共同反対について(報告:豊島耕一氏)
レジュメ

<報告>

 はじめに,北岡氏より「玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更の許可処分」に対する審査請求書を原子力規制委員会に送付したことの説明があった.審査請求とは,行政処分などに不服がる場合に請求できるものである.審査請求が認められれば,その行政処分(今の場合は,玄海原発3,4号炉の設置変更許可処分)は取り消されることになる.裁判では,司法機関に行政処分の違法性を問うことになるが,審査請求では,行政処分を行った当事者以外の行政機関に行政処分の違法性あるいは不当性を問うことになる.裁判に比べて簡易であり経費は安く,かつ迅速であることが期待される.審査請求は単なる抗議や意見表明ではなく,法的根拠のある不服申立てで詳しく解説した「問題点」が公的資料に残る点に意義がある.

 次に,豊島氏により「軍学共同反対について」の話題提供があった.






玄海原発の設置変更許可処分に対する審査請求

玄海原発の設置変更許可処分に対する審査請求


2017年4月17日,福岡核問題研究会の有志は,行政不服審査法に基づいて,「玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(3号及び4号発電用原子炉施設の変更)の許可処分」に対する審査請求書を以下のように原子力規制委員会に,送付した.審査手続き中に再稼働が行われないように,許可効力の執行停止も求めた.

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審 査 請 求 書

2017(平成29)年4月17日

原子力規制委員会 御中

1.審査請求人及び総代の氏名及び住所等
  別紙「審査請求人一覧表」及び「総代の選任届出書」を参照。
2.審査請求に係る処分
  玄海原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(3号及び4号発電用原子炉施設
  の変更)の許可処分
 (平成29年1月18日。原規規発第 1701182 号)
3.審査請求に係る処分があったことを知った年月日
4.審査請求の趣旨
  「2.記載の処分を取り消す」との決定を求める。
5.審査請求の理由
  本件処分の審査基準及び審査内容に違法性・不当性がある。理由の詳細は別紙
  「資料」を参照。
6.口頭意見陳述会の開催及び質問
  希望する。質問内容の詳細は別紙「質問事項一覧表」を参照。
7.執行停止の申立て
  執行停止を申立てる。
8.処分庁の教示内容
 ・当該処分が不服申立てをすることができる処分であるか ⇒ できます。
 ・不服申立てをすべき行政庁 ⇒ 原子力規制委員会になります。
 ・不服申立てをすることができる期間 ⇒ 処分があることを知った日の翌日から
  起算して三月です。
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なお,「審査請求の理由詳細」を説明する別紙資料(以下参照)については,同日,電子メールでpdfファイルとして送信した(4月21日,一部訂正).

資料(1)原子力利用における国際的な基準ついて
資料(2)原子力防災の有効性が全く検証されていな問題について
資料(3)過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策において瑕疵がある
資料(4)再臨界の可能性について
資料(5)通常運転時の健康被害について全く検討していない
資料(6)審査書(案)に対する御意見への考え方問題
資料(7)原発等を破壊行為から守る対策について
資料(8)基準地震動の設定値の問題
資料全体

この審査請求に関して佐賀県庁記者クラブで記者会見を行ったところ,NHKをはじめとして数社の記者に集まって
いただいた.NHKのニュース番組で放映したものが,以下のYouTubeで見ることができる.
https://www.youtube.com/watch?v=Jl6zYv1Itlg

kaiken201704a

また,翌日(4/18)の朝刊で佐賀新聞をはじめ朝日新聞,毎日新聞,読売新聞,西日本新聞が私たちが記者会見で発表した内容を記事にした.それらの記事は以下の通り.
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(佐賀新聞,写真入り)

nisinihonshasin
 

 九州電力玄海原発3,4号機(東松浦郡玄海町)が,新規制基準に適合すると認めた原子力規制委員会の許可は不当だとして,大学の元教員や医師らでつくる「福岡核問題研究会」の有志は,規制委員会に異議を申し立てる審査請求をすることを決めた.
 研究会の有志5人が,行政不服審査法に基づき,許可の取り消しや,執行停止(再稼働の停止)を求める.審査期限の18日までに手続きする.
 理由として,福島第一原発事故の後,フランスは総勢300の緊急対応部隊を新設したが,日本の新規制基準には対応する措置がなく,「世界基準に程遠いこと」や,規制委がそもそも重大事故時の住民避難などの対策の有効性を審査の対象にしていないことが,「法律が求める責務からの責任逃れであり違法」などと主に8項目を挙げている.
 研究会メンバーが17日,佐賀県庁で会見を開き,豊島耕一佐賀大学名誉教授は,「県議会は安全が認められたとしれいるが,実際には程遠い状況」と批判した.(川﨑久美子)

(朝日新聞佐賀地方版)
 原子力規制委員会が九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)について新規制基準を満たすとする設置変更の許可を出したのに対し,学術経験者ら5人が17日,県庁で会見し,行政不服審査法に基づき,許可取り消しを求める審査請求と,許可処分の執行停止を申し立てると発表した.
 5人は学識経験者などでつくる福岡核問題研究会の有志.1月に出された許可について,事故時の住民避難を対象にしていない▽水蒸気爆発対策が不十分▽通常運転時の健康被害について検討していない▽原発を破壊行為から守る対策に不備がある▽基準地震動に設定値に問題がある−−などの理由から取り消しを求めている.請求人の岡本良治・九州工業大学名誉教授(原子核物理学)は,何重にも安全対策を取るという深層防護の考え方について,国際的基準に照らして不備を指摘.「政府などは『世界最高水準』というが,そうではない」と,許可の取り消しを訴えた.

(毎日新聞佐賀地方版)
 原子力規制委員会が新規制基準に適合した判断した九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)の設置変更許可について,九州大名誉教授らが17日,許可の取り消しを求める審査請求書を規制委に出すと発表した.
 審査請求は2016年4月に見直された行政不服審査法に基づくもので,従来の異議申し立てに当たる手続き.
 審査請求書は九州大の三好永作名誉教授や佐賀大の豊島耕一名誉教授ら5人で提出するという.許可の取り消しを求める理由について,原子力利用の国際的な基準を満たしていない▽原子力防災の有効性が全く検証されていない▽水蒸気爆発のリスク対策に瑕疵がある▽原発を破壊行為から守る対策が不十分−−など8項目にわたって挙げている.(石井尚)

(読売新聞佐賀地方版)
 九州電力玄海原子力発電所3,4号機(玄海町)の再稼働を巡り,大学の研究者のOBらでつくる「福岡核問題研究会」(世話人=三好永作・九大名誉教授)の有志は17日,原子力規制委員会に対し,規制委が1月に出した「原子炉設置変更許可」を取り消すよう求める審査請求を行うと発表した.
 請求は17日付.5人が県庁で記者会見して明らかにした.審査請求は行政不服審査法に基づくもの.審査請求書では▽規制委が九電に求める安全審査が不十分で,国際基準から逸脱している▽原子力防災の有効性が検証されていない −−など8項目にわたって挙げている.

(西日本新聞佐賀地方版)
 脱原発を求める大学名誉教授らでつくる「福岡核問題研究会」は17日,行政不服審査法に基づいて,九州電力玄海原発3,4号機(玄海町)の安全対策をまとめた「設置変更」の許可を取り消すよう求める審査請求書を原子力規制委員会に送付したと発表した.
 審査請求書は,①重大事故時の住民避難など原子力防災対策が検証されていない ②再臨界の可能性についての審査が不十分 ③航空機の激突に対して現実的な検討,対策がない−−ことなどを挙げ,原子力規制委の審査内容に違法性や不当性があると主張している.
 審査請求書は研究会メンバー5人の連名.審査手続き中に再稼働が行われないように許可の効力の執行停止も求めている.(長田周三)
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3月例会 「書籍」ソフト&ブースター爆弾

3月例会


日時:2016年3月25日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 自作フリーウェアの活用法(報告:竹下幸一氏) 発表ファイル
   (2) 北朝鮮の核実験の到達点と意図の技術的分析
     ―ブースター弾頭の小型化(報告:岡本良治氏)
発表ファイル(5.12更新)

<報告>
三好が佐賀県知事への要請とその後の記者会見の様子を報告した後,
(1) 竹下幸一氏がみずから開発されたフリーソフト「電子書庫・書籍・ノート」について,その有用性と活用性について報告された.書籍を用いた調査や研究において目的の情報を入手するまでには,書籍の入手,目次や索引の参照,ページ捲り,情報の解読や取得などに,多大な労力と時間が必要となるが,書籍のデジタル化,すなわちパソコンと情報処理技術を利用することにより,それに必要な労力と時間を大幅に短縮を可能にするのがソフト「電子書庫・書籍・ノート」であるという.これにより,労力や時間の短縮のみならず,情報の見落なく迅速で的確な情報取得が可能である点も大きな利点である.本ソフトでは,画像データpdfファイルなどから「電子書籍」用ファイルを準備し,それに対応する文字コードファイル「電子ノート」を作成し,この「電子ノート」を対象にキーワード検索が可能である.さらに,複数の「電子書籍」を対象にしてキーワード検索を行うことも可能である.使用されている言語はVisual Basicで,そのコンパイラーで実行形式にしたもので稼働しているという.使い方次第で大変便利なものであるように思われた.

(2) 次に,岡本良治氏により,「北朝鮮の核実験の到達点と意図の技術的分析」と題した報告していただいた.岡本氏は,1984年に『日本の科学者』誌上に核兵器に関する2つの論文「核分裂兵器と爆縮技術」および「水爆とは何か-ブースター効果とテラー・ウラム配置」を書いている.「実戦における唯一の被爆国としての日本では核兵器への反対の世論は根強いが,必ずしも核兵器の理解を深めること,あるいは科学的,技術的分析や核戦争の想定される被害の具体的検討は,残念ながら,十分には行われていない.核兵器廃絶の運動の発展,特に節目ごとの課題設定を適切に行うためにも」核兵器を正確に理解することが必要と岡本氏はいう.ブースター核弾頭とは,より具体的にはトリチウムが関与するDT核融合反応を媒介として, 核分裂反応を強化する仕組みをもつ弾頭であるという.DT核融合反応により発生する14 MeVの高速中性子がPu239やU238に衝突することで,通常の核分裂で発生する中性子の1.5倍程度発生することで,通常の核分裂爆弾より高効率となる.岡本氏は,すべての核兵器国がすでに獲得し実戦配備している,このブースター核分裂弾頭の生産と配備を開始できるようになった可能性が高いとみている.核兵器が危険で非人道的な兵器であるとすれば,単に北朝鮮指導部に対してだけではなく,米国を初め,核兵器保有国の全てに対して廃棄を要求するべきである.日本国内でも,北朝鮮と米国の双方による軍事活動の停止などを求めるなど,軍事的緊張を高める機運や試みには慎重で抑制するように,時宜を逸せずに運動すべきであろう.
                            (以上,E.M.)

佐賀県知事への要請と記者会見(3/7)

玄佐賀県知事への要請と記者会見(3/7)


 3月1日付の福岡核問題研究会の声明文「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」を玄海原発再稼働についての判断の材料として使用してもらうように,以下の要請文を添えて佐賀県知事への要請を, 3月7日に行った.
**********

                         2017年3月7日
佐賀県知事
山口祥義 様
 九州電力は,玄海原発3,4号機について原子力規制委員会に認められた対策工事を年度内にも終え,佐賀県知事の同意を得て,この夏ごろには再稼働をする予定であると聞いています.私たち福岡核問題研究会は,さる3月1日に別紙のような「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」と題する声明文を公表しました.玄海原発3,4号機の再稼働に関連して,考えられるさまざまな問題点を指摘したものです.
 知事が九州電力への対応を考えられる際に,別紙の声明文の内容を参考にしていただければ幸いです.事故時に被害を被る原発周辺住民が過酷事故を覚悟して避難計画を立ててまで,一私企業の利益のために玄海原発3,4号機の再稼働を認めなければならない理由はないのではないでしょうか.
                         福岡核問題研究会
                         世話人:三好永作
**********

 その後,佐賀県政記者クラブにおいて記者会見を行った.記者会見にはNHKと数社の新聞社の記者に集まっていただいた.同日には,岸本秀雄・玄海町長の再稼働に同意したというニュースがあり,それとの関連で読売新聞,佐賀新聞,西日本新聞が記者会見で発表した内容を記事にしてもらった.それらの記事は以下の通り.

(3月8日,読売新聞佐賀地方版)
 大学教員のOBらでつくる「福岡核問題研究会」(世話人=三好永作・九大名誉教授)は7日,県庁を訪れ,九州電力原子力発電所3,4号機(玄海町)の再稼働に反対する山口知事宛ての意見書を提出した.
 研究会は核に関する研究会を行ったり,シンポジウムを開いたりしている.玄海原発を巡り,今月1日には▶今必要なのは原発受け入れの根本的見直し▶新規制基準は「世界最高水準の安全基準」ではない,などとする声明文を公表していた.
 この日,県に提出した意見書では「事故時に被害を被る周辺住民が避難計画を立ててまで,一私企業の利益のために再稼働を認めなければならない理由はないのではないでしょうか」などと主張している.
 岸本秀雄・玄海町長の同意表明について,研究会の豊島耕一・佐賀大名誉教授は「町の同意だけで動かしていいはずがない」と批判した.
(3月8日,佐賀新聞)
 専門家らでつくる「福岡核問題研究会」は同日,県に再稼働の問題点を指摘する文書を提出した.世話人の三好永作九州大学名誉教授(物理学)は「原子力規制委員会の新規制基準は世界から笑われるようなレベルで,日本の科学技術の劣化を物語る.安全性をないがしろにするのは許せない」と話した.
(3月8日,西日本新聞佐賀地方版)
福岡県内の大学教員や医師でつくる「福岡核問題研究会」は,過酷事故対策の不備などを指摘する声明文を県庁に提出した.佐賀大名誉教授の豊島耕一さん(69)は会見で「町の同意だけで動かすべきではない.県内や福岡,長崎両県も含めて広範囲の自治体の同意が必要だ」と訴えた.



声明「玄海原発 3, 4号機の再稼働は許されない」

玄海原発3, 4号機の再稼働は許されない

pdfファイル

2017年3月1日
福岡核問題研究会


1.はじめに


 原子力規制委員会は,さる1月18日,九州電力の玄海原発3,4号機が新規制基準を満たすと認める審査書を正式決定した.九州電力は,認められた対策工事を年度内にも終えて,この夏ごろには再稼働をする予定という.私たちは,2014年の夏,川内原発の再稼働に反対する声明を発表したが,原発をめぐる状況は当時と変わらない.
 福島原発事故により「決して起きない」と言われてきた過酷事故は容易く起きることが明らかになり,「安いから使う」と言われてきた原発が決して安くないことが明らかになった.福島原発事故の処理費用が21.5兆円にもなることが発表され,この額がさらに増加することが確実視されている.原発は,意図的破壊行為も想定しなければならず,安全性からも経済性からも他の発電設備に比較して格段に劣るものと言わざるを得ない.福島原発事故の真相究明がなされていない現状では,原発の再稼働が許されないのは当然である.玄海原発3,4号機の再稼働をめぐる問題点を指摘しておきたい.

2.いま必要なのは原発受け入れの根本的見直し


 まず第一に,玄海原発を含めて日本に現存する原発は,事故が起きても周辺の公衆に「著しい放射線被ばくのリスクを与えない」との前提で設計され,「過酷事故は起きない」,念のため計画するが「住民避難は必要ない」との説明で建設されてきた.福島原発事故のように炉心が損傷して冷却が難しくなれば,設計条件を超える温度,圧力および放射線レベルになるので,本来なら全面的・根本的・総合的に設計を見直す必要がある.「過酷事故は起きる」「大量の放射能がまき散らされる」「避難も必要」と分かった訳であるが,これらは電気のための余りにも過大な代償であり,原発受入れ拒否の理由とさえなるものである.

3.新規制基準は「世界最高水準の安全基準」ではない


 第二に,再稼働の審査に使った新規制基準が決して「世界最高水準の安全基準」ではなく,大変甘い基準である点は見逃せない.例えば,新規制基準では,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして,「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的である.相対的に安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述がまったくない.このことは,この「新規制基準」が原発の安全性よりもその再稼働を優先するためのものであることを物語っている.新規制基準が原発の安全を保証するものにはなっていない.

4.水蒸気爆発,ずさんな過酷事故対策


 第三に,過酷事故対策がずさんであることも重大である.一例だけを挙げれば,溶融した炉心を水張りした格納容器に受けて冷却するという「過酷事故対策」がある.この「対策」は水蒸気爆発を誘発する恐れがある.水蒸気爆発が起きれば,福島原発事故をはるかに超える放射性物質が環境に放出される恐れがある.過酷事故対策は,国際原子力機関 (IAEA) の深層防護のうち「重大事故の影響緩和を目的」とした第4層に属する対策の1つであるが,これでは「影響緩和」ではなく,「影響拡大」または「影響の深刻化」をもたらす.「過酷事故現象学」という分野の世界的権威B.R. Sehgal教授の編集による国際会議報告集(*)における合意は,「過酷事故のなかで溶融炉心と冷却材(水) が接触すれば,水蒸気爆発が必ず起きると考えよう」ということである.文字通り,溶融炉心だけを受止め,水から隔離する「コアキャッチャー」という装置のアイデアは,このような認識から出発したものである.

5.原発の耐震性の問題


 第四に,基準地震動についての問題も重大である.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発では 620 ガルである.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合がある.2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録した.玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委員会による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある.これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.

6.避難計画および移住の問題


 第五に,避難計画についての審査が今回の再稼働審査にないことも重大である.IAEAの深層防護では,第5層で「放射性物質が放出したとしても,公衆被ばくを抑制するように備える」ことを提案し,第1層から第5層までの各層はそれぞれ独立に対策を立てるべきであるということを強調している.今回の審査では,公衆被ばくを抑制するための避難計画は審査の対象から外し,原発周辺自治体まかせになっている.一私企業の利益のための原発の稼働により事故が起きたからと言って,周辺自治体がそのための避難計画作成の責任を負わされること自身,道理に合うことではないが,避難計画を審査対象から外すことは,IAEA深層防護の第5層無視といえる.
 福岡市の西隣の糸島市の避難計画は,福岡市に避難するということのようであるが,糸島市から避難しなければならない状況では,福岡市からも避難しなければならない確率が極めて高い.しかし,150万人を擁する福岡市の避難計画はない.事故時に被害を被る原発周辺住民が過酷事故を覚悟して避難計画を立て,一私企業の利益のために玄海原発3,4号機の再稼働を認めなければならない理由はない.
 福島原発事故で最も深刻な問題の一つは,故郷を喪失した人々の移住の問題であった.再稼働にあたって,この点について一言のコメントもないのは大変気になる.避難計画を法的に義務付けられ,実害を被る危険にさらされることになる原発周辺自治体と住民の同意なしに再稼働をすることは許されることではない.

7.世代間倫理に反する行為は許されない


 第六に,世代間倫理についての問題もある.原発の稼働により発生する使用済核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業の利益のために作り出されるものであるが,10万年余の管理保管を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.

8.原発再稼働の決定は民主主義的な手続きで


 最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否を尋ねたところ,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されない.
(*) “Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology” ed. by B.R. Sehgal, (Academic Press, 2012).

以上

2月例会 声明文の検討

2月例会


日時:2016年2月25日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 佐賀県原子力専門部会への申し込みの検討
   (2) 玄海原発再稼働についての反対声明文の検討

<報告>
(1) はじめに,佐賀県原子力専門部会を数回にわたって傍聴した方から,その専門部会における討論内容が報告された.専門部会は,総じて緩いもので,県の事務局(原子力安全対策課)からの説明に対して専門部会の委員が素朴な質問をしてそれに県の職員が答えるというようなものであるとのこと.中には,鋭い質問もあり,県の職員がその場では答えられないこともあったという.福岡核問題研究会として,佐賀県の原子力安全対策課あるいは原子力安全専門部会への申込を行うことも検討したが,結果として見送ることになった.

(2) 次に海原発再稼働に反対する声明の原案について討議し,たくさんの修正意見が出され,それらの検討の結果,
声明文「玄海原発3,4号機の再稼働は許されない」の骨子が確定された.細かな字句の修正などはメーリングリストで詰めることとなった.
                            (以上,E.M.)

虚言「新規制基準は世界で最も厳しい水準」を批判

繰り返される虚言「新規制基準は世界で最も厳しい水準」ー国際原子力機関の「深層防護」からも逸脱ー


pdfファイル

2017年2月24日
福岡核問題研究委員会有志*


1.嘘も百回言えば本当に?


今月初めに佐賀県議会の特別委員会で配布された九電のビラや,現在佐賀県内各地で行われている「県民説明会」の資料に,「『世界で最も厳しい水準にある新規制基準』に適合」と書かれていますが,これは全く事実に反します.「最も厳しい」どころか,いくつもの重大な点で甘く,それどころかメルトダウン対策は世界では非常識とされるものです.また,同じビラには,万が一の事故でも放射性物質は福島事故の時の2,000分の1などと書かれています.しかし,これを保証する確たる根拠もなく,まさに「安全神話」の復活そのものです.
私たちは科学者として,このようなデマの横行を見過ごすことは出来ません.詳細は2年ほど前の文書「原子力規制世界最高水準という虚言の批判」[1]に書いていますが,そのポイントを短くまとめてみます.

2.国際原子力機関(IAEA)の「深層防護」の考え方と新規制基準の比較


原発推進の総本山である国際原子力機関(IAEA)は,過酷事故発生が原発推進の一番の妨げになるので過酷事故に厳しい立場を取っています.そのIAEAの「深層防護」の考え方[2,3]は,異常や事故の深刻さ,進展の度合いを5段階にわけ,そのそれぞれの段階に対して,それぞれ独立に対策を立てておく,というものです.我が国の規制基準も,これに倣っていると称していますが,実際は違います.
設計基準内の事故,つまり「想定内」の事態については,想定された発端事象ごとにそれがより悪化しないための対策が一応とられています.発端事象(「引き金」的な事象)は外部事象と内部事象に分けられます.外部事象は地震,津波,火災,テロなどであり,内部事象は機器,部品の故障などです.
他方,設計基準では想定されていない事故が過酷事故(シビアアクシデント)ですが,これに対する対策がいい加減か,または全く欠けています.次の表の第4層と第5層です.日本の新規制基準[4]をこれで評価してみます.
fig20170224
 右欄の記号の意味:○=要求あり △=要求はあるが極めて不十分 ×=要求なし

なぜ,このような評価をするか.この判断根拠は,規制委員会の「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」という文書[4]の中で,深層防護思想の第4層について説明している65ページに,「早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できる」として,規制委員会は第4層を不要であるという立場を表明しているからです.これはIAEAの深層防護思想からの逸脱,または恣意的な解釈と言わざるを得ません.
IAEA福島原発事故報告書[3]では,低頻度・高影響の外部事象(自然現象など)に十分備えるべきと繰り返し勧告されています.さらに,「ブラック・スワン―リスクと不確実性」について系統的に分析した文献[5]には,人間や組織も関与するシステムにおける低頻度・高影響の事象が多数分析され,事前にそれらの予兆は観察されないこと,そして,人間の認知機構は反復されるもの,規則的なものに主として注目し,低頻度のものは存在しないと見なすことも鋭く指摘されています.
また,過酷事故対策として審議されてきた格納容器下部キャビティの水張りと水素燃焼のイグナイタ(着火装置)は労働安全衛生規則に反しています[6].
周知のように,第5層の緊急時対応は規制対象ではありません.米国では規制対象であり,ニューヨーク州のショーラム原発は緊急時対応の実効性が不十分という理由で新設の原子炉が稼働することなく閉鎖されました.地方自治体が義務づけられている原発防災対策は,事故の影響と自然災害を同列視しているだけではなく,福島原発事故後,不可避になった長期間にわたる移住の措置は考慮の対象外になっています.

3.新規制基準は世界で最も厳しい水準とはとても言えない!


4層,特に過酷事故(シビアアクシデント)の影響緩和策は無いか,極めて不十分です.燃料や制御棒などの高温の溶融物に対して,チェルノブイリ事故後の緊急対応の一環として,耐熱レンガなどを用いたコアーキャッチャーが構築され,地下水への接触を防護しました.その後,ヨーロッパやロシア,中国の新型原発では徐々に装備されています.過酷事故は設計想定外の事故であり,設計をやり直すことが筋です.
5層の緊急時対応は規制対象ではありません.以上より明らかなように,新規制基準は世界で最も厳しい水準とはとてもいえません.

4.再稼働される原発の「安全性」は誰も保証していない


安倍首相は,原子力規制委員会が「再稼働の安全性を確保できているかどうかの確認審査をしている」と言い,九電も「新規制基準審査に合格したから安全性が高まった」と主張しています.しかし,原子力規制委員会の田中俊一委員長は,委員会は原発が新規制基準に適合しているかどうかを判断しているのであって,「原発の安全性を担保しているものではない」との姿勢を変えていません.つまり,安倍首相や九電は「規制基準合格」に過ぎないものを「安全性」にすり替えていると言わざるを得ません.

[引用文献]
[1]福岡核問題研究会「原子力規制世界最高水準という虚言の批判―世界一楽観的な進展シナリオに沿った、世界一奇妙な評価―」, 2014年12月1日.
  http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/kikaku/files/673c6fc5ee122b961e25fb24ffe1190b-31.html
[2] IAEA, INSAG-10「原子力安全における多重防護」1996年.
  http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1013e_web.pdf
[3]IAEA, 福島第一原子力発電所事故-事務局長報告書, 2015年8月.
  http://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/SupplementaryMaterials/P1710/Languages/Japanese.pdf
[4]原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」2015年6月29日策定,2015年8月24日改訂.
  https://www.nsr.go.jp/data/000155788.pdf
[5]N.N.タレブ 「ブラック・スワン―不確実性とリスクの本質」ダイヤモンド社,2009年.
[6]滝谷紘一「労働安全衛生規則に反する過酷事故対策の原子炉下部キャビティの水張りと水素燃焼のイグナイタ」科学Vol.86, No.6 (2016), 513.
  http://toyokeizai.net/articles/print/129616

* 岡本良治(九工大名誉教授),豊島耕一(佐賀大学名誉教授),中西正之(元燃焼炉設計技術者),三好永作(九州大学名誉教授)

玄海原発パブコメで記者会見

玄海原発パブコメで記者会見


玄海原発3,4号炉の適合性審査書案に対してパブリックコメントを提出した研究会メンバー4名が佐賀県庁記者クラブで記者会見を行いました.

日時:2016年12月27日 午後2時30分〜3時30分
場所:佐賀県庁記者クラブ
内容:玄海原発3,4号炉の適合性審査書案に対するパブリックコメント
   パブリックコメント28件の要約は以下を参照のこと

pressconf161227saga-c

パブリックコメント28件の一覧表
パブリックコメント28件の要約
記者会見のプレゼントファイル
記者会見の音声



12月例会 北部九州の活断層と地震

12月例会


日時:2016年12月24日(土)14:00〜17:00
内容:
北部九州の活断層と地震
講師:半田 駿 佐賀大学名誉教授

<報告>

玄海原発再稼働審査パブリックコメント

玄海原発再稼働審査パブリックコメント


2016年11月10日から一ヶ月の間に玄海原発再稼働についての審査書案についてパブリックコメント(パブコメ)が募集されているいます.本研究会のメンバーが提出したパブコメをここに紹介します. 

パブコメ1 水蒸気爆発に対するIAEAの安全基準の対策を無視(中西)
パブコメ2 カベンスキー等の水蒸気対策の新知識を無視(中西)
パブコメ3 水蒸気爆発防止についての労働安全衛生規則を無視(中西)
パブコメ4 北九州市で2015年に起きた水蒸気爆発事故を無視(中西)
パブコメ5 チェルノブイリでは水蒸気爆発防止のため水抜きをした(中西) 関連資料
パブコメ6 東電柏崎刈羽原発では水蒸気爆発の危険を認めている(中西)
パブコメ7 水蒸気爆発対策の不備(中西) 関連資料
パブコメ8 水中の溶融核燃料のクレスト破壊モデルを無視(中西) 関連資料
パブコメ9 TROI実験の検討をしていない(中西)
パブコメ10 格納容器下部をモルタル補強計画は不適切(中西) 関連資料
パブコメ11 モルタル補強はコリウムシールドより劣悪(中西) 関連資料
パブコメ12 加圧器逃し弁の耐久計算が杜撰(中西) 関連資料
パブコメ13 フィルター付きベントの問題(中西) 関連資料
パブコメ14 爆燃も爆轟も水素爆発(中西)
パブコメ15 水素爆発をめぐる問題(中西) 関連資料
パブコメ16 地震動をめぐる問題(中西) 関連資料
パブコメ17 耐震重要度分類の変更を行わなかった問題(中西) 関連資料
パブコメ18 4重の壁しかない問題(中西) 関連資料
パブコメ19 セシウム137の放散限界目標値をめぐる問題(中西)
パブコメ20 免震重要棟の設置は3回も緩和された(中西)
パブコメ21 圧力容器の炭素偏析による強度不足の検査無し(中西)
パブコメ22 再臨界が引き金となり水蒸気爆発が起きる危険性(北岡)
パブコメ23 水蒸気爆発についての最新の科学的認識を無視(三好)
パブコメ24 「新規制基準」は事故の進展に楽観的に過ぎる(三好)
パブコメ25 飛行機落下による核被害の危険(豊島)
パブコメ26 事故時の住民避難についての審査がない(豊島)
パブコメ27 通常運転時の健康被害について審査すべき(豊島)
パブコメ28
パブコメ29
パブコメ30
パブコメ31 破壊行為から核物質を守るのは不可能(北岡)
パブコメ32

11月例会 玄海原発再稼働の問題点整理

11月例会


日時:2016年11月26日(土)10:00〜12:30
内容:
玄海原発再稼働の問題点整理

<報告>

玄海原発再稼働の問題点を整理した.以下,それらを箇条的に述べていく.これらは,玄海原発再稼働に関連して予定している当研究会の声明の基調となるものである.
① 過酷事故対策が義務化されて安全になったか
 福島原発事故以降,新たな規制基準に過酷事故対策が義務化された.しかし,玄海原発を含めて日本に現存する原発は,事故が起きても「炉心が著しい損傷に至らず,冷却可能な形状が保たれることや周辺の公衆に対し著しい放射線被ばくのリスクを与えないこと」を前提に設計され,「過酷事故は起きない.放射能漏れ事故が起きても重大な被ばく影響は原発敷地内に収まる程度で,住民避難は(念のため計画するが)必要ない」との説明で建設されてきた.福島原発事故のように炉心が損傷して冷却が難しくなれば,設計条件を超える温度,圧力および放射線レベルになる.それは結果として,格納容器などの変形量や密封機能,電気部品,計装器システムなどに影響するので,本来なら全面的・根本的・総合的に設計を見直す必要がある.「過酷事故は起きる.大量の放射能がまき散らされる.避難も必要」と分かった以上,いま必要なことは根本的な見直しであり,原発再稼働そのものの是非である.また,使用済核燃料を安全に保管しこれ以上増やさないことも重要である.
② 基準地震動の問題
 基準地震動の問題も重大である.玄海原発は620ガルという基準地震動を設定のもとでの耐震設計により審査されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合がある.これらの2つのタイプの地震に対する耐震性を考えなければならない.2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市で1494ガルの最大加速度を観測している.玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるがゆえに,逆にこのような未発見の断層による地震が起きる危険度が高い.玄海原発の直下で鳥取県中部地震と同程度の地震が起きれば,620ガルという基準地震動をはるかに超える地震動を覚悟しなければならない.もう一つ別のタイプの地震,つまり,既知の活断層が震源となる場合もあり得る.この点は,10月の例会でも取り上げたように九州電力や原子力規制委員会は西日本に多い断層では過小評価になることが明らかな入倉・三宅式を使って地震の揺れの予測を行っている.これでは今回の玄海原発再稼働審査によって,原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えないのではないだろうか.
③ 杜撰な過酷事故対策
 過酷事故対策が杜撰であることも重大である.一例だけを挙げれば,溶融した炉心を水張りした格納容器に受けて冷却するという「過酷事故対策」がある.この「対策」は水蒸気爆発を誘発する恐れがある.この爆発が起きれば,福島原発事故をはるかに超える放射性物質が環境に放出されることになる.チェルノブイリ事故で大量の放射性物質が環境に放出されたのは水蒸気爆発による.過酷事故対策は,IAEAの深層防護のうち「重大事故の影響緩和を目的」とした第4層に属する対策の1つであるが,これでは「影響緩和」ではなく「影響拡大」あるいは「影響の深刻化」をめざしているとしか思えない.「過酷事故現象学」という学問分野における現時点での国際的合意は,「過酷事故のなかで溶融炉心と冷却剤(水)が接触すれば,水蒸気爆発が必ず起きる」である.溶融炉心だけを隔離するコアキャッチャーという装置のアイデアは,この認識から出発したものである.
④ 避難計画が審査の対象になっていないのはIAEA深層防護の第5層違反
 避難計画についての審査が今回の再稼働審査にないことも重大である.IAEAの深層防護では,第5層で「放射性物質が放出したとしても,公衆被ばくを抑制するように備える」ことを提案し,第1層から第5層までの各層はそれぞれ独立に対策を立てるべきであるということを強調している.今回の審査では,公衆被ばくを抑制するための避難計画は審査の対象から外し,原発周辺自治体まかせになっている.一私企業の利益のための原発の稼働により事故が起きたからと言って,周辺自治体がそのための避難計画作成の責任を負わされること自身,道理に合うことではないが,避難計画を審査対象から外すことは,IAEA深層防護の第5層違反といえる.福岡市の西隣の糸島市の避難計画は,福岡市に避難するということのようであるが,糸島市が避難しなければならい状況では,福岡市からも避難しなければならない確率が極めて高い.しかし,150万人を擁する福岡市の避難計画はない.
⑤ これ以上の「負の遺産」を未来の世代に残すことは許されない
 世代間倫理についての問題もある.原発のかどうに伴い作られる使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,10万年余の管理保管を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.世代間倫理には「この大地は私たちの子孫からの借りもの」であるという考えが大切である.再稼働によりこれ以上の高レベル放射性廃棄物を生産することは許されない.
⑥ 「新規制基準」は大変甘い基準である
 再稼働の審査に使った「新規制基準」は,決して「世界最高水準の安全基準」ではなく,大変甘い基準である点も見逃せない.例えば,「新規制基準」では,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして,「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質 の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的である.より安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述がまったくない.このことは,この「新規制基準」が原発の安全性よりもその再稼働を優先するためのものであることを物語っている.「新規制基準」が原発の安全を保証するものにはなっていない.
⑦ 再稼働反対は民意
 民主主義の問題もある.朝日新聞社が2016年10月15, 16日に実施した全国世論調査(電話)では,原子力発電所の運転再開の賛否を尋ねたところ,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もないなかで,多くの国民の納得が得られない玄海原発の再稼働は,民主主義の問題としても許されない.

10月例会 島崎氏による基準地震動の過小評価指摘問題

10月例会


日時:2016年10月22日(土)14:00〜16:30
内容:
島崎氏(元規制委委員長代理)による基準地震動の過小評価指摘問題
   報告:中西正之氏

<報告>

 島崎・元規制委委員長代理により提起された,入倉・三宅式による地震動の過小評価の問題を中西正之氏が報告された.原発サイトにおける地震による最大の地震動を予測するには,2つの課題がある.一つは,①震源の大きさ,すなわち,地震モーメントを動いた断層の面積あるいは長さと関連させてどう予測するかという課題と,もう一つは,②その震源からどのようなシナリオで原発サイトまで地震動が伝播していくか(それをレシピと呼んでいる)という課題である.この第2の課題はかなり複雑である.原発の耐震性に関係するのは,0.02〜1秒の短周期の振動である.そのシナリオにより最大の地震動がおおよそ地震モーメントの何乗に比例するかが決定されることになる.
 ①の課題には,さまざまな経験式が提出されているが,②の課題については,まだ十分に研究がなされているとはいえないのが現状であるようだ.①の課題に関して,地震モーメントと断層の面積あるいは断層の長さとの間には,入倉・三宅式の他にも武村式などさまざまな経験式がある.入倉・三宅式は世界の地震データによる経験式であり,その他の武村式などは日本の地震データによる経験式であるという.
 島崎氏は,西日本に多い垂直断層あるいは垂直に近い断層の場合,入倉・三宅式は,武村式など他の式に比較して地震モーメントが3.4分の1程度小さくなるという.この点は,原子力規制庁も「入倉・三宅式が他の関係式に比べて,同じ断層長さに対する地震モーメントを小さく算出する可能性を有している」ことを認めている.
 島崎氏は,2016年4月の熊本地震においても,国土地理院による断層面の暫定的推定を基にして,入倉・三宅式による地震モーメントが過小評価になっていることを指摘している.入倉氏(京都大学名誉教授)は,それに対して学問的に反論しているが,「地震の揺れの予測に使う場合には,(西日本に多い)断層面が垂直に近いと地震規模が小さくなる可能性はある.行政判断として,過小評価にならないよう注意しながら使うべきだ」として自分の式が過小評価になることは認めている.入倉氏は,入倉・三宅式を防災目的に使用すること事態が間違いであるとも主張している.
 ②の課題に関しては,地震動は地震モーメントの1/3乗に比例するという関係式が壇らにより提案されているが,1/2乗に近いというシナリオもあるようだ.
 島崎氏は原子力規制委員会に,過小評価の恐れのある入倉・三宅式とは別の式を使って計算することを求めた.原子力規制委員会は原子力規制庁の職員(おそらく地震学の専門的知識を有しない)に武村式を使って計算させたが,常識的な数値とは異なる結果が出たという.そして,島崎氏の提起した入倉・三宅式の過小評価問題に対して,専門家の間でも決着がついていないという理由を挙げて,今後とも,過小評価があることを承知のうえで入倉・三宅式を使って地震モーメントを予測し地震動の計算を行うということにしたという(7月27日,第23回会議).
 ここに原子力規制委員会の無責任な特質が現れている.まず,武村式を使っての計算で異常な数値が出てきたのであれば,少なくとも,この分野の専門家に計算についての検証を依頼すべきであるが,それをしていない.原子力規制委員会の中には地震学の専門家はいないのである.また,西日本に多い断層では過小評価になることが明らかな入倉・三宅式を使って地震の揺れの予測を行うということは,原子力規制委員会がより安全の側に立って地震の揺れを予測しようという考えがないということである.玄海原発では620ガルという低い基準地震動のもとで,ともかく再稼働を進めようという姿勢としか思えない.

9月例会 パブリックコメントの為の基準地震動問題調査報告

9月例会


日時:2016年9月24日(土)14:00〜16:30
内容:(1)玄海原発3, 4号炉のパブリックコメントの為の基準地震動問題調査
      報告:中西氏 レジュメ
   (2)西尾正道氏の九州講演について
      報告:佐藤氏

<報告>

はじめに中西氏より「玄海原発3, 4号炉のパブリックコメントの為の基準地振動問題調査報告」と題して,報告いただいた.氏の問題意識は,2014年9月まで規制委の委員長代理をしていた島崎邦彦氏(地震学)が「原発が大地震に見舞われた場合の実際の揺れは現在の基準地震動(想定される最大の揺れ)を上回る可能性が高い」と明らかにしたのに対して,規制委の田中俊一委員長の対応に納得できない点であったという.この問題を調べていくうちに2つの大切なことに気付いたという.一つは,地震学と地質学の違いであった.地震学は,地震の発生機構とそれに伴う諸現象を解明する学問であり,地面より下の地層・岩石を研究する地質学とは異なる.原発の基準地震動に深く関わるのはもちろん地震学である.島崎氏の専門は,地震学であるが,島崎氏と入れ替わって規制委委員となった石渡明氏の専門は地質学である.現在,規制委には地震学についての専門家がいないという異常な状況であるという.

 もう一つは,玄海原発は敷地周辺に活断層が少ないので大地震には比較的安全であると思われてきたが,日本では,地表に活断層が現れていない大地震が頻発しており,玄海原発は決して大地震に安全であるといえる訳ではないということである.その意味で専門家は,「震源を特定せずに策定する地震動」の策定を重視するようになってきているという.「震源を特定せずに策定する地震動」は,震源と活断層を関連づけることが困難な過去の内陸地殻内地震について得られた震源近傍における観測記録を収集し,これらを基に策定するという.そして,2008年の岩手・宮城内陸地震(マグニチュード6.9)や2000年の鳥取県西部地震(マグニチュード6.6)などの16の地震だけが対象になっているようである.

 「原発なくそう!九州玄海訴訟」においても玄海原発3, 4号炉の基準地震動の問題が,九州電力の方から持ち出され,この訴訟の重要な争点になってきている.この問題についての正確な理解がますます重要になってきている.次の10月例会でもこの問題について解説いただくことになっている.

 次に,佐藤氏により西尾正道氏(医師,北海道)による「内部被ばく・低線量被ばく・放射線治療について」の講演会についての報告があった.講演会は,福岡市(7月22日),北九州市(7月23日)および鹿児島市(7月24日)で行われ,それぞれ,50名,150名,150名の参加があったという.

8月例会 原子力規制委員会「新規制基準の考え方」

8月例会



原子力規制委員会は,行政訴訟に対応するため原発の新規制基準に関して内容や
根拠となる考え方について解説した資料「実用発電用原子炉に係る新規制基準の
考え方について」を作成し,さる6月29日に発表しました.
以下の核問題研究会においてこの「新規制基準の考え方」の内容を紹介するとと
もに,批判的に検討したいと思います.興味のある方はご出席ください.


日時:2016年8月27日(土)14:00〜16:30
場所:九州大学筑紫キャンパス総合研究棟5階511室
内容:原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」
   なお,原子力規制委員会のその文章は以下からなっています.

第一部(pp.1-49)
発表資料(岡本
○原子力規制委員会の専門技術的裁量と安全性に対する考え方(1項目)
○設置許可基準規則等の策定経緯(1項目)
○国際原子力機関の安全基準と我が国の規制基準の関係(1項目)
○深層防護の考え方(1項目)
○深層防護の考え方 避難計画(2項目)
○共通要因に起因する設備の故障を防止する考え方(4項目)
第二部(pp.50-85)
発表資料(北岡)
○重大事故等対処施設(8項目)
第三部(pp.86-111)
発表資料(三好)
○電源確保対策(3項目)
○使用済燃料の貯蔵施設(4項目)

<報告>
 原子力規制委員会が行政訴訟に対応するため原発の新規制基準に関して内容や根拠となる考え方について解説した「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(2016.6.29)の内容を紹介するとともに,批判的に検討した.この文章は,以下の項目について規制委の見解を述べている.第一部を岡本氏が,第二部を北岡氏が,第三部を三好が報告した.

 まず,規制委の専門技術的能力の自己評価は主観的であって具体的内容の呈示はなく,「『絶対的な安全性』というものは、達成することも要求することもできない」として,一般の技術システムとは異なる原発システムの異質性(①莫大な放射能を内蔵するという巨大な潜在的危険性,②過酷事故が起きたら時間的、空間的に限定することが不可能であることなど)をまったく無視している.また,「IAEA安全基準が既存の施設に適用されるか否かも個々の加盟国の決定事項であるとされている」として,日本の既存の原発にはIAEAの安全基準を適用しないと弁解している.深層防護の第4の防護レベル(過酷事故の影響緩和など)に関して,「早期の放射性物質の放出又は大量の放射性物質の放出を引き起こす事故シーケンスの発生の可能性を十分に低くすることによって実質的に排除できることを要求するものである」としている.この文章は明確には表現していないが,「実質的に排除できる」ものは第4の防護レベルであろう.第1から第3の防護レベルをしっかりすることで,第4の防護レベルを十分にしないでもよいということを意味している.このことは,我が国の原子力規制法の第1条(目的)には事故発生防止は記されているが,重大事故(過酷事故)が発生した場合の影響緩和が明記されていないことと符合する.

 重大事故対処設備の要求事項として,炉心の損傷に際して,格納容器の急激な温度・圧力の上昇や溶融炉心・コンクリート反応(MCCI),水素爆発等については記述されているが,水蒸気爆発や一酸化炭素(CO)爆発につては(これらの危険性については,今の段階では未解明であり,特別な配慮が必要であるにもかかわらず),軽視ないし無視されている.また,「想定する事故シーケンスグループの重畳を検討する必要はあるか」との問いに対して,「重畳する様な事故の発生頻度は低いと考えられ,仮に重畳したとしても,それぞれの防止対策を柔軟に活用することができる」と極めて単純で楽観的な見通しである.

 外部電源系を,異常発生防止系(PS)として安全重要度の最も低いPS-3クラスに分類し,さらに耐震設計上の重要度おいても最も低いCクラスに分類しているのを,「事故発生時は,外部電源系による電力供給は期待すべきではない」ので合理的であると居直っているが,外部電源の喪失が福島原発事故の一要因であったことを考えれば,疑問が残る「考え方」ではないだろうか.また,使用済燃料の貯蔵施設に関して,「使用済燃料が冠水さえしていれば,(中略)その崩壊熱は十分除去される」,そして「放射性物質が放出されるような事態は考えられない」ので,貯蔵施設の閉じ込め機能を要求しなくてよいとしている.これについても,福島原発事故で最も恐れられたのは燃料プールからの放射性物質の放出であったことを考えれば,あまりにも楽観的な「考え方」といえる.より安全な空冷式の「乾式貯蔵」についての記述はまったくない.

 結論的にいえば,新規制基準は3.11以前の基準に比較すれば原発の潜在的危険性を直視している面もあるが,過酷事故や破壊行為による影響を緩和できず、大量の放射能を環境中に放出する危険性を容認する甘い基準と言えるのではないか.

7月例会 電力会社による最近の格納容器補強工事

7月例会


日時:2016年7月23日(土)14:00〜16:30
内容:電力会社による最近の格納容器補強工事について
   ー玄海原発の格納容器補強工事計画と新潟原発の格納容器補強工事終了が示した新しい過酷事故対策問題ー

   報告:中西氏 
レジュメ

<報告>

7月例会において,中西氏より電力会社が最近行なっている自主的な新しい過酷事故対策についての報告があった.例えば,東京電力は,柏崎刈羽原発7号機(沸騰水型)の圧力容器直下の格納容器内に溶融炉心(コリウム)の流入を防ぐためのコリウムシールド工事を本年5 月27 日までに完了したと発表した.このコリウムシールド壁には融点2715℃のジルコニア煉瓦が使用されているという.溶融炉心がMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により薄いコンクリート底面(厚さ20 cmしかない)を溶かし格納容器境界を突き破り大量の放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があり,これを防ぐことを目的としている.

また,九州電力も過酷事故時に溶融炉心の格納容器外への漏洩を防ぐことを目的にして,玄海原発3,4号機(加圧水型)の格納容器のキャビティ側壁に高さ1.2 m,厚さ30 cm のコンクリート壁を増設する補強工事を行なうことを申請している.この補強はキャビティ側壁には6.4 mm の鋼板がむき出しになっており,流れ込んだ大量の溶融炉心により鋼板が損傷して放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があるからである.ただ中西氏によれば,九州電力が予定しているのは融点が1200℃のコンクリートであるという.これで2600℃以上にもなると想定される溶融炉心に耐えられるかは疑問である.

これらの電力会社の過酷事故対策は,現在の原発には過酷事故に耐えられない欠陥があることを自ら認めたことになる一方で,比較的安価に実行できる対策の一つのみを行い,安全対策を行なっているというポーズをとる意図が見え隠れしている.なお,九州電力はメルトダウンした溶融炉心を水張りした格納容器で受け止める対策を基本としているが,その水量が多い時には水蒸気爆発の危険が高く,少ない時にはMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により多量の水素ガスや一酸化炭素を発生しながらコンクリートが浸食される危険がある.九州電力は,これらの水蒸気爆発やMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)については複雑で「現状では知見が十分あるとはいえない」と認めている.この分野の研究者の中では,高温の溶融炉心が大量の水と接触すれば確率1で,つまり,必ず水蒸気爆発が起こるということが国際的合意となっている.水を張った格納容器で溶融炉心を受け止めるという原子力規制委員会が認めた対策は,明らかにこの国際的合意を無視あるいは軽んじている.このような不十分な知識の中でさらに,一部の安価な過酷事故対策のみで玄海原発の再稼働を急ぐのは冷静に見て危険ではないか.

6月例会 六ヶ所村の白血病&川内原発行政訴訟

6月例会


日時:2016年6月25日(土)14:00〜16:30
内容:(1)
六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連
      報告:森永氏 レジュメ
   (2)川内原発の行政訴訟について
      報告:三好氏 
発表資料

<報告>

6月例会において,はじめに森永氏より六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連に関して実証データに基づく報告があった.六ヶ所村の核燃料再処理工場は,2006 年から実際の使用済み核燃料を用いた運転による施設の調整(いわゆる「アクティブ試験」)を行っている.アクティブ試験が終了すれば本格運転となるが,さまざまな理由からアクティブ試験終了は延期に次ぐ延期となって,2009年終了予定が現時点では2018年終了となっている.このアクティブ試験中にも核燃料再処理で出るトリチウムは海洋に垂れ流される.2006, 2007, 2008年の3年間で海洋に垂れ流されたトリチウムの量は,それぞれ,490, 1300, 360テラベクレルと大量である(加圧水型で比較的トリチウム放出の多い玄海原発でも年間放出量は100 テラベクレル以下の程度).核燃料再処理施設から放出される放射性物質のほとんどはトリチウムであるという.英国のセラフィールド再処理工場からの距離が離れるにしたがって白血病発症の危険度が低下することがM.Gardner らの研究で確かめられている.また,トリチウム放出量が六ヶ所村再処理工場より少ない玄海原発周辺でも稼働後に白血病死亡率が増加していることが確かめられている.六ヶ所村ではトリチウム大量放出後に白血病死亡率が増加傾向であることが実証データにより確かめられたという.

次に三好が,原告33名で6月10日に福岡地裁に提訴された川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟について報告を行った.三好本人も原告になっているこの行政訴訟は,原子力規制委員会が許可した川内原発1号炉及び2号炉に対する設置変更許可を取り消すことを請求している.弁護団の共同代表は,河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士である.訴訟までの経過は以下のとおりである.
①原子力規制委員会は,九電の川内原発の設置変更申請について許可した(2014年9月10日)
②原告らは,原子力規制委員会に対し,前記①の設置変更許可に対し,行政不服審査法による異議申立てを行った(2014年11月7日)
③原子力規制委員会は,前記②の異議申立てを棄却する旨の決定を行った(2015年12月11日).
④本件設置変更許可は,設置許可基準規則6条1項などに違反し違法であり,訴訟をおこした(2016年6月10日).

本年4月6日に福岡高裁宮崎支部は「川内原発1, 2 号機の運転差止めを求める仮処分」にたいして抗告棄却の(差止めを認めない)決定を出した.しかし,この決定の中には,火山ガイドは噴火予測が可能であることを前提としている点において不合理であること,過去に火砕物密度流が到達した原発は原則として立地不適であること,5つのカルデラ火山が破局的噴火を起こす可能性が十分低いとした判断過程が不合理であること,姶良カルデラが近いうちに噴火する可能性がありそれが破局的噴火に発展する可能性が否定できないことなど,正当な認識が含まれている.これらの正当な認識にも係わらず,この裁判が民事であったことから「リスクはあるが社会通念上無視しうる程度の危険である」という不当な理由で差止めが認められなかった.弁護団は,川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟であれば,裁判所は同じレトリックは使えないはずであるとして,論点を火山の問題に絞り,早期の勝訴判決をめざすとしている.

5月例会 松山集会&IAEA深層防護第5層

5月例会


日時:2016年5月21日(土)14:00〜16:30
内容:(1)
再稼働阻止ネット主催「全国相談会」@松山の報告
      報告:豊島耕一氏 
レジュメ
   (2)
IAEA深層防護の第5層について
      報告:中西正之氏 
レジュメ

<報告>

5月例会において,はじめに,4月23-24日に四国・松山で行われた再稼働阻止全国ネットワーク「全国相談会」の様子を豊島氏より報告をいただいた.2日間の参加者は100名程度で,「原発現地」など17グループからの報告があり,討論時間は8時間半におよんだという.伊方原発の伊方町では,「50km圏内住民有志の会」によるはがきアンケートを昨年9月に実施(回収率36%)し,再稼働反対が52.3%であったとのこと.全国一斉の共同行動が呼びかけられた.「中央構造線に火がついた!! 川内原発止めろ! 伊方原発動かすな!」の全国共同行動を毎月11日前後に行う.23日の午後に行われた集会デモでは,2800人の参加(主催者発表)があったという.

次に中西氏より「IAEA深層防護の第5層について」の報告をいただいた.IAEA深層防護の第5層は,過酷事故発生時の住民の避難計画だけでなく,原発内で働く作業者や消防士,警官などの救援者の被ばく防止,放射能汚染した食物の処置,被ばくした人の医療処置などについても詳細に検討されている.しかし,原子力規制委員会が策定した「原子力災害対策指針」は,4月例会での吉岡氏の指摘にもあるように,最悪の事態が重なった場合の防災計画がないなど全体として不十分なものである.したがって,この「原子力災害対策指針」を参考にして作成された佐賀県の「地域防災計画,原子力災害対策」は,ほとんど実効性のある防災対策とはなっていないという.

4月例会「非常事態のもとでの原子力防災体制」

4月例会


日時:2016年4月23日(土)14:00〜16:30
内容:非常事態のもとでの原子力防災体制 
発表スライド
報告者:吉岡 斉氏(九州大学教授,原子力市民委員会座長)

<報告>

4月例会において,吉岡氏から「非常事態のもとでの原子力防災体制」についての以下のような内容で詳細な報告を受けた.
 1. 日本の原子力安全規制行政の歴史と現在
 2. 原子力安全規制改革の要点
 3. 原子力危機管理の考え方
 4. 福島事故における原子力危機管理の失敗
 5. 原子力危機管理体制は再構築されたか
 6. 放射能の拡散予測とモニタリング
 7. 武力攻撃・破壊工作対策
福島原発事故で期待された機能を果さなかった3つの組織系統レベル(政府中枢,オンサイト,オフサイト)の危機管理体制は,その反省をふまえて3つの組織系統レベルでさまざまの改善策が導入されたが,本質的な改善になっていない.例えば,オンサイトレベルでは,過酷事故対策の設備・機器が増強されが,破壊工作とに対しては全く無力であり,放射能の大量放出を防ぐ最後の壁が破れるか,その瀬戸際に至った場合の危機管理体制についても配慮されていない.また,オフサイトレベルでは,国家レベルでの防災・避難計画がなく,輸送手段の崩壊など最悪の事態が重なった場合の防災計画がないことは重大な問題であるという.
福島原発事故では,放射線モニタリングシステムが崩壊した.ほとんどのモニタリングポストは使用不能となり,SPEEDIと一体的に運用すべき緊急時対策支援システムERSSが使えなくなった.SPEEDIは使用可能であったが,その活用についての行政上のルールが未整備のために有効には使われなかった.原発再稼働に際しては,これらの教訓を踏まえて,放射線モニタリングシステムの事故・災害に対する抵抗力の抜本的強化が必要であるという.

3月例会 大津判決&玄海原発再稼働問題

3月例会


日時:2016年3月26日(土)14:00〜16:30
内容:(1)大津判決の内容について 
レジュメ 判決要旨
   報告者:伊佐智子氏(久留米大学講師)
   (2)玄海原発の再稼働を阻止するために レジュメ
   報告者:中西正志氏(元燃焼炉設計技術者)

<報告>

(1)大津判決の内容について
伊佐智子氏に,3月9日に大津地裁において出された高浜原発3, 4号機についての再稼働禁止仮処分決定の内容を報告いただいた.大津地裁は,高浜原発のある福井県の隣県の地裁である.その決定内容は,「1.債務者(関西電力)は高浜原発3, 4号機を運転してはならない.2.申立費用は,債務者の負担とする」というものである.裁判は,①主張立証責任の所在,②過酷事故対策,③耐震性能,④津波に対する安全性能,⑤テロ対策,⑥避難計画などに対して争われた.主要な点での判決内容を以下に示しておく.
①主張立証責任の所在について,決定では,最終的な主張立証責任は債権者(住民側)にあるが,原子炉施設の安全性に関する資料をすべて保持している債務者(関西電力)は,自ら依拠した根拠や資料を明らかにすべきで,その点についての主張・疎明(裁判用語,説明のこと)が十分になされないのであれば,その判断に不合理な点があると推論せざるを得ないとしている.また,原子力規制委員会の設置許可は,十分な検討をした主張・疎明にはならないとしている.
②過酷事故対策について,決定はまず,甚大な災禍をもたらした福島原発事故は原発の危険性を具現化したものであり,原因究明も進んでいないとし,明確になったのは,津波対策が不十分だったことのみで,他の対策がすべて検討されたか不明であるとしている.その上で,過酷事故発生に備え,一定の安全対策はあるが,その備えで十分とはいえない,相当の根拠・資料に基づいた疎明がなされていないとしている.
④津波に対する安全性能については,1586年の天正地震により大津波が押し寄せたとの記載があり,津波堆積物調査やボーリング調査の結果で,大規模な津波が発生したと考えられないと言っていいか,疑問なしとしないとしている.⑤テロ対策については,第三者の不法侵入などについての安全対策は必要であるが,大規模テロ攻撃への対応策は国によって対応されるべきものとしている.
本事案の今後予想される司法手続きは,関西電力が異議申し立てをすれば大津地裁で異議審となり,その判決のあと敗者が抗告すればさらに大阪高裁での抗告審での裁判ということになるということである.
今回の大津判決の意義は,決して小さいものではない.これまで私たちは再稼働させないためにどう運動するかという観点でものを考えてきたよう思うが,それがすべてではないということが明らかになったということである.運転差し止め仮処分決定で再稼働されてからでも仮処分を勝ち取ることができる可能性があるということが分かったということである.さらに言えば,玄海原発の佐賀県の隣県である福岡県民であってもそのような差し止め訴訟を福岡地裁に提訴することができるということである.もちろん,長崎県民でも熊本県民でも可能です.電力会社は,そのようなすべての裁判に全勝しなければ運転を続けることはできないということである.

(2)玄海原発の再稼働を阻止するために
次に,中西正之氏に玄海原発の再稼働を阻止するための戦略戦術についての報告をしていただいた.国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方を正確に理解することが大切である.深層防護は,次の5つの層からなる.
第一層:異常運転および故障の防止
第二層:異常運転の制御および故障の検出
第三層:設計基準内の事故の制御
第四層:事故進展の防止およびシビアアクシデントの影響緩和策
第五層:放射性物質の放出による放射線影響の緩和
この5つの各層の防護は,それぞれが独立して効力を発揮することが深層防護の基本である.例えば,第三層までの防護があるからといって,第四層の防護が十分でなくてよいということにはならない.同様に,第四層までの防護があるからといって,避難計画を含む第五層の防護を考えなくてよいということにはならない.しかし,日本の原子力規制委員会が策定した新規制基準には第四層の対策が不十分にしか対策されていない.また,第五層は,はじめから考慮されていない.このような点を正確にたくさんの市民に講演会や公開討論会などで伝えていくことが大切である.さらに,関係する地方自治体の議会や首長などへの積極的な要請活動なども重要であろう.

2月例会「いわゆる増田論文問題について」

2月例会


日時:2016年2月20日(土)14:00〜16:00
内容:いわゆる「増田論文問題」について 
レジュメ 報告パワーポイント
報告者:三好永作

<報告>

 2月例会では,いわゆる「増田論文問題」について三好が報告した.「増田論文問題」とは,『日本の科学者』2015年10月号pp.38-41に掲載された「福島原発事故による放射性ヨウ素の拡散と小児甲状腺がんとの関連性,およびその危険性」と題した増田善信氏の論文が自分たちの著書『放射線被曝の理科・社会』を批判する目的で書かれたものであると判断した清水修二・野口邦和・児玉一八の3氏が「放射線被曝の影響評価は科学的な手法で 甲状腺がんをめぐる増田善信氏の論稿について」という論文を『日本の科学者』に投稿したが,編集委員会により掲載を見送るという決定を受けたため起きている,JSA内外の一連の動きである.
 3氏は,この措置を非民主的であるとしてJSAを退会届けを提出し,そのうち一人は東京支部で届けが受理された.この問題に関連して他のJSA会員の一人も退会を表明していると聞く.
 これら2つの論文(以下、掲載されなかった清水・野口・児玉論稿も論文と呼ぶ)を読み冷静に問題点を検討してみた.検討の結果を結論的に言えば以下の3点にまとめられる.①清水・野口・児玉論文は,「増田論文のターゲットは『放射線被曝の理科・社会』を批判すること」という妄想のもとで書かれたものである.増田論文のターゲットは県民健康調査検討委員会の「中間とりまとめ」である.②清水・野口・児玉論文では,「放射線被ばくの影響評価は科学的な手法で」というタイトルにもかかわらず,科学的ではない主張や枝葉末節での「批判」が展開されている.③『日本の科学者』編集委員会が清水・野口・児玉論文を掲載を見送るという決定をしたのは妥当である.

1月例会「原発と地震・火山」

1月例会


日時:2016年1月12日(土)14:00〜16:30
講師:山崎文人氏(元名古屋大学地震火山研究センター)
講演:「原発と地震・火山 地球科学的時間スケールと日常的時間スケール」

<報告>

 1月例会において,山崎文人氏に「原発と地震・火山 地球科学的時間スケールと日常的時間スケール」というタイトルで講演頂いた.まず,山崎氏は,原発の設計・審査は地震学の新しい知見が反映されておらず,原発は地震学の古い知識で運転していると警告した.1966年11月の福島第一原発1号炉の審査では,「この地域は地震が少ない地域である」とされていた.1950年代は地震の静閑期であった.地球科学は,ウィルソンによるプレートテクトニクス(1965年)など1960年代に大きく発展したという.地震学者の率直な思いは「活発な地殻変動帯である日本になぜ原発を作るのか」ということだと言われた.
 九州の火山の噴火は予知できるのか? という問いに対して,噴火の予知に繋がるデータを持ち合わせていないのが現実だと言う.
 高レベル放射性廃棄物の「地層処分」に関して,昨年5月に国が候補地を選定することを閣議決定したが,地下300m以深に多重バリアを築くという「地層処分」は未確立の技術であり,しかも,活発な地殻変動帯である日本において長期にわたり安定な埋設場所に関する学問的根拠はないと明言した.

 講演の後,参加された人よりメールで以下のような質問があり、それに対して山崎氏は大変丁寧な回答を寄せられましたので,ここに質問者と回答者の承諾のもとに紹介します.
質問:昨日聞き忘れたことですが,群馬大学の早川由紀夫教授(火山学)という方が,震災直後からツイッターを駆使して,大衆にアプローチされています.国会質問で採用された,最初の汚染地図を公表された方です.仕事中も,ツイッターに熱心で,どうしてこういう時間がおありなのかと疑問を禁じ得ませんでした.一部の東大教授も実は同様の行動を取られておりました.多くは「原発大丈夫,再稼働しないと未来はない」という発言を繰り返しておられたように思います.当初,早川教授は,原発事故による放射能汚染,避難の必要,そして福島の食べ物を食べるべきではない,という警告をされていました.その後,福島で子どもの甲状腺が多発すると,突然のように,主張を変えられ,「甲状腺癌の原因は,原発事故由来の放射能ではない.検査の精度が上がったための,スクリーニング効果だ」という主張をされております.
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-598.html#comment4402
http://togetter.com/li/581505
医師や医学者でない方が,「被曝影響ではない」との発言を繰り返されることに,不安を感じております.また,早川教授という方が,地震学会ではどのような位置づけであられるのか,もしご存じの先生がおられましたら,ぜひ,ご意見を賜れればありがたく存じます.

回答:土曜日のおしゃべりはあんなものでよかったのでしょうか.どのような方々が参加されておられるか,全く情報が無かったもので,戸惑っていたものでした.さて,早川由紀夫氏の件ですが,個人的には全く面識が無いもので責任を持ってお答えすることはできません.ネット上で多少フォローした範囲での感想を若干だけ記しておきます.見当違いがあるかもしれません.
①ネット論争について
ネット固有のぐちゃぐちゃなやり取りの世界がもろに出ているようで,私はそのような世界は避けて通ることにしています.ただ,研究者というのは(というか,正確には「研究者の中には」)多かれ少なかれ,こだわり屋で自分を過信するきらいがあって,自分の研究対象への科学性はしっかり貫かれていても,それと離れた日常においても実証性を忘れて自分の「科学性」が貫徹されていると思い込み,自分の判断に固執することがままあるのではないでしょうか.それが昂じると・・・・.彼は多分にそのようなきらいがあるように思います.
②「放射能拡散の図」と「甲状腺がんの原因」について
放射能がどのように拡散していったかを彼がいち早く公表したことに関しては(どのようなデータを取り扱ったか詳しくは知りませんが)彼の専門を生かした結果と思われますので,高く評価できると思います.甲状腺がんに関わる結論を彼がどの様な根拠をもとに結論づけたのか私には理解できません(←そこまでフォローできません.また,彼の専門とは直接には関係ないのではとも思います).ただ,私たちに「都合の良い」結果を出す研究者は「味方」,「不都合な」結果を出す研究者は「味方でない」と色分けするのは避けるべきでしょう.留意すべきは,それらの「結果」がどのような根拠とプロセスを経て出され,それが適切なのかどうかをしっかり見極めることだと思います.
③小児甲状腺がんの原因について
福島における20才以下の検査で甲状腺がんが多数見いだされたこと,2巡目の検査で前回異常なしとされた人からも見いだされた件について,その原因は「過剰診断」や「スクリーニング効果」であって,原発事故による被曝が原因ではないと発表されたことについて.その発表で,当事者は大変だなと思いつつ,なんで「被曝が原因ではない」と結論付けられのか,原発事故の影響がないと考えられる別の場所での同じレベルのスクリーニングをやって,その比較を行うのがイロハな常識だろうということです.スクリーニング効果で増加するのは当たり前で,それがどの程度で,全体を説明できるのか,あるいは説明できない部分が残るのかを調べて初めて結論付けることができるのであって,多少でも研究に携わったことのある人なら常識も常識です.まさかこの分野の「第一人者」というのは本当にこんなレベルなのだろうかと.
 ただし,一言.これについての論文の結論には「・・・・, our descriptive analysis suggests the possibility of overdiagnosis.」すなわち,「過剰診断の可能性を示唆している」と断定的ではない表現になっています.これが論文のスタイルだとは思いますが.この論文のタイトルは,
Quantification of the increase in thyroid cancer prevalence in Fukushima after the nuclear disaster in 2011—a potential over diagnosis?
というもので,
http://jjco.oxfordjournals.org/content/early/2016/01/10/jjco.hyv191.long
で見ることができます.
 因みに,これと全く逆の結論(原因は被曝によるもの)を出しているのが,
Thyroid Cancer Detection by Ultrasound Among Residents Ages 18 Years and Younger in Fukushima, Japan: 2011 to 2014.
という論文で,そのURLは,
http://journals.lww.com/epidem/Abstract/publishahead/Thyroid_Cancer_Detection_by_Ultrasound_Among.99115.aspx#
で,その日本語抄が,下記URLに載っています.
http://www.ourplanet-tv.org/?q=node/1984
さらにびっくりしたのは,この原発には関係ないという結論を出すにあたって,「内部被曝」を全く考慮外としていることです.私はてっきり考慮したうえでの結論であって,むしろ一体どうやって内部被曝のデータを得られたのかなと考えました.かなりに困難だからです.そうしたら,実は,内部被曝については良く判らないから最初から考慮外としていたと「堂々と」表明したとのことで,さすがに「え゛ー,嘘でしょ!」と.そうだとすれば「原発は関係ない」との結論を出しようがないはずです.こと甲状腺がんに関しては,内部被曝こそが「最重要参考人」だと考えるのが普通だからです.だいたいヨード液を飲めというのは放射性ヨードが甲状腺に集まって内部被曝をおこすのを防ぐためで,これまたイロハの問題です.最重要参考人のことは良く判らないからと除外しておいて,「原発は関係ない」という結論を出すのは論理的にも手続的にも全くの誤りです.以上,参考になりましたら.

12月例会「世界の原発産業と日本の原発産業」

12月例会


日時:2015年12月12日(土)14:00〜16:30
講師:中野洋一氏(九州国際大学)
講演:「世界の原発産業と日本の原発産業」

<報告>

 12月例会において,中野洋一氏(九州国際大学)に「世界の原発産業と日本の原発産業」というタイトルで講演をして頂いた.中野氏の専門は国際経済学である.核問題研究会で経済学者の話を聞くのははじめてである.氏によれば,石油危機の発生が,米国をはじめとした先進国における原発の本格的導入の契機となったという.
 1973年の第一次石油危機では,OPEC(石油輸出国機構)は原油価格を1バレルあたり3ドルから12ドルに跳ね上げ,1979年の第一次石油危機では36ドルにまで高騰させた.先進国が原発依存を急速に進めたのは,このようなOPECに対抗して,中東湾岸諸国の原油への依存を低下させるためであったという.そのために,原発は安全であり発電コストが低いというプロパガンダを大規模に展開した.その後,1979年のスリーマイル島の原発事故,1986年のチェルノブイリ原発事故により,市民の反発や電力自由化により初期投資の大きな原発は避けられ,米国やヨーロッパでは原発の新設は困難となる.
 しかし,日本ではこれらの事故にもかかわらず原発の新設が続いた.2005年,米国発の「原子力ルネサンス」により原発新設の波が発生し,2006年には東芝は米国のウェスチンハウス社を買収した.2009年に政権交代した民主党政府も自民党の原発推進政策を踏襲した.そのような中で2011年3月に福島原発事故が起きた.この原発事故にもかかわらず,安倍政権は原発輸出政策を強力に押し進めている.2013年には,トルコおよびUAEと二国間原子力協定を結び,2015年12月には,インドとの間で原子力協定の早期妥結で原則合意した.
 中野氏は,日本の原発輸出に関連する問題点として次の点をあげた.①インドでは原子力損害賠償法があり,そこには製造者責任が明記されている.インドは核不拡散条約の未加盟国であることも問題である.②日本は原発輸出促進のため「原子力損害の補完的な補償条約」(CSC)に加盟した.この条約には,「異常に巨大な天災地変」の免責事由が明記されているが,この免責事由は「改定パリ条約」や「改定ウィーン条約」では含まれていない.③米国のサンオノレフ原発の水漏れ事故に関連して,三菱重工業に巨額(約9300億円との見通し)の賠償請求がなされている.④日本の輸出原発の安全確認が形だけという問題もあるという.⑤原発メーカーの安倍政権への政治献金は倍増している.

学習講演会「玄海原発の再稼働の是非を問う」

学習講演会のご案内
「玄海原発の再稼働の是非を問う」

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これまでの川内原発,高浜原発および伊方原発の再稼働に向けた原子力規制委員会(規制委)の安全基準審査は,原発事故からの安全性を担保するものではなく,再稼働へのお墨付きを与えるためのものであることが明白になっています.
川内原発の1,2号機を再稼働させた九州電力は,次には玄海原発3,4号機の来年度の再稼働に向けて準備を急いでいます.その再稼働についての規制委の審査は昨年12月を最後に開かれていませんが,九州電力はその審査に向けて社員の「玄海シフト」を進めているとの報道もあります.玄海原発で重大事故が起これば,場合によっては,福岡都市圏は重大な被害を被ることを覚悟しなければなりません.
下記のように玄海原発の再稼働に関わるさまざまな問題を学ぶための学習講演会を企画しました.多数の市民の参加を期待します.ただし,会場の制限により先着76名までとさせていただきます.



日 時:2015年11月14日(土)18:00~20:30
場 所:福岡市立中央市民センター 第一会議室(福岡市中央区赤坂2丁目5-8)
    地下鉄空港線「赤坂駅」2番出口より赤坂西交差点を左折(徒歩5分)
資料代: 500円
内 容:A講演
    (1)「世界最高水準の原子力規制基準ってほんと?」(20分)
レジュメ
      報告:岡本良治氏(九工大名誉教授)  
発表スライド
    (2)「水蒸気爆発及び水素爆発の危険性」(20分)     
レジュメ
      報告:中西正之氏(元燃焼炉設計技術者)
発表スライド
    (3)「佐賀県議会における奈良林参考人陳述への批判」(20分)
レジュメ
      報告:豊島耕一氏(佐賀大名誉教授)  
発表スライド
    (4)「玄海原発と白血病」(20分)            
レジュメ
      報告:森永 徹氏(元純真短期大学講師)発表スライド
    B休憩(10分)
    C質問と討論(60分)
主 催:福岡核問題研究会
問合先:三好永作(電話:092-522-8401,メール:eisaku.miyoshi@kyudai.jp)

<報告>

 夜にも拘わらず35名の参加があった.岡本氏は,「日本の原子力規制基準は起因事象の設定だけは厳しいが,その設定に対する評価が極端に甘く,世界一楽観的な進展シナリオに沿った,世界一奇妙な評価が行われている」と厳しい評価を下した.
 中西氏は,西欧やソ連/ロシアにおける過酷事故対策の基本は水蒸気爆発や水素爆発を回避するため水を使わない対策であり,溶融した核燃料を格納容器に貯めた水で冷却するという規制委員会推薦の対策は,危険であるとした.
 豊島氏は,佐賀県議会・特別委員会での奈良林直氏による放射線の人体への影響を軽視するなどの発言に対して批判を行った.
 最後に,森永氏は,佐賀県内の20自治体について玄海原発稼働前および稼働後の白血病死亡率と玄海原発から自治体までの距離の関連を調べ,玄海原発からの距離が小さい自治体ほど稼働後の白血病死亡率が高くなっていることを示した.様々な要因を検討した結果として,この白血病死亡率の増加は玄海原発から放出されるトリチウム以外には考えられないと結論した.
 休憩後,森永氏の講演に関連した質疑・討論を中心に,これらのデータをどのように再稼働に反対する運動に生かしていくかという議論も含めて活発な討論があった.
 「さよなら原発!佐賀連絡会」から,佐賀市において12月12日に同様な原発問題学習会を開催したいという提案があり,協力することになった.
 学習講演会について参加者に尋ねたアンケートの結果は以下の通りであった.
(1)あなたの性別を答えてください.
  a. 女性:27%   b. 男性:73%
(2)あなたの年代を選んでください.
  a. 20代:0% b. 30代:9% c. 40代:0% d. 50代;18% e. 60代:55% f. 70代以上:18%
(3)このシンポジウムを何で知りましたか.
  a. 友人・親族:27% b. ウェブサイト:9% d. メール:55% e. その他:9%
(4)この学習講演会の感想を次から選んでください.
  a. 大変有用であった:55% b. まあまあであった:18% 無回答:18%  難しかった:9%
(5)日本科学者会議の原発シンポジウムや講演会に出席されたことがありますか.
  a. 参加したことがある:55%    b. 今回が初めて:45%
(6)今後,講演会などで取り上げてほしいテーマは何ですか(複数選択可).
  a. 放射線被ばくの健康被害:55%    b. 福島第一原発の現状:45%
  c. 原子力発電への地震の影響:27%   d. 引き続き,玄海原発の再稼働問題:45%
  e. 原子力発電の廃炉問題:55%     f. 再生可能エネルギーの展望:45%
  g. 日本の原発輸出政策について:36%  h. 安保法制に関する問題:27%
(7)その他,ご自由にお書きください.
 ・重要な話を有難う御座いました
 ・九電,国との交渉内容とレベルが違いすぎる.学習会,研究会をたくさん行ってたくさんの人に知ってもらう以外に方法はないのかも知れません.
 ・原子力,核分裂等について素人なので専門的な話はなかなか理解が困難ですが,安倍晋三や菅義偉がいう「世界最高水準の安全性」がデタラメであることだけは理解できる.政府の原発政策を止めさせるような運動の理論武装となるような話を聞きたい.
 ・今回初参加です.ぜひ,次回も参加させていただきたい.
 ・自分には難しすぎてほとんどわからなかった.いただいた資料や研究会のHPをみて,少しでも理解できるようになりたい.科学者の先生たちが主催してくれた学習会なので,「科学」の話は「科学」の話として,また,「科学以外の部分」の話,たとえば,「政治とか行政」の話はそういうもんですよと分けて話してもらえて,そこはよくわかった(でも実際は,その理屈をそのまま押し通すことはできません).

Liebe KKW-KritikerInnen

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Liebe KKW-KritikerInnen,

Wir, Fukuoka-Kaku (Kern)-Mondai (Probleme)-Kenkyu (Untersuchung)-Kai (Gruppe), appelieren schon lange in Fukuoka/Japan an Gefaerlichkeiten und Sorgen uebers Kernkraft-Werk.

Jetzt plant die Japanische Regierung die Wieder-In-Betrieb-Setzung (Japanisch: Ssai-Kadou) von KKW Ssendai in Kyushu/Japan. Wir organisieren mit anderen Initiativen die Aktivitaeten dagegen und moechten heute Sie, KKW-KritikerInnen in der Welt, herzlichst um die Mitwirkungen bitten, uns zu helfen und Kritik gegen Ssai-Kadou an die Organisationen auf der naechsten Seite zu schicken.

Das Atomkraft-Regulierung-Komitee, die eigentlich fuer die Sicherheit der Bevoelkerungen von KKW-Problemen unabhaengig und wissenschaftlich urteilen soll, hat unter dem Druck der Atom-Kraft-Foererungsgruppen die Sicherheiten von KKW widerrechtlich und unrecht, d.h. ganz nachlaessig, geprueft und der Kyushu Elektrizitaetsgesellschaft (Kyuden) die Ssai-Kadou vom Ssendai KKW genehmigt. Sie hat der Kyuden die notwendigen Sicherheitmassnahmen, die nach der Regulierungnorm fuer die KKW-Sicherheiten unbedingt gefordert sind, nachgesehen und die Gueltigkeiten des Evakulierungsplans fuer die Bevoelkerung in der Naehe von demKKW bei der Super-GAU nicht untersucht.

Das Atomkraft-Regulierung-Komitee, dem BuergerInnen den Widerruf der Genehmigung der Ssai-Kadou und das Aufhoeren der Pruefungsmassnahme darboten hatten, hat bis jetzt keine Antwort gegeben. Das hoert nur die Stimmen der Regierung und Elektrizitaetsgesellschaften hat ganz und gar Forderungen der Bevoelkerungen vernachlsessigt.

Die Kyuden hat eben abgelegt, die Erklaerungsmeetings fuer die Bevoelkerungen in der Naehe von KKW zu veranstalten, die die Parlamente der Gemeinden um das KKW gefordert hatten.

Das Ministerium fuer Internationalen Handel und Industrie, das die Aufsicht ueber die Aktivitaeten von Kyuden fuehren soll, hat dafuer nichts getan, um die Kyuden sich demokratisch und freundlich fuer Leute um KKW verhalten und auf sich soziale Verantwortungen nehmen zu lassen.

Der Plan der Ssai-Kadou ist wissenschaftlich,und technisch nicht recht, sondern auch unmoralisch und unsittlich, weil wir nicht mehr nuklearen Rest als Altlast weiter uebriglasen sollen und wir wieder die Super-Gau, die groesser als Fukushima sein kann, haben koennten, wenn Ssendai KKW wieder in Betrieb gesetzt wird. Wir alle wissen, dass Voraussehen und Gegenmassregeln der natuerlichen Unfaelle und Geschehen, die Ungluecke des Reaktors mitbringen wuerden, allzu locker sind und Gegenmassregeln des Reaktors gegen Absturz der Maschine oder Terroristen ganz unausreichend sind und unter dem internationalen Niveaur liegen. Und weiter sind Vorraete fuer die Bedruefnisse des Alltagslebens und Trainierung der Zuflucht beim nuklearen Unfall allzu ungenuegend. Wir finden nicht, dass der Plaene ernst diskutiert worden sind, besonders der Plan bei zusammengesetzten Unfaellen aus natuerlichen Ungluecke und nuklearem Schaden, z.B. bei dem Erdbeben oder Vulkanausbruch und der Plan der Zuflucht der Bevoelkerungen.

Fehler, die die Super-GAU Fukushimas verursachtet haben, muessen nicht mehr wiederholt werden. Das Wichtigste, den natuerlichen und menschlichen Unfaellen zu steuern, ist das Sicherheitshalten und die Achtung der Moral bei allen technischen, politischen Faellen. Wir duerfen keinen oekonomischen Vorteil dem moralischen Standpunkt vorziehen. Wir muessen das System haben, das richtige Urteile und Verhalten bewahren und hoch schaetzen kann.

Die Japanische Nukleare Politik ist bis jetzt unter 3E-Begriffen gefoerdert: Energy Security, Economy und Environmental Conservation. Nach Fukushima ist der Begriff Safety hinzugefuet. Man sagt es “ 3E + S ”. Aber in Fukushima hat die Safety fast keinen Sinn. Vielmehr gibt es immer und ueberall Gefahren: in den Wasserspeichern fuer Bewahrung des Brennstoffs gibt es Moeglichkeiten der Brennung des Brennstoffs Zirkonium, radioaktive verschmuetziges Wasser fliesst jeden Tag in die Umwelt, niemand kennt die Umstaende der zusammenschmolzenen Brennstoffe und alle fuerchten deren Wieder-Kritikalitaet, die Situationen in Fukushima sind nie „under controll“, Fluechtlinge aus Fukushima zaehlen jetzt auch nach ueber 100,000 usw.,usw.

Die jetzige japanische Abe-Regierung hat kein Gewissen, so dass sie die japanische Reaktoren exportiern will. Warum laesst man richtige wissenschaftliche, technische Behauptungen mit Unrecht und Trug ausser Acht, uebersieht Umweltzerstoerungen und Leid des anders, sieht nur den kurzsichtigen Vorteil? Weil es dort die Moralitaet fehlt!

In Japan muss man an die Nukleare Politik vom Standpunkt der Ethik, d.h. mit “4E+S”, denken, wie in Deutschland, das sich mit dem ethischen Ausschuss fuer den Ausstieg von AKW entschlossen hat.

Ssendai KKW liegt in der gefaehrlichsten Gegend in der Naehe von einem Vulkan, der die Moeglichkeiten des grossen Ausbruchs hat. Wenn es Ausbrueche des Vulkans und damit die Auper-GAU vom KKW gibt, faellt die radioaktive vulkanische Asche in der Welt. Wie kann man der radioaktiven Aschen abwehren? Nieman kann sich gegen den Fall der radioaktiven Asche wehren. Die einfache und beste Loesung gegen die radioaktive Asche ist der Stopp des Betriebs vom KKW, d.h. das Aufhoeren des Plans von der Ssai-Kadou. Das ist ein echt ethischer Urteil von Jetzt.

Die jetztige Japanische Regierung unter dem Premierminister Abe will die Japanische Armee zum anderen Land schicken, was gegen die Japanische friedliche Verfassung ist. Wenn die japanische Armee wirklich nach aussen geschickt wird, vermehren sich Kraefte gegen Japan und Moeglichkeiten, dass sie japanische KKW attakieren wollen. Es gibt Leute, die meinen, dass man die nuklearen Ausruestungen haben muessen, wenn es Moeglichkeiten der nuklearen Attackierung gibt. Sie sind nicht recht.

Wir sollen auf die Kontrolle durch die Kraft versichten, weil sie das Ende der menschlichen Lebens auf der Erde fuehren koennten. Wir muessen sie mit der Kontrolle mit Gewissen und Vernunft wechseln. Damit die Menschheit, die immer Fehrer macht, immer egoistisch und boese mit andern ist, die friedliche Welt hat, in der alle Weltbuerger ruhig leben, ist das Verbot von Produktion, Aufbewahrung und Benutzung der Nuklearstoffe der einzige und rechte Weg. Weil die Nuklearestoffe allzu gefaehrlich sind und Menschheit unmoeglich ist, sie zu kontrollieren, was jeder schon ganz gut kennt.

Japan kann in der Welt die Hoffnung auf den Aufzicht darauf erwecken, wenn Japan, das Hiroshima, Nagasaki, und weiter Fukushima erfahren hat, bei diesem Verzicht die Leitung uebernommen haette. Trotzdem haben die japanische Regierung und die Kyuden leider schon offenbart, dass Ssendai KKW am 11. August in Ssai-Kadou setzt wird.

Wir bitten Sie darum herzlichst, dass Sie an die Organisationen auf der naechsten Seite Mail schreiben und die Ssai-Kadou vom Ssendai KKW kritisieren und den Atomausstieg in Japan apellieren.

Am 27. Juli 2015, Kern-Probleme-Untersuchung-Gruppe, Fukuoka/Japan.

Petition Against Restarting Sendai Nuclear Power Plant

Petition Against Restarting Sendai Nuclear Power Plant


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Fukuoka Study Group for Nuclear Issue
July 30, 2015


Restarting the Sendai Nuclear Power Plant (Sendai NPP) in Kyushu Island, Japan, under the current circumstances is a grave mistake, not only from the scientific and technical point of views, but also legally and institutionally. Ethically and morally it is bankrupt.
First of all, as the “negative legacy”, the amount of nuclear wastes should not be increased above the present level. Restarting the Sendai NPP would also lead to a nuclear catastrophe worse than that of the Fukushima nuclear accident. This is because the present assumptions about and the prepared countermeasures against expected disasters that would result in nuclear accidents are totally inadequate, and especially the countermeasures against severe accidents including aircraft collisions and terrorist strikes do not fill even the international standards. Preparations and drills for the nuclear disaster prevention and evacuation plans are alarmingly insufficient. In particular, responses to combined NPP accidents arisen from natural disasters such as volcanic eruptions and earthquakes and the evacuation plans for disaster-vulnerable people are far from satisfactory.
The Nuclear Regulation Authority (NRA) subservient to the logic of the nuclear proponents has approved the application of Kyushu Electric Power Company (KyEPCO) in an illegal and unjust manner. The NRA allowed grace periods even for the safety measures required under the regulatory standards and is reluctant to review the validity of the evacuation plan. Concerned citizens felt compelled to file a legal injunction against the NRA to have the restart approval rescinded and the review process suspended, but there has been no response to the injunction to this day. Ignoring the many council resolutions of the surrounding municipalities, KyEPCO has not held meetings to explain their position to local residents. The Ministry of Economy, Trade and Industry (METI), which should be supervising KyEPCO, has not issued orders for improvement of KyEPCO’s inappropriate business management, which shows abandoning its social responsibility and a bold disrespect for democratic civil society.
We must not repeat mistakes similar to the Fukushima nuclear disaster. In order to prevent accidents caused by human errors or natural disasters, we must respect ethical requirements in all situations with respect to technical and political judgments so that the safety will be the top priority over economic and other considerations. It is necessary for us to have a social mechanism in that fair and correct judgment, speech, and action will not be suppressed but will positively be evaluated.
As the goal of Japan’s energy policy, “3E”, standing for “Energy Security, Economy, and Environmental Conservation”, have been emphasized, but, after the Fukushima nuclear disaster, the goal should be “3E+S” by adding “Safety” to “3E”. At the Fukushima site, however, the danger of the spent -fuel pools (fires caused by the zirconium around the nuclear fuel) still exists, and the total mount of radioactive contaminated water continues to increase. The state of the molten nuclear fuel has not yet been ascertained and there is the fear of reaching the critical condition again. Thus, the overall situation is not yet far from being under secure control. The total number of the nuclear accident evacuees, including voluntary evacuees, is still well over 100,000, and these evacuees are not being properly taken care of.
Yet, the Abe administration and the nuclear power plant manufacturers are intending to restart Japan’s NPPs and export NPPs to other countries, a clear sign of their conscience paralyzed. Whenever certain scientific and technical problems are exposed in specific terms, they tend to react to the matter inappropriately. Especially if the nature of the issues turns out to be embarrassing for them, they may even try to deceive the public at large. They neglect the public safety and environmental damages for the sake of shortsighted profits and protecting their position. They have no ethical integrity.
Germany has decided to move toward the phaseout of NPPs in compliance to the conclusion of the ethics committee. Learning from Germany, it is very necessary for Japan to work out Japan’s energy policy in a framework of “4E+S” by adding one more E, meaning “Ethics”, to “3E+S”. It would be very difficult for Japanese people and the government to shake off inappropriate customs persisted up to the present and to reflect on their faults and weaknesses. But it is imperative to respect ethical rectitude and to make judgment that puts the safety to the top priority. The Sendai NPP has the risk of the world’s greatest volcanic activity in the region and major eruptions are also serious possibility. If a nuclear accident occurs by the impact of an eruption, there is the fear that volcanic ash heavily contaminated with radioactive substances will fall all over the world. Stopping the restart of NPPs is much a simpler and more feasible way than any countermeasures of disasters. This is also the judgment that pays due respect for the ethical aspect of the issue.
The Japanese government, even at the expense of violating the so-called peace constitution, is eager to recognize the right to collective self-defense and is advancing along the path to dispatch troops overseas. However, this will increase the number of powers that view Japan as an enemy and heighten the danger that NPPs might be attacked. What we need to do is a shift from a kind of control, relying on the nuclear power that would bring about the danger of human extinction, to the control based on conscience and rationality. Humanity is prone to makes mistakes and to harbor self-serving and evil intentions. We believe firmly that, in order to materialize a peaceful world where people can continue to live in security, the only path forward such world is precisely to ban manufacture, storage, and use of nuclear materials which are dangerous and hard-to-manage.
It will become the hope of the world that Japan, that has experienced Hiroshima, Nagasaki and Fukushima, will lead the way in implementing this ban. Verdicts to suspend the operation of the Ohi and Takahama NPPs have been handed down by the courts. On the other hand, in the trial demanding suspension of the restart of the Sendai NPP, the court rejected the suspension in an unjust decision. In the current situation, where the restart of the Sendai NPP may be forcibly implemented as early as sometime in August, the last potential hope that we have is the voices of citizens all over the world against the implementation. We request that you lobby the relevant organizations by referring to the materials and the list of contacts on the following pages.

References

Organizations Protest Approval of Sendai Nuclear Power Plant’s Conformation to Regulatory Standards
http://greenaction-japan.org/en/2014/07/joint-statement-protesting-nuclear-regulatory-authoritys-draft-approval-of-sendai-nuclear-power-plants-conformation-to-new-nuclear-regulatory-standards/

Greenpeace releases confidential IAEA Fukushima-Daiichi accident report
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/IAEA-Fukushima-Daiichi-accident-report/blog/53055/

Technical Issues of Japanese Seismic Evaluations from the Point of Global and Japanese Standards
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/20150428-seismic-evaluation-en.pdf

Implications of Tephra (volcanic ash) Fall-out on the Operational Safety of the Sendai Nuclear Power Plant
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/Volcano_Ash_report_by_John_Large.pdf

The Application and Conformity of the Nuclear Regulation Authority’s New Safety Standards for Nuclear Power Plants with the International Atomic Energy Specific Safety Guide SSG-21, 2012
http://www.greenpeace.org/japan/Global/japan/pdf/large_submission_Sendai_injunction_case.pdf

Public Comments for the Draft Report on Compliance of Sendai Nuclear Power Station with the New Regulatory Requirements Nuke Info Tokyo No. 162 
http://www.cnic.jp/english/?p=2951

Citizens’ Commission on Nuclear Energy http://www.ccnejapan.com/?page_id=1416

Ishibashi & Sato: Concerns over Restarting the Sendai Reactors
Katsuhiko Ishibashi: Seismologist, Emeritus professor, Kobe University / Satoshi Sato: Nuclear Engineer, Consultant & Former GE Engineer
http://historical.seismology.jp/ishibashi/archive/150427FCCJ,pc.png
https://www.youtube.com/watch?v=TkTorYkD3zI https://www.youtube.com/watch?v=3nV018TVMec
https://www.youtube.com/watch?v=4RH3fVIU5_M&feature=youtu.be&_yput=16557
http://historical.seismology.jp/ishibashi/archive/150427FCCJ,ishibashi.pdf

Japan Earthquake Expert Says Nuclear Watchdog Ignoring Risk
http://www.bloomberg.com/news/articles/2015-04-30/japan-earthquake-expert-says-nuclear-watchdog-ignoring-risk

Japanese Governor Ito ignores lessons of Fukushima to approve the Sendai reactor restarts
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/japanese-governor-ito-ignores-lessons-of-fuku/blog/51281/

Japanese regulator caves to the nuclear industry and government pressure – but still no restart for Sendai
http://www.greenpeace.org/international/en/news/Blogs/nuclear-reaction/Sendai-reactor-restart/blog/50534/


List of Contacts

Prime Minister of Japan and His Cabinet 
https://www.kantei.go.jp/foreign/forms/comment_ssl.html
(Information on contaminated water leakage at TEPCO's Fukushima Daiichi Nuclear Power Station)
http://japan.kantei.go.jp/ongoingtopics/waterissues.html

KYUSHU ELECTRIC POWER CO. INC. 
http://www.kyuden.co.jp/en_index.html
http://www.kyuden.co.jp/library/image/img_book/ebook/sendai_gaiyou_ei/wysiweb_std_viewer.html
https://www.facebook.com/kyuden.jp

Nuclear Regulation Authority 
http://www.nsr.go.jp/english/index.html qainfo@nsr.go.jp

Ministry of Economy, Trade and Industry 
https://wwws.meti.go.jp/honsho/comment_form/comments_send.htm
(Status of Nuclear Power Stations) http://www.meti.go.jp/english/earthquake/nuclear/index.html

Kagoshima Prefecture Government 
http://www.pref.kagoshima.jp/foreign/english/index.html
(International Affairs Division) mzma@po.pref.kagoshima.jp

Satsumasendai City 
kokusai@city.satsumasendai.lg.jp koho@city.satsumasendai.lg.jp
https://www.facebook.com/SatsumasendaiCity

Mitsubishi Heavy Industries, Ltd. (Manufacturer in Sendai nuclear power plant)
(Inquiry: Nuclear Power Generation) http://www.mhi-global.com/inquiry/inquiry_nuclear.html







川内原発が動く前に声をあげ行動しよう

川内原発が動く前に声をあげ行動しよう

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福岡核問題研究会
2015年7月25日


 現状での再稼働は科学的・技術的にはもちろん、法的にも制度的にも、さらには倫理的・道義的にも間違っています。まず、「負の遺産」としての核廃棄物をこれ以上増やすべきではありません。また、このまま川内原発を再稼働すれば、福島原発事故を上回る大災害を招く恐れがあります。それは、原発事故の原因となる災害や問題などの想定と対策が甘過ぎ、過酷事故対策や航空機の衝突・テロ対策などが国際基準にも満たないためです。原子力防災・避難計画の備えと訓練などが全く不十分だからです。特に、噴火・地震等による原発事故と天災の複合災害への対応や、災害弱者の避難計画などが問題です。
 原子力規制委員会は推進側の論理に負けて、違法で不当な審査で九州電力の申請を許可し、規制基準が必要とする安全対策にさえ猶予期間を与え避難計画の有効性は審査していません。やむを得ず市民が原子力規制委員会に許可取消しと審査手続き中止を法的に昨年申立てましたが、申立ての回答はいまだに放置されたままです。九州電力は多くの周辺自治体の議会決議を無視して住民説明会を開催しません。九州電力を監督すべき経済産業省は、民主社会を冒涜し社会的責任を放棄する不適切な事業運営の改善を命令していません。
 福島原発事故を招いた過ちを繰り返してはなりません。人災や自然災害などによる事故を防ぐためには、安全性を経済性などより優先するように、技術的・政治的判断などのあらゆる場面で倫理性を尊重しなければなりません。正しい判断と言動が立場を損ない潰される代わりに、守られ評価される仕組みが必要です。
 日本のエネルギー政策の目標は「3E」、つまり「エネルギー安全保障(Energy Security)」「経済性(Economy)」「環境適合性(Environmental Conservation)」を重視しましたが、福島原発事故の後に「安全性(Safety)」を入れて「3E+S」と言われています。しかし、福島では核燃料保管プール(核燃料のジルコニウム火災など)の危険性が残り、放射能汚染水は増え続けています。溶けた核燃料の状況は把握されておらず再臨界の恐れがあり、状況はコントロールされていません。自主避難者含め十数万人以上の原発避難者が救われていません。
 それでも安倍政権や原発メーカーなどが原発の稼働と輸出を企てているのは、良心がマヒしている証拠です。科学的・技術的に具体的な問題が指摘されても都合悪ければ不正やごまかしが横行し、目先の利益と立場を守るために他者の犠牲や環境破壊を見過ごす原因は倫理性の欠如です。
 よって、倫理委員会の結論で脱原発を決断したドイツに見倣い、日本でも倫理(Ethics)を加えて(4E+Sで)エネルギー政策を考える必要があります。これまでの悪しき慣習を断ち切り自らの欠点や弱さを反省し、倫理的な正しさを尊重し、安全性を優先して判断することは大変で難しいことです。川内原発は世界で一番の火山リスクがあり大噴火も想定されます。噴火の影響で原発事故が起きた場合、放射能まみれの火山灰が世界中に降り注ぐ恐れがあります。再稼働中止は、こうした災害に対処するよりは簡単で実現可能な道であり、倫理性を尊重する判断です。
 日本政府は平和憲法に違反してでも集団的自衛権を認めさせて、海外に派兵できる道を進めていますが、これは日本を敵視する勢力が増えて原発が攻撃される危険性を増します。核攻撃を防ぐために核武装すべきとの考えもありますが、人類絶滅の危険さえある可能性が高い力によるコントロールから、良心と理性に基づいたコントロールに転換すべきです。間違いを犯し利己的で悪意を抱いてしまう人類が、安心して住み続けられる平和な世界を実現するためには、危険で管理の難しい核物質の製造・保管・利用の禁止こそが唯一の正しい道であると考えます。
 ヒロシマ・ナガサキ・フクシマを経験した日本が、率先してこれを実行することが世界の希望になります。大飯・高浜原発では運転を差し止める判決が出ましたが、川内原発の再稼働中止を求めた裁判は不当な判断で否決されました。川内原発の再稼働が8月早々に強行されうる現状で、最後に期待できるのは国内外の市民の声です。次頁からの内容とリストを参考に、関係各所への働きかけをお願いします。



「川内原発の再稼働問題などに関する参考サイト」

・福岡核問題研究会
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/
・原子力市民委員会
http://www.ccnejapan.com/
・再稼働阻止全国ネットワーク
http://saikadososhinet.sakura.ne.jp/ss/
・川内原発に関する異議申立て
http://objection-to-nuclear-regulation.jimdo.com/
 1月21日意見陳述(録音)
http://1drv.ms/1zMSmOf
 5月26日意見陳述(録音)
http://1drv.ms/1dEn7e2
 保安規定の認可取消を求める異議申立書
http://1drv.ms/1HXU4Lq
・原子力規制を監視する市民の会
http://kiseikanshi.main.jp/
・原発なくそう!九州川内訴訟
http://no-sendaigenpatsu.a.la9.jp/
・国際環境NGOグリーンピース
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/blog/53052/
・3.16 - さよなら原発!かごしまパレード
http://goodbyenukes-kagoshima.jimdo.com/
・原子力資料情報室
http://www.cnic.jp/
・さよなら原発!福岡
http://sayonaragenpatu.jimdo.com/


「再稼働中止を働きかけて頂きたい関係機関」

・首相官邸(ご意見・ご要望)
https://www.kantei.go.jp/jp/forms/goiken_ssl.html
・九州電力 092-761-3031 (原子力情報)
http://www.kyuden.co.jp/nuclear_index.html
 (お問い合わせ)
https://www1.kyuden.co.jp/php/inquires/index.php/form/input/104
・原子力規制委員会 (問い合わせ先)03-5114-2190
https://www.nsr.go.jp/ssl/contact/
・経済産業省(ご意見)
https://wwws.meti.go.jp/honsho/comment_form/comments_send.htm
 9月12日付_経済産業大臣から鹿児島県知事への再稼働要請文書(鹿児島県HP)
http://www.pref.kagoshima.jp/aj02/infra/energy/atomic/documents/42584_20141118140619-1.pdf
・鹿児島県(知事への便り)
http://www.pref.kagoshima.jp/chiji/tayori/tayori/index.html
 (知事公室広報課)099-286-2093 FAX: 099-286-2119 メール: kohoka@pref.kagoshima.lg.jp
 川内原子力発電所 再稼働について
http://www.pref.kagoshima.jp/infra/energy/atomic/index.html
・薩摩川内市(広聴広報グループ)0996-23-5111 FAX: 0996-20-5570 メール: koho@city.satsumasendai.lg.jp
http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/contents/1096868307578/index.html
 (原子力)
http://www.city.satsumasendai.lg.jp/www/genre/0000000000000/1209705472764/index.html
https://www.facebook.com/SatsumasendaiCity
・三菱重工(川内原発のメーカー)
http://www.mhi.co.jp/inquiry/inquiry_nuclear.html

7.25核問題研究会例会

7月25日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)2015年NPT会議について(報告:佐藤)
(2)福岡の断層と液状化問題(報告:森田)
(3)川内原発再稼働をめぐる状況について(報告:豊島,中西)
(4)川内原発再稼働に反対する声明文について(報告:北岡)

7.11核問題研究会例会

7月11日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)脱原発と動的エネルギーミックス(報告:岡本良治氏)
(2)エクセルギー(有効エネルギー)の有用性について(報告:岡本良治氏)


伊方原発審査書案についてのパブコメ関連情報

伊方原発審査書案へのパブリックコメント(パブコメ)の提出は,2015.6.19日に終了しました.この間に福岡核問題研究会会員から提出されたパブコメおよび書き上げたけれど提出にまでは至らなかったパブコメをここにアップロードします.

パブコメ12 (中西)  28E5   <イグナイタによる水素爆燃は危険>
             31E11  <フィルター付きベントの無い伊方原発3号炉は危険>
パブコメ3  (豊島)  19E289  <水素爆発および溶融炉心・コンクリート相互作用>
パブコメ4  (三好)  19E381  <水蒸気爆発が実機において発生する可能性>
パブコメ未提出(北岡)        <飛来物(航空機落下等)について>





福岡核問題研究会5/23

5月23日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)「水素エネルギー利用における技術的諸問題」(話題提供:森田)
(2)「2030年のエネルギーミックスについて」(話題提供:中西)

(1)について
水素エネルギー利用についてキーとなる燃料電池の動作温度は一般に高い.その中で30〜100℃と動作温度が比較的低い固体高分子形燃料電池(PEFC)は,自動車用などに使われている.しかし,自動車用燃料電池では1台あたり100g以上の白金(Pt)が必要といわれ,資源およびコストの面から問題となっている.燃料電池車で使われている水素貯蔵タンク内の圧力は通常350気圧であり,かなり高気圧である.400kmの連続運転を可能にするためには700気圧が必要となる.気圧が高くなれば,水素の漏れる量は多くなる.タンクからの水素の漏れは基本的には解決できていない.また,九州大学の水素ステーションは一度爆発しており,原因不明のまま研究は続けられているが,高圧水素貯蔵タンクの破裂の危険性もあるといわざるをえない.これらの問題の他にも,水素ステーションのインフラ整備の問題や水素自体の値段もガソリン並みに下がる見込みはなく,燃料電池自動車が市場に拡がるには多くの問題があるように思える.

(2)について
経産省は,4月28日,2030年度の電源構成目標について,原発依存度を20〜22%程度とする方針を示した.
原発        20〜22%
再生可能エネルギー 22〜24%
LNG          〜27%
石炭火力       〜26%
石油火力       3%
ほとんどの原発が停止していた2013年の実績が以下であることを考えると
原発         1%
再生可能エネルギー    11%
LNG          43%
石炭火力       30%
石油火力       15%
昨年の4月には「原発は可能な限り低減する」と言っていた安倍政権がはっきり原発回帰へのシナリオを発表したと言える(因みに福島事故前の2010年の原発依存度が28.6%であった).40年廃炉ルールを厳格に運用し,新増設や建て替えがない場合の2030年時点原発依存度は15%程度となるという試算がある.新増設がないのであれば,40年廃炉ルールの厳格運用を止める以外になく,原発の安全性についての検討が不十分にならないか.再生可能エネルギーについては,地熱1.0〜1.1%,バイオマス3.7〜4.6%,風力1.7%,太陽光7.0%,水力8.8〜9.2%となっており,特に風力の割合が低い.CO2排出の多い石炭火力の依存度がそれほど減少していないのも気になる.

中西氏の報告  
pdfファイル

異議申立「川内原発工事の認可取り消しを」

研究会メンバーの一人が中心となって原子力規制委員会に「川内原発工事の認可取り消しを」 という異議申し立てを行いました(2015.5.15)

この件について,西日本新聞経済電子版では以下のように報道しています.
◆◆◆◆◆(ここから引用)
九州電力川内原発1、2号機(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に反対する九州や首都圏の市民24人が15日、原子力規制委員会に対し、行政不服審査法に基づき川内1号機の工事計画認可の取り消しを求める異議申し立てをした。
申立書では「基準地震動を270ガルで設計した川内1号機が(新規制基準に対応した)620ガルを達成することは非常に困難」,「規制委は工事計画認可に関する全資料の公開を拒否している」などと審査の不備を指摘している。市民らは昨年11月、川内原発の原子炉設置変更許可についても異議申し立てを行った。
◆◆◆◆◆(ここまで引用)
http://qbiz.jp/article/62312/1/


異議申立書は以下の通り.
----------------------------------------------------------------------------------------

       異 議 申 立 書


2015年(平成27年)5月15日


原子力規制委員会 御中

異議申立人 総代
北 岡 逸 人
木 村 雅 英
鳥 原 良 子


行政不服審査法第6条の規定に基づき、次のとおり異議申立てを行う。

1 異議申立人の氏名及び年齢並びに住所
別紙参照

2 異議申立てに係る処分
川内原子力発電所第1号機の工事の計画の認可処分(平成27年3月18日。原規規発第1503181号)

3 異議申立てに係る処分があったことを知った年月日
2015年(平成27年)3月18日

4 異議申立ての趣旨
 「2記載の処分を取り消す。」との決定を求める。

5 異議申立ての理由

一 行政不服審査法に関する違法性

本件処分は「川内原子力発電所の発電用原子炉の設置変更(1号及び2号発電用原子炉施設の変更)の許可処分(平成26年9月10日。原規規発第 1409102 号)」を前提になされたものである。しかし、この川内原発の設置変更許可処分は違法で不当な取消が求められる処分なので、当然に本件工事計画の処分は無効である。
実際、昨年11月7日に全国1,500名の異議申立人により前記設置変更許可処分の取消と執行停止が求められている(この時の異議申立書は昨年11月12日開催の第38回原子力規制委員会の配布資料で公開されている)。そして本年1月21日には、原子力規制庁の会議室にて口頭意見陳述会が開催され、全国15名の市民や専門家による意見陳述が約3時間行われた(この意見陳述会は異議申立人の意に反して非公開とされたが、右記サイトに当日の資料と意見陳述の録音などが公開されている http://sayonaragenpatu.jimdo.com/ )。
これら川内原発の設置変更許可の取消を求めた異議申立人による問題指摘の多くは、明確な法律違反を含む具体的かつ重大な内容である。かたや、原子力規制委員会は川内原発の審査を進めていながら、これら異議申立てにいまだに返答(決定書の作成と送付)をしていない。加えて、川内原発に関する審査手続きの執行停止は昨年12月18日に申立てられたが、既にそれからおよそ5か月が経過している。
この「執行停止」の申立ては行政不服審査法(第34条)の規定に基づいており、本法律は「執行停止の申立てがあつたときは、審査庁(原子力規制委員会)は、すみやかに、執行停止をするかどうかを決定しなければならない。」とある。そのため原子力規制委員会が5か月間も決定しないで放置していることは、本法律の「行政の適正な運営を確保することを目的とする」との趣旨に反しており違法である。

二 原子力規制委員会設置法と国会決議に関する違法性

加えて、原子力規制委員会設置法(以下「設置法」とする)は「原子力規制委員会は、国民の知る権利の保障に資するため、その保有する情報の公開を徹底することにより、その運営の透明性を確保しなければならない」と規定している。しかし、原子力規制委員会は本件処分に係る非常に多くの重要資料を非公開としており違法である。
この設置法に関する国会決議は「原子力規制行政は、推進側の論理に影響されることなく、国民の安全の確保を第一として行うこと」を求めている。実態は、「メーカーの総合的エンジニアリング業務の成果だから」といった理由で、九電からの提出資料の多くの重要な箇所に「黒枠白抜き」マスキングをして非公開にしており、法律と同様の重みがある国会決議を無視している。
また、30年以上前に基準地震動270ガルで設計した川内原発1号機が新規制基準で設定された基準地震動620ガルを達成することは非常に困難なはずである。根本的な耐震補強工事をすることなく、強度計算も耐震計算も十分にせずに、基準地震動620ガルを達成したとは信じられない。このことについての説明責任を全く果たしていないばかりか、後述するように多くの問題点が明らかになった。これでは、設置法が目的とする「国民の生命、健康及び財産の保護、環境の保全」を達成することができない。
本来、本件処分の前に工事計画の認可に関する全資料を公開した上で、パブリックコメントを実施、公聴会を開催し、川内原発の再稼働に批判的な方を含む専門家による充分な審議等が必要であった。

三 耐震性に重大な欠陥

原子力規制委員会が本件処分に係る情報の多くを非公開とする本当の理由は、公開すると川内原発が耐震性に欠けることなど重大な欠陥や問題の発覚を恐れているためと疑うに足る理由がある。
たとえば、1977年に270ガルで設計された余熱除去冷却器・ホウ酸注入タンク・原子炉補機冷却水冷却器などは安全上極めて重要な機器類に当たるにもかかわらず、独自に強度計算をしない。強度計算と耐震計算とを分離して評価し、九州電力によるコンピュータ計算のみで現地確認せずに評価する。30年を経た機器の経年劣化を考慮し現在の寸法などを確認するのではなく、設計値だけで評価してしまうなどの問題点がある。さらに、制御棒クラスタ挿入時間が規定以内である根拠が不明で、弾性範囲を大きく超えた機器があるのにその弾塑性解析方法も不明だ。特に安全注入設備配管(具体的に何処を指すのかは明らかにされていない)で、評価基準値の実に2.5倍もの応力が生ずる箇所があり、基準地震動以下でも破損の恐れがある。しかも緊急炉心冷却系統においてである。
加圧水型軽水炉に特有の蒸気発生器についても、一次系の冷却を継続するため、この二次側に注水して一次系の自然循環により冷却を継続するとしているが、一次側逆U字管内部に気体が滞留した場合は自然循環は成立しないが、との問いに対し規制庁は「その場合は一次側に注水する」と回答した。そもそも一次側に注水できなかったケースで自然循環でも一次側冷却が継続できるとの判断だったのに、それが成立しない場合は一次系の注水と、当初の前提を覆す答えでは、到底承認できない。
にもかかわらず、九州電力の工事計画の妥当性を原子力規制委員会は認めた。これは前記した国会決議の懸念する、根本的な耐震補強による莫大な経費負担と工事期間の長期化などを避けたい「推進側の論理」に影響された、「国民の安全の確保を第一として行う」ことの放棄である。

四 情報公開の拒否

これら工事計画の妥当性は、申請文書を広く一般に公開し、幅広く意見を聞くべきものである。ところが規制委員会は事業者による大規模な「黒枠白抜き」などのマスキングをした工事計画書を公表している。これでは第三者検証など不可能であり、ただ疑問が重なるのみであり、規制委員会による審査の妥当性も確認のしようがない内容になっている。
原子力規制委員会は、工事計画の認可に関する全資料の公開も、パブリックコメントも、公聴会開催も、川内原発の再稼働に批判的な方を含む専門家による充分な審議も拒否した。
再三にわたり、あるいは個別具体的に情報の公開を求めてきたにもかかわらず、規制委員会はこれを全て拒否した。このことをもっても工事計画の認可は妥当性に欠ける。

五 航空機事故や破壊行為の防止対策が不十分

また、設置法に「原子力利用における事故の発生を常に想定し、その防止に最善かつ最大の努力をしなければならない」とあるのに、航空機などの衝突事故や原発施設の破壊行為等の防止を怠っている。国内の原発付近で起きている米軍機の墜落事故や、最近世界各地で起きている大型航空機の墜落事故ならびに航空機を使った破壊行為に対して、少なくとも安全上最重要な施設である原子炉格納容器の強度評価とそれに伴う火災対策を検討していないことは、発生した場合に対策の困難な事態に対する評価を怠っていることになり許されない。
福島第一原発事故から学んだことは、稀に起こることでも安全上重要な設備に対する対策は、自然現象、人為的事象に関わらず「想定外」として無視してはならないということである。
技術基準規則第44条(原子炉格納容器)の規定について、「本申請において原子炉格納容器貫通部を新たに設置しない設計としており、原子炉格納容器隔離弁の設置状況を変更しない設計としていることを確認したことから、第44条の規定に適合していると認める。」と構造上の変更がないから適合しているとの評価である。だが、航空機落下した場合の強度ならびに火災に対する評価を実施していないことは、欧州における基準に照らしても不十分であり、世界最高水準レベルとは程遠い緩い規制基準の適用である。事故の発生想定とその防止に最善かつ最大の努力をしていないことから設置法に反しており、第44条(原子炉格納容器)の規定に適合しているとは認められない。
また、最近はドイツ機墜落事故が操縦士による意図的行為により墜落したとの報道がなされているが、こうした内部関係者による意図的な墜落事故と思われる事故は、実は日本での「逆噴射」事故など世界中で何度も起きてきた。しかし、川内原発の審査において内部関係者等による破壊行為を想定して備えていない。

六 重大事故対策が不十分。むしろ事故を拡大することが懸念される

新規性基準の柱のひとつは、炉心溶融等が発生した後の重大事故対策である。福島第一原発事故では、水素の大量発生により格納容器から漏れた水素が、原子炉建屋内で爆発したことが事故の拡大につながった。福島第一原発は沸騰水型であり、格納容器外で水素爆発を起こしたが、運転時には格納容器内に窒素を封入し酸素がないので、格納容器内では水素爆発は極めて起こりにくい設計であった。それにも関わらず、設計上想定していなかった水素が配管または格納容器のフランジ部や電気配線貫通部等から大量に漏れて、窒素封入していない原子炉建屋内で爆発したことが事故の封じ込めを余計困難なものにした。それでも、格納容器内で水素爆発を起こさなかったことが不幸中の幸いであった。水素爆発対策は加圧水型の川内原発でも極めて重要である。
第67条(水素爆発による原子炉格納容器の破損を防止するための設備)では、水素爆発対策として触媒式水素結合装置を設置しているが、処理能力が極めて小さいため、炉心損傷事故時に発生する900kgオーダーの水素の処理にはあまりに非力である。さらに、水素燃焼装置(イグナイタ)は、機器の故障や復旧のタイミングによっては自爆装置になりかねない。したがって、福島事故の反省に立つなら、当てにならない水素対策装置に頼るのではなく、まず、格納容器内に窒素を封入し、その上で水素の漏えい経路に応じた対策を検討すべきである。
次に、第66条(原子炉格納容器下部の溶融炉心を冷却するための設備)は、冷却設備としての十分な性能を備えているとはいいがたい。格納容器内で配管破断等が起きた場合には、破断部の配管の保温材やジェットによる周囲の配管、ダクトその他機器類の損傷により様々な形状・材質の大小のゴミが流出することが考えられる。特に、格納容器スプレーから流れ落ちた水が、いくつかの細い流路を通って格納容器下部の原子炉キャビティに流れ込むとしているが、上記の保温材等のゴミが狭い流路を塞いでしまい、想定した時間内に格納容器下部に注水できるかどうかは極めて疑わしい。どのように「原子炉格納容器下部注水設備は多重性又は多様性及び独立性を有し、位置的分散を図っている」と言えるのか? 流路閉塞についての評価を実施しないと、「溶融炉心を冷却するための設備」として機能が保証されていないことになる。
また、仮に溶融炉心が落下する前に、水張りが成功すると、水プールに大量の溶融炉心が落下することになり、水蒸気爆発のリスクを著しく高める。水蒸気爆発は、過去の研究から未解明の部分が大きく、その爆発規模の大きさや影響が不確定であるから、まずその発生を避けることが重要である。水蒸気爆発の発生に関する科学的知見を捻じ曲げて、水蒸気爆発が起きにくいとか、実機では試験とは条件が違うので水蒸気爆発を起こす環境にないなどと、長年懸念されてきた水蒸気爆発の科学的知見を無視することは原子力安全の根幹をないがしろにするに等しく許されることではない。これらの問題は、工事認可の問題というだけではなく、その基となる新規制基準の抜本的な大問題である。
以上、異議申立て理由の概略を記載したが、別紙参考資料と口頭意見陳述会で詳細に説明する。

6 口頭意見陳述会の開催
行政不服審査法第48条によって準用される同法第25条第1項の規定に基づいて、口頭意見陳述を求める。
この口頭意見陳述の実施において、本来原子力規制委員会が開催すべきであった公聴会に近づけるため、異議申立人以外にも公開し取材を許可することを求める(本年1月21日に開催された口頭意見陳述会では、異議申立人の要請にもかかわらず非公開とされ、異議申立人以外の傍聴や取材が拒否された)。

7 執行停止の申立て
 本件処分は上述のとおり違法で不当な行政処分であるため、本件異議申立てとともに、行政不服審査法第48条によって準用される同法第34条第2項の規定により、本件処分の執行停止を申し立てる。

8 処分庁の教示
「○不服申立てすることができる処分であるかどうかについて
 原子力規制委員会が行った川内原子力発電所第1号機の工事の計画の認可処分(平成27年3月18日。原規規発第1503181号)について、異議申立てをすることができる。
○不服申立てをすべき行政庁
 原子力規制委員会
○不服申立てをすることができる期間
 処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内(ただし、処分があったことを知った日の翌日から起算して60日以内であっても、処分の日の翌日から起算して1年を経過すると、処分の異議申立てをすることができなくなる。)」との教示があった。

福岡核問題研究会4/18

4月18日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)「テレビ愛知『激論!コロシアム』出演を終えての総括」(報告:岡本)
(2)「国際シンポジウム@横浜国大の報告」(報告:豊島)
(3)「水素エネルギー研究開発の現状と展望を考える」(報告:森田)

福岡核問題研究会3/7

3月7日に以下の話題で核問題研究会が開催されました.

(1)「玄海原発と白血病死亡率」(報告:森永)
(2)「被爆者からみた原発事故」(報告:佐藤)

森永氏の発表スライド以下に置きます. 
発表スライド

緊急シンポジウム「川内原発再稼働の是非を問う」

緊急シンポジウム「川内原発再稼働の是非を問う」


原子力規制委員会は,去る9月に九州電力の川内原子力発電所1・2号機の安全対策の基本方針が新規制基準を満たすとする審査書を決定しました.しかし,それには多くの問題点があります.それらの川内原発再稼働の問題点を考えるために以下のような緊急シンポジウムを企画しました.興味のある方はご参加ください.

緊急シンポジウムのチラシ

シンポジウム当日のパワーポイントのファイルを以下の「発表スライド」のところにアップロードしました.クリックすればダウンロードできます.

日 時:2015年1月18日(日曜日) 14:00~17:00 (開場13:30)
場 所:久留米大学 福岡サテライト (大丸東館エルガーラ・オフィス棟6F)
    (入口は下図のようにエルガーラ・ホール側ではなく、国体道路側です)
会 費:無料(会場の広さの制限から,先着90名までの参加に限ります)

報 告:「川内原発再稼働をめぐる状況」14:00〜16:00
(1)「原子力規制委員会に対する異議申立について」30分 
発表スライド
 北岡逸人(異議申立人・総代,元柏崎市議会議員)
(2)「再稼働を認めた規制基準の技術的問題点について」30分 
発表スライド
 中西正之(元燃焼炉設計技術者)
(3)「『世界最高水準の規制基準』なる虚言について」20分 
発表スライド
 岡本良治(九州工業大学名誉教授)
(4)「原子力規制委員会の審議内容について」20分 
発表スライド
 森田満希子(九州大学大学院博士課程)
(5)「福島原発事故と小児甲状腺ガンおよび鼻出血の関連」20分 
発表スライド
 森永 徹(元純真短期大学講師)
休 憩:16:00~16:10
討 論:16:10~17:00 司会:豊島耕一 (佐賀大学名誉教授)

主 催:福岡核問題研究会
問合先:三好 (電話:092-522-8401,メール:eisaku.miyoshi@kyudai.jp)

map2

高浜原発審査書案へのパブコメ関連情報

高浜原発審査書案へのパブリックコメント


高浜原発審査書案へのパブリックコメント(パブコメ)を積極的に出そう!!(2015.01.08)
資料入手方法、パブコメ送信法、パブコメ文例またはタネの例は以下のサイトから入手可能です.
また,福岡核問題研究会会員から提出されたパブコメをここに順次アップロードします.

パブコメ1
パブコメ2
パブコメ3
パブコメ4
パブコメ5
パブコメ6
パブコメ7
パブコメ8
パブコメ9

(1) 首都圏半原発連合:高浜原発再稼働やめろ!パブコメキャンペーン
http://coalitionagainstnukes.jp/?p=5618

(2) 原子力規制を監視する市民の会
http://www.kiseikanshishimin.net/2014/12/30/pabukome/
 高浜原発審査書案パブコメのたね(2014年12月30日版)もこのHPからダウンロード可能

(3) 市民参加への模索連絡会
http://mosakuren.com/

(4) 高浜原発の審査書案<パブコメのたね>
http://www.kiseikanshishimin.net/2014/12/30/pabukome/

(5) グリーンピース
http://www.greenpeace.org/japan/ja/news/blog/staff/1500/blog/51710/

(6) 福井から原発を止める裁判の会
http://adieunpp.com/karisasitome/karisasitome.html

(7) 大飯原発3.4号機 高浜原発3.4号機 運転差し止め仮処分の申し立て
美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会)
http://www.jca.apc.org/mihama/bousai/bousai_room.htm

(8) パブコメのタネ
http://www.jca.apc.org/mihama/takahama/takahama_pub_siryo20141224.pdf

(9) 高浜3,4号機 審査書案了承 原発集中、リスク不問(東京新聞)2014年12月18日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014121802000161.html

(10) 東電の吉田元所長、原発集中立地を批判=政府公開の調書で
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0H61FK20140911

(11) 社説:高浜原発合格証 京都、滋賀の声 尊重を(毎日新聞)2014年12月18日
http://mainichi.jp/opinion/news/20141218k0000m070140000c.html

(12) 高浜原発:再稼働へ一歩前進…速やかに避難に、なお疑問(毎日新聞)2014年12月17日
http://mainichi.jp/select/news/20141218k0000m040099000c.html

原子力規制世界最高水準という虚言の批判

レビュー「原子力規制世界最高水準という虚言の批判」
―世界一楽観的な進展シナリオに沿った,世界一奇妙な評価―

2014年12月4日
福岡核問題研究会

pdfファイル

1.「世界で最も厳しい水準の安全規制」かどうかは原発再稼働の前提条件にされた

 記憶している日本人はほとんどいないかもしれないが,福島第1原発事故が最重要議題となった国連の原子力安全に関する首脳会合(2011.9.22)において,野田佳彦首相(当時)は,「日本は,原子力発電所の安全性を世界最高水準に高める」と表明した.しかし,野田氏はその具体的内容は示さなった[1].
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は2012年の会見で,原子力発電所の立地を決める際の判断基準となる「原子炉立地審査指針」[2]を50年ぶりに見直すことを明らかにした.来年(2013年)7月までに改定し,国際基準並みに厳しくし,建設済みの全原発にも適用するとされた[3].
 安倍首相は今年(2014年)1月24日の第186回国会の施政方針演説において「世界で最も厳しい水準の安全規制を満たさない限り,原発の再稼働はありません」と述べた[4].これは重要な所信表明である.
 安倍政権が4月閣議決定したエネルギー基本計画[5]で,原発再稼働を審査する原子力規制委員会の規制基準を「世界で最も厳しい水準」と明記したことについて,疑問視する指摘が出ている.政権が「世界一」の根拠を示せていないからだ.自民党内からも「世界最高はウソ.再稼働向けのリップサービス」(党幹部)との声が出るほどだ[6].
安倍首相は10月7日の参議院予算委員会で,原発の再稼働について「世界で最も厳しい基準」をもとに判断することを,1月24日の施政方針演説に続き,あらためて明言した[7].
 菅官房長官は9月12日に閣議のあとの記者会見で,「吉田氏の調書では,現場の緊迫感や政府対応など,さまざまなことが明らかになっている.そうしたものを踏まえて,政府の事故調査・検証委員会で報告書をまとめ,それに基づき世界で最も厳しいと言われる原発の規制基準を作った」と述べた[8].
 宮沢経産相は11月1日,就任後初めて東京電力福島第1原発を視察し「(福島では)本当に起こしてはいけない事故が起きたと思った.一方で川内原発は,世界最高水準の新規制基準に基づき,安全性が確認された上での再稼働に向けての話だ」と二つの原発の状況は違うとの認識を示した[9].
 九州電力の川内原発(鹿児島県)1,2号機の再稼働の前提となる新規制基準への適合性審査をめぐって,田中俊一原子力規制委員長が本年8月7日,衆院原子力問題調査特別委員会における斉藤鉄夫氏(公明党)への答弁で「全ての点について一点の曇りもなく世界最高だということは申し上げておりません.(川内原発は)世界最高レベルの水準にあります」と発言した [10].
 電気事業連合会は「2013年7月に原子力発電所の新しい規制基準が施行されました.各原子力発電所では,この新規制基準に適合するのはもとより,より多くの知見を取り入れながら,世界最高水準の安全性を目指して様々な対策に取り組んでいます」[11]と表明している.
 九州電力も「当社としては,原子力発電については,エネルギーセキュリティ面や地球温暖化対策面などで総合的に優れていること等から,安全・安心の確保を前提として,その重要性は変わらないと考えており,世界最高水準の安全性を目指し,原子力発電所の更なる信頼性向上と安全・安心の確保に取り組んでいきます」[12]と表明している.
 しかし,本年7月2日に開催された「原子力規制委員会記者会見」[13]においても,「世界最高」という判断の根拠について質疑が行われている.また,テレビ朝日・報道ステーション,2014年7月25日では映像を中心に「原発の“世界最高基準”驚きの現実・・・日本は遅れていた」という番組が放映されていた[14].
 「世界最高云々」は本当だろうか.どのような具体的かつ十分な根拠に基づいているのか,いないのか.具体的かつ十分な根拠に基づいていないとすれば,なぜ政府首脳部,原子力規制委員長と電力事業者は「世界最高云々」という意見・宣伝を頻繁に繰り返すのだろうか.
 世界第3位の経済大国の首相で,地球儀を俯瞰する視点でのトップ外交を推進するという首相が国会で複数回明言した「世界で最も厳しい水準の安全規制」かどうかを追及することは単なる揚げ足とりではなく,国内的だけではなく,国際的にも重要な問題であると考えるべきであろう.
 無論,たとえ過酷事故が起こらないとしても,原発が再稼働されると,高レベル放射性廃棄物を大量に増加させるという,未来世代への負の遺産を増加させるので,再稼働は許されるべきではない.また使用済燃料の危険性も福島第一原発事後に明らかになった.さらに,一時期,原発停止により停電が起こるという言明が虚言であることがその後の経過で全国民に明らかになったように,原発の再稼働の必要性も根拠薄弱であるが,これらも問題群は別に議論されるべき重要な課題である.
 本稿では,原発の再稼働の是非をめぐって,日本の原子力規制基準が「世界で最も厳しい水準の安全規制」であるという言明にどのような根拠があるのかないのか,関連する事実と先行する論考を紹介し,補完しながら,より広く,より深い検討を試みる.

2.我が国の新規制基準の基本的な問題点とその背景

 2013年6月に成立した「原子力規制委員会設置法(関連法案を含む)」は,原発輸出と原発再稼働を当然の前提として作られた法律であり,福島第一原発事故の原因究明や津波対策,過酷事故対策を何故とらなかったなどの解明を行わず,「運転制限を原則40年,最大20年延長可能」とするなど,老朽化原発の半永久的稼働を容認している.この背景には,原子力基本法の「原子力利用の目的」に「安全保障に資する」と加えられる等,日米同盟があり,核エネルギーの商業利用を通じた米国の世界支配体制に日本が組み込まれたことがある.われわれは,この日米原発利益共同体という財界中枢部の強固な政治的岩盤の上に立っての「原発輸出」「原発再稼働」問題であるということをみておく必要がある[15].
 新規制規準において,旧原子炉立地審査指針は削除された.それはなぜか.福島第一原発の敷地境界での2011年4月1日からの1年間の積算線量が,旧「原子炉立地審査指針」で示されていた年間積算線量の250ミリシーベルトの約4倍(最大956ミリシーベルト)に及んだことが判明した.過酷事故の際,それだけの線量を放出する原子炉は設置工事認可取り消しになる.この旧立地審査指針を新規制規準に取り込むと,バックフィット制度(最新の知技術や知見を反映させるように事業者に義務づける制度)により,事実上,全原発は新規も再稼働も許可されないことになる.そこで新規制規準においては原発敷地線量についての立地規制規準(旧原子炉立地審査基準)は削除された[15][16].
 我が国の新規制基準は,その出発点(=発端事象)の設定だけは厳しい.すなわち,「大破断LOCA(冷却水喪失事故,Loss-of-Coolant Accident)+SBO(全交流電源喪失,Station Blackout)+ECCS(緊急炉心冷却装置,Emergency Core Cooling System)喪失」という設定のことである.この設定だけに関しては「世界一の厳しさ」と誇示するだけのことはあるかもしれない.しかし,その設定に対する評価が極端に甘く,対策の有効性については著しく楽観的になっている.こうして,「世界一」の厳しい起因事象の設定に対して,世界一楽観的な進展シナリオに沿った,世界一奇妙な評価が行われている[17] [18] [19].
 福島第一原発事故の後,多くの国民の反発が根強くかつ継続していることが各種の世論調査で明らかになっているという状況において,日本の原子力利益共同体としては,原発輸出と原発再稼働を,規制規準適合の費用と時間はかけず,一般国民に納得させ,原発立地自治体の首長らに再稼働承認の口実を与えるため,新規制規準は世界最高または世界最高水準と思わせる大宣伝を繰り返す必要に迫られていると思われる.

3.我が国の規制基準の問題点の各論 ―独りよがりかガラパゴス化かー

3.1 深層防護思想の認識と実践における甘さとそれらの背景となる日本ブランド思い込み

 福島第一原発事故以前には,原発は「止める・冷やす・閉じ込める」という設計で,放射性物質は5重の壁(燃料ペレット,燃料被覆管,原子炉圧力容器,原子炉格納容器,原子炉建屋)に閉じ込める方針になっていた.福島第一原発事故により,いわゆる安全神話のキャッチコピーとしての「5重の壁」は一挙に突破されることが全国民に明らかになったにも拘わらず,依然として電力会社のホームページなどには掲載されている.「放射能を閉じ込める5重の壁が5重に機能するか」や,「どんなに安全対策を講じても放射能汚染の可能性は残る」などについて説得的な解説については[20]を参照されたい.規制当局の専門家は5層の深層防護をよく理解していたはずだが,事故防止策の一つに過ぎない「5重の壁」ばかり説明され,電力会社の中にもこれが「5層の防護」だと誤解していた人たちがいるようである.
 原子力規制委員会は原子力発電所の安全確保,防護策には,原発推進の国際機関である国際原子力機関(IAEA,International Atomic Energy Agency)の提唱する五層の深層防護(Defense in Depth)[21] [22] [23] [24]を取り入れているとしている.表1にIAEAの五層の深層防護の要点を示す.

表1 IAEAの五層の深層防護の各階層の目的と目的達成に不可欠な手段[21] [24] [25]
tab1
 ここでは,設計基準外としてのレベル4が,事故進展の防止だけではなく,シビアアクシデントの影響緩和策,そしてレベル5が放射性物質の放出による放射線影響の緩和をサイト外の緊急時対応まで規制対象としていることが重要なポイントである.
 原子力規制の国際的動向の理解への参考として,新設炉に対する欧州原子力規制協会(WENRA)[25]による深層防護レベルを表2に示す.IAEAの多層防護と同様に,レベル4が設計段階からの要求になり,その内容として,コアキャッチャーなどが想定される炉心溶融を緩和するための工学的安全施設,炉心溶融を伴う事故管理(シビアアクシデント)を規制対象としていることが注目される.

表2 欧州原子力規制協会による深層防護レベル[25]
tab2(翻訳[23]から関係する発電所状態の区分,被ばく上の結果を紙面の都合で省略)

 原子力規制委員会による新規制基準の要点は[26]に公表されている.しかし,石橋氏によれば[27],日本の新規制基準は国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方5層のうち,3層までしか対応していない.
1)耐震安全性に関して,根底となる第一層が万全ではない.
2)新たに義務化された第4層のシビアアクシデント対策が非常に不十分
3)最終的に住民の生命・健康を守るために第5層が相対的に重要だが,新規制基準ははじめからこの部分を放棄している.
 石橋氏の「新たに義務化された第4層のシビアアクシデント対策が非常に不十分」という指摘では,後述のように,多重防護の第4層の内容である「シビアアクシデント発生の防止」と「シビアアクシデント発生した場合の影響の緩和」の両方ともか片方が不十分かなど,明示的に分けた評価はなされていないと思われる.新規制基準[26]においては,特に,その9ページに記述されている,新設されたシビアアクシデント対策のうち,「シビアアクシデント発生の防止」は規制対象にされているが,「シビアアクシデントが発生した場合の影響の緩和」は規制対象になっているとは考えられない.この指摘の正しさを裏付けるように,九州電力による「新しい規制基準で求められた主な対策」[28]においては,重大事故対策(過酷事故対策の意味)は新設されたとし,炉心溶融防止,格納容器破損防止,と素直に記されている.さらに,航空機衝突など特定重大事故等対処施設自体は5年間の猶予と記されているが,緊急時対策所については,免震重要棟と代替緊急時対策所が併記されている.事実は免震重要棟には5年間の猶予を与えられたことであろう.
 今年7月15日から8月15日まで実施されたパブリックコメント(以下パブコメ)で意見募集している九州電力川内原子力発電所1号炉及び2号炉の発電用原子炉設置変更許可申請書に関する審査書は,深層防護の何層までをカバーしているのか.深層防護の枠組みとこの審査書との関連が「Ⅰ はじめに」に明記されていない[29].
 原子力規制委が下した「新基準に適合」という評価は,国際原子力機関(IAEA)が原発事故防止のために多重防護安全策として求めた「5層の防御」のすべてに万全とはなっていないのだ.とくに第4層の過酷事故対策がまだ不十分,第5層の事故時に放射性物質が原発敷地外に漏れ出ないようにする防災対策,それに住民避難対策に至ってはもっと問題が多い.牧野氏は第4層の過酷事故対策の不十分さを指摘する[30].
 「これが高じて,原発事故の遠因となったのが,当初の想定以上の津波大予測が出ても,経営は問題を先送りし,結果的に原発稼働率維持を優先させて対策を講じなかったため,津波による全電源喪失に無防備となった.IAEAの「5層の防御」の第4層の過酷事故対策の遅れに帰する問題だ」
 牧野氏の「とくに第4層の過酷事故対策がまだ不十分」という指摘では,石橋氏の指摘と同様に,多重防護の第4層の内容である「シビアアクシデント発生の防止」と「シビアアクシデント発生した場合の影響の緩和」の両方ともか片方が不十分かなど,明示的に分けた評価はなされていないと思われる.
 また,IAEA安全基準の中の「原子力発電所の安全:設計(No. SSR-2/1)」[31]によると,主要な技術要件として「原子力発電所の設計は,深層防護を取り入れなければならない.」とあるだけでなく,「深層防護の階層は,実行可能な限り独立したものでなければならない.」とも述べられている.この「深層防護の各階層の独立性」という点でも日本の規制基準は重大な問題を抱えており,後に国際的な基本的設計思想からの逸脱について議論するように,それは各階層の防護思想が「人間」の能力を過信し頼り過ぎていることである.
 重大事故対策の要員が少な過ぎるとの問題提起もあるが,事故対策に「人間」の能力(認識・判断・操作)の行使が不可欠で,多くの対策で人間による機材の移動・作業が前提になっていることは大問題(欠陥)である.
 それは,自分たちの命や健康が損なわれる恐れの高い危険で特殊な状況において,(大地震が原因であれば立っているのも難しい状態で)確実でミスのない能力の行使を,長期間維持できることなど期待すべきでないからである.(特に,人間が滞在することすら危険な程に放射線量が高まった場合,人間に依拠する安全対策では放棄するか現場作業者に犠牲を強いる他ない).これは,特に意図的な破壊行為で原発の安全性が脅かされた場合に顕著に問題になるであろう.その理由は,暴力もしくは脅迫で現場作業者の能力が破壊ないし制限されて,多くの防護階層も同時に破壊ないし麻痺してしまうと考えられるからである.
 第1層~第4層は工学的防護装置・システムであり,第5層は社会的・環境的防護システムである.それぞれの防護システムは,その前段階の防護システムが破れることを前提として用意され,次の段階(外側)に行くほど,より一層強固なものになる,というのが深層防護の本来の考え方である.社会的・環境的防護システムは工学的防護システムが破れるものとして用意されるものである.工学者はややもすると,工学的安全性を絶対視し,そこでの安全性が想定の範囲で守れればそれでよしと考えがちである.残念ながら,行政担当者の多くはそれに同調して,それ以上のことには思考停止に陥ってしまっているように思われる[32].川内原発の再稼働に対する態度表明についての鹿児島県知事の記者会見もその実例のひとつと思われる.少なくとも原発所在地の自治体は,「社会的・環境的防護システムのストレステスト合格」を原発再稼働に対する自らの責任条件とするべきであり,これが福島第一原発事故に学ぶべき,今最も重要な教訓であろう[32].

防災(減災)対策の有効性について実証的規制が欠如
 IAEA安全基準の中の「原子力発電所の安全:設計(No. SSR-2/1)」[31]では「最後となる第5の防護階層の目的は,事故状態に起因して発生しうる放射性物質の放出による放射線の影響を緩和することである.これには,十分な装備を備えた緊急時管理センターの整備と,所内と所外の緊急事態の対応に対する緊急時計画と緊急時手順の整備が必要である」として避難計画の策定の必要性を説いているのを見れば,日本の原子力規制委員会の新規制基準がいかに杜撰であるかが明らかである.文献[31]は原子力規制委員会のホームページに掲載されているが,原発の規制基準における避難計画の策定の必要性が欠落していることの重大さを英語の原文でも,翻訳文でも,規制委員会の誰も認識していないことは驚くべき能力不足であると言わざるを得ない.避難計画の策定が規制基準の対象ではないから審査しないという理由は人間の世界だけの事柄であれば通用するかもしれない.しかし,ことは社会に甚大な影響を与える可能性のある原発事故への備えの適否である.避難計画の策定を規制基準の対象から除外したことは,結局,過酷事故が起こらないよう最大限努める(防災)だけで,過酷事故が起きた場合の対応(減災)は本気で考えていないことを裏付けているのではないか[33].
 原発再稼働を認める地方自治体は自治体長の責任として,病院・介護老人保健施設,幼稚園・保育所,小中学校を,最低でも30 km圏外(IAEAのガイドによるUPZ放射能雲防護区域30~50 km外)に移設する覚悟を持ち,実行すべきではないか[32].

3.2 欧州電力事業者要求仕様

 我が国の規制基準の遙か上を行く基準が2001年からヨーロッパで制定されていた.それは新設炉に適用される欧州電力事業者要求仕様(European Utility Requirements,略称EUR)[34], [35], [36], [19]である.本稿執筆時点ではこの基本資料を入手できないが,規制基準の国際的動向を熟知されていると思われる佐藤暁氏の論考[19]から過酷事故対策と防災対策に関連する内容を以下に紹介する.

過酷事故対策について:
(1) 原子炉容器(圧力容器):炉心損傷を防ぐための人的対応が事故後6時間不要であること
(2) 格納容器:格納容器の破損を防ぐための人的対応が事故後12時間不要であること
(3) フィルター・ベントについて,事故後24時間はフィルター・ベントが不要であること

防災対策について:
(a) 800m以遠に居住する住民の避難が事故から24時間後でも間に合うこと
(b) 3km以遠に居住する住民の避難が事故から4日後でも間に合うこと
(c) 800m以遠に居住する住民が事故の収束後,速やかに帰還可能であること
(d) 経済的影響を最小限にするための事故時に放出される放射能の制限:30テラベクレル(=30兆ベクレル).
 日本の新規制基準において,このような過酷事故対策は極めて不十分であり,防災対策は規制対象ですらない.

3.3 重要免震棟の設置に5年間の猶予を与えたことは歴史に対する冒涜

 耐震安全性については,根底となる第1層が万全でないことは石橋克彦氏の論文に詳細かつ説得的に論じられている[27]ので,参照されたい.
 2007年の中越沖地震が起きた際,柏崎刈羽原発はホットラインのある部屋のドアが地震で歪んでしまい,県庁と柏崎刈羽原発が直接連絡することができなくなったという.この教訓から新潟県は「免震重要棟」の建設を提言.福島第一原発の免震重要棟が完成したのは東日本大震災のわずか8か月前だった.泉田知事はその経験を踏まえて次のように話した.「もしあのとき,新潟県が求めなければ,福島に免震重要棟はなかったし,いま東京に人が住めていたかどうかも疑わしい」「私自身は,2007年の中越地震のときに問題だったところを直したことが,結果として,日本のためになったと確信している.問題があるところに口をつぐむのは歴史に対する冒涜ではないか」[33].
 これらの他にも,今回の原子力規制委員会の安全審査には,地震によって併発・誘発しうる様々な不都合なシナリオの除外・無視,設計地震加速度における入出力の非線形効果の認識と対策の欠如などの問題点がある[18].

3.4 火山学会・火山噴火予知連絡会の見解と矛盾する火山対策の恣意性

 内閣府の広域的な火山防災対策に係る検討会は「大規模火山災害対策への提言」を2013年5月16日に発表した[37].この提言は,鹿児島・桜島の大正噴火(1914年)を超えるような大規模,あるいはカルデラなどの巨大噴火への備えを初めて促した.自治体の地域防災計画では,大正噴火を超えるような規模の噴火がそもそも想定されていない.
 その翌6月,規制委員会は「火山噴火対策について原子力発電所の火山影響評価ガイド」を発表した[38].このガイドは「火山噴火が予知できる」という前提で作られていて,広域的な火山防災対策に係る検討会[37]の認識と全く異なっている.「火山の状況をモニタリング(監視)し,カルデラ噴火が予想されたら核燃料を移動させるというが,今後40年(原発の運転期間)以内に何が起きるか予知ができない,確率が低いかどうかというのは何も言えないから,判定できないということなら立地は不可能となるはずだし,念のためにモニタリングしてカルデラ噴火の予兆があったら核燃料棒を片付けるというが,何か異常があったとき,それがカルデラ噴火なのか,もっと小さい噴火なのか,ということは,現在の火山学では分からない」と座長を務めた藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は言う[39].
 川内原発審査において,電力事業者が提出した原子力発電所への火山影響評価について,その中で論文を引用された火山物理学者は「今現在手に入る学術文献をほとんど網羅している.その調査能力は凄いものであると感心する.しかし,読まれて分かるように多くの場合,特に破局的噴火に対する部分は,固有地名や論文などこそ異なるが,『・・・(略)・・・』(評価の部分)については同じ記述である」と述べている.これは川内原発審査にあたり,単一の電力事業者だけではなく,電気事業連およびその配下の電力中央研究所などの研究者からの支援もあったことを示唆している[40].
 この火山物理学者は次のように客観的な問題点を冷静に指摘している[38].
 「中小規模の火山活動であれば,被害は局部的に留まるが,過去の歴史で見ると日本全域が大きな災害を被る巨大噴火活動の発生も九州では充分考えられる.私たちは過去の地質学的な歴史だけで,そのような巨大噴火を経験していない.そのため,何をどうしたらよいのか全く未経験である」
 「このような超巨大な自然現象は,その発生頻度が場所・期間を限定すれば非常に低い.しかし,ひとたび発生すれば莫大な災害をもたらす.また,現象の発生日時・場所・規模を的確に予測することが,非常に困難であるため,不確定な課題に取り組まねばならないので,経済的な問題が生じる」
 この火山物理学者の指摘は科学的で客観的な見解であろう.この見方に基づいて判断すれば,電力事業者は「火山噴火の発生頻度が場所・期間を限定すれば非常に低い」ことのみにしがみついて,再稼働を前提にした甘い評価を下したと言わざるをえない.
 さらに,九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)への火山の噴火影響をめぐり,原子力規制委員会と日本火山学会の対立が深まっている.規制委の影響評価ガイドライン[38]がカルデラを含む巨大噴火の前兆把握が可能とする前提に立って作られているのに対し,日本火山学会の常識は「現在の知見では予知は困難」と食い違っているからだ.日本火山学会原子力問題対応委員会は11月2日に「巨大噴火の予測と監視に関する提言」を行い,原発再稼働に慎重な意見を発表した[41].これに対して,田中俊一規制委員長は同5日の記者会見において,「今頃,そんなことを言われても困る.火山学者は寝ないで火山を観測してもらいたい」などという仰天発言を行った[42].その際,記者のひとりから「火山学会が今さらそんなことをいうのは私にとって本意ではないというのは,少し言い過ぎなのではありませんか」[42]とたしなめられるなど,田中俊一規制委員長の品性は決して高いとは言い難い.
 内閣府の広域的な火山防災対策に係る検討会は「大規模火山災害対策への提言」[37]が先に発表され,その翌月,規制委員会は「火山噴火対策について原子力発電所の火山影響評価ガイド」が発表され,さらに1年以上も経過しているのだから,少なくとも田中俊一規制委員長は自らの不明を恥じるべきである.
 その後,火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)からも火山噴火のリスクを軽視するべきではないという意見が出された.このように,規制委員会による川内原発審査書の判断に我が国の火山学会関係者が大きな疑問を突きつけている[43].火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は痛烈に批判する.「例えば阿蘇のカルデラ噴火の間隔は2万年,3万年,11万年などとばらばら.6万年大丈夫というのはとんでもない議論だ」[43].この見解は[40]の見解とも整合的である.
 第2節の基本的な問題点において記したように,火山学会,火山噴火予知連絡会も慎重意見または反対意見を公表せざるを得ないほど,火山噴火という発端事象の設定に対する評価も途端に甘く,対策の有効性については著しく楽観的になっている.
 「国や電力会社はカルデラ噴火のリスクがあり,科学的に安全だと言えないことを認めるべきだ.その上で,どうしても電力が必要で原発を動かしたいというなら,そう言うべきだ」と藤井敏嗣会長(東京大名誉教授)は強調している[43].安倍首相は火山学会も火山噴火予知連絡会の藤井敏嗣会長の学問的見解を知らないのであろうか,無視するのであろうか.

3.5 過酷事故対策設備に適用されるべき,国際的な基本的設計思想からの乖離

 新規制基準においては,発端事象が何であれ,すなわち,地震・津波・火山噴火など自然現象,内部事象,テロ攻撃,航空機墜落など,何であれ,過酷事故に進展する可能性はあることを前提にはしている.世界の原子力規制に詳しい原子力アナリストの佐藤暁氏によれば,過酷事故対策設備に適用されるべき,国際的な基本的設計思想は以下のとおりである[18][27]:
1)恒設があってこその仮設
2)アクティブ(動力依存)よりもパッシブ(無動力)設計
3)手動(判断に基づく人的操作)よりも自動
4)リアクティブ(起きたら考える)よりもプロアクティブ(先を見通す)
5)楽観的(精神論的)机上論ではなく実践主義(実証主義,現実主義)
 例えば,2)アクティブよりもパッシブ設計という基本設計思想が望ましいことについては,会見[13]のp.13におけるテレビ朝日タジツ記者が質問している.弦巻英市氏も東京電力の対策にはパッシブな注水手段がないと批判している[44].
 しかし,日本の原子力規制基準ではまず仮設でもよい,アクティブ(動力依存),手動(判断に基づく人的操作),リアクティブ(起きたら考える),楽観的(精神論的)机上論であり,非常に危うい[18][19][27].
 格納容器に対する水蒸気爆発対策が不十分であることも[45],水素爆発の評価と対策も不十分であることは当研究会も指摘した[46].さらに,MCCI(溶融燃料とコンクリート相互作用)[47]の対策も不備であることも指摘した[48].例えば以下のような問題点がある[19].
1) 溶融デブリの格納容器からの落下の形態
2) 大量に積層したデブリが効率的に冷却されるかどうか,再溶融に至らないか
3) 海水注入の場合,析出する塩分の寄与を考慮して,再熱が再溶融にならないか,
4) 溶融デブリの落下までに,原子炉圧力容器の下にプール水が用意できて,それが維持できるか.
 世界的に過酷事故評価からMCCIを排除しているところは例がない[18].この意味でも,我が国の楽観的な事故評価は国際的な実践と乖離している.また,フィルター・ベント設計におけるMCCIによる影響も無視されている[19] [47] [48].
 コアキャッチャーについての規制委員会の無知と誤認について以下述べる.
 IAEAの文献[49]の「重大事故に対する設計上の考慮」という項目の6.2節には,重大事故(過酷事故)に対する設計上の考慮の全般と格納構造物の構造挙動が記されている.ここで「計算コードは,容認された研究開発に基づく国際的に認められた知識の状態を反映していること(特に,現象のモデル化は議論の余地がないものであるべきである)」(p.71)と記されている.これは,九州電力が使用したMAAPコードが国際的には欠陥プログラムといわれており,原子力規制委員会が使用しているMELCORコードのほうが国際的にははるかに評価が高いが,MELCORコードを使用しない評価が審査書で認可されたことは,IAEAの要請[47]に沿っていないことを意味している.
 また,6.7節にはエアロゾルの沈着効果が考慮されるべきとも記されている.このことについては我々も指摘してきた[47], [48].さらに,溶融炉心とコンクリートの相互作用の影響を緩和するために,発電所の設計に取り入れる対策として,6.12節の小項目(e)に「溶融炉心物質及び炉心デブリを捕獲及び保持するための強化されたサンプ又はキャビティ(コアキャッチャー)」と明記され,同(f)に「溶融炉心物質及び炉心デブリとコンクリートとの間の相互作用に起因する不都合な影響を最小限にする種類のコンクリートを格納構造物の床にしようすること」と記されている.
 田中規制委員長は記者会見において「コアキャッチャーは既設炉には設置されていなくて,新設炉に要求されている」という認識を示した[13].しかし,チェルノブイリ4号機事故直後にコアキャッチャーの原型になる装置が緊急に建設された[32][50] [41].この装置はチェルノブイリ4号機事故直後には冷却板(cooling slab)と呼ばれていたが[32][50],現在のロシアでは溶融局所化装置(Melting Localizing Device, MLD)または溶融炉心捕獲器(core melt trap)と呼ばれている[52].このアイデアを提出したのは物理学者のLeonid Bolshovである[53].
 ヨーロッパでは,プール水で溶融デブリの崩落を受け止めようとする概念そのものに対して慎重である.これは,水蒸気爆発の懸念が完全には払拭できないためである.そのため,受動的な設計思想から1990年代中頃からコキャッチャーの設計が研究されてきた[48][19].コアキャッチャーについての記者会見などにおける対応[54]を見る限り,田中俊一規制委員長は知的誠実さに欠けると言わざるを得ない.
 その他,テロ対策の甘さ,複数ユニット間の事故連鎖への対策はあるかなど多くの問題に対して,日本の規制基準における甘い対応が指摘されている[19].

3.6 規制基準適合のための費用は欧州加圧水型原子炉規制対策の約6.5分の1以下

 規制基準適合のための費用はどれくらいであり,世界最高水準を裏付けるといえるのだろうか.このことについて牧野氏はつぎのように推定している[55]:
 「事故防止のための追加費用を見ると,いわゆる新規制基準に対応するための費用は経産省の見積りでは1.6兆円以上ですが,本当にこれだけですむのかどうかはわかりません.というのは,十分な安全対策がとられたとされるいわゆる第三世代炉の建設費は恐ろしく高いものになっているからです.フランスで現在建設中のフラマンヴィル原子力発電所は,EPR(欧州加圧水型原子炉)で165万kWの電気出力をもつ最新型ですが,建設費用が当初の35億ユーロから85億までふくらんでいます.また,フィンランドで建設中のオルキルオト原発もやはりEPRで,30億ユーロから66億までふくらんでいてどちらもまだ完成していません.安全対策費用がわずか1.6兆円,原発一基あたり300億円程度ですむということは,もちろん,ここで行われる安全対策がEPR(欧州加圧水型原子炉)でとられたような徹底的なものからはほど遠い,ということを意味しています.つまり,文書に書いてある「世界で最も厳しい水準の新規制基準」というのは,少なくともヨーロッパで現在建設中の最新式原発程度の安全水準を要求するものではないということです.もちろん,ヨーロッパでも旧式原発が相変わらず運転中であり,その中のもっとも危険なものに比べると安全,という程度の基準にはなっているのかもしれませんが,「世界で最も厳しい水準の新規制基準」という言葉から想像されるようなものではありません」[55]
 文献[55]で記されている,二つの原発の規制対策費用の平均は約40億ユーロで,1ユーロ約145円(2014年11月15日現在為替レート)で換算すると,約5800億円となる.それに比べると,現在焦点になっている九州電力の川内原発1,2号機[56],玄海原発3,4号機[57]の規制基準対策費用[58]は,九電発表の3千数百億円を仮に3500億円と仮定すると,1基あたり約870億円となる.ヨーロッパの規制基準適合のための費用の約6.5分の1で,日本の場合には再稼働のための,安価でアリバイ的な対策と見なさざるをえない.

4.まとめと若干の議論

4.1 まとめ

 本稿の主題に関連する先行の論考と報道がかなりなされていることに驚いたが,来年早々にも予想される原発再稼働の判断根拠が本当かどうかをめぐって国民的な議論がより一層必要であると考えられるので,本論考も時宜にかなった意義があると考える.
 本稿では,関連する先行の論考の論点を整理し,国際的な規制基準とも具体的に比較検討することにより,新規制基準は,その出発点(=発端事象)の設定だけは厳しいが,その設定に対する評価が極端に甘く,対策の有効性については著しく楽観的になっていること,こうして,「世界一」の厳しい起因事象の設定に対して,世界一楽観的な進展シナリオに沿った,世界一奇妙な評価が行われていることをより一歩明らかにできたのではないかと考える.
原子力規制委員会の主張とその評価を表3に,国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方と日本の新規制基準の比較を表4に,欧州加圧水型原子炉(EPR)と日本の新規制基準の比較を表5に示す.
 留意すべきこととして,EPR水準の安全対策を備えたとしても,その有効性の実証は十分になされてはおらず,過酷事故による放射線災害のリスクがあることに変わりはない[60].

表3 原子力規制委員会の主張と評価
tab3BWR=沸騰水型原子炉,PWR=加圧水型原子炉.

表4 国際原子力機関(IAEA)の深層防護の考え方と日本の新規制基準の比較
tab4○要求あり,△要求はあるが極めて不十分,×要求なし

表5 欧州加圧水型原子炉(EPR)と日本の新規制基準の比較[26] [60]
tab5○要求あり,△要求はあるが極めて不十分,×要求なし.費用額の推定は本文参照.

4.2 福島第一原発事故の後,安全目標は後退したのか,前進したのか

 旧原子力安全委員会が原発の設置許可審査に関して定めた安全審査指針類[安全審査指針類]には立地指針[61],安全設計指針[62],安全評価指針[63],線量目標値指針[64]などの基本的な指針があった.このうち立地指針のみが新規制基準に取り入れられなかった[15].
 第1節において紹介した旧規準の中で,「原子炉立地審査基準」[61]における,1基本的考え方,1.2基本的目標b項には
 「更に,重大事故を超えるような技術的見地からは起るとは考えられない事故(以下「仮想事故」という.)(例えば,重大事故を想定する際には効果を期待した安全防護施設のうちのいくつかが動作しないと仮想し,それに相当する放射性物質の放散を仮想するもの)の発生を仮想しても,周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと」
と記されている.「仮想事故」という概念は国際的には「過酷事故(シビアアクシデント)」と呼ばれる.ここには,制定当時の認識を反映して,「重大事故を超えるような技術的見地からは起るとは考えられない事故」の「発生を仮想しても,周辺の公衆に著しい放射線災害を与えないこと」はIAEAなどの深層防護の考え方の4層におけるシビアクシデントの影響緩和に相当すると解釈できるかもしれない.そして,文言通りに厳格に審査されていれば,シビアクシデントの影響緩和の技術的措置がない原子炉は運転できなかったはずである.
 しかし,実際にはどうであったか.国会事故調査委員会の第四回委員会において,原子力安全委員長(当時)の斑目春樹氏は「今まで発行してきた安全審査指針類に色々な意味で瑕疵(かし)があった」と断言した.また,「諸外国で色々と検討された時,わが国ではそこまでやらなくていいという説明にばかり時間をかけ,抵抗があってもやるんだという意思決定がなかなかできにくい」「官僚制度の限界と言いますか,担当者が二年ぐらいで代わっていく.大きい問題まで取り扱い出そうとすると,自分の任期の間に終わらない.そうすると,大きな問題に手を出さないで,いかに議論しなくてもいいかという説明ばかりやればいい」と.さらに,「安全確保の一義的責任は,あくまでも電力会社にある.電力会社は,国がどういう基準を示そうと,その基準をはるかに超える安全性を目指さないといけない.それなのに,それをしないで済む理由として安全委員会が作っている安全審査指針類が使われているとしたら,大変心外だと思いますし,これからは決してそうであってはならない」と述べた.そして,「官僚の動き方が悪いとか,事業者が悪いとおっしゃっておられるが,最もおかしい動き方をされてきたのは委員長ご自身なんじゃないですか」と追及されて,斑目氏は「ある程度は認めざるを得ませんが,(就任後)安全指針類について見直そうとしていた」と言い訳するのが精一杯だった.同事故調の石橋委員の「福島原発事故を目の当たりにしてどう評価されているか」の問いに斑目氏は「仮想事故とか言いながらも,実は非常に甘甘な評価をして,あまり出ないような,強引な計算をやっているところがございます」と衝撃的な発言を行った[65].
 原発再稼働の前提となる原子力規制委員会の新規制基準には,これまでの原発の審査に用いられた基本的な指針類の中で,万一の大きな事故に対しても周辺の住民に放射線障害を与えないことを求めている「立地審査指針」だけが取り入れられていない理由は既存の原発を存続させるためであると考えざるを得ない[15].
 以上の議論から,原子炉立地審査基準から新規制基準への変化について,特に,過酷事故対策について,文書の表現上は後退していると解釈できるかもしれない.しかし,福島第一原発事故前が,過酷事故対策は事業者の自主性に任されていたが,新規制基準[26]では規制対象にされるなど,原発という技術システムの本質的な危険性の一定程度の軽減措置が義務化されたことは,本稿でも議論しているように,決して世界最高水準からほど遠いとしても,前進していると見なしてもよいのではないか.なぜならば,技術システムの安全規制基準において要求される措置は技術的に実行可能かどうかが基本的である.仮に,実行可能性の度合いの検討なしに,文言上のみで厳しい基準を制定しても,過去の原発立地指針審査の実態がそうであったように,再び書類上の形式的審査になる恐れが強いからである.新規制規準の「抜け穴」をどのように考えるか,そして関連した運動の前進を図ることは,脱原発を目指す人々にとっても重要な理論的課題のひとつであり,文献[15]はそのための多くの題材と示唆に満ちていると思われる.

4.3 なぜ「世界最高」にこだわるか,その政治的意図と心理的背景

 今回の規制基準は既設炉への追加的措置の機能水準への規制であって(規制委員会資料に議論の記載あり),将来の新設炉にふさわしいより高度な規制基準は議論されていない[18].にもかかわらず,規制委員会自ら今回の規制基準が最高水準と誇大広告している.
 政治的意図が再稼働向けのリップサービスであることは明白である.しかし,それだけでは説明が困難くらい多数回の発言がなされている.
 このことを理解するヒントになるものとして心理学に「認知的不協和」の理論(theory of cognitive dissonance)[66]がある.この理論の枠組みは,以下の通りである.
・認知に不協和が存在すると,人間はその不協和を低減させるために,なんらかの圧力を起こす
・不協和を低減させる圧力の強度は,不協和の大きさに影響される
 この「認知的不協和」の理論を理解する上で,有名な喩えとして喫煙者の例がある.たいていの喫煙者は,喫煙が身体に悪いことを知っている.身体に悪いことを知って禁煙できれば不協和(不快感)は起きないが,タバコをやめられないために不協和が起こる.人間は矛盾する認知を持ち続けることは難しいので,この不協和をなんとか低減しようと試みる.結果,「タバコを吸うことでストレス解消になっている」「タバコを吸わなくても肺ガンになる人はいる」などの認知を持つに至る.“禁煙”という行動を新しく起こすことより,自分の認知を変更することの方が,必要なエネルギー量が小さくてすむからだ.
 このように人間は,自分の選択した道が“良いはずだ”と思いたいというメカニズムを持っている[認知的不協和].
この考え方を適用すれば,福島第一原発事故により,日本の原発が世界最高の安全ではないことが明白になったが,何としてもでも原発を再稼働させたいという思いが強く,世界最高の基準を作ったことにして,原発を再稼働してもいいのだと「自らを安心させている」とも解釈できそうである.

4.4 大きな嘘を語り,そしてそれを充分頻繁に繰り返すならば,人々はそれを最後には信じるだろうか?

 旧ナチス・ドイツの宣伝相ゲッペルス(実はゲッベルス)の言葉に「大きな嘘を語り,そしてそれを充分頻繁に繰り返すならば,人々はそれを最後には信じるだろう」[67]というのがある.
 福島第一原発事故以後,市民の認識は深化しているので,単純にゲッペルスがいう事態は実現しないと思いたい.しかし,認識の深まりは十分だろうか? 政府高官のひとりがある文脈で「ワイマール共和国の歴史に学ぶべし」と発言して批判され,本意ではなかったと弁明した.しかし,それは本当だろうか,政府首脳の深部では同種のもくろみが本当にないのであろうか?

文献

[1] 野田首相(当時)の国連演説.Address by H.E. Mr. Yoshihiko Noda, Prime Minister of Japan, at the United Nations High-Level Meeting on Nuclear Safety and Security,Thursday, September 22, 2011.
http://japan.kantei.go.jp/noda/statement/201109/22speech_e.html
[2] 原子力規制委員会 資料 「原子炉立地審査指針について」
https://www.nsr.go.jp/committee/yuushikisya/shin_anzenkijyun/data/0009_03.pdf
[3] 「原発立地の指針見直しへ 規制委,国際基準並み厳格化」日経新聞 2012年11月15日
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDF1400V_U2A111C1EE8000/
[4] 安倍首相,第186回国会の施政方針演説.2014年1月24日.
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20140124siseihousin.html
[5] エネルギー基本計画,2014年4月.特に,p.8, 22, 43.
http://www.enecho.meti.go.jp/category/others/basic_plan/pdf/140411.pdf
[6] 朝日新聞2014年4月26.
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11105052.html
[7] 安倍首相,参議院予算委員会,2014年10月7日(火) DAILY NOBORDER
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141007-00010003-noborder-pol
[8] 菅官房長官「原発事故教訓踏まえ再稼働を」2014年9月12日NHKニュース.
http://www3.nhk.or.jp/news/genpatsu-fukushima/20140912/1426_kyoukun.html
[9] 川内原発:「万全の備えで再稼働」宮沢経産相が強調.毎日新聞2014年11月01日
[10] 第186回国会 衆議院・原子力問題調査特別委員会 第9号(2014年8月7日(木曜日)).
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/026518620140807009.htm
[11] 電気事業連合会「世界最高水準の安全を目指す現場の力」2014年1月.
http://www.fepc.or.jp/library/pamphlet/pdf/genbanochikara.pdf
[12] 九州電力「原子力発電のハテナにお答えします」
http://www.kyuden.co.jp/notice_sendai3_faq_necessity.html
[13] 原子力規制委員会記者会見録, 2014年7月2日.
https://www.nsr.go.jp/kaiken/data/h26fy/20140702sokkiroku.pdf
[14] テレビ朝日・報道ステーション,2014年7月25日放送.
http://www.dailymotion.com/video/x225181_原発の-世界最高基準“驚きの現実”日本は遅れていた_news
紹介したブログ:
http://kiikochan.blog136.fc2.com/blog-entry-3843.html
[15] 吉井英勝「新規制規準を斬るー『抜け穴』をどう読み解くかー」2014年2月15日.
http://www.geocities.jp/neryoshii/kenkoureji/sinkiseipdf.pdf
[16] 原子力規制委員会記者会見録.2012年11月14日.
https://www.nsr.go.jp/kaiken/data/20121114sokkiroku.pdf
[17] 佐藤 暁「原子力規制のグローバルな状況と日本,深層防護~How deep is deep enough?」2014年4月18日院内学習会における講演.
動画は
http://www.cnic.jp/movies/5817
講演資料は
http://www.cnic.jp/files/20140418mokkai_sato.pdf
[18] 佐藤 暁,(四国電力・伊方原発裁判における?)意見書,2014年6月18日.特に,pp.52-85.
http://www.ikata-tomeru.jp/wp-content/uploads/2012/01/satou157goushou.pdf
[19] 佐藤 暁「過酷事故のナイトメア・シナリオ」『科学』vol.84, nO.9(2014), 962.
[20] 加藤静吾氏(山形大学名誉教授)のホームページ「これでも原子力発電をつづけますか,原発は核兵器廃絶を妨げている」
http://kato.html.xdomain.jp/nuclearenergy/
[21] IAEA, INSAG-10「原子力安全における多重防護」1996年.
原文 
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1013e_web.pdf
[22] IAEA, INSAG-12「原子力発電所における基本安全原則」1999年.
原文 
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/P082_scr.pdf
[23] IAEA, NS-R-1「原子力発電所の基本設計」2000年.
原文 
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1099_scr.pdf
[24] 山下正弘「IAEA基準の動向ー多重防護(5層)の考え方等」」2011年3月2日.
http://epcon.cocolog-nifty.com/blog/files/20120521gosou_jnes_siryo2-4.pdf
[25] 日本原子力学会・標準委員会,技術レポート「原子力安全の基本的考え方について 第Ⅰ編 別冊 深層防護の考え方」2014年5月.
http://www.aesj.or.jp/sc/s-list/tr005anx-2013_op.pdf
欧州原子力規制協会(WENRA,Western Europe Nuclear Regulator’s Association)
RHWG(Reactor Harmonization Working Group ), Safety Objections for Nuclear Power Reactors, December 2009.
http://www.wenra.org/media/filer_public/2012/11/05/rhwg_report_newnpp_dec2009.pdf
[26] 原子力規制委員会「実用発電用原子炉及び核燃料施設等に係る新規制基準について -概要-」2014年2月14日.
http://www.nsr.go.jp/activity/data/20140214.pdf
[27] 石橋克彦「原発規制基準は「世界で最も厳しい」の虚構」『科学』,2014年8月号(Vol.84, No.8), p.869.
[28] 九州電力「新しい規制基準で求められた主な対策」.2013年8月13日.
http://www.kyuden.co.jp/library/pdf/torikumi_nuclear/shinkiseikizyun_3_130813.pdf
[29] 弦巻英市, 川内原発パブコメ(3) 深層防護の第5層(避難計画,原子力防止計画など)の審査を行うべき.
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-08-07
[30] 牧野淳一郎27. パブコメ:新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた御意見の募集について(2013/12/23~
http://jun-makino.sakura.ne.jp/articles/811/note028.html
[31]  IAEA,SSR-2/1 原子力発電所の安全:設計(Safety of Nuclear Power Plants: Design).特に, pp.6-8.
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000123919.pdf
[32] R.F.モールド「目で見るチェルノブイリの真実」西村書店,1992年,2013年(新装版).特に,訳者まえがき,p.15, p.13, p.40, p.93, pp.131-134.
[33] 泉田裕彦・新潟県知事が会見「再稼働の話をすると福島事故の検証が後回しになってしまう」.2014年10月16日.
http://blogos.com/article/96623/
[34] European Utility Requirements for Nuclear Powr Plants
http://new.europeanutilityrequirements.org/Documentation/EURdocument.aspx
ftp://ftp.cordis.europa.eu/pub/fp5-euratom/docs/03-eur.pdf
[35] 2009安全性・信頼性・経済性を追求した 欧州向けAPWR(EU-APWR)
https://www.mhi.co.jp/technology/review/pdf/461/461017.pdf
[36] 松村健_格納容器のSA対策に係わる規制基準の国内外動向, 2011年9月20日.
http://www.aesj.or.jp/sc/comittees/gijiroku/etc/2012a_sc_session3_4.pdf
[37] 内閣府・広域的な火山防災対策に係る検討会「大規模火山災害対策への提言」2013年5月16日.
http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20130516_teigen.pdf
[38] 原子力規制委員会,原子力発電所の火山影響評価ガイド,2013年6月.
https://www.nsr.go.jp/nra/kettei/data/20130628_jitsuyoukazan.pdf
[39] 「ミスター火山学が批判を続ける理由」西日本新聞2014年11月10日.
http://qbiz.jp/article/50235/1/
[40] 須藤靖明「原発と火山」櫂歌書房,2014年.特に,6章,7章,おわりに.
[41] 日本火山学会原子力問題対応委員会「巨大噴火の予測と監視に関する提言」
2014年11月2日.
http://www.kazan.or.jp/doc/kazan2014/images/teigen.pdf
[42] 田中俊一原子力規制委員長,2014年11月5日記者会見議事録
http://www.nsr.go.jp/kaiken/data/h26fy/20141105sokkiroku.pdf
[43] 火山学会と規制委が対立 川内原発,噴火リスク軽視に不信感.
西日本新聞2014年11月09日
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/kagoshima/article/125932
[44] 弦巻英市「パッシブな注水手段がない東京電力の対策 水素ガスとベント」2014年11月23日.
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-11-23
[45] 福岡核問題研究会,川内原発審査書批判1
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/critica1.pdf
[46] 福岡核問題研究会,川内原発審査書批判2
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/critica2.pdf
[47] 岡本良治・中西正之・三好永作「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発,CO 爆発の可能性」,『科学』84巻3号, p.355 (2014).
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/Kagaku_201403_Okamoto_etal.pdf
[48] 福岡核問題研究会,川内原発審査書批判3
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/critica3.pdf
[49] IAEA, N-S-G1.10 「原子力発電所の原子炉格納系の設計」 特に,pp.70-74.
日本語 
https://www.nsr.go.jp/archive/jnes/content/000126742.pdf
原文 
http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub1189_web.pdf
[50] R.F.Mould, Chernobyl Record-The Definitive History of the Chernobyl Catasrotphe-,
Institute of Physics Publishing, 2000. pp.119-120.
http://www.amazon.co.jp/Chernobyl-Record-Definitive-History-Catastrophe/dp/075030670X/ref=sr_1_1?s=english-books&ie=UTF8&qid=1417426716&sr=1-1&keywords=Chernobyl+Record
[51] 弦巻英市「ロシアのコアキャッチャー,MLD:Melt Localizing Device 溶融局所化装置」2014年11月27日.
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-11-27
[52] 弦巻英市「コアキャッチャーcore-catcherは,1986年のチェルノブイリ事故の教訓」2014年11月26日.
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/2014-11-26
[53] EVE CONANT, To Catch a Falling Core: Lessons of Chernobyl for Russian Nuclear Industry, 2012.9.18.
http://pulitzercenter.org/reporting/russia-nuclear-technology-reactors-chernobyl-energy-atomexpo
[54] 内閣委員会「日本の原発は『世界で最も厳しい基準』と言えるのか」,「放射性プルーム防護対策について」
http://www.taro-yamamoto.jp/national-diet/3816
[55] 牧野義司 2014.7.23, 川内原発再稼働前にもっとやることある「5層の防御」策で「安全の証明」が先決
http://kenja.jp/stimulus/?tar=258&P=1
[56] 九州電力株式会社「川内原子力発電所1,2号機に係る新規制基準への新規制基準への適合性確認のための申請について」 2013年7月8日
http://www.kyuden.co.jp/press_130708-1.html
[57] 九州電力株式会社「玄海原子力発電所3,4号機に係る新規制基準への適合性確認のための申請について」 2013年7月12日.
http://www.kyuden.co.jp/press_130712-1.html
[58] 九電「原発安全1000億円積み増し 玄海と川内」2014年4月18日,日本経済新聞電子版.
http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ180EL_Y4A410C1TJ2000/
[59] ロイター通信2013年 04月 10日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE93900720130410?pageNumber=1&virtualBrandChannel=0
[60] 原子力市民委員会「原発ゼロ社会への道」,2014年.P.160など.
http://www.ccnejapan.com/20140412_CCNE.pdf
[61] 旧原子力委員会「原子炉立地審査指針及びその適用に関する判断のめやすについて」1964年5月27日.一部改訂1998年3月27日.
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/1/si001.pdf
[62] 旧原子力安全委員会「発電用軽水型原子炉施設に関する安全設計審査指針」 1990年8月30日.
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/1/si002.pdf
[63] 旧原子力安全委員会「発電用軽水型原子炉施設の安全評価に関する審査指針」
1990年8月30日.
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/1/si008.pdf
[64] 旧原子力委員会「発電用軽水型原子炉施設周辺の線量目標値に関する指針」
1975年5月13日.
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/shinsashishin/pdf/1/si015.pdf
[65] 週間金曜日ニュース「原発を建てられるように『基準』を作っていた―原子力安全の最高責任者2人を国会事故調が追及!」,2012年6月13日
http://www.kinyobi.co.jp/kinyobinews/?tag=%E5%8E%9F%E5%AD%90%E7%82%89%E7%AB%8B%E5%9C%B0%E5%AF%A9%E6%9F%BB%E6%8C%87%E9%87%9D
[66] 認知的不協和.心理学用語.
http://health.goo.ne.jp/mental/yougo/021.html
[67] 出典(ドイツ語オリジナル):pressemeldungWUSSTEN SIE, DASS…
http://www.news4press.com/WUSSTEN-SIE-DASS%E2%80%A6N_596850.html
※日本では「ゲッペルス」と表記・発音されることが多いが,正確には「ゲッベルス」(Paul Joseph Goebbels)である.

川内原発再稼働についての異議申立て

異議申立てに関する口頭意見陳述会が1月21日(水)に原子力規制庁において行われました.この件についての詳細は,このページの下部,(7)項目にあります.(2015.1.23)

(1)本研究会のメンバー北岡逸人氏(元柏崎市議会議員)を中心にして,川内原発の再稼働をめぐり,11月7日に原子力規制委員会へ異議申立が行われました.
異議申立書の中では,原子力規制委員会は東京電力福島第1原発事故の真相解明をせずに新規制基準の作成と審査を優先したことを指摘しています.さらに,「地震対策で重要な基準地震動の策定や重大事故対策の整備に問題があるのに許可」が行われ,避難計画の必要性を認めながら実効性を確認しない原子力規制委員会は,原子力規制の専門機関として無責任極まりないとして,行政不服審査法に基づき許可を取り消すよう求めています.
異議申立人の募集は短期間であったにもかかわらず,1400名を越える人々が異議申立人となりました.

異議申立書

申し立てでは口頭での意見陳述も求めていています.原子力規制委員会は応じる方針のようですが,申し立ての内容自体については「非公開で審議する」としています.
続報は本サイトで,情報が入り次第公開していきます.

関連サイト

1. IWJ Independent Web Journal
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/204076

2. 毎日新聞 2014/11/12 12:23
川内原発:1400人が異議申し立て
https://archive.today/i0Ukd

3. 日本経済新聞 2014/11/12 21:40
川内原発の再稼働巡る異議申し立て受理 規制委
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDG12H3S_S4A111C1CR8000/

4. NHK 2014/11/12 21:13
再稼働許可 1400人取り消し求め申し立て
http://m.youtube.com/watch?v=aZwGrRgIAJ0

(2)第38回原子力規制委員会 (平成26年11月12日)において異議申立てに関する今後の審議・資料・議事録等を「非公開」とする決定がなされました.この原子力規制委員会の様子を以下のYouTubeのサイトでみることが出来ます.
http://www.youtube.com/watch?v=K2fVHaxcxqI
関係部分を文字起こししたものが以下になります.

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47分01秒~
【市村管理官】
この異議申立てというものは,規制委員会自ら行った処分の適否あるいは当不当というものを自ら審議をするということでございます.そういう性質に鑑みまして,原子力規制委員会議事運営要領7条及び8条(以下参照)の規定に基づいて,この異議申立ての審議及びその資料・議事録を非公開として、後日議事要旨を公開をするということとしたいと考えています.
47分56秒~(括弧内は傍聴者の発言)
【田中委員長】
これについて市村管理官から提案がありましたように,内容が内容ですから,この審査・資料等については非公開で行うということでよろしいでしょうか?(公開にして下さい.なんで非公開なんですか? 公開にして下さい。)えっと,よろしいですね.はい,それじゃ,提案の通りこの審理を進めるにあたっては,資料・議事録を非公開とし後日議事要旨を公開することで進めたいと思います.(私たちはすごい心配しているんですよ,なんで非公開なんですか!? 公開にして下さい.おかしいです!)
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(3)原子力規制委員会の組織理念
http://www.nsr.go.jp/nra/idea.html
では,活動原則の第3項目に透明で開かれた組織と言うことを謳い,「意思決定のプロセスを含め,規制にかかわる情報の開示を徹底する.また,国内外の多様な意見に耳を傾け,孤立と独善を戒める」としています.今回の「異議申立て審議の非公開決定」はこの組織理念に真っ向から反するものです.原子力行政が3.11以前のものと同様なものになることを許してはなりません.

(4)11月18日現在,異議申立ての審議などを非公開としたことについて,行政不服審査法における異議申立ての追加の手続き(書類提出)で,審議(口頭意見陳述会を含む)等の全面公開を求めることを予定しています.

(5)12月18日に原子力規制委員会に対して「異議申立ての審議手続きに関する意見書」と「執行停止の申立書」を提出しました.「異議申立ての審議手続きに関する意見書」は,本件異議申立ての審理等を非公開とする決定の取り消しを求めたものであり,「執行停止の申立書」は,行政不服審査法第48条によって準用される同法第34条第2項の規定により、本件処分(平成26年9月10日.原規規発第1409102号)の執行停止を申し立てたものです.

異議申立ての審議手続きに関する意見書
執行停止の申立書

(6)異議申立てに関する口頭意見陳述会の開催について
川内原子力発電所1・2号炉の設置変更許可に対する異議申立てに関する口頭意見陳述会の開催が以下の通りに行われることになりました.

日時:2015年1月21日(水)15:00~18:15
場所:原子力規制委員会 (東京都港区六本木1丁目9-9 六本木ファーストビル13階) 会議室A
地図:http://tinyurl.com/ndfw27u
議題:川内原子力発電所1・2号炉の設置変更許可に対する異議申立てに関する口頭意見陳述

★ (異議申立人総代)青柳行信 鳥原良子 北岡逸人 から:
*異議申立人の中で出席・傍聴できる方は,
氏名・住所を 
y-aoyagi@r8.dion.ne.jp (青柳行信)まで、ご連絡ください.
*さらに異議申立人の中で意見陳述できる方は,
氏名・住所を 
y-aoyagi@r8.dion.ne.jp(青柳行信)まで、ご連絡ください.

1.出席者名簿を総代で1週間前には作成する関係上,1月13日が締切です.特に関東の方の積極的な出席,よろしく願いいたします.出席・傍聴できるのは異議申立人のみで最大150名です.
2.当日の意見陳述者名の登録及び発言時間配分表を総代で1週間前作成しますので,こちらも1月13日締切でご連絡ください.1人10分程度と考えています.

以上


(7)異議申立てに関する口頭意見陳述会が1月21日(水)に原子力規制庁において行われました.原子力規制庁からは浦野宗一安全規制調整官,中桐裕子管理官補佐(中桐氏はしばしば中座した),大野佳史総括係長が出席し,異議申立人からは意見陳述者と傍聴者合わせて50名程度が出席し,15時から18時15分までの予定で始まりましたが,実際に終了したのは18時30分ころでした.原子力規制庁としては,当日は意見を聞くというだけの会であるということでした.意見陳述を行ったのは以下の15名です.意見陳述内容は,資料が集まり次第,このページにリンクします.

① 鳥原良子氏(薩摩川内市)          15分 
陳述内容
② 浅田正文氏(原発震災被災者)        10分 
陳述内容
③ 有馬良典氏(薩摩川内市)          10分 
陳述内容
④ 佃 昌樹氏(薩摩川内市議)         10分 
陳述内容
⑤ 筒井哲朗氏(原子力市民委員会)       15分 
陳述内容
⑥ 石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)       30分 
陳述要旨 スライド
  (休憩)
⑦ 北岡逸人氏(福岡核問題研究会)       20分 
陳述内容とスライド
⑧ 三好永作氏(福岡核問題研究会)       10分 
陳述要旨 スライド
⑨ 中嶌哲演氏(原発設置反対小浜市民の会)   10分 
陳述内容
⑩ 小倉志郎氏(原子力市民委員会)       10分 
陳述内容
⑪ 矢部忠夫氏(柏崎市議)           10分 
陳述内容
⑫ 上里恵子氏(上関原発計画の根っこを考える会) 5分 
陳述内容 スライド
⑬ 山田純一氏(再稼働阻止全国ネットワーク)   7分 
陳述内容
⑭ 木村雅英氏(再稼働阻止全国ネットワーク)   8分 
陳述内容
⑮ 東井 怜氏(浜岡原発控訴審原告)      10分 
陳述内容

川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(3)

ー溶融炉心とコンクリート相互作用への「水張り対策」は世界的に珍策ー

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2014年9月8日  福岡核問題研究会

1. なぜ溶融炉心とコンクリート相互作用の対策を問題にするか

 本論考は原子力規制委員会・新規制基準にもとづく川内原発審査書案の過酷事故対策の批判的分析1(水蒸気爆発防止策)[1],同2(水素爆発対策批判)[2]に続くものある。
新規制基準において、水素爆発の可能性が払拭できていないことについて、井野・滝谷氏の論文[3]では、次のような問題点が多数指摘されている:
 溶融炉心が流れ出てくると、いわゆる水・ジルコニウム反応だけでなく、溶融炉心とコンクリートとの反応(溶融炉心・コンクリート反応、MCCIと略)によって水素が発生し、より水素爆発の可能性が高まる。「加圧水型(PWR)原子炉は格納容器が大きいから水素爆発の心配はいらない」というのは非科学的である。1979年のスリーマイル島原発の炉心溶融事故の際には、水素爆発の危険性が最も懸念されていた。モデルによる解析でも、水素爆発発生までの数値に余裕がなく、MCCIや、格納容器内での水素濃度の偏りの可能性を考えた場合、水素爆発はリアリティを持っている。そして、沸騰水型とは違い、加圧水型(PWR)は格納容器が大きいだけに、その爆発の威力も逆に格段に大きいと見ておいた方がいいのではないか。
 本年4月中旬、世界の原子力規制の動向に精通した原子力コンサルタントの佐藤暁氏が新規制基準における過酷事故が非常に不十分であることを詳しく議論している[4, 5]。特に、講演資料[4]の21ページにおいて、再臨界、水蒸気爆発、MCCIの評価に対しては慎重さが必要としている。
 過酷事故(シビアアクシデント)の際、溶融核燃料と格納容器の下部キャビティのコンクリートの相互作用により、コンクリートの骨材が石灰岩系であれば、水素だけではなく、CO2、COも大量に発生することは、一般にはほとんど知られていない。しかし、原子力研究者の間では従前より認識され、徹底的に研究されてきた。

fig3-1

詳しくは、例えば、論文[6]を参照のこと。溶融炉心とコンクリート相互作用については、他にも、部分的ではあるが、いくつかの文献でも言及されている[7, 8, 9]。
 MCCIについて東電の事故調査報告書[10]には全く言及がなかったが、その認識が新たに得られたのか、言及しないことの不自然さを意識したのか不明であるが、東電の本年8月6日の公表資料[11]のp.12には「溶融燃料が十分に冷却されない場合、溶融燃料と接触した格納容器床面のコンクリートが融点以上まで熱せられることにより、コンクリートが分解するコア・コンクリート反応が生じる。コア・コンクリート反応では、水素、一酸化炭素等の非凝縮性ガスが発生するため、格納容器圧力変化や放射性物質の放出挙動に大きな影響を与える。しかしながら、実際にどの程度のコア・コンクリート反応が生じていたかについては明らかになっていない。従って、コア・コンクリート反応がどの程度生じていたのか評価するとともに、それが事故進展に及ぼす影響について検討する必要がある。(共通-5)」
という記述が現れた。また、高温燃焼炉設計に長年従事した中西正之氏もMCCI対策の重要性を強調している[12]。

2. 溶融炉心・コンクリート相互作用のおきる原子炉こそ致命的弱点

 川内原発の審査書案[13]に於ける川内原発1・2号炉の溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)についての検討はpp.201-205に記載されている。関連する第58回検討会における資料[14]の「1 まえがき」には以下のように、MCCIについての知見が不十分であると記している。
 「溶融炉心とコンクリートの相互作用(MCCI:Molten Core Concrete Interaction、以下、「MCCI」と称す。)に関しては、国内外において現象の解明や評価に関する多くの活動が行われてきているが、現在においても研究段階にあり、また、実機規模での現象についてほとんど経験がなく、有効なデータが得られていないのが現状であり、不確かさが大きい現象であると言える。そこで、国内外で実施された実験等による知見を整理するとともに、解析モデルに関する不確かさの整理を行い、感度解析により有効性評価への影響を確認した。」
 また,「2 現象の概要」には以下のような記述が見られる。
 「国内 PWR プラントでは、炉心損傷を検知した後に、原子炉キャビティへの水張りを行うことにより、溶融炉心がキャビティに落下した際の溶融炉心の冷却を促進することにより MCCI の防止/緩和を行っている。キャビティに落下した溶融炉心は、キャビティ水との接触により、一部は粒子化して水中にエントレインされ、残りはキャビティ床面に落下して堆積し溶融プールを形成する。エントレインされたデブリ粒子は、水と膜沸騰熱伝達し水中を浮遊するが、冷却が進むと膜沸騰状態が解消され、溶融プール上に堆積する。
 キャビティ底に堆積した溶融炉心は、崩壊熱や化学反応熱により発熱しているが、キャビティ水及びコンクリートとの伝熱により冷却されるにつれて固化し、冷却が不足する場合には、中心に溶融プール(液相)、外面にクラスト(固相)を形成する。
 コンクリートは、溶融炉心との熱伝達により加熱され、その温度が融点を上回る場合に融解する。このとき、ガス(水蒸気及び二酸化炭素)及びスラグが発生し、溶融炉心に混入され化学反応する。」
 しかし、「現象の概要」の文章の中で、「国内 PWR プラントでは、炉心損傷を検知した後に、原子炉キャビティへの水張りを行うことにより、溶融炉心がキャビティに落下した際の溶融炉心の冷却を促進することにより MCCI の防止/緩和を行っている」という対策の文章を混入させることは、あたかも現象が防止/緩和されることを自然現象のごとく思い込ませるような意図が感じられる。そのような意図がないとすれば、願望的思考の一例かもしれない。
 さらに、「6まとめ」では
「溶融炉心とコンクリートの相互作用(MCCI)に関しては、水プールに溶融物を落下させて溶融物の冷却性を確認した直接的な実験例は DEFOR 実験のみでありサンプルが少ない。また、COTELS 実験の知見より注水することでコンクリート侵食が停止したことが確認されている。
 これまでの実験により得られた知見に基づき分析した結果、MCCI に関する溶融炉心のキャビティへの堆積過程及び溶融炉心の冷却過程における不確かさの要因として抽出した、
 ・キャビティ水深
 ・Ricou-Spalding のエントレインメント係数
 ・炉心デブリの拡がり
 ・水-炉心デブリ間の熱伝達係数
について、感度解析を行い、コンクリート侵食への影響を確認した。
 その結果、水-炉心デブリ間の熱伝達係数を除いてはコンクリート侵食量への感度は小さく、重大事故対策の有効性評価の結果に影響は与えないことを確認した。水-炉心デブリ間の熱伝達係数については、侵食量が約 20cm となる程度の感度があったが、原子炉格納容器の構造部材の支持機能が喪失には至ることはない。この感度解析条件は、水-炉心デブリ間の熱伝達係数を低温の炉心デブリから水への熱流束に基づき設定したものであり、高温の炉心デブリが水と接触する場合においても水への熱流束が小さく評価されるものとなっている。想定される現象としては、炉心デブリが水中に落下し、高温の炉心デブリが水と接触している間は、水への熱流束が大きくなり、その間に炉心デブリが冷却されることから有意なコンクリート侵食に至ることはないと考えられる。
 感度解析の結果から、炉心損傷検知後、キャビティに水を張ることにより炉心デブリの細粒化及び固化を促進させる方策が有効であることを確認したが、今後、原子炉容器破損時における炉心デブリの放出状況に応じ影響因子間の相関を考慮し、コンクリート侵食への影響を把握する。
 また、溶融炉心とコンクリート相互作用(MCCI)については、複雑な多成分・多相熱伝達現象であり知見が不十分であること、また直接的な実験例が少ないことから、今後も継続してコンクリート侵食に対する検討を進め、知見の拡充に努める。」
 このように、現象を模擬する実験例が非常に少ないことを認めているにも拘わらず,一つの解析コードにおける使用されたパラメータの感度解析の評価で、影響は軽微であると結論づけることは説得力が低いと考えられる。なぜならば、「溶融炉心とコンクリート相互作用(MCCI)については、複雑な多成分・多相熱伝達現象であり知見が不十分であること、また直接的な実験例が少ないことから、今後継続してコンクリート侵食に対する検討を進め、知見の拡充に努める」[14]と記されているように、設定した物理的、化学的モデルの現実性は必ずしも明らかではないからである。さらに、3節で議論するように、注水が時間的に間に合わなかったり、注水量が不十分であったりする可能性も否定できない。
 一般にはほとんど知られていないが、溶融核燃料の状態に近い技術現場であると考えられる高熱溶融炉設計の常識は以下のようなことである[12]。

(A)コンクリートの基礎の上に、直接に溶融炉を設置すると、溶融物が漏洩してコンクリートと接触した時、コンクリート中の水分が水蒸気爆発して、コンクリート塊が溶融炉本体や作業員を直撃するので、コンクリート表面は脱水した耐火物で保護する。また、ほとんどの溶融物はコンクリートを溶かし、炉体の基礎を破壊するので、耐火物で保護する。
(B)溶融炉の下部で溶融物が固化すると、溶融炉下部の冷却機能を阻害し、再操業を困難にするので、炉下部から外側に溶融物が流れるような流路を設ける。

 このような常識から考えると、川内原発の過酷事故対策には、相当の高温状態が実現するにもかかわらず、高熱溶融炉設計の常識は全く生かされていない、と言わざるを得ない。
 1979年3月のスリーマイル島原発、1986年4月のチェルノブイリ原発の過酷事故の発生時、溶融核燃料のメルトダウンやメルトスルーが現実に起きる事が分かり、2800℃にもの高温度になった核燃料が格納容器のコンクリートと反応するMCCIが非常に危険だということが分った。
 そして、世界中でMCCIの再現実験と防止実験が行われた。その実験で、MCCIは水をかけて冷却しても、水中でも火山でできる軽石と同じクラスタがコリウム表面に発生し断熱をしていまい、コリウムから水への熱の移動を阻害し、水でMCCIを停止することが非常に難しい事が分った。また、MCCIによって、大量の水素と一酸化炭素が発生し、ジルカロイ・水蒸気反応で発生する水素と合算されることが分った。
 国会事故調査委員会も事故調査報告書[15]で、上記の国内外のMCCIの実験結果より、福島第一原発3号機の爆発は、MCCIによって、大量の水素と一酸化炭素が発生し、ジルカロイ・水蒸気反応で発生する水素と合算され大爆発が起きたと推測すると、一番良く説明できると報告した。
 海外の文献には、MCCIによって、大量の水素と一酸化炭素が発生することは、たくさんの報告がされているから、海外では良く知られているが、日本では原発の安全神話を守るために、このことはブラックボックスとされてきた。
原子力規制委員会の新規制基準の策定時のパブリックコメントで、佐藤暁氏が公開で、このことを指摘しても、規制委員会は無言で押し通した。
 そして、新規制基準には、MCCIによるCOガスの発生は全く考慮せずに、MCCIにより溶融炉心がコンクリートを溶融貫通しないことと規定した。
 その結果、九州電力は新規制基準に対応するために、高熱溶融炉設計の常識とは全く反して、世界中で誰もが行わなかった格納容器貯水冷却対策という珍策を考えだした。
 確かに、3.11事故前の原子炉メーカーの技術者の報告[16]のp.7では「事前水張りの実施例は海外では存在しない」,さらにp.15に水蒸気爆発防止として、下部DW(ドライウェル、格納容器)への事前水張りの禁止・不要化と明記されている。
 新規制基準の適合性審査で原子力規制委員会は当初、この方法には水蒸気爆発の問題が有るのではないかと指摘はしていた。しかし、原子力規制委員会は新規制基準においては、MCCIによるCOガスの発生は全く考慮しなかったので、MCCIによる非凝縮性または/および可燃性のガスの発生はほとんど問題にはしなかった。
 九州電力はMCCIによって少し水素ガスが発生することは認めており、その発生はすべて水・ジルコニウム反応によるとしている。そして、MCCIによって発生する水素の量は炉心内のジルコニウムの6%と計算している。
 しかし、国会事故調査委員会[15]や文献[6]で指摘されているように、MCCIによりCOガスが発生することは、海外の文献ではたくさん報告されている。
 福島第一原発の過酷事故におけるMCCIによるCOガスの発生の有無も検討せず、海外の多数の文献の検討や、国内でも明確な論文が発表されているのに、ほとんど検討もしないことは審査機関としてのレベルの低さを露呈しているものと断言せざるを得ない。
 MCCIによりCOガスの発生が有れば、COガスの発生がないと決めつけて行われる過酷事故対策においては、川内原発の格納容器と原子炉建屋に爆轟が起きて、核燃料が野ざらしになる確率が高くなる。
 九州電力もこの事実を知ってはいるが、コアキャッチャーなどの新設への投入経費を惜しみ、過酷事故の際には、格納容器の下部キャビティへの注水で対処するという方針にしたと推測される。そして、審査書において、格納容器の下部キャビティへの注水開始遅れの影響などについて、MAAP解析コードにより、パラメータを保守的に設定した上でも原子炉格納容器の構造部材の支持機能に与える影響がないことを確認した、とされている。
 格納容器の下部キャビティへの注水開始遅れの影響に関連することについて、旧原子力安全・保安院が、福島事故後の2011年6月に、『東京電力福島第1原発事故に係る1号機、2号機、3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析』[17]という資料を公表している。東電はMAAPで解析して、それを保安院がJNESの支援を受けて別の解析コード(MELCOR)によるクロスチェックを行った結果、地震発生後の1号機原子炉圧力容器の破損時間はMAAPでは約15時間、MELCORでは約5時間と、3倍の差異が生じた。
 従って、事業者によるMAAP解析コードによる評価だけで, 別の解析コードによるクロスチェック無しでは、原子力規制委員会の独立性も専門性も示されておらず、MAAP解析コードによる感度評価も信頼性が高いとは言えない、と言わざるを得ない。

3.過酷事故の際のエアロゾルの発生と挙動と影響

MCCIの進行度合いによっては,非凝縮性の可燃性(爆発性)ガスが放出されると同時に,図1に記され,文献[7, 8]において詳述されているように,大量(トンのオーダー)のエアロゾルが発散され,現在,各電力会社で検討されているフィルタベントが目詰まりを起こしてしまう可能性がある.エアロゾルの発生と拡散のしくみの概略を図2に示す。

fig3-2
図2 エアロゾルの発生と拡散の模式図:出典[18], p.457
流入する流れ(Inlet flow)、壁(wall)、Sorbtion(吸着?), ガス相における化学反応(gas phase chemical reaction)、過飽和蒸気supersaturated vapor)、より低温に(cooler)、凝縮(condensation)、核形成(Nucleation)、エアロゾル(aerosol)、集塊化(Agglomeration)、付着(deposition)、放出(release).

原発の過酷事故におけるエアロゾルの発生と拡散による影響については、米国物理学会の総説[19]と米国原子力規制委員会報告[20]にも詳細な議論と論文紹介がなされている。
このように,水素や一酸化炭素,二酸化炭素などのガス成分だけがフィルタベントに向かって流れていくのではなく,濃い煙のようになって大量の粒子成分を運搬していくことも考慮しなければならない。かなりの量のストロンチウムとプルトニウムが放散する問題が懸念される。フィルタベントの例を図3に示す。

fig3-3
図3 電力会社で検討されているフィルタベントの実例 出典は文献[21]


 図3中の「放射性微粒子(放射性セシウム)を除去率が99.9%以上」については実証的吟味が必要と思われる。例えば、水スクラバが想定されていると思われる常温ではなく、高温の場合、除去率が半減するなどの実験結果もある[22]。
 フィルタベントの性能について、新潟県においては以前から知事を含めて新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会において精力的に審議されている[23]。ちなみに、[23]のp.2, p.7において、MCCIが起きた場合などの質疑もp.2とp.7にあり、東電は回答できていない。関連した分析について[24]が参考になるかもしれない。
 少し古いが, 原子力規制委員会において審議されたと想像される詳細な資料「諸外国の格納容器ベントシステムの設備概要」[25]のp.2,p.3,p.8,p.20, 付-3,付-5には各国のフィルタベントの処理流体の想定温度が具体的に示されている。関連して、p.4 および付録-2にMCCI関連の記述もある。

4. MCCI対策の国際的な動向と川内原発における原子炉キャビティ(圧力容器外)の「水張り対策」

 これまで設置された原子炉プラントに対して、明らかに、すべての過酷事故問題が解決されているわけではない[18]。最も重要な未解決問題は,事故を安定化させ終了させるために、想定された過酷事故の期間に生成される溶融炉心(melt/debris)を冷却することである。第三プラス世代(原子炉世代)の軽水炉における設計における二つの戦略は溶融炉心の圧力容器内保持戦略と圧力容器外保持戦略であるようである[16, 18, 26]。

4.1圧力容器内で溶融炉心を保持する(IVMR)戦略
 溶融核燃料等の冷却と保持を圧力容器内で行う戦略(In-Vessel Melt Retention, 略称はIVMRまたはIVR) は圧力容器の全体または少なくとも下部先端を水浸しにすることにより、PWR圧力容器、またはBWRのドライウェル(格納容器系の中で、圧力抑制室を除いた部分)を冠水させるというアイデアに基づいている。この設計思想はフィンランドのLoviisa VVER-440、PWR設計のAP-600,AP-1000, 韓国の改良PWR-1400、そしてフランスのアレバ社の1000Mwe BWRの設計に採用されている[18, 27, 28]。
 溶融炉心等の圧力容器内での保持の概念図を図4に示す。

fig3-4
図4:溶融炉心等の圧力容器内での保持の概念図。出典は文献[26]。
図4の右図とほぼ同様な図が文献[18]にも記載されている。Qd(qd):溶融炉心が酸化物状態になったプール(以下、プールと略)から圧力容器の下球面部の壁への熱流束、Qh:プールから溶融した金属層への熱流束、Qb(qb):溶融した金属層から圧力容器の円柱側面部の壁への熱流束、Qrad:溶融した金属層の表面からの熱放射損失。熱流束とはある断面積を単位時間に通過する熱エネルギーを意味する。

 IVR戦略が成功する必要条件は圧力容器キャビティ(格納容器内の圧力容器を含む間隙)を初期に、かつ長期間にわたり冠水させること、圧力容器の壁からの熱の除去、格納容器からの熱の除去である[26]。600MWe AP-600原子炉に対する一様なプール(溶融炉心が酸化物状態になったプール)については、圧力容器を囲む水側が伝達しうる臨界熱流束(critical heat flux)とプール側から流入する熱流束に比べて十分な余裕があることがわかった。しかし、この安全性についての余裕は、プールの表面に金属層が生成される場合にはかなり減少するかもしれないと予想されている[18]。図4に示されているように、この金属層はPWRとBWRの圧力容器下部において存在する、プールで溶けた金属の中で生じ、(相対的に)軽いので、プール中の表面に上昇する[18, 26]。金属層はプールからの熱を受けて、圧力容器の壁に垂直にレイリー・ベナード対流熱伝達を行う。そして、これは熱伝達を高く上昇させる。このような熱の集中は金属層が薄い場合には最も強くなる。30cm以下の金属層の場合、集中された熱流束は,図4の右図の赤丸で記されたように、圧力容器下部の半球の均分円の近くでは臨界熱流束を圧倒しうる[18]。
 最近、溶融炉心の構成物質間の化学反応という研究プロジェクトにおいて、溶融炉心プールの中に異なる層配位(layer configurations)が生成されるかもしれないという複雑な事態が明らかになった。最悪の事態は,金属のいくらかがウランと結合してプールの底に沈み、残りの金属がプールの表面に薄い層をつくり、圧力容器の壁に強く,集中した熱流束をもたらすことである[18, 26]。

4.2圧力容器外で溶融炉心を保持する戦略
 溶融核燃料等の冷却と保持を圧力容器外で行う戦略は次のような最近の知見に基づいている[26]。まず、軽水炉の標準的なキャビティは小さすぎるので、圧力容器キャビティ内部でMCCIが始まった後に溶融炉心を冷却することは不可能である。次に、溶融炉心の熱伝導率によりほとんど影響されるので、冷却可能な溶融炉心の厚さは25cm以下である。
 この戦略はフィンランドの原発で最近設計された欧州PWR(EPR)と中国とインドに対して設計されたロシアの新型原子炉VVER-1000に採用された[18]。
 この戦略において、コアキャッチャー(core catcher)が設計されてきた。コアキャッチャーとは,文字通り、炉心(core)のメルトダウンする事故が起こり、溶け落ちた核燃料等が圧力容器の底を突き破って下に落ちても、それを捕獲(catch)して安全な容器に誘導して、薄く広げて一気に冷却するという耐熱性の材料で作られた容器である[3]。文献[16]において、設計想定外事故(beyond- design-base accident、B-DBA)への対策の一環として、コアキャッチャーの設置または計画例などが紹介されている。
 田中規制委員会委員長の発言のように、コアキャッチャーは研究開発段階で、設置はされていないという見方がある[29]が,上述のように、この事実認識は正しくない。そして原子力規制委員会の委員長の認識としてはいかがなものかと言わざるを得ない。
 コアキャッチャーの一例として欧州加圧水型原子炉(EPR)におけるコアキャッチャーを下図に示す。


fig3-5
図5:欧州加圧水型原子炉(EPR)におけるコア・キャッチャー。出典[18]。
引用した図は文献[15]のp.7の左上の図とほぼ同じである。

コアキャッチャーを構成する中心的要素は、原子炉の格納容器下部の床を、通常のポルトランドセメントからなるコンクリートではなく、高温の溶けた核燃料を広い平面状容器に展開し、その容器の表面を守るための特殊素材であると考えられる。この特殊素材が何かについて具体的に記述している文献はまれであるが、図5にはジルコニア(Zirconia, 二酸化ジルコニウム、ZrO2)というセラミックスの一種が記されている。ジルコニアはその熱的特性が優れていることが知られている。すなわち、融点は2700℃で、熱伝導率が他のセラミックスに比べてかなり小さく、かつ金属の鉄や銅と化学反応しないので、優れた耐火物である。
コアキャッチャーの設置の実例については、文献[18, 30, 31]によれば、欧州加圧水炉(EPR)についてはフィンランドの原発とフランスのフラマンビル-3原発、ロシアの新型原子炉VVER-1000については中国広東省の台山原発(タイシャン、Tian Wan)、インドのKundakulam原発に設置されているようである。文献[16]のp.14, pp.17-19には米国のMark型の改良型原子炉と推測される。コアキャッチャーの耐熱性の材料としてはマグネシア(酸化マグネシウム、MgO)が使用されている。
ここで、耐火物[32, 33]として知られているアルミナ(Al2O3)、マグネシア(MgO)、ジルコニア(ZrO2)の他の重要な性質は溶融炉心との化学反応である。同じ金属でも、金属の鉄や銅はAl2O3、MgO、ZrO2とあまり反応しないが、FeOやCuOはAl2O3とはかなり反応する。しかし、MgO、ZrO2、黒鉛は(他の物質との化学)反応が少ないと思われる。MgOの欠点は水蒸気に弱い事、黒鉛は熱伝導率が大きいこと、酸素雰囲気下で燃焼することであると思われる。
次に、ロシアの新型原発のコアキャッチャーを図6に示す。

fig3-6
図6 ロシア型コアキャッチャー。出典は文献[34]。
文献[18, 31]にもほぼ同じ図が掲載されている。1-Containment 8–Basket、2–Reactor, 3–Concretecavity, 4–Concrete cantilever, 5-Device for coolant supply, 6-Device for coolant removal, 7-Ring section heat exchanger,8-Basket, 9–Protective truss, 10– Heat insulation panels, 11-Air cooling channels, 12-Heat insulation, 13–Lower plate。

 図6のロシアの新型原発のコアキャッチャーの耐火物として,何が使用されているか具体的な記述はない。しかし、原子力関係の国際会議報告[35]の2-22ページに、コアキャッチャー材料と溶融コリウムの相互作用に関する新しい実験結果(ロシアLSK/St Petersburg)について「シビアアクシデント時に原子炉容器から放出される溶融コリウムを長期保持するために、ジルコニアベースの耐火材料で作られた原子炉容器外コアキャッチャーが提案されている」との記述がある。さらに、ロシアの新型原子炉VVER-1000についてのKhabenskyらの論文[31]のpp.568-569にZr、Zr-bearing steelという記述もある。
 泉田新潟県知事はコアキャッチャーの必要性にたびたび言及している[36]。
 圧力容器から排出される溶融炉心を広げる効率について、欧州諸国で多くの研究が行われた。そして、保守的な仮定の下で、排出された溶融炉心とコンクリートの混合物が一様に広がることが確認されているようである。しかし、溶融炉心の厚さ約40cmは冠水だけで、その冷却が確実な厚さを超えている。 さらに、広がった溶融炉心プールの中心部が固化するにはかなりの時間がかかる[18]。コアキャッチャーはFe2O3や他の酸化物を含む酸化物からできた耐火煉瓦で満たされている。この目的は排出された溶融炉心の温度を下げ、広い温度領域にわたってそれを液体の状態に保持することである[Sehgal12]。コアキャッチャーの壁は金属であるが、酸化煉瓦により裏打ちされている。溶融炉心とこれらの物質との化学(反応)がいくつかの実験の主題になっていて、選択された酸化物は溶融炉心の中のウランと金属が結合し、溶融炉心プールの底に沈む金属の厚い層を形成するように選ばれている[18, 26]。

4.3 川内原発における原子炉キャビティ(圧力容器外)の「水張り」策の危険な特異性
 国際会議ICONE(International Conference on Nuclear Engineering)[35]は、2000年に開催されたが、原子炉工学に関する国際会議として、原子力発電所の安全性に係る技術を始め、原子炉核工学、伝熱・熱水流動工学、構造強度工学等の原子力の利用に係る幅広い分野における最新の技術情報の交換を目的として、日本機械学会、米国機械学会、フランス原子力エネルギー学会により共催されているようである。この国際会議で3件のコアキャッチャーの報告が行われているが、何れにも「コアキャチャーそのものには直接的な興味はないが」と無関心を明記するなど、日本の技術陣はコアキヤッチャーを全く検討していなかった。
 圧力容器内で溶融炉心を保持する戦略(IVMRまたはIVR戦略)と圧力容器外で溶融炉心を保持する戦略のそれぞれの長所と短所については [18] と[26]において議論されているが、相対的には後者のコアキャッチャーが信頼性は高いと思われる。しかし、いずれの戦略においても、水蒸気爆発のリスク、MCCIのリスクを回避しようとする点では共通している。
 したがって、川内原発における圧力容器外の「水張り」策は、国際的な原子力の業界における上述の圧力容器内と圧力容器外で溶融炉心等を保持する戦略のいずれにも属するとは考えられず、ある意味で珍奇な策であると言わざるを得ない。
 この事実は原子力技術におけるガラパゴス化の一例であったと後に酷評されるかもしれない。

5.福島第一原発・3号機の炉心溶融が当初解析よりも早期に起きた可能性

 本稿で説明したコリウム・コンクリート反応は必ずしも今後の問題ではなく,福島第一原発事故においてすでに起きていた可能性がある[6]。まず,1号機爆発について,政府事故調は水素爆発であり,MCCIにより発生するCOが寄与した可能性は極めて少ないとしている。しかし、国会事故調[15]は3月11日当時,急速に進行する1号機の炉心損傷の状況がオークリッジ国立研究所の解析報告書[38]とも矛盾がないこと、すなわち,MCCIがすでに始まり、水素ガスとともに溶融物が溶け落ちたコンクリートのフロアからは大量のCOも発生し、格納容器の圧力が設計圧力を超過したこととも矛盾しないと指摘している。次に,3号機の爆発について、政府事故調は水素爆発であり,他の可能性を否定している[37]。しかし、国会事故調はMCCIの寄与を加味すると3号機の爆発の説明はより容易になると説得的な分析を行っている[15]。この理由の第1は、燃料被覆材ジルカロイがZr-水反応を起こすのは約20%にすぎないというオークリッジ国立研究所の解析における推定にもとづいて,3号機に非常に大きい爆発力をもたらすには水素の量がやや不足している。MCCIにより大量に発生する水蒸気,H2,CO2,COが爆発したとすれば,爆発性気体は大幅に増量されること。第2に、爆発直前に観察された閃光のオレンジ色はCOの不完全燃焼であるとすれば理解しやすいこと。第3に、爆発で散乱したがれきの著しく高い放射能レベルについても説明がつく。関連して、フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)も黒煙の原因の1つとして,コリウム(炉心溶融物)とよばれる放射性のスラグが格納容器のコンクリートと化学反応した可能性が考えられるという[39]。
 本年8月6日に公表された東京電力による新しい解析[11]によると、1号機でMCCIが起きたが、長くは継続しなかったと述べている。福島第1原発の3号機の炉心溶融は従前の解析に比べて、5時間も早かったということは、3号機の爆発の複合性、すなわち水素爆発とCO爆発の可能性についての国会事故調報告書[15]の記述、論文[6]における考察と整合的である、と思われる。しかし、やや不思議なことに、3号機の事故進行についての記述ではMCCIという用語すら使用されていない。これは何を意味するのだろうか。3号機の事故進行の内実について、近い将来、さらに検討を加えることを示唆しているのかもしれない。

6.まとめ

(1) MCCIにより、コンクリートの骨材が石灰岩系であれば、水素だけではなく、CO2、COも大量に発生し、事故の進行過程により、CO爆発および水素との複合爆発の可能性は否定できない。
(2) 東電の新しい解析により、3号機のMCCIの進行は当初予想を超えていて、実機におけるMCCIの危険性の傍証になっている。
(3) ヨーロッパ、ロシアとアジアの一部では数年前からコアキヤッチャーの取り付けが始まったが、日本では何も対策しなかった。ところが、2011年3月11日に東日本大震災と大津波が有り、福島第一原発の1, 2, 3号炉に溶融核燃料の格納容器下部コンクリーへの沈下を許し、汚染水事故を引き起こした。
(4) 原子力規制委員会の適合性審査の議事録にはコアキヤッチャーが不必要との九州電力、関西電力、北海道電力、四国電力の主張がわずか1行しか記載されていなく、川内原発の審査書案には1行も記載されていないが、九電はMCCIの危険性に対する認識自体はもっていると推測される。
(5) 提案された格納容器下部への注水という方法は,水蒸気爆発の危険性防止を重視する世界的傾向とは異質で、MCCI対策としては危険で、世界的に珍策と言わざるを得ない。

参考文献および参考サイト
[1] 福岡核問題研究会2014年7月26日
川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(1) ―格納容器と原子炉建屋が水蒸気爆発で破壊されないことは実機規模で実証されているか―
 
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/blog/files/a2674476e38620f3d8d2f0741b6191b3-21.html
[2] 福岡核問題研究会2014年8月7日
川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(2) ―水素爆発対策は可燃性ガスへの引火を契機とする複合爆発の可能性―
 
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/blog/files/0640c347ffd94d9997c19f5985f5d8c6-24.html
[3] 井野博満・滝谷絋一「不確実さに満ちた過酷事故対策」『科学』84巻3号, 333 (2014).
 
http://www.ccnejapan.com/archive/2014/201403_CCNE_kagaku201403_ino_takitani.pdf
[4] 院内学習会:原子力規制のグローバルな状況と日本。2014年4月18日
 
http://www.cnic.jp/movies/5817
 佐藤暁氏の講演資料 
http://www.cnic.jp/files/20140418mokkai_sato.pdf
[5] 佐藤暁、「不吉な安全神話の再稼働」,科学84巻8号2014年P.833
[6] 岡本・中西・三好「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発、CO爆発の可能性」、「科学」(岩波)2014年3月号, pp.355-362.
 
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/Kagaku_201403_Okamoto_etal.pdf
[7] 田辺文也「まやかしの安全の国―原子力村からの告発」角川SSC新書,2011年.特に,p.198.
[8] 田辺文也、ETV特集「続報 放射能汚染地図」文字起こし(1)
 
http://blog.livedoor.jp/amenohimoharenohimo/archives/65748609.html
[9] 若杉 冽「原発ホワイトアウト」講談社、2013年。特に、pp.306-307, p.314.
[10] 東京電力、福島原子力事故調査報告書, 2012年6月20日
本編 
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120620j0303.pdf
添付資料 
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120620j0306.pdf
[11] 東京電力「福島原子力事故における未確認・未解明事項の調査・検討結果~第2回進捗報告~について」2014年8月6日
 
http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1240099_5851.html
[12] 中西正之「川内原発の審査書案における爆発防止対策の大きな問題」NERIC NEWS(核・エネルギー問題情報センター通信)No.358, 2014年8月号, pp.6-7.
http://www1.parkcity.ne.jp/eng-tat
[13] 原子力規制委員会,九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(1 号及び 2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書 (原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号 (技術的能力に係るもの)、第3号及び第4号関連), 平成26年7月16日。
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/data/0058_13.pdf
審査書案 
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu140716/gaiyou.pdf
[14] 原子力規制委員会・第58回検討会、資料2-2-7「重大事故等対策の有効性評価に係るシビアアクシデント解析コードについて」(第3部 MAAP) 添付3 溶融炉心とコンクリートの相互作用について。
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/data/0058_13.pdf
[15] 国会事故調の事故調査報告書,2012年.特に,pp. 131-134, p.146, p.159.
 pdf版:
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3856371/naiic.go.jp/report/ pp.137-140, p.152, p.167-168.
[16] 佐藤崇(㈱東芝)「世界標準と安全設計について~原子力エンジニアからの一提案」,日本原子力学会2010年秋の大会、原子力安全部企画セッション
http://www.aesj.or.jp/~safety/H221021siryou3.pdf 
[17] (旧)原子力安全・保安院『東京電力福島第1原発事故に係る1号機、2号機、3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析』 2011年6月
http://www.kantei.go.jp/jp/topics/2011/pdf/app-chap04-2.pdf
[18] B. R. Sehgal, Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology, Academic Press, 2012.
http://store.elsevier.com/Nuclear-Safety-in-Light-Water-Reactors/isbn-9780123884466/
http://store.elsevier.com/Nuclear-Safety-in-Light-Water-Reactors/isbn-9780123884466/
[19] 過酷事故の際における放射性核物質の放出についての米物理学会報告、
Report to the American Physical Society of the study group on radionuclide release from sever accidents at nuclear power plants, Rev. Mod. Phys. Vol.57, No.3, S1, July 1985.
特に、MCCIについてはIV.A.8, IV.B.6,エアロゾルの理論と実験についてはIV.Cを参照。
http://journals.aps.org/rmp/pdf/10.1103/RevModPhys.57.S1
[20] 米国原子力規制委員会、報告NUREG-1465(1995), Accident Source Terms for Light-Water Nuclear Power Plants.
http://pbadupws.nrc.gov/docs/ML0410/ML041040063.pdf
[21] 東京電力「フィルターベント設備の概要について」2013年7月17日。
http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/handouts/2013/images/handouts_130717_03-j.pdf
[22] NHKスペシャル メルトダウン File.4 放射能"大量放出"の真相、 2014年3月16日(日).
 
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/0316/
 
http://www.at-douga.com/?p=11050
 文字起しは以下のHP参照。
 
http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140321/1395391108
 
http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140320/1395273547
 
http://d.hatena.ne.jp/cangael/20140321/1395353417
[23] 新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会、2014年2月11日および5月9日一部追加。フィルタべント設備に関する確認事項
 http://www.pref.niigata.lg.jp/HTML_Article/282/188/No.12.pdf
[24] AM-ベント、排熱:畑のたより、環境・核篇:So-netブログ
 
http://hatake-eco-nuclear.blog.so-net.ne.jp/archive/c2304696589-1
[25] 旧原子力安全委員会 原子炉安全基準専門部会 共通問題懇談会 第8回 PSA検討ワーキンググループ「諸外国の格納容器ベントシステムの設備概要」
 
http://www.nsr.go.jp/archive/nsc/senmon/shidai/genshiro_kyoutsu_psa/genshiro_kyoutsu_psa008/msiryo5.pdf
[26] Jiří Duspiva, Comparison of In-Vessel and Ex-Vessel Retention, Nuclear Codes & Standards Workshop,Prague, July 7-8, 2014.
https://www.asme.org/wwwasmeorg/media/ResourceFiles/Events/NuclearCodesStandards/2014PragueWorkshop/Duspiva.pdf
[27] In-Vessel Melt Retention は韓国の改良型PWR(APR1400)でも取り組まれている。このAPR1400は以下の韓国電力公社のサイトによると、韓国の古里(コリ)原子力発電所で2基建設中(2基建設予定)、ハヌル原子力発電所で2基が建設中(2基建設予定)とのことで、進捗状況は古里が完成間近でハヌルは6割とのこと(APR1400はアラブ首長国連邦に輸出予定の原発)。
 
http://cms.khnp.co.kr/eng/nuclear-power-construction-overview/
[28] 韓国とアメリカの共同研究の最終報告、2005年1月. In-Vessel Retention Strategy for High Power Reactors
 
http://www.inl.gov/technicalpublications/documents/3028289.pdf 
[29] 原子力規制委員会記者会見録、2014年7月2日。
 
https://www.nsr.go.jp/kaiken/data/h26fy/20140702sokkiroku.pdf
[30] 原子力百科辞典(ATOMICA) 欧州加圧水炉。
http://www.rist.or.jp/atomica/data/dat_detail.php?Title_Key=02-08-03-05'
[31] V. B. Khabensky et al., Severe accident management concept of the VVER-1000 and justification of corium retention in a crucible-type core catcher, Nuclear Engineering and Technology, Vol.41 No.5, p. 561, June 2009.
http://kns.org/jknsfile/v41/JK0410561.pdf
[32] AGCセラミックス株式会社。「結合耐火物とは」
 
http://www.agcc.jp/2005/material/02_01.html
[33] ニッカトー株式会社 http://www.nikkato.co.jp/
ニューセラミックスと耐火煉瓦の両方の製造を行っている会社でアルミナ、ジルコニア、マグネシアの物性が記載されている。
http://www.nikkato.co.jp/Cera/taika_chara.html?keepThis=true&TB_iframe=true&height=700&width=1010
[34] Saint Petersburg Institute "ATOMENERGOPROEKTATOMENERGOPROEKT” (JSC SPAEP) Main Features of Safety Concept for Modern Design of NPP with High Power VVER Reactors ( AES-2006 Design for Leningrad NPP-2)
 
http://www.ats-fns.fi/index.php?option=com_joomdoc&task=doc_download&gid=89&Itemid=&lang=fi
で検索して、AES-2006 Designをクリックするとダウンロード可能。
[35] 『平成12年度 ICONE-8 に関する報告書、平成13年3月(財)原子力発電技術機構・原子力安全解析所。(2001年3月)
 
http://www.nsr.go.jp/archive/jnes/atom-library/H12_3_42.pdf#search='TROI%E5%AE%9F%E9%A8%93
[36] 泉田新潟県知事のコア・キャッチャーの必要性に言及したインタビュー
http://shanti-phula.net/ja/social/blog/?p=71220
http://ameblo.jp/shizuokaheartnet1/entry-11796449108.html
https://twitter.com/hashtag/%E6%B3%89%E7%94%B0%E7%9F%A5%E4%BA%8B
[37] 東京電力福島原子力発電所における事故調査・検証委員会最終報告, 2012年.p. 50, pp. 69-73.
http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/icanps/post-2.html
[38] 米国原子力規制委員会(NRC), NUREG/CR-2182(1981), pp.74-120,
http://web.ornl.gov/info/reports/1981/3445600211884.pdf
[39] フランス放射線防護原子力安全研究所(IRSN)の見解.
http://www.afpbb.com/articles/-/2792610?pid=7005562

川内原発の再稼働は許されない

川内原発の再稼働は許されない(pdfファイル

2014年8月25日 福岡核問題研究会

 原子力規制委員会(規制委)は,7月16日,審査を進めてきた九州電力の川内原発1・2号基について「新規制基準を満たしている」とする審査書案を了承した.規制委は,この審査書案についての科学的・技術的問題に限定してのパブリックコメントを募集したが,それは7月17日から8月15日間での30日間という短期間であった.これに対して,当研究会は審査書案の科学的・技術的問題に関連して研究論文を発表するとともに,研究会会員によるパブリックコメントを多数提出し公開してきた.

 電力自由化後には,原発は公的支援をしない限り成り立たないことが明確になってきているのが最近の議論である.それにもかかわらず,安倍政権は,電力自由化後の原発支援の方針を年内にも打ち出そうとしている.原発の運転は,経済性の点からも大いに問題がある.さらに,福島原発事故は未だに収束しておらず,メルトダウンを起こした原子炉がどのような状態になっているかも現時点で明らかでない.福島原発事故の真相究明がなされていない現状では,原発の再稼働が許されないのは当然である.ここでは,川内原発の再稼働をめぐる問題点を数点にわたって指摘しておきたい.

 第一の問題点は,世代間倫理の問題である.私たちは,私たちの子どもたちや孫たちが幸せに生活する地球を思い描き希望する.それと同様に,数十世代あとの子孫たちの幸せな生活を思い描くことができる.原発の再稼働は,私たちの子孫に高レベル放射性廃棄物の処理を押しつけるものである.世代間倫理には「この大地は私たちの子孫からの借りもの」であるという考えが大切であり,環境の保全を心掛けることが肝要である.豊かな地球を将来世代の地球人に渡すためにも,これまで以上に高レベル放射性廃棄物を作り続ける原発の再稼働は許されない.

 第二の問題点は,今回の新規制基準を安倍政権は,「世界最高水準の安全基準」であると,何の根拠もあげることなくお題目のように唱えていることである.今回の新規制基準は,既存の設計に安全対策を追加させただけの対症療法にすぎず,最新技術を設計段階から組み込んだ欧米のものとは大きく異なる.例えば,欧州加圧水型炉(EPR)では装備されているコアキャッチャーや飛行機の衝突対策さえも含まれていない.コアキャッチャーの義務づけがないということは,一度,冷却に失敗すれば,メルトダウンからメルトスルーに至り,空気の入っている格納容器内で水素爆発や一酸化炭素爆発さらには水蒸気爆発の危険が高まるということである(溶融した炉心を貯めた水で受け取るということだから,水蒸気爆発の危険がある).「世界最高水準の安全基準」というお題目は,まったく根拠のないでたらめである.

 第三の問題点は,規制委が「新規制基準を満たしている」とする審査書を提出することで原発再稼働のお先棒を担ごうとしていることである.もともと,規制委は,「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全」などに資することを目的とし,「専門的知見に基づき中立公正な立場で独立して職権を行使する」委員会として設置されている.つまり,規制委は国民の生命を守るため独立した権限を与えられている.しかし,審査書案で述べていることは,想定した新規制基準に適合しているということだけである.しかもその適合判断の基準が大変甘い.その一つの現れはクロスチェックの問題である.審査書案をみる限り,九州電力が提出したMAAPなどによる数値シミュレーションの結果などに対して,規制委は独立したソフトウェアを使ったクロスチェックを行っていない.このようなクロスチェックなしでは十分な審査と言えないのは当然である.田中委員長は,新規制基準に適合しているとしつつ,「安全だとは言わない」と述べている.つまり,新規制基準に適合していても安全性は保障しないということである.

 第四の問題点は,安倍政権が「安全が確認された原発は再稼働する」としていることである.菅官房長官は,規制委が川内原発についての審査書案を提示した7月16日,安全性を確認した原発を再稼働させる従来の政府方針に変わりはないと改めて示した.つまり,安倍政権は,安全性の判断は規制委に責任があるという立場で動いている.規制委の田中委員長が「安全だとは言わない」とする新規制基準適合をもって「安全が確認された」と言い換える.ある意味で「詐欺行為」といってよいものである.安全性についての責任が曖昧のまま,誰も責任を取らない体制の中で,川内原発の再稼働が行われようとしている.無責任極まりないことである.

 第五の問題点は,九州電力にみられる再稼働に前のめりの態度である.9月末に最終的な審査合格に必要な工事計画の補正申請を行うとしている.再稼働に前のめりになっているのは明らかである.東京電力や関西電力が,3・11以降ガスコンバインドサイクルなどによる火力発電施設の高効率化を急ピッチで進めているのに比較するとき,運転開始から30年を超える「老朽火力」に出力全体の50%近くを頼っている九州電力の取り組みは明らかにバランス感覚に欠けている.また,九州電力は,新規制基準は安全性についての最低限の要求事項に過ぎないことを自覚すべきである.新規制基準で猶予されているからといって,フィルター付きベント装置や免震重要棟のない状態で再稼働を行うのは無謀である.九州電力は,もっと慎重な態度を取るべきである.

 第六の問題点は,規制委が安全な避難計画などを権限外のこととして何らの検討を行っていないことである.米国では,原子力規制委員会(NRC)が避難計画についての評価を行うことになっており,避難計画の策定が原発運転の条件となっている.1988年,新設されたショアハム原発は有効な避難計画を立てることができない中で粘り強い住民運動もあり運転停止・解体された話は有名である.川内原発では30km以内の自治体の有効な避難計画が立てられない状況である.有効な避難計画が存在しないこのような状況の下で再稼働を行うことは,住民無視・人命軽視であり許されない.

 最後に,指摘しておきたいことは,多くの国民の納得が得られない再稼働は民主主義の問題として許されないということである.7月26,27日の朝日新聞の世論調査によると,再稼働反対の割合は59%で,再稼働賛成23%を大きく上回ったという.他の世論調査でもほぼ同様な結果である.このような世論の下で,しかも,安全性についての無責任体制の下で,川内原発の再稼働が強行されるようであれば,日本の民主主義は,国際的に笑い物となるに違いない.

以上

川内原発の審査書案へのパブリックコメント

当研究会のメンバーが川内原発の審査書案へのパブリックコメントを提出しました.参考のためその内容をここに発表しておきます.
Printer friendlyな
pdfファイルをここに置いています.

川内原発の審査書案についてのパブリックコメント
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中西正之(1)

溶融炉芯・コンクリート相互作用 201ページ1.申請内容
(1)『本格納容器破損モードの特徴 原子炉圧力容器から溶融炉心が原子炉格納容器内の床上に流出し、溶融炉心と接触した床のコンクリートが熱分解により浸食され、原子炉格納容器の構造部材の支持機能が喪失し、原子炉格納容器の破損に至る。』と九州電力は説明している。この見解は、高温領域における耐火物技術から専門的にみると、著しい認識の不足である。福島第一原発で過酷事故が発生した時、落下した溶融核燃料がペデスタルのコンクリートを溶かし、どこにあるのかさえ分からない惨状が発生したため、その対策の検討が必要になった。もともと、人類が鉄の近代製錬を行うことができるようになったのは、銑鉄(カーボンの含有量が多く融点が1200℃と低い)を溶かすとき、短時間では溶けない耐火煉瓦の開発に成功できたからである。このことから分かるように、一般に自然に存在する多くの素材は1200℃の溶融金属と接触すると低融物をつくり溶けてしまう。まして、コンクリートは火山岩や石灰岩をポルトランドセメントで固めたものであり、溶融核燃料と反応すると、1200℃以下で簡単に溶ける。また、コンクリート中のポルトランドセメントは水の水和反応で結合されているので、一定量の水分を含んでおり、溶融金属と接触すると、内部水分の蒸気爆発が起こり、爆発したコンクリート塊が周りの機器を破壊する。1200℃以下で簡単に溶けるコンクリートを2600℃の溶融核燃料を受けるペデスタルに使用したことは、原子炉の基本設計の世界的な重大設計ミスであった。そして、1986年にチェルノブイリの4号機で実際に重大事故(過酷事故)が発生し、落下した溶融核燃料がペデスタルのコンクリートを溶かし、コンクリート中に沈下する事故が発生したので、とりあえずの緊急対策として、原子炉の真下にトンネルを掘り、溶融核燃料が地下水まで沈下することは防止できた。そして、ペデスタルをポルトランドセメントコンクリートで築造した大設計ミスに気が付いて、ロシアやヨーロッパでは、コアキヤッチャーへと基本設計が変更されるようになった。しかし、日本では重大事故対策は規制基準外だったので、大設計ミスは問題にならずに、とうとう福島第一原発の重大事故の発生時、溶融核燃料をコンクリート中に沈下させてしまった。福島第一原発の重大事故の発生後、事故調査を行って、新規性基準を策定し、川内原発の新規制基準に係わる適合性審査が行われてきたが、大設計ミスの事は全く検討されず、九州電力は水で溶融核燃料を冷却し、溶融核燃料・コンクリート反応を防止するとしている。新規制基準の適合性に係わる審査には、この基本的な重大設計ミスの検討が行われていない。
202ページ(2)『対策の考え方 溶融炉心を冷却し、溶融炉心によるコンクリート浸食を抑制するために、原炉下部キャビティへ注水する。』と九州電力は説明している。この見解は、金属製錬炉における長年の経験から専門的にみると、著しい認識の不足である。高温度で操業される溶融炉では、内張りの耐火物が溶融物で溶かされて、長期耐用が得らなく、水冷ジャケットを耐火物の裏に設置し、貫流熱を増大して、耐火煉瓦の表面にセルフコーティングを生成させて、内張り耐火物の耐用の延長を図るものが多い。しかし、水冷ジャケットが水漏れし、炉内の溶融物の上に水が大量にたまる場合が有る。金属製錬炉では、比重の重い溶融金属が下部に溜まり、その上部を厚みのあるスラグ層が覆っている。炉内ガスゾーンから水が漏洩する場合、スラグ層の上部に溜まる。スラグの熱伝導率は溶融金属に比べ、著しく小さいので、スラグが固化し、溶融金属から水への大量の伝熱はおこらない。しかし、何らかの原因のトリガリングで固化スラグ層が破けると、溶融金属から水への大量の伝熱が起こり、多くの場合には水蒸気爆発が起きる。第58回適合性に係わる審査の資料2-2-7は「溶融炉心とコンクリートの相互作用について」の報告である。この報告書に、国内外の溶融炉心とコンクリートの相互作用についての実験が記載されている。ここで報告された実験の多くで、コンクリート上に溶融炉心が落下し、溶融炉心とコンクリートの相互作用が起きた時、溶融核燃料が作る溶融プールの周りに軽石状のクレストが覆いかぶさり、クレストは低熱伝導率なので溶融プールから水への大量の伝熱を阻害し、水では溶融核燃料を冷却できないと報告されている。この状態は、金属精錬溶融炉内への水の漏洩と同じである。そして、何らかの原因のトリガリングでクレストが破けると、溶融金属から水への大量の伝熱が起こり、多くの場合には水蒸気爆発が起きると予測される。新規制基準の適合性に係わる審査には、この基本的な検討が行われていない。以上の2点の検討を提言いたします。
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中西正之(2)

原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作業190から195ページ4-1.2.2.4
191ページ1.(1.)1 九州電力は、『本格納容器破損モードの特徴およびその対策 原子炉圧力容器外のFCIには、衝撃を伴う水蒸気爆発と、溶融炉心から冷却材への伝熱による水蒸気発生に伴う急激な圧力上昇(以下圧力スパイクという)が有るが、水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いと考えられるため、圧力スパイクについてのみ考慮する。』と説明している。
このことについては、原子力規制委員会は新規制基準に係わる適合性審査で厳しく追及している。
 九州電力は第58回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合の資料2-2-6で国内外のFCI実験結果を提出したが、これらの実験では、水蒸気爆発が起きている。
 第102回適合性審査とそれに部分的な修正が行われた第108回適合性審査で九電は水蒸気爆発が起きないと説明している。
 『国内外の多くのモデル実験では、確かに水蒸気爆発が起きているが、それらの実験で水蒸気爆発が起きたのはトリガリングを与えた場合だが、実際の炉ではトリガリングが働く可能性は少ないので、水蒸気爆発は起こらないと結論できる。』と説明がされている。
 川内原発の水素爆発防止対策では、水素による爆轟により、格納容器が吹き飛ぶ前に、水素濃度6%で水素を爆発させて、対策を行うとあるが、水素爆発を起こせば、明らかにトリガリングになる。
 また、水中で溶融燃料・コンクリート反応が起きれば、大量のCOガスが発生するのでトリガリングになる。
しかし、九電はキャビティ水は純静定であり、トリガリングとなりうる要素はない』と説明している。
 九州電力は過酷事故の発生時、トリガリングが有れば格納容器内水蒸気爆発が起きるが、トリガリングはモデル実験のためにわざわざ行われたもので、実際の実炉ではトリガリングは起きないと思われる。したがって、過酷事故の発生時、格納容器に水蒸気爆発が起きない事が証明できるとした。
 原子力規制委員会からは、実炉に於いて、どのようなトリガリングが起きるかどうかの検討もしないで、起きることはあり得ないと説明し、過酷事故の発生時、格納容器に水蒸気爆発が起きない事が証明できたとの九電の説明はおかしい。もう一度再検討するように命令を出している。
しかし、193ページの2.審査結果は『格納容器破損モード「原子炉容器外の溶融燃料-冷却材相互作用」において、申請者が水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いとしていることは妥当と判断した』と報告されている。
この検討は適合性審査では少ししか行われていない。
 国内の高温溶融炉の水蒸気爆発の事故調査では、水蒸気爆発が起きるのは、溶融金属が一度に大量に水中に落下する場合、連続して落下しているが大きなトリガリングが有った場合、溶融金属の上部を覆っているスラグの黒皮がトリガリングで破けて、水と溶融金属が急激に接触する場合の3ケースである。
溶融燃料-冷却材相互作用においても、溶融燃料が一度に大量に水中に落下する場合、連続して落下しているが大きなトリガリングが有った場合、溶融燃料を覆っているクレストの黒皮がトリガリングで破けて、水と溶融燃料が急激に接触する場合の3ケースである。しかし、適合性審査では1と3のケースの検討はないし、どのようなトリガリングが予測できるかの検討が無い。
 これらの事を検討すべきである。

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中西正之(3)

「MCCIによる大量のCOの発生の検討が全く行われていない」
MCCIに伴う水素発生199ページ3.(1)
「申請者は、原子炉下部キャビティに十分な水量が確保されていれば、床コンクリートには有意な浸食は発生しないため、それに伴う有意な水素は発生しないとしていた。規制委員会は、知見が少ない溶融核燃料挙動について、不確かさにたいする検討が不足しているてんを指摘し、MCCIの感度解析の結果を踏まえた水素発生について検討することを求めた。申請者は、これに対して以下のように説明した。(1)原子炉下部キャビタィー床面での炉心デブリと原子炉下部キャビティ水の伝熱等のパラメターを組み合わせた場合、MCCIにより発生する水素は、全てジルコニウムに起因するものであり、反応割合は全炉心内のジルコニウム量の約6%である。」と報告している。
 しかし、国会事故調査委員会は、福島第一原発3号機は(ジルカロイ・水反応)による水素爆発だけでは説明できず、コリウムコンクリート反応(MCCI)が大規模に起こり、水素・CO爆発したと考えるべきと指摘していました。又、佐藤暁氏(元米国GE社原子力事業部に勤務)は新規制基準の骨子が発表されたとき、『水素ガスの発生源として、原子炉内でのジルコニウムと水反応が唯一と見倣しているような記述があるが、実際には、原子炉から落下した溶融炉心がコンクリートと化学反応を起こし、水素ガスの他に大量の一酸化炭素も発生しうる。かってはそのような知見も思慮も無かったため、コンクリートに入れる砂利の種類までは仕様として規定しておらず、定かではない。実際の石灰石の混入量によっては、爆発防止対策設備の設計条件を見直す必要もある。』と指摘していた。
コリウムコンクリート反応とは、冷却ができなく成り、2800℃の高温に成って溶けた炉心の核燃料が原子炉圧力容器の底を溶かして、下部のコンクリートの床に落下しコンクリートと反応し、コンクリートが溶ける現象です。その時大量の水素とCOが発生します。COは水素と同じように爆発しますが、カーボンが含まれるので酸素が少ない場合はローソクの炎のような色の爆発をする。
(岩波の科学2014年3月号岡本・中西・三好「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発、CO爆発の可能性」)で説明したように、国内の文献ではコリウムコンクリート反応によるCOの発生の報告は少ないが、海外の文献にはたくさんの報告例がある。
又国会事故調査委員会の調査報告書にも、海外の著名な実験報告書が紹介されている。
そして、水中でも溶融炉心はクレストに保温されて、コンクリートと反応し、MCCIは進行する。
「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発、CO爆発の可能性」に示すように、コンクリート骨材に含まれるCaCO3は高温度の炉心溶融物に接触して高温度になると、CaOとCO2に分解される。
CO2は高温度の炉心溶融物に接触して高温度になるとCOとO2に分解し、大量のCOを発生する。
川内原発の新規制基準の適合性に係わる適合性審議および審査書案では、全く審議されていない。最大事故(過酷事故)の発生時、水素濃度計で水素の濃度を計測し、爆轟前の判断でイグナイタに点火し、爆発させる時、熱伝導率が大きくことなるCOを感知せずに爆発させて、COが同時爆発して爆轟が起これば、川内原発の格納容器と原子炉建屋は崩壊し、溶融核燃料が野ざらしになり、チェルノブイリ級の放射性物質の飛散となる。
国内の論文を無視せずに、もっと審議が必要である。
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中西正之(4)

水素燃焼ページ195 4-1.2.5
申請者は、本格納容器破損モードの特徴及びその対策を
『1.(1).2 対策の考え方 水素の爆轟を防止するためには、早期に発生する水素および継続的に発生する水素を処理し原子格納容器の水素濃度を低減する必要がある。また、MCCIに伴う水素発生に対しては、原子炉下部キャビティへ注水する必要がある。
3 初期の対策 PWRプラントは原子炉格納容器自由体積が大きい事により水素濃度が高濃度にならないという特徴がある。その上で、主に炉心損傷時に発生した水素の処理を行う。このため、イグナイタを重大事故対策設備として新たに整備する。』
と説明している。
 「PWRプラントは原子炉格納容器自由体積が大きい事により水素濃度が高濃度にならないという特徴がある」と説明しているが、これは明らかな間違いである。
 197ページ(3)a.本格納容器損傷モードの有効性評価では、MAAPで得られた水素発生量を原子炉圧力容器内の全ジルコニウムの75%が反応するように補整して評価する。感度解析のパラメターを組み合わせた場合、MCCIに伴い発生する水素は、全炉心内のジルコニウムの約6%である。このことを考慮し、炉心内の全ジルコニウムが水と反応するとしても、ドライ条件に換算した原子炉格納容器内水素濃度は最大12.6%である。
 福島第一原発の3号機のような爆轟が起きるのは、13%以上だから、川内原発に爆轟が起きて格納容器と原子炉建屋が消失し、溶融核燃料がのざらしになるまでの余裕は0.4%である。従って、「PWRプラントは原子炉格納容器自由体積が大きい事により水素濃度が高濃度にならないという特徴がある」との説明は間違っており、フィルター付ベントが必要な事は明らかである。
 そして、爆轟防止対策として、イグナイタで水素燃焼を行うとしている。水素の爆発限界は4.0%から75.0%なの水素濃度が6%の時、イグナイタで着火して水素燃焼を行うとしていることは間違いである。
 この審査書案そのものが、水素燃焼として論議している事が間違いである。燃焼は純静的に酸素と水素が結合することであり、爆燃は燃焼波の前面の伝達速度が音速以下で、爆轟は燃焼波の前面の伝達速度が音速以上の場合であり、何れも超短時間の酸素と水素の結合である。
 イグナイタの水素濃度6%での着火は、爆燃を引き起こし、水蒸気爆発のトリガリングとなる危険性が大きい。
 フィルター付ベントの無い川内原発を再稼働することは、格納容器と原子炉建屋が消失する危険性が大きいので、もっと詳細な検討が必要である。
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中西正之(5)

201ページ溶融炉芯・コンクリート相互作用 
1.申請内容
(1)『本格納容器破損モードの特徴 原子炉圧力容器から溶融炉心が原子炉格納容器内の床上に流出し、溶融炉心と接触した床のコンクリートが熱分解により浸食され、原子炉格納容器の構造部材の支持機能が喪失し、原子炉格納容器の破損に至る。』と九州電力は説明している。
202ページ(2)『対策の考え方 溶融炉心を冷却し、溶融炉心によるコンクリート浸食を抑制するために、原炉下部キャビティへ注水する。』と九州電力は説明している。
 しかし、これは世界的な耐火物技術の専門的見解からは大きな疑問である。
 第102回新規適合性に係わる審査会合の議事録24ページに、北海道電力の長沢氏は「あと、二つ目でございますが、国内PWRでは考慮不要な現象ということで、こちらにつきましては、「溶融炉心・セラミック相互作用」ということで、コアキャッチャ、これが国内のPWRにつきましてはコアキャッチャがございませんので、そういったところとしては、現象としては挙げられないと考えているものでございます。」と説明しているが、この見解は九州電力、北海道電力、関西電力、四国電力の共通の見解である。
 チェルノブイリ原発の過酷事故を経験したロシアやヨーロッパでは、「溶融炉心・セラミック相互作用」を良く研究し、コアキャッチャ対策が最良と認定した。
 また、国内外の「MCCI(溶融炉心・コンクリート反応)試験の多くの実験設備はコンクリートの試験片をセットするためにマグネシア(MgO)煉瓦が使用されている。
 そして、ヨーロッパで建設が進んでいるコアキャッチャのロートや樋にもマグネシア(MgO)煉瓦が使用されている。マグネシア(MgO)煉瓦は低価格で有るが、「溶融炉心・セラミック相互作用」の少ない煉瓦である事は良く知られている。
 しかし、使用条件によっては、欠点もありその他の耐火物の「MCCI(溶融炉心・コンクリート反応)も良く研究されている。
 ところが、上記4電力会社は、国内のPWRにつきましてはコアキャッチャが無いので「溶融炉心・セラミック相互作用」の検討の必要はないという、極めて無責任な説明を行っている。
 ロシアやヨーロッパの原子炉はコアキャッチャ対策を取っているので、「溶融炉心・セラミック相互作用」の検討を行っているが、日本のPWR原子炉はロシアやヨーロッパ並の安全対策は取らないので、初めから「溶融炉心・セラミック相互作用」の検討の必要はないと説明している。
 川内原発の審査書案は、「溶融炉心・セラミック相互作用」の検討の必要はないとの説明を承認しているが、極めて検討不十分と考えられ、詳細な検討をする必要がある。
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R.O.(1)

意見書1 4-1.2.2.4 (p.190-195)
 森山清史らの論文「軽水炉シビアアクシデント時の炉外水蒸気爆発による格納容器破損確率の評価」において、水蒸気爆発による格納容器破損確率の評価がなされている。これらの確率の絶対値は必ずしも定量的な意味をもつとは限らないが、確率としては決して小さい値とは言えない。そうであれば、トリガリングが起きた場合、水蒸気爆発の可能性は低くはないことを意味する。
上述の推測が議論されたため、新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料1-2-7の3.2-10において、事業者は、モデル実験結果を分析する中で、実機において、キャビティ水は準静的であり外部トリガリングとなり得る要素はなく、実機において大規模な水蒸気爆発に至る可能性は極めて小さいと考えられる、としている。
 しかし、過酷事故の際には極限的状況が起こると考えるべきで、キャビティ水は準静的であるとは限らないだろう。さらに,過酷事故が起きた場合、水素爆発などの外部トリガリングの候補はあると考える方が現実的ではないだろうか。
 日本の事業者や原子力規制委員会の見解と対照的に、セーガル編集による過酷事故の国際会議報告(2012年)には、トリガリングは外部トリガリングだけではなく、自発的トリガリングもあることを議論し、実際の状況では水蒸気爆発が起こるかどうか予測することは現実的に不可能で、溶融核燃料と冷却水の相互作用の間、トリガリング確率は1に等しく、(水蒸気)爆発が起こることを前提としている、と記されている。このような認識の下で、ヨーロッパやロシアでは過酷事故対策として、キャビティに水を緊急に張るのではなく、コア・キャッチャーを設置する方針が選択されと思われる。しかし、事業者は特異的で、危険な対応をしているにも拘わらず、原子力規制委員会がこれを最終的には認可したことは誤りであると言わざるをえない。


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R.O.(2)

意見書2 4-1.2. 2.5(pp.195-201)
 川内原発はフィルター付きベントの設備を持っていなくて、格納容器内の窒素封入もないので、過酷事故が起きると、新規制基準の水素濃度発生量は、水・ジルコニウム反応が75%起きたとした時、9.7%の水素濃度に成ると記されている。
 また、コリウム・コンクリート反応からも全炉心ジルコニウムの6%の反応の水素が出るので、水・ジルコニウム反応が100%起きたとした時、12.6%の水素濃度に成ると記されている。
 新規制基準の適合性審査で水素濃度が13%だから、まだ0.4%の余裕が有るとすることが問題と指摘されたので、念のためにイグナイタ(電気式点火装置)の追加取り付けを行うことにしたと記されている。
 事業者はあくまで、イグナイタで水素を燃焼させると主張している。
しかし水素の爆発限界は4%から75%であるから、イグナイタで点火すると、格納容器内にガス爆発が起こる。また、このガス爆発は水蒸気爆発のトリガリングになる可能性が高く、水蒸気爆発との複合爆発の可能性が大きくなる。さらに、格納容器の下部キャビティのコンクリートの骨材が石灰岩系であれば、コリウム・コンクリート反応の進行度合いによっては、CO爆発の可能性もある。
 原子力産業における水素爆発の危険性についてシェファード (米国カリフォルニア工科大学)は加圧水型および沸騰水型の原子炉の学ぶべき教訓として以下の諸点を列挙している。
1)爆燃はスケールに相対的に独立に発生する:可燃限界は構成にのみ依存する。
2)爆燃から爆轟への移行はスケールに強く依存するこ と:爆轟限界は形状、サイズ、発火源に強く依存する。
3)格納容器形状における爆燃から爆轟への移行の危険性を定量化するためには大規模実験が必要であること。
4)爆轟の開始と伝播は、小規模の場合より大規模の場合には、非常に低い濃度で起こりうる。すなわち、水蒸気濃度が10%の場合、水素濃度10.5%で水素空気の爆轟、水素濃度11%でDDTが発生する。
シェファードの見解、特に4)を裏付けるように、Dorofeevらによる大規模の実験(1997年)は水素濃度が約10%から77%までの水素-空気混合ガスに対して,爆轟が起こることを示した。
 事業者が、一般の産業技術の現場でも回避されるべき、爆発限界内のガスに平気で点火と爆発を行うとしている方針を原子力規制委員会が認可したことは誤りであると言わざるを得ない。
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R.O.(3)

意見書3 4-1.2.2.6 (pp.201-205)
 溶融核燃料と格納容器の下部キャビティのコンクリートの相互作用により、コンクリートの骨材が石灰岩系であれば、水素だけではなく、CO2、COも大量に発生することは、一般にはほとんど知られていないが、原子力研究者の間では従前より認識され、徹底的に研究されてきた。
 事業者もこの事実を知ってはいるが、コア-キャッチャーなどの新設への投入経費を惜しみ、過酷事故の際には、格納容器の下部キャビティへの注水で対処するという方針にしたと推測される。そして、審査書において、格納容器の下部キャビティへの注水開始遅れの影響などについて、MAAP解析コードにより、パラメタを保守的に設定した上でも原子炉格納容器の構造部材の支持機能に与える影響がないことを確認した、とされている。
 しかし、旧原子力安全・保安院が、福島事故後の2011年6月に、『東京電力福島第1原発事故に係る1号機、2号機、3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析』という資料を公表している。東電はMAAPで解析して、それを保安院がJNESの支援を受けて別の解析コード(MELCOR)によるクロスチェックを行った結果、地震発生後の1号機原子炉圧力容器の破損時間はMAAPでは約15時間、MELCORでは約5時間と、3倍の差異が生じた。
 従って、事業者によるMAAP解析コードによる評価だけで, 別の解析コードによるクロスチェック無しでは、原子力規制委員会の独立性も専門性も示されておらず、MAAP解析コードによる感度評価も信頼性が高いとは言えない、と言わざるを得ない。
本年8月6日に公表された別の事業者による解析によると、福島第1原発の3号機の炉心溶融は従前の解析に比べて、5時間も早かったということは、前述の疑問を裏付けると思われる。
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R.O.(4)

意見書4  審査書に記述なし
1.重大事故=過酷事故=設計想定外事故が起こることを前提とすることは工学・技術の本質である設計の基本の誤りを論理的には意味する。従って、過酷事故対策としては、自動的に作動し、制御されるような受動的設備を常設することを優先すべきである。審査書において、過酷事故対策が極限的状況における緊急対応要員の対応に過度に依拠し、作業遂行に対して無理な時間制限を設定していることは不合理である。
 しかも、深刻な事故シナリオが欠如するだけではなく、いったん想定した事故シナリオの評価について、大雑把なさじ加減をしていることは、我田引水的で、OECD/NEO報告No.7161(2013年)が警告している自己欺瞞的な満足に陥っているように思われ、願望的思考の一例であると言わざるを得ない。

2.高レベル放射性廃棄物の管理法や場所も確定せずにその蓄積を継続することの反倫理性などを不問にして、審査書の記載事項についてのみ、かつ科学的、技術的意見に限定したことは科学的・技術的システムの社会的受容を決定するのは科学者、技術者ではなく、一般市民であるという民主主義からの逸脱である。さらに、審査書の基本思想、方法論的立場へへの意見を拒むという姿勢は自由な相互批判を認めるという科学、技術の伝統からも逸脱している。
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豊島耕一

4-1.2.2.5の「水素爆発」の項(195ページ)および4-1.2.2.6の「溶融炉心・コンクリート相互作用」の項(201ページ)について意見を述べる.

その前に,この意見募集に当たり規制委員会は「科学的・技術的な」内容に限るとしている点に関して注意を喚起したい.

まず,これから少しでも外れた記述部分は,「御意見提出上の注意」にある「科学的・技術的判断と無関係」,あるいは「思想等の宣伝」であるとして,(この段落も含め)その部分を削除して公表される懸念がある.しかしそれは極めて不当であることを先ず指摘しておきたい.

そして,規制委員会による募集意見に対するこの制約は,再稼働の判断が規制委員会の適否判断だけでは完成しないことも意味するものである.つまり,原発という規模とリスクの双方において巨大な事業の可否が「科学的・技術的な」点だけで判断できるものであるはずはなく,倫理問題や経済性など,さまざまの価値観の尺度に照らされなければならないことは自明だからである.

では本論に入る.

1.「水素爆発」の項(195ページから)について
(1)爆轟条件の検討が不十分である
水素濃度の空間的不均一性についての検討が十分に行われているかどうか不明である.不均一性については,わずかに「頂部に成層化する可能性」(199ページ)を述べているのみである.もし,センサ部分の濃度が爆轟条件を下回っているがイグナイタ部分またはそれに近接する部分がこの条件を超えているような場合には,イグナイタは文字通り爆轟の点火装置になってしまう.
また,下記の(3)で述べるようにコンクリートの浸食厚評価に問題があるため,当然MCCI(溶融炉心・コンクリート相互作用)で発生する水素の量についても疑問が生じる.

(2)水蒸気爆発について触れていない
前節「原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用」で水蒸気爆発の問題を議論しているが(この内容にも問題がある),しかしその「冷却剤」が本節で述べられた「原子炉下部キャビティへ注水」された水とサブクール度などの条件が同等かについて述べられていない.このため前節の議論がここでも有効かどうか不明である.

2.「溶融炉心・コンクリート相互作用」の項(201ページから)について
(3)非科学的,曖昧な表現とコンクリートの浸食厚
203ページ3行に「溶融炉心の崩壊熱は除去される」とあるが,単なる高温物体ではなく継続的に発熱を続ける物体について,時間スケールも示さずにこのように述べても意味をなさない.すなわち,少なくとも「x分でT度以下になり,y時間まではこの温度を超えない」というような記述が最低限必要であるが,それが見当たらない.したがって続くコンクリートの浸食厚についても何らの根拠を与えない.数値シミュレーションにおいては溶融炉心の発熱は当然考慮されているであろうが,それが文書に反映しないのでは評価に値しない.崩壊熱が十分に小さくなる時間まで熱の「除去」が維持されるのかも当然不明である.
以上のような申請者の記述に対して,規制委員会の何らの批判やコメントが見当たらない.
関連して,同ページ下から10行目に「炉心崩壊熱の変動」という言葉があるが,この「変動」は不確かさを意味すると思われるが,むしろ時間的変動と誤解(?)しやすい.

(4)MCCIによる一酸化炭素発生の無視
コンクリートには石灰石に由来する炭素が含まれるため,MCCIでは水素だけではなく大量の一酸化炭素発生(CO)が予想される.しかし本審査書では全くこれについて触れていない(一酸化炭素発生,COのどの語も一度も使われていない).発生量の評価以前の段階であり,本審査書案の重大な欠陥である.

3.上記二項に共通する問題
規制委員会の重要な判断根拠に対するリファレンスがほとんど示されていない.仮に会議録やその提出資料にあるとしても,その指示なしには検索不能である.不親切さとしては許容範囲を超えており,「ない」ものと見なさざるを得ない.そのなかでも特に目立つのは,これらの事象の解析に申請者は計算コードMAAPを使ったとのことであるが,規制委員会自身による再計算,あるいは独立した計算コードによるチェックなどが行われたかどうかが記述がなく不明なことである.記述がないということは行われていないと判断するほかはない.
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北岡逸人(1)

「原子力発電所の火山影響評価ガイド(火山ガイド)」について
該当箇所 1はじめに 2.判断基準及び審査方針(2頁)
意見:
原子力発電所の火山影響を評価するにあたって、規制委員会は「火山ガイド」を参照したとのことですが、それは必要十分な評価方法ではないと思われます。よって、九州電力の火山影響に関する対処方針の妥当性は、本審査書において確認されていないと考えます。
理由:
 福島原発の事故の教訓は数多く指摘されていますが、その最大のものは「めったに起きない天災への備えが不十分であったこと」とみなされているのではないかと思われます。過去に起きたことは間違いないし、将来にも起きるであろうことはまず100%確実であるが、発生時期と規模等の予測及び対処の極めて難しい自然現象があります。日本列島においては大地震、大津波もありますが、「大規模な火山活動」を忘れるわけにはいきません。
 その点、最近日本火山学会が「原子力問題対応委員会」を設立して活動されていますが、国内はもとより世界中の火山学者等の知見をもってしても、火山活動の規模や発生時期等の予測(と対処)は極めて困難な作業ではないでしょうか。
 私は川内原発に数キロと近い地点にある、火砕流の露頭現場を視察し堆積物等を観察してきましたが、川内原発における最大の自然の脅威は火山活動ではないかと思いました。
 原発に重大な影響を及ぼすほどの火山活動が近い将来に起こりうるならば、原発事故を心配する前に火山による壊滅的な被害を想定し備える方が先であるとの意見があります。確かに大規模な火山活動だけでもその破壊力はすさまじいものがあり、現状の原子力防災計画以上の備えとその計画対象地域の拡大が必要でしょう。
 しかし、ここで福島事故の教訓を再度思い起こす時、「自然災害と原子力災害の複合災害」という重大なキーワードが見つかるのではないでしょうか。自然災害、もしくは原子力災害だけでも備えることや対処することが難しく大変であるのに、それらが同時に発生した場合に、どれほどにその困難さと悲惨さを増すことになるのか、ということであります。
 例えば、勢いよく高く立ちのぼる火山の噴出物等に熱気による上昇気流に後押しされて、原発事故で放出された放射性プルーム(放射性雲)等はより高く勢いよく広範囲に送られ、火山灰等と反応したり付着等したりした原発からの放射能(放射性物質)は、「放射能の灰」として原発より相当に遠くまで拡散し堆積し、除染をより困難にする可能性があります。
 よって、311の教訓を踏まえた川内原発の審査では、これまでほとんど重視されてこなかった「原発における火山活動の影響」と、「火山による災害と原子力災害の複合災害」を想定することが、(川内原発の立地条件をふまえれば)最重要課題であると判断します。
その点、本審査で参照した火山ガイドは、「火山の活動時期が周期的であるとの前提(希望的観測)の下に、これまでの(乏しい)知見や今後のモニタリング活動等により、将来の火山活動の時期や規模を推測できる」というものです。しかし、それは国内外の多くの火山学者らの同意出来ない非科学的で楽観的過ぎる方針のようです。そもそも、川内原発の審査において複数の(国内外の)火山学者らの参加が無いことは見過ごせない過ちです。
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北岡逸人(2)

燃料デブリの再臨界リスクについて
該当箇所 不明
意見:
核燃料が溶融して原子炉を溶かして落下していった場合、核物質等の量や形状によっては再臨界の危険性があるのではないでしょうか? (本審査では再臨界のリスクは全く検討されていないようですが、再臨界のリスクが全く無いと想定しているのでしょうか?)
理由:
現在福島原発で行方不明となっている溶け落ちた核燃料について、どのようにして(再臨界を防ぎながら)安全・確実に回収できるかを、政府の関係機関で調査検討しています。 それというのも、通常の燃料の最小臨界量が数十キログラムであるのに、数十トン単位の燃料デブリ(溶けた燃料が原子炉の構造材や炉心を格納している格納容器のコンクリート等を溶かし、これらと混合することで出来た様々な組成の物質)が存在するからです。 福島原発の中でどのような状態になっているか依然不明ですが、海外の燃料デブリを模擬した実験によると、高温の溶岩に似た振る舞いをしている映像もあり、軽石の様に発泡して固化しているかもしれません。もしくは、燃料デブリが落ちた先に水があった場合は、粒子状に固まりながら多くの隙間を持つ状態で堆積するかもしれません。 燃料デブリの内部の隙間に(中性子の減速材となる)水が入り込んでいる場合、より再臨界し易い条件が満たされるかもしれません。 審査書の内容は再臨界が起きた場合には全く違う条件が生じて、考慮しなければならない事項(安全対策の前提)が変わってしまいます。そうなると、再臨界を考慮していない安全対策の妥当性は意味を失ってしまうと考えられます。 再臨界によって発熱量や放射線が桁違いに増加することはもちろん、爆発的に燃料デブリが砕け散って衝撃波が発生するかもしれません。爆発しない場合でも発生するガスなどが(核分裂反応やコンクリート等との反応促進で)増加することなど、水蒸気爆発の引き金になるような現象が起きうると思われます。 他にも再臨界が起きた場合は様々な問題が発生しうるので、事故の収拾と外部への放射能拡散を抑制するのが非常に難しくなります。福
島で実際に起きている状況において再臨界リスクを検討しているのに、川内原発の審査書で再臨界を検討していない事情が理解できません。
参考リンク:
1-15 損傷・溶融した燃料の再臨界を防ぐために
-コンクリートを含む燃料デブリの臨界特性の検討-
http://jolisfukyu.tokai-sc.jaea.go.jp/fukyu/mirai/2013/1_15.html
燃料デブリの特性把握 - 日本原子力研究開発機構
http://www.jaea.go.jp/04/ntokai/fukushima/fukushima_01.html
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北岡逸人(3)

太陽活動の原子力発電所への影響について
該当箇所 1はじめに 2.判断基準及び審査方針(2頁)
意見:
本審査では「太陽活動の原子力発電所への影響」は考慮されていないようですが、原子力発電所の脅威となりうる太陽活動が、発生する可能性を無視して良いのでしょうか?
理由:
 NRC(アメリカ合衆国原子力規制委員会)などは、太陽活動が原子力発電所に脅威となりうる可能性について、関係団体等と公式会合で議論しています。
 それというのも、1989年にカナダ・ケベック州で太陽フレア(太陽面爆発)の影響で大停電が起きるなど、電力関連設備などにかなりの被害が発生しているからです(311で外部電源喪失事故の脅威が明らかになったことも影響している模様)。それでも、1989年のフレアは年に数回は発生している程度(X5弱)の規模で、その数十~数百倍の規模の(X100やX1000の)スーパーフレアが起きる可能性が専門家より指摘されています。
 NRCが太陽活動の影響についても考えているのは、1989年のカナダでの大停電がアメリカの一部にも及んでいた事情が影響しているのかもしれません。しかし、太陽活動の影響は日本列島でも重大な脅威となりうる現象なので、規制委員会としても「想定内」の課題とする必要性があると考えます。

NRC等による会合の記録(06/15/2012開催のJoint Meeting )
http://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/commission/tr/2012/
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北岡逸人(4)

水素・水蒸気・CO(一酸化炭素)の爆発(爆轟)と、それらの複合爆発について
該当箇所 4-1.2.2 格納容器破損防止対策(170頁)など
意見:
水素爆発の対策が不十分ではないでしょうか。水素爆発以外の爆発現象についての検討や対策が足りないのではないでしょうか(複合爆発の危険性も考慮しているのでしょうか)。
理由:
・水素濃度を測定するとありますが、どこでどの様に(合計何か所で)測定するのかを、審査で確認しているのか不明です。水素濃度は軽い水素の性質と格納容器内の熱や気流等の偏在により、(均一ではなく)非常に複雑な濃度差が生じる可能性があると予想されます。
・水素の発生源は審査書に記載されているもの以外に、原子炉等の鉄が高温下で水蒸気と接触しても発生すると予測されていますが、発生量などを検討して確認したのか不明です。
・COなどの爆発性ガスの発生も予測されますが、濃度測定をすることが記載されていません。福島原発でも国内外の専門家などはCO爆発も起きたと考えられることを、状況証拠的に推測して指摘しています(爆発のタイミングや場所に破壊力や炎の色等の違いによる)。
・水蒸気爆発が発生する可能性は極めて低いので、考慮しなくて良いとしたようですが、そもそも原発事故は大地震で発生する可能性が高いと考えられます。しかし、余震(地震動)が水蒸気爆発の引き金(トリガリング)になる恐れがないことが確認されていません。
・複雑な現象が同時並行で起きる原発事故時の格納容器内は、種類の違う爆発性の気体が発生し水蒸気爆発の危険性もあります(核物質の再臨界リスクもあります)。何らかのトリガリングが爆発を引き起こした場合、他の爆発現象を誘発したり燃焼速度を加速して爆轟に至らせる恐れもあります。福島原発事故でそうした複合爆発が発生した可能性が指摘されています。しかし、本審査では複合爆発の可能性について検討していないようです。
・格納容器に窒素を充填しておく爆発対策もありえますが、検討していないようです(窒素については、液体窒素を気化させて原子炉の冷却に使う方法を検討しても良いはずです)。
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三好永作

以下のように川内原発の再稼働審査の適合判断には大きな疑問を感じます.
(1)有効な避難計画について
 まずはじめに,今回の審査に過酷事故時における有効な避難計画についての項目がないことは重大問題である.現に川内原発30km圏内の市町村において有効な避難計画が立てられていないことを勘案すれば,実際問題として,川内原発の再稼働は当面認められないことは言うまでもないと考える.しかし,ことではこの問題はこれ以上触れないで,以下に2,3の科学的・技術的問題について論ずる.
(2)基準地震動について
 科学的・技術的問題点の第一は,想定された規制基準が余りにも低すぎることである.川内原発は,当初,想定地震動を540ガルとしていたが,それを620ガルに引き上げた(p.20).この620ガルという基準地震動は,2008年の岩手・宮城内陸地震で観測した最大地震動4022ガルや2011年の東日本大震災での2933ガル,さらに,2007年の中越沖地震の2058ガルなどに比較して余りにも低すぎる.日本は地震大国であり,どこでも直下型の地震があり得ることは,現代の地震学の常識である.620ガルの基準地震動で十分であると根拠はどこにも存在しないと考える.620ガル以上の地震は起きない(考えない)というのは新たな「安全神話」である.
(3)水素爆発について
 水素爆発に関連して,ジルコニウム全量が水(水蒸気)と反応したとしても格納容器内の水素濃度は約12.6 vol%となり,格納容器破損防止対策の評価項目(f)「原子炉格納容器が破損する可能性のある水素の爆轟を防止すること(水素濃度がドライ条件に換算して13vol%以下又は酸素濃度が5vol%以下であること)」を満足している(p.197)としている.この想定は,2重3重に楽観的であると言わざるを得ない.まず,溶融した炉心の中で高温の水蒸気と反応する金属をジルコニウムとのみとしているが,溶融した炉心の中には圧力容器内で溶融させられた鉄を含み,鉄も高温の水蒸気と反応して水素を発生することが知られている.また,MCCIにより発生する水素や一酸化炭素についての見積もりが不十分である.さらに,水素の爆轟の下限を13%としているが,条件によっては水素濃度が10vol%(ドライ条件)でも爆轟が起きることが報告されており,評価項目(f)自身が確定したものではなく不確かであるということである.最後に,ここでの水素濃度は格納容器内で均一であると仮定されたものである.しかし,これらの化学反応が短時間で起きることと,水素ガスが空気などに比較して極めて軽いものであることを考えれば,格納容器内の水素濃度が均一であるということを想定することは余りにも乱暴なことであると言わざるを得ない.
(4)クロスチェックについて
 前項の水素濃度の九州電力のモデル計算にはMAAPが使われている.しかし,このMAAPという計算コードはさまざまな欠点が指摘されている計算ソフトである.このMAAPによる計算結果は他の計算ソフトによる計算などによる異なる角度からの検討が必要である.このような異なる角度からの検討(クロスチェック)が行われた形跡が審査書の中には読み取れない.このようなクロスチェックがない審査は,信頼性に欠けると断言せざるをえない.
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森永 徹

61ページ 3-4.2.2 火山の影響に対する設計方針に関する意見

 九電は川内原発に甚大な被害をもたらす姶良カルデラ等の破局的噴火の平均発生間隔を9万年とし、原発運用期間中の破局的噴火の可能性は十分低い、また噴火可能性のモニタリングで予知可能であり、危険性がある場合には原子炉の停止、燃料体の搬出を行なうとしており(p.63~64)、規制委もこれを妥当とした。以下、これらの問題点を指摘したい。
 まず破局的噴火の平均発生間隔であるが、姶良カルデラは80~100万年前に活動期に入り、10万年前以降は爆発的噴火が頻発する活発な活動期に入っているとされる(長岡・他,地質学雑誌.2001)。九電のいう平均発生間隔9万年は10万年前以前も含めた平均であり、活発な活動期に入った現在にそれを適用するのは危険である。
 また、姶良火砕物の調査から、10万年前以降の姶良カルデラの噴火は、8.6~9万年前、6万年前、3.3~3.9万年前、3.1万年前、2.9万年前にあったとされる (Sekiguchi, et al.,American Geophysical Union, Fall Meeting.2007)。さらに、1.9万年前 (奥野,第四紀研究.2002)、 1.6万年前 (亀山,他,第四紀研究.2005) の噴火の指摘もみられる。少なくとも10万年間に7回は噴火している。つまり、噴火自体は9万年より、相当短い間隔で発生しているわけである。これらすべてが破局的噴火ではないが、活発な活動期に入ったことを考慮すると、次の噴火が破局的噴火ではないと言い切ることはできない。
次に、噴火のモニタリングが可能かどうかという点である。九電は既存の気象庁や国土地理院等の観測網、桜島3ヶ所を含む5ヶ所の地殻変動観測点、桜島2ヶ所を含む4ヶ所の地震観測点の観測データから、モニタリングが可能としている (九州電力株式会社:川内原子力発電所・火山影響評価について〈コメント回答〉.平成26年3月19日,p.38)。
 確かに、十分な観測体制がある陸上の火山であれば、かなりの確率で噴火の予知が可能であるとされる。実際、姶良カルデラの後カルデラ火山である桜島ではそうであるとされるが、一方で大正噴火のような大噴火の予知は別問題だとされる (井田,日本物理學會誌.1989)。つまり、小噴火より、大噴火の予知の方が困難であるということである。
 また、姶良カルデラでは顕著な前兆現象はないとされる (小林,他.京都大学防災研究所年報.2010)。したがって、予測のためには精密な観測体制が必要となる。しかし、九電は既存の観測体制を利用するのみである。陸上の火山では山体の傾斜計、体積歪計、伸縮計、電磁気的観測、火山ガス分析等により、はじめて噴火の予知が可能となる (井田,前掲)。姶良カルデラは海底カルデラであるにもかかわらず、海底にこれらの観測装置を設置するという計画は言及されていない。さらに、桜島は姶良カルデラの後カルデラ火山であるが、桜島火山と姶良カルデラのマグマ溜まりは別である可能性も指摘されている (小林,他.前掲)。そうだとすれば、姶良カルデラの地殻変動観測点、地震観測点ともに2ヶ所しかないということになる。海底には観測点はない、地上も2ヶ所しかないという状態でも予知は可能というのであろうか。
 さらに、九電は危険性があれば燃料体の搬出を行なうとしているが、その搬出先を確保しているという記述は見られない。危険性が迫ってから、搬出先を探すというのでは時間的に間に合わない。机上の空論である。
 福島原発事故の教訓は、「最大想定事故(Maximum Credible Accident)」(Lubarsky & Connolley, National Advisory Committee for Aeronautics・Research Memoramdum for The U.S. Atomic Energy Commission.1957) を考慮すべきということではなかったのだろうか。貞観津波(869年)は、仙台平野南部で3~4km、南相馬市で少なくとも1.5kmの遡上距離を持っていたとされ(澤井,他.地質ニュース.2006.および 宍倉,他.AFERC NEWS.2010)、明治三陸津波(1892年)の浸水標高は大船渡市大久保で38.2m、根岬先端付近で32.6mであったとされ(都司,歴史地震.2007)、福島原発でも当然想定されるべきであった。
 全国危険物安全協会の1990年の危険物安全週間の標語に「“まさか”より “もしも”で守ろう 危険物」というのがある。これは最大想定事故を考慮して、事故防止を図ろうというものである。原子力規制委員会におかれてもこうした精神で厳密な審査をして頂きたい。

<引用文献>
○長岡信治,他:10 万〜3 万年前の姶良力ルデラ火山のテフラ層序と噴火史.地質学雑誌.107(7), 432−450 (2001).
○Sekiguchi, Y,et al.:Precursory magma activities leading to Aira caldera-forming eruptions in southern Kyushu, Japan.American Geophysical Union, Fall Meeting 2007, abstract #V13C-1486.
○奥野 充:南九州に分布する最近約3万年間のテフラの年代学的研究.第四紀研究.41(4), 225-236 (2002).
○亀山宗彦,他:姶良カルデラ堆積物の層序と年代について-鹿児島県新島(燃島)に基づく研究-.第四紀研究。44(1), 15-29 (2005).
○小林哲夫,他:大規模カルデラ噴火の前兆現象-喜界カルデラと姶良カルデラ-.京都大学防災研究所年報.55B, 269-275 (2010).
○Lubarsky B. & Connolley D.J. (Ed.):National Advisory Committee for Aeronautics ・Research Memoramdum for The U.S. Atomic Energy Commission.“NACA Zero Power Reactor Facility Hazards Summary”.(1957).
○井田喜明:火山噴火予知の物理学.日本物理學會誌.44(11), 809-815 (1989).
○澤井祐紀,他:仙台平野の堆積物に記録され歴史時代の巨大津波 –1611年慶長津波と869年貞観津波の浸水域–.地質ニュース (産総研:地質調査総合センター), 624号, 36‐41 (2006).
○宍倉正展,他:平安の人々が見た巨大津波を再現する.AFERC NEWS (産総研:活断層・地震研究センター),No.16, 1‐10 (2010).
○都司嘉宣:大船渡市の津波対策~江戸時代までの三陸・遠地津波を考慮して~.歴史地震,第22号, 13‐18 (2007).
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佐藤敦子(2014.8.14)

4点について述べます。
1、 川内原発が建つ場所は、活断層の真上という疑い
川内原子力発電所(以下、川内原発)正面ゲート脇に池がありますが、この池のすぐ先にもう1つ池が見えます。距離的には約500m、辿っていくと更にその先に小さな池が2つあり、門前の池を合わせると合計4個の池がごく近い距離にライン状に並んでいるのが確認できます。ライン状の特徴的な形状は、過去の活断層の活動よって形成されたものと思われます。阿蘇山の過去の噴火や、活動中の桜島、新燃岳との関係と、川筋や池の形成は火山活動や地震と密接に関係しますから、4つの池や川内川(第1級河川)が形成された理由も、これら火山活動で断層が動いたためと思われます。川内川河口に立つ川内原発は活断層の真上かすぐその傍に建っている疑いが濃厚です。2014年2月、国の地震調査研究本部が川内原発がある位置の活断層の評価を見直していますが、予想される東海・東南海・南海地震が起きたとき、九州を北部から南西に縦断する仏像構造線が影響を受けると言われ、原子炉がこれらの活断層の真上か近接した位置にある場合、大事故になることは必至です。

2、温廃水による漁業被害
河口に立つ川内原発は川内港と外洋に面しており、原子炉を冷却した廃水が海水温度を上昇させたため、漁業被害は深刻です。海の生態系を壊す要因となり年々、漁獲は減少しています。魚の大量死が打ち上げられるなど異様な光景もみられました。今は2基が停止しているので生態系が戻りつつあるそうですが、反対に、もし事故が起きれば深刻な事態になります。「フクシマ」のような事故が起きた場合、海に流失した放射性物質は黒潮と対馬暖流に乗り、太平洋側と日本海側のほとんどの沿岸部が汚染される可能性があるというシュミレーション結果を、九州大学応用力学研究所が2011年7月に発表しています。このまま原発2基は稼働しないでください。

3、県民の避難計画
5月~6月にかけていちき串木野市民に対して行われた再稼働反対署名は、人口3万人の半数以上が「反対」の意思表示をしました。「九州電力」株主総会でも報告があったと思います。訪ねた方も「道路はあるが、殺到して動けなくなるだろう」とおっしゃっていました。万一の場合、短時間で大勢の避難は無理なこと、薩摩川内市民を見殺しにしかねないことを市民は直感しています。原子力規制委員会が出した「原子力災害対策の指針」は30km圏内の避難計画を求めていますが、これは原発立地自治体であるかどうかとは無関係に30km圏内の9自治体は同じ権利と義務を持っているということを言っています。各自治体と「九電」が結んだ安全協定に「同意」の項目があったとしても、それは自治体と私企業の「任意の協定」なので、法的な拘束力は「指針」には遠く及びません。薩摩川内市と「再稼働反対、廃炉の決議」を上げた姶良市(あいらし)とは権限では同じです。福井地裁が250km圏内の住民の権利を認めたことを考えると、最低30km圏内の自治体の同意は絶対に必要なので、再稼働はできません。

4、放射能被ばくについて
原爆(爆弾)と原発(電力)の違いはありますが、人に対する放射能被ばくでは2者は共通します。長崎市民を戦後長い間苦しめたのは、低線量被ばくや内部被ばくです。
医学的にはペトカウ効果と呼ばれています。これは核分裂生成物の吸入または摂取による長期にわたる低レベル放射線が、ひとの免疫機構に不可欠な白血球の細胞膜を破壊する。ごく微量でも体内に取り込まれた放射線は、ひとの生命と生殖に深刻な影響を与える、放射線には「しきい値」はないという、1970年カナダのアブラハム・ペトカウ博士が発見した医学的な知見です。2013年11月、北九州市で行われたティモシー・ムソー教授の講演「福島の生態系調査」で、「フクシマ」のツバメの小頭症が報告されました。小頭症は「長崎原爆戦災誌・第4巻学術編(1984年、長崎市編纂)」P.152に小頭症の少年の写真があり、2者が共通していることが証明されました。長崎市がプルトニウム被爆との因果関係を認めた疾病は、再生不良性貧血、鉄欠乏性貧血、肝硬変、ウィルス性を除く慢性肝炎、悪性新生物(ガン)、糖尿病、甲状腺機能低下症、脳出血、くも膜下出血、脳梗塞、高血圧性心疾患、慢性虚血性心疾患、ネフローゼ症候群、慢性腎炎、白内障、肺気腫、慢性間質性肺炎、変形性脊椎症、変形性関節症、胃潰瘍、十二指腸潰瘍です。これら疾病で今後福島が苦しまれるのではないかという心配、鹿児島県民が同じ目に合うことがないよう、川内原発再稼働の危険を冒さないよう長崎原爆被爆者の1人として願うものです。

以上   

川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(2)

―水素爆発対策は可燃性ガスへの引火を契機とする複合爆発の可能性―

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2014年8月7日 福岡核問題研究会

1. なぜ水素爆発対策を問題にするか

 本論考は原子力規制委員会・新規制基準にもとづく川内原発審査書案の過酷事故対策の批判的分析1(水蒸気爆発防止策)[1]に続くものである。
 1979年のスリーマイル島原発事故、1986年のチェルノブイリ原発事故、2011年の福島原発事故で水素爆発は実際に起きた。
 新規制基準において、水素爆発の可能性が払拭できていないことについて、井野・滝谷論文[2] では、次のような問題点が多数指摘されている:
溶融炉心が流れ出てくると、いわゆる水・ジルコニウム反応だけでなく、溶融炉心とコンクリートとの反応(コア・コンクリート反応)によって水素が発生し、より水素爆発の可能性が高まる。加圧水型(PWR)原子炉は格納容器が大きいから水素爆発の心配いらない、というのは非科学的である。1979年のスリーマイル島原発の炉心溶融事故の際には、水素爆発の危険性が最も懸念されていた。モデルによる解析でも、水素爆発発生までの数値に余裕がなく、コア・コンクリート反応や、格納容器内での水素濃度の偏りの可能性を考えた場合、水素爆発はリアリティを持っている。そして、沸騰水型とは違い、加圧水型(PWR)は格納容器が大きいだけに、その爆発の威力も逆に格段に大きいと見ておいた方がいいのではないか。
本年4月中旬、世界の原子力規制の動向に精通した原子力コンサルタントの佐藤暁氏が新規制基準における過酷事故対策が非常に不十分であることを詳しく議論している[3,4]。特に、[3]の21ページにおいて、再臨界、水蒸気爆発、MCCIの評価に対しては慎重さが必要としている。
7月下旬、日本の原子力規制の技術的実務の経験豊富な滝谷氏が注目すべきインタビューを行った[5]。
本論考では、井野・滝谷論文[2,5]や佐藤暁氏の論考[3,4]での論点を踏まえて、関連した補足とこれまでほとんど指摘されていないと思われる論点も提起したい。

2. 原発の過酷事故における水素の発生と燃焼、爆発

2.1 水素の燃焼と爆轟の条件
 水素ガスは最も軽い気体でそのモル質量は2.016g/molである。水素は空気雰囲気中で酸素と反応して熱を出す。これは非常に簡単な反応
 
2H2+O2→2H2O+242 kJ/mol
として表されるが、実際の反応は複雑で、12あるいは16の素反応過程が提案されている[6, 7].
 燃焼の形態としては次の3つがある。
  予混合燃焼:ガソリンエンジンの燃焼。
  拡散燃焼:ガスバーナー、ローソクの燃焼。
  表面燃焼:炭の燃焼。
・予混合火炎の伝搬速度の違い
 この反応形態は反応速度に応じて次のように分類されている。
反応速度が
遅い――燃焼 (静的荷重)
速い――爆発――爆燃 (火炎の伝播速度が亜音速。準静的荷重)
        爆轟 (火炎の伝播速度が超音速。動的荷重(衝撃圧))
 水素-空気-水蒸気の燃焼と爆轟限界について、初期には、ほとんど理論的にのみ研究されてきた。燃焼と爆轟の限界に対する古典的な三角形のダイアグラムがShapiroらにより報告された[8].

Fig3
水素-空気-水蒸気混合の燃焼および爆轟の限界:図の出典[ 9,p.33]


 Shapiroらは爆轟限界を混合率の関数としてのみ調べた。しかし、近年の研究によれば、爆轟限界は幾何学的なスケール、初期の圧力や温度の関数でもあることが明らかになっている[9, p.33]。歴史的には爆轟は水素濃度が18%から59%に対して起こると考えられてきた。
 原子力産業における水素爆発の危険性についてShepherd (米国カリフォルニア工科大学)はPWRまたはBWRの学ぶべき教訓として以下の諸点を列挙している[10]:
1)爆燃はスケールに相対的に独立に発生する:可燃限界(flammability limits)は構成に
  のみ依存する。
2)爆燃から爆轟への移行(DDTと略)はスケールに強く依存すること:爆轟限界
  (detonation limits)は形状、サイズ、発火源に強く依存する。
3)格納容器形状におけるDDTの危険性を定量化するためには大規模実験が必要
  であること。
4)爆轟の開始と伝播は、小規模の場合より大規模の場合には、非常に低い濃度
  で起こりうる。すなわち、水蒸気濃度が10%の場合、水素濃度10.5%で水素
  空気の爆轟、水素濃度11%でDDTが発生する。
 Shepherdの見解、特に4)を裏付けるように、Dorofeevらによる大規模の実験は水素濃度が約10%から77%までの水素-空気混合ガスに対して,爆轟が起こることを示した[9, p.34], [11]。

2.2 過酷事故の間における水素ガスの生成
 過酷事故の際、水素ガスは、ジリコニウム-水蒸気反応(ジルカロイの酸化)、ボロン・カーバイド-蒸気反応、ウラン-水蒸気反応、金属-水蒸気反応、溶融核燃料-コンクリート相互作用(MCCI)、水の放射線分解など種々の過程で生成される[12]。

1)ジリコニウム-水蒸気反応(ジルカロイの酸化)

 これらの過程の中で、最も寄与が大きいにはジリコニウム-水蒸気反応である [12]。その理由は何か。ジルコニウムはイオン化傾向が比較的大きいので、ジコニウム・水反応が高温では激しく起こる。ただ、ジルコニウムはイオン化傾向が大きいのに空気中で1700℃近くになるまで酸化されない。アルミニウムが非常に酸化されやすいのにAl2O3の被膜を作り、酸化されにくいのと同じように、ジルコニウムも空気中ZrO2の被膜を作り酸化されにくいためと思われる。
この化学反応は発熱反応である。
 
Zr+2H2O→ZrO2+2H2+586 kJ/mol
 この化学反応が起こると、発熱するため燃料被覆材の温度がさらに上昇し、反応が進むという悪循環(正のフィードバック)を繰り返す。また、後述のように、この化学反応により生じる水素が酸素と一定の比率で混ざると爆発的に反応する可能性がある。
 典型的なPWR原子炉の場合、事故の最初の2-3時間で150-200キロの水素が生成されるかもしれない。より大きいBWR原子炉の場合、その2-5倍くらいになるかもしれない[12]。
 反応速度の経験則(Baker-Justの式)が単位面積あたりの酸化量の時間、温度依存性という形で得られている。
Baker-Justの式:
 ω^
2 = 33.3×10^6 t exp(-45,500/RT)
 ω:単位面積あたりの酸化量(mg/cm^
2),t:反応時間(s)
 
R:気体定数(cal/mol・K),T:絶対温度(K)

2)鉄―水蒸気反応
 しかし、鉄(Fe)も水素よりイオン傾向が大きく、やはり一定の鉄・水反応で水素が発生する事は間違いない[2]。Feは、冷水や温水とは反応しないが、高温の水蒸気とならば反応する。化学反応式のひとつは
3Fe +4H2O Fe3O4 +4H2 である。Feと高温の水蒸気の場合は可逆反応であることがZr-水蒸気反応とは基本的に異なるが,溶融した炉心が圧力容器の底に溜まり,鉄を主成分とする圧力容器を溶かす場合には,Feと高温の水蒸気によって発生する水素についても考慮しなければならない。

3)水の放射線分解
 放射線によって水が分解されると、水素だけではなく、酸素も発生する。商業用原子炉では、この酸素と水素を、触媒を使って化学反応させて水に戻す、排ガス再結合器が組み込まれている[13]。放射線によって発生する水素は量もそれほど多くなく、速やかに水に戻るため、水素爆発の原因になる可能性は低い。福島原発事故では、水蒸気がジルコニウム合金との化学反応により酸素を奪われた事によって水素が発生したため、原子炉内部には、水素と再結合させるための酸素が存在しなかったため、排ガス再結合器も役には立たなかったと考えられる。

4)溶融燃料とコンクリート相互作用(molten corium-concrete interaction, MCCI)[12], [14]
 国際的な原子力研究者の間でも、過酷事故の際、溶融核燃料等の冷却を促進する格納容器の窪み部分を予め水で満たすことは、水蒸気爆発の引き金というリスクもあり、依然として見解が分かれている[12]。しかし、水で冷却できなければ、溶融核燃料等は窪み部のコンクリートと接触し、コンクリートの破損が進む。これが溶融燃料とコンクリート相互作用である[14]。文献[14]とその中の引用文献によれば、コンクリートの骨材が石灰岩系であれば、大量の水素とともに、大量の
COCO2が発生する。

2.3 格納容器内における水素ガスの分布
 スリーマイル島原発事故、チェルノブイリ原発事故, 福島原発事故は,原発の過酷事故において水素燃焼が起こることを実証した[12]。スリーマイル島原発事故では、水素燃焼は約12秒間燃焼したが、爆轟は起きなかった。格納容器雰囲気における物理的な仕組みにより、水素は通常不均一に分布する。その結果、燃焼が起こりやすい条件をつくるように、局所的に高い水素濃度が起こるかもしれない。
 水素ガスの分布を決める仕組みとしては、ガスの流れ、分子拡散、格納容器内の種々の構造物と格納容器雰囲気の間の熱伝達、水蒸気凝縮のような質量輸送が考えられる[12]。

2.4 格納容器における水素ガス燃焼
 水素の持続的な燃焼が起こる条件[12]は次のように表される。
1) 水素を含むガス混合物が,混合物の中での水素の濃度、圧力、温度など十分な物理的条件が満たされること
2) 水素を含むガス混合が発火すること
 重要なことは、いったん点火されると、水素の燃焼はすべての可燃性の水素混合物がつきるまで制御不可能である[12]。偶然の発火はランダムな事象であるが、産業事故における過去の経験は、リスク分析や安全性評価を行う場合、発火源の存在を保守的に想定するべきことを示してきた[12, pp.212-213]。原発の過酷事故において、例えば、電気系統、爆発する配管、あるいは高温の溶融燃料の粒子など、多数の潜在的な発火源が考えられる[12, p.213]。

2.5水素ガス燃焼の危険性の緩和方策
 [12]のpp.224-227

  • 格納容器雰囲気の不活性化
  • 格納容器雰囲気の混合
  • (人為的)水素燃焼による局所的高濃度の発生防止
  • 静的触媒式水素再結合装置(Passive Autocatalytic Recombiner, 略称PAR)は、外的エネルギー不要ではあるが、自然循環の速度に依存するので、大量の水素発生に対してはおそらく不十分である[12, p.227]。
  • 水素イグナイタ(Hydrogen igniter)の仕組み

3. 水素爆発とその防止法についての適合性審査の経過と審査書案の内容

3.1 適合性審査の経過について
 滝谷氏はごく最近のインタビュー[5]において以下引用のような注目すべきことを指摘した:
 「旧原子力安全・保安院が、福島事故後の2011年6月に、『東京電力福島第1原発事故に係る1号機、2号機、3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析』という資料を公表している。東電はMAAPで解析して、それを保安院がJNESの支援を受けてMELCORによるクロスチェックを行った結果、地震発生後の1号機原子炉圧力容器の破損時間はMAAPでは約15時間、MELCORでは約5時間と、3倍の差異が生じた」[16]
 「川内原発での事故シーケンス(進展)におけるMAAP解析では原子炉圧力容器の破損時間は、事故発生から約1.5時間。問題となるのが、『溶融炉心・コンクリート相互作用』という、(超高温の)溶融炉心が格納容器下部に落下し、コンクリートを溶かして破損させる現象だが、九州電力の対策では(原子炉格納容器上部の)格納容器スプレーで注水して、溶融燃料が落ちてきた時点で、格納容器下部に水を張るから、溶融燃料は水の中に沈積されて、コンクリートと燃料の反応は軽微に止まるとしている」[5]
 「しかし、MELCORで解析すれば、原子炉圧力容器破損に至る時間がもっと短い可能性がある。仮に(福島事故でみられた両コードの解析の差異と)同じような特性があるとすれば、川内原発におけるMAAP値での圧力容器破損が1.5時間ならば、MELCORでは30分。川内原発の場合、(事故発生から)格納容器スプレー開始まで49分で、30分で原子炉容器破損が起きたら、(格納容器下部に)水が溜まっていない」[5]
滝谷氏が指摘するこのようなことが、実際の過酷事故時に起きないという保証はどこにもない.

3.2 審査書案の内容について
 格納容器の健全性を脅かす上で特に注目されるのは,爆燃から爆轟への遷移,および爆轟である。規制基準では「格納容器が破損する可能性のある水素の爆轟を防止すること」を求め,その判断基準値は,「水素濃度がドライ条件に換算して13%以下又は酸素濃度が5%以下であること」としている(ドライ条件とは,水蒸気の存在は除外することを指す)。
 川内原発の審査書案に於ける川内原発1・2号炉の水素爆発の検討書は195ページから201ページまでに記載されている。審査書案では以下のように扱われている。
川内原発はフィルター付きベントの設備を持っていなくて、格納容器内の窒素封入もないので、過酷事故が起きると、新規制基準の水素濃度発生量は、水・ジルコニウム反応が75%起きたとした時、9.7%の水素濃度に成ると記されている。
 また、MCCI(コリウム・コンクリート反応)からも全炉心ジルコニウムの6%の反応の水素が出るので、水・ジルコニウム反応が100%起きたとした時、12.6%の水素濃度に成ると記されている。しかし、12.6%の水素濃度には,2.2節で述べた鉄-水蒸気反応からの水素は考慮されていない。
 新規制基準の適合性審査で水素濃度が13%だから、まだ0.4%の余裕が有るとすることが問題と指摘されたので、念のためにイグナイタ(電気式点火装置)の追加取り付けを行うことにしたと記されている[17, 18]。
 九州電力はあくまで、イグナイタで水素を燃焼させると主張している。しかし、水素の爆発限界は4%から75%であるから、イグナイタで点火すると、格納容器内にガス爆発が起こる。また、このガス爆発は水蒸気爆発のトリガリングになる可能性が高く、水蒸気爆発との複合爆発の可能性が大きくなる。さらに、MCCIの進行度合いによっては、CO爆発の可能性もある。
 九州電力は、高熱溶融炉設計者や操業者が絶対に行わない、あるいは一般の産業技術の現場でも回避されるべき、爆発限界内のガスに平気で点火と爆発を行うとしている。

3.3 原子力規制委員会の専門性、独立性は十分か、重視されているか
 国会における水素爆轟関係に関連した審議について[19]:
 去る4月15日、関西経済連合会と九州経済連合会は連名で、「原子力発電所の一刻も早い再稼働を求める」という意見書を、政府、そして原子力規制委員会、さらには国会、原子力規制委委員会に対しても宛てて出した。このことについての笠井亮衆議院議員(日本共産党)の質問に対する田中政府特別補佐人(原子力規制委員会委員長)は、「事務的には受け取っておりますけれども、原子力発電所の再稼働は原子力規制委員会の所掌ではなくて、原子力発電所の再稼働に関する要望書については、受け取ってはおりますけれども、コメントは差し控えたいと思います」と一見、独立性を保持するかのような答弁した。上述の意見書は「産業界からみると、独立性と専門性を重視しすぎるあまり、限定された専門家に負荷が集中し、効率的で責任のある意思決定が迅速に行われているとは言い難い」とも非難している。
 しかし、旧原子力安全・保安院などさえ行ってきたクロスチェック解析について、田中委員長は、「別途の解析をしていると言われながら、クロスチェックとは最後まで明言せずに、個別については答弁を差し控えたいとか、解析も含めた有効性の評価を行っている、こういうふうに言われて、やっているのかやっていないのかというと、言を左右にされるということがあったんです。」と答弁している。すなわち、独立性を保持すると言明しても、クロスチェック解析なしでは専門性も独立性も保証されるとは言えないことは明白である。さらに、ジルコニウムと水の化学反応によって発生する水素発生量の田中規制委員長による推定の桁数が違っていたこと、それにより静的触媒式水素再結合装置の性能が桁違いに低いことが明らかになった。

4.シビアアクシデントの解析コードの不確かさとその背景

 Segalによれば「(最も初歩的事実は別として)原発における水素ガスの振る舞いのほとんどの物理的側面は依然として、特に実験的には、研究途上である。これは水素ガスの振る舞いについての知識が完全からはほど遠いことを示している」[12, p.188]。
また,片岡氏は「これまでの研究、コード開発において多くの現象についての基本的な物理メカニズムの理解とモデル化は行われてきた。(中略)しかしながら、個別の炉においてシビアアクシデントがどのように進むのか、またどの現象が起きないのかを評価することは十分ではない」[7]と指摘する。片岡氏のこの現状認識は次の岩田氏の認識と整合的である。
水素ガスの燃焼・爆発は、「非平衡の複雑な系のふるまいであり、それぞれの場所、時間、化学、経路、形状、履歴によって大きく様相は異なる」[20], [21]
 失敗学流の考察[15]からも(批判派を含む)原発のリスク分析と安全対策が持つ限界(想定範囲)の狭さが示唆されている。すなわち、原発の過酷事故で起きる事象の複雑性を理解し網羅することは極めて困難で、隣接原発への波及や原発内の臨時作業なども重大な影響を及ぼすだろう。
3.11福島事故に関する錯綜する多くの事故分析や想定外の幸運と不運の事故への影響など、原発のリスク分析と対策がいかに困難かつ想定困難な要因に満ちていることか。

5.まとめ

1) 審査書案では、水素爆轟濃度の下限を13%と設定し、九電の対応では12.6%以下になるとして、認可されている。たとえ、水素爆轟濃度の下限を13%が正しいとしても、危険と紙一重のきわどい自動車の運転を許可するようなもので、極めて危険な評価と言わざるえない。
2) 水素燃焼における爆轟と爆燃爆轟遷移の条件は、大きいサイズの装置の場合、小さいサイズの装置より低い濃度で起こる可能性が2010年に米国カリフォルニア工科大学の研究者により指摘されている。この推定を裏付けるように、大きな規模の実験において、水素爆轟は水素濃度10%~77%で可能であることが1994年に報告されている。したがって、規制基準における「水素爆轟濃度の下限13%」自体が根拠薄弱で過度に楽観的な基準と言わざるを得ない
3) 一般に、水素が局所的に高濃度になる可能性は否定できない。
4) 水素イグナイタの使用自体が水素爆発の引き金になる可能性があるだけではなく、水蒸気爆発などとの複合爆発になる可能性も否定できない。
5) シビアアクシデントの解析コードには一般に不確かさがあり、複数の独立の物理モデルにもとづく解析コードによるクロスチェックを行うことが必要不可欠である。
6) 複数の解析コードで有意に異なる結果が出る場合、保守的な態度、すなわち、より厳しい方針で望むべきである。
7) 安全性を確かめ、複数の解析コードの異なる結果を評価する意味でも、数分の1モデルあるいは1/4モデルなどにより実証実験を行うべきである。

参考文献および注

[1] 福岡核問題研究会2014年7月26日
川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(1)ー格納容器と原子炉建屋が水蒸気爆発で破壊されないことは実機規模で実証されているかー
[2] 井野博満・滝谷絋一「不確実さに満ちた過酷事故対策」『科学』84巻3号, 333 (2014).
http://www.ccnejapan.com/archive/2014/201403_CCNE_kagaku201403_ino_takitani.pdf
[3] 院内学習会:原子力規制のグローバルな状況と日本。
2014年4月18日 
http://www.cnic.jp/movies/5817
佐藤暁氏の講演資料 
http://www.cnic.jp/files/20140418mokkai_sato.pdf
[4] 佐藤暁、「不吉な安全神話の再稼働」,科学84巻8号, p.833 (2014).
[5] 滝谷紘一氏(元原子力安全委技術参与)インタビュー:原子力規制委の審査「厳正でない」2014年 07月 28日
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPKBN0FX0HJ20140728
[6] N. Cohen, Flammability and Explosion Limits of H2 and H2/Co: A Literature Review, Aerospace Report No. TR-92(2534)-1, 1992.
http://dtic.mil/dtic/tr/fulltext/u2/a264896.pdf
[7] 片岡 勲、軽水炉シビアアクシデント評価技術の課題、2012年日本原子力学会春の年会(福井大学)。
http://csed.sakura.ne.jp/wp-content/uploads/2012/04/b2e976417f2f39877bc74a84eb8dd9ce.pdf
[8] Z. M. Shapiro and T. R. Moffette, 1957. Hydrogen Flammability Data and Application to PWR Loss-of-Coolant Accident, WAPD-SC-545, Bettis Plant, September.
[ 9] A. Silde, I. Lindholm, On Detonation Dynamics in Hydrogen-Air-Steam Mixtures, NKS-9, VTT- Energy, Finland
抄録は
http://www.iaea.org/inis/collection/NCLCollectionStore/_Public/31/031/31031776.pdf
論文名で検索すると論文をダウンロード可能。
[10] J. E. Shepherd ( California Institute of Technology), Thirty years of Research on Hydrogen Explosion Hazards in the Nuclear Industry,
http://nisd.ans.org/wp-content/uploads/2013/08/Panel-Overheads-Shepard-Hydrogen-ANS-2010.pdf
[11] S. Dorofeev, V. Sidorov, W. Breitung, J. Vendel, and A. Malliakos,
Recent Results of Joint FZK-IPSN-NRC-RRCKI Research Program on Large Scale H2 DDT Experiments in the RUT Facility, Presented at CSARP Meeting, Bethesda, MD, USA, May 5-8, 1997.
[12] B. R. Sehgal, Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology, Academic Press, (2012).特に,pp.255-282.
http://store.elsevier.com/Nuclear-Safety-in-Light-Water-Reactors/isbn-9780123884466/
特に、 3.1. Hydrogen-behavior-and-control
[13] 原子力排ガス再結合触媒及び再結合器
http://www.google.com/patents/WO2012029090A1?cl=ja
[14] 岡本良治・中西正之・三好永作「炉心溶融物とコンクリートとの相互作用による水素爆発,CO爆発の可能性」、『科学』2014年3月号。
https://dl.dropboxusercontent.com/u/86331141/Shiryo/Kagaku_201403_Okamoto_etal.pdf
[15] 失敗学会の発行物(No.59、2011-8-9 発行)
「原子炉建屋の水素爆発が想定外だったのは何故?」
http://www.shippai.org/images/html/news559/YoshiokaMemo59.pdf
[16] 旧原子力安全・保安院「福島事故後の2011年6月東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価のクロスチェック解析、2011年6月。特にp.4。
http://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/backdrop/pdf/app-chap04-2.pdf
[17] 原子力規制委員会 第58回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合、平成25年(2013年)12月17日(火)
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/20131217.html
[18] 検討会58コメント回答。
平成26年4月3日 北電、関電、四電、九電。特に、p.40, 48, 49, 51, 55, 63, 64, 68-69, 4-70, 4-71, 4-72, 4-76, 4-77, 4-78。
[19] 第186回国会 原子力問題調査特別委員会 第4号(平成26年4月24日(木曜日))
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/026518620140424004.htm
[20] 岩田修一、原子炉内で起こる化学反応、「化学」Vol.66, No.6 (2011).
特集「福島第一原発事故」,i-iii.
http://www.kagakudojin.co.jp/files/c6606_iwata_tsuika.pdf
[21] 理論的には、複雑な多体系の動的変化を規定する、抽象的な多次元エネルギー空間において、高温領域では比較的狭いエネルギー交換幅内に多数の局所的最小値と鞍部点(saddle points)が併存し、その記述や理解が極めて困難という従来からの難問と類似した事情であろう。

川内原発審査書の過酷事故への対策を問う(1)

―格納容器と原子炉建屋が水蒸気爆発で破壊されないことは実機規模で実証されているか―

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2014年7月26日 福岡核問題研究会

1. はじめに ー過酷事故への対策についての重点的検討

 原子力規制委員会は、審査を進めてきた九州電力の川内原子力発電所1・2号炉について「新規制基準を満たしている」とする審査書案を本年7月16日に了承し、ただちに科学的・技術的意見の公募を開始した[1]。そして、原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合は同委員会のホームページにおいて公開されている[2]。8月中にも正式な審査書として決定すると伝えられており、政府と九州電力は、これを受けて速やかに再稼働させるとしている。
 しかし,原子力規制委員会の審査は、過酷事故の防止と発生した場合の拡大を防止する技術的方策について、東電福島第一原発の事故の実態が不明のまま1年前に決めた新規制基準への適合性を調べただけのものである。再稼働の「条件」は幾重にも満たされていない。すなわち,これらの基準を満たしたからといって、原発再稼働にともなって必要になるその他の事項
(1) 事故が発生した場合に、影響が及ぶことが予想される範囲の住民の安全な避難計画
(2) 発生する放射性廃棄物、特に高濃度廃棄物の処理方法、
(3) 使用済核燃料の処理と管理、
(4) 廃炉後の解体処理、特に過酷事故を起こした原子炉の処理
などは、原子力規制委員会の権限外として何らの検討も行われていない[3,4]。
 また,「規制委が世界で一番厳しい基準で安全と判断すれば、再稼働していきたい」と答えた首相は、自らの責任を放棄したに等しい。自治体の首長たちは、再稼働や避難計画について国が方針を示すことを求めている。だが新規制基準は、川内原発であれば周辺の火山の噴火リスクなど、地域の特性を当事者たちが理解してこそ達成できるものだ。全責任を国に押しつけようとするのでは、福島第一原発事故以前と変わらない。新規制基準は、再稼働の是非と責任を考える「大人の対応」を求めている。しかし、電気事業者も、政府も、地方自治体も、誰も責任を取ろうとしていない[5]。
 さらに、新規制基準は世界最高水準とは決して言えない。米国の原子力規制では必要不可欠とされている避難計画の実効性の実証がないだけではなく、新規制基準の科学的、技術的内容も世界最高水準のものではない。原発の設計そのものの見直しに踏み込まず、既存の設計に安全対策を追加させただけである。対症療法にすぎず、最新技術を設計段階から組み込んだ海外のそれとは違う[5,6]。
 しかし、このような社会的状況の中で、科学的、技術的な見解に限定されたパブコメが7月16日から8月15日までの30日間募集されている。ことの複雑さと時間的余裕が少ないことを考慮して、賛否いずれであっても、より深く納得することを希望する人々のために、内外に公開された資料や関連文献を基に、複数の専門領域から、相対的に議論が少ない「過酷事故への対策」について独立した検討を行い、よりよい判断のための素材を提供することは意義があると考える。

2.原発の過酷事故における水蒸気爆発

 過酷事故の際に起こると思われる現象は図1のようになっている。水蒸気爆発は燃料-冷却材相互作用 ( Fuel-coolant interaction, FCI ) に関連する重要な現象の一つである。

Fig1


2.1水蒸気爆発とは何か

加熱したフライパンの油に水滴を落としたら、危険であることはよく知られている。また,海中火山の誕生の際にも爆発が起こる。また,金属工場,高温溶融炉などでも水蒸気爆発の事故例がある[8]。しかし、なぜ水が大きな爆発を起こすのだろうか。
溶けた金属などの高温液体が,水に代表される低温液体に落下すると、水蒸気爆発が起こる場合がある。水蒸気爆発の発生する過程と進行する過程[7,8,9]は以下の通りである。
(1) 粗混合過程(premixing):
(2) トリガリング(triggering):外乱または引き金的要因
(3) 急速な熱移動段階(細粒化過程)
(4) 拡大・伝播過程。
急速な熱移動が起こるためには,熱伝導の経験則などより、水との接触面積が大きくならねばならない。接触面積が大きいことは多数の粒子に細粒化することである[8]。
水蒸気爆発の重要なメカニズム[8]は以下の通りであると言われている。
(a) 蒸気膜が破壊、または崩壊する原因とメカニズム
(b) 細粒化の原因とメカニズム
(c) 現象の拡大・伝搬のメカニズム
(d) 高い衝撃圧力の発生メカニズム
(e) コヒーレントな性質(斉時性または同時性)を示す理由.
また,水蒸気爆発の起こる前提として,熱エネルギーの存在が不可欠,すなわち、2種類の液体の温度差が大きいことが必要である[8] 。

2.2 溶融炉心と冷却水との相互作用の概要

新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料[? ]によれば、溶融炉心と冷却水との相互作用の概要は以下の通りである。
「溶融炉心と冷却水が接触することによる急激な水蒸気の生成において、溶融炉心の熱エネルギーが機械的エネルギーに変換されて格納容器破損に至る可能性がある。このような現象、すなわち、溶融炉心と冷却水との接触及びそれに伴って引き起こされる現象のことを”溶融炉心と冷却水の相互作用(FCI)”と呼ぶ。また、FCI のうち衝撃波を伴うものを”水蒸気爆発”と呼び、水蒸気爆発に至らない圧力変化を”圧力スパイク”と呼ぶ。
さらに、溶融炉心と冷却水の接触は、原子炉容器の下部と原子炉キャビティで発生する可能性があり、雰囲気圧力や冷却水の状態が異なることから両者を区別して取扱い、前者を原子炉容器内FCI、後者を原子炉容器外FCI とする。
炉心あるいは原子炉容器から落下する溶融炉心(デブリジェット)が、水プールに接触する際の液-液混合に伴って、溶融炉心が細粒化して水中に分散する(エントレイン)。細粒化した溶融炉心(以下、「デブリ粒子」と称す。)は、膜沸騰及び輻射熱伝達により水と伝熱しており、デブリ粒子は蒸気膜に覆われた状態である。
 ここで、蒸気膜へ何らかの外乱(トリガリング)が加わり蒸気膜が崩壊すると、デブリ粒子が冷却水と直接接触することで急激な水蒸気発生が起こり、これが近傍のデブリ粒子に対する新たなトリガリングとなり蒸気膜を崩壊させ、この現象が瞬時に伝播・拡大することで、衝撃波を伴った水蒸気爆発に至ると考えられている。また、水蒸気爆発に至らない場合でも、発生した水蒸気により急激な圧力上昇(圧力スパイク)が発生する。」
以下、用語の英語名について補足する。FCIはfuel-coolant interaction、圧力スパイクはpressure spike、デブリジェットはdebri jet、エントレインはentrain、トリガリングはtriggeringである。
FCIに伴い、核燃料などのエアロゾルも発生する可能性はないだろうか。

2.3原子炉の過酷事故における水蒸気爆発

 原子炉における水蒸気爆発は米国の1954年のBORAX-1(Boiling Water Reactor No.1 ),1961年のSL1事故(定常型低出力動力炉:Stationary Low Power Reactor-1),1986年のチェルノブイリ原発事故で起こったと言われている。図2に,燃料ー冷却材間相互作用(FCI=fuel-coolant interactions)の種々のシナリオを示す。

Fig2

図2.燃料ー冷却材間相互作用(FCI=fuel-coolant interactions)の種々のシナリオ
in-vessel : poured (圧力容器内:混入)  in-vessel : stratified ( 圧力容器内:階層化) ex-vessel : poured (圧力容器外:混入)  ex-vessel : stratified ( 圧力容器外:階層化), melt=溶融炉心, cavity=キャビティまたは格納容器の窪み部,water=水(冷却材).出典[7]

 圧力容器は相対的に高い圧力に耐えられるように設計されているとすれば、圧力容器外:混入の場合、すなわち、溶融燃料が圧力容器外、すなわち格納容器内に存在する可能性のある水(冷却材)に混入するシナリオが相対的に重要になってくると考えられる。

3.過酷事故モデル実験の結果とその吟味

 新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料[10 ]によれば
「蒸気爆発に関しては、水蒸気爆発専門家グループ(SERG: Steam Explosion Review Group)によるレビュー評価として纏められ、「圧力容器内水蒸気爆発はリスクの観点から無視できる」と結論付けられている。この結論は 1997 年の FCI に関する専門家会議においても、SERG の結論の変更は不要であることが確認されている。
 また、米国原子力規制委員会 NRC は、原子炉容器内 FCI から水蒸気爆発に至り格納容器が破損する事象(いわゆるαモード破損)については、これまでの専門家による検討結果では、発生する可能性は非常に低く、問題は解決済みと結論付けられている1。また、原子炉容器内 FCI から圧力スパイクに至る事象については、1次系圧力を上昇させることはあるが、格納容器への直接的な脅威にはならない。
 一方、緩和策により注水された原子炉キャビティに溶融炉心が落下する場合の FCI(原子炉容器外 FCI)は、原子炉容器内 FCI が高圧かつ高温(低サブクール度)の条件下であることに対し、低圧かつ低温(高サブクール度)であり、定性的には水蒸気爆発が発生し易いと言われている。また、圧力スパイクの観点でも、水プールの容量が原子炉容器内よりも大きく、水蒸気の発生量自体も大きくなる可能性がある。」

3.1水蒸気爆発が起こるとされる国内外の実験

 新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料[10]によれば,
 FCI実験は、主として溶融物を水プールに落下させ、水プールとの混合の際に発生する諸現象について解明することを目的としたものであり、国内外の研究機関において、種々の実験研究が行われている。その中で、比較的大規模な実験として、欧州 JRC (Joint Research Center)のイスプラ研究所の FARO 実験、同じくイスプラ研究所のKROTOS 実験、旧原子力研究所 JAERI の ALPHA 実験、カザフスタン国立原子力センター(NNC:National Nuclear Center)の施設を用いた COTELS 実験が行われている。付録に引用するように、かなりな数の水蒸気爆発が起きていることは事実である。
 同時に、同資料においては「FCI実験のうち、UO2を用いたFARO実験、KROTOS 実験およびCOTELS 実験のうち、水蒸気爆発が観測されたのはKROTOS実験のみ」と、あたかも極めて限定されるかのような分析を強調している。
 しかし、これは、原発を何としても再稼働させたいという願望的思考に囚われていて、原発の安全性または危険性を独立な立場で検証する態度とは言えないであろう。


3.2水蒸気爆発による格納容器破損確率の評価と種々のトリガリングの可能性

 森山清史らにより水蒸気爆発による格納容器破損確率の評価がなされている[11]。この論文の研究は確率論的リスク評価(略称PRA)という手法でなされ、水蒸気爆発解析コードJASMINEを物理モデルとして格納容器破損確率について,系統的な検討が行われている。この論文のまとめの中で、得られた破損の確率分布を特徴づける代表的な数値として,次表が示されている。

Tab0

これらの確率の絶対値は必ずしも定量的な意味をもつとは限らないが、確率としては決して小さい値とは言えない。そうであれば、トリガリングが起きた場合、水蒸気爆発の可能性は低くはないことを意味する。
 さらに、著者らは「3.5本解析結果参照にあたっての注意点」に、「検証に用いた実験規模に対し実機現象は融体質量で約100倍の外挿となっていることから、規模の拡大による予期しない影響存在がする可能性は否定できない」と自己分析的で、説得力のあるコメントも行っている。
 上述の推測が議論されたため、審査書[1]のpp.194-195および新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料1-2-7[2]の3.2-10において、事業者は、モデル実験結果を分析する中で、実機においてはキャビティ水は準静的であり外部トリガリングとなり得る要素はなく、実機において大規模な水蒸気爆発に至る可能性は極めて小さいと考えられる、としている。
 しかし、過酷事故の際に、キャビティ水は準静的であるとは限らないだろう。さらに,過酷事故が起きた場合、水素爆発などの外部トリガリングの候補はあると考える方が現実的ではないだろうか。
 日本の事業者や原子力規制委員会の見解と対照的に、過酷事故の国際会議報告[9] のpp.261-264には、トリガリングは外部トリガリング (external triggering)だけではなく、自発的トリガリング (spontaneous triggering)もあることを議論し、実際の状況では水蒸気爆発が起こるかどうか予測することは現実的に不可能で、FCIの間はトリガリング確率は1に等しく、(水蒸気)爆発が起こることを前提としている、と記されている。これがヨーロッパでは過酷事故対策として、キャビティに水を緊急に張るのではなく、コア・キャッチャー装置を設置する方針が選択された背景認識であろう[12]。

3.3 燃料ー冷却材間相互作用と水蒸気爆発の理解は不十分

 水蒸気爆発は強い非平衡性と急速な体積変化を伴う非定常な流れを伴う。そして、爆発の発生は確率現象のような振る舞いをする。温度や高温液体などの実験条件を同じにしても,爆発が起こったり、起こらなかったりする[8]。すなわち,再現性に乏しいという複雑系の一般的な特徴に類似している。
 過酷事故の国際会議報告[9]のp.276には, 水蒸気爆発実験へのアプローチが多岐にわたっていることは、燃料ー冷却材間相互作用と水蒸気爆発現象のいくつかの基本的な理解が欠けていることを表していると述べている。この理由は、現象自身のモデル化が困難であるという複雑さだけではなく、実験が遂行される極端な条件下で直接的な観測が難しいことにもよっている、という。

4.過酷事故解析コードで格納容器破壊確率が低いことは起こらない証明ではない

 日本大震災の地域で巨大地震が発生する「確率」が地震専門家によって提案されていたが、その値は非常に低かった。しかし、巨大地震は起こった。
 2006年、津波などによる全電源喪失(station blackout)の可能性を国会で野党議員から質問されて、当時の首相は極めてまれにしか起こらないと考えられるので対策の必要はないと答弁していた[14]。しかし、この当時の首相は今自己反省しているだろうか? 再度の登場で、原子力規制委員会委員長も新規制は安全を担保するものではないと明言しているにもかかわらず、世界最高水準の安全性が保証された原発は再稼働させると明言している[5]。
 「はじめに」で説明したように、新規制基準は世界最高水準とは決して言えない。同様に,過酷事故解析コードで格納容器破壊確率が低いと評価されたとしても、格納容器破壊が起こらない証明ではない。
 関連して、原発の試運転業務や炉心設計監管理業務に従事していた、元東電社員の木村俊雄氏が,種々の解析コードに接した経験を紹介する[15]。
(1) 解析は解析でしかない。
(2) いつも解析と実機が一致するようにチューニング(調節)に苦労している。
(3) チューニングしても必ず大なり小なり誤差が生じる。

5. チェルノブイリ原発の過酷事故対策の教訓の無視

 2014年6月9日の毎日新聞大阪版夕刊の記事[16]: 
 「ウクライナ・キエフのチェルノブイリ博物館には、大きなトロッコが飾られている。1986年4月の原発事故直後、旧ソ連政府は爆発した4号機の地下にトンネルを掘り、鉄板を敷いた。溶け落ちた炉心が地下水に触れると、大爆発を起こしてしまう。何としても炉心の落下を防がねばならない。一刻の猶予もなかった。旧ソ連の炭鉱労働者、囚人たちが集められた。白黒の記録映像が残っている。スコップを担いだ労働者たちが、トンネル掘削現場をめざしてトロッコに乗り込んでいく。暑い夏の重労働。「マスクをするように」という注意はほとんど守られず、労働者は裸同然での作業を余儀なくされた。トロッコの横に当時の新聞が飾られている。事故は小さなベタ記事、テレビは報道しなかった。ソ連紙との比較で、同日のニューヨーク・タイムズが並んでいる。こちらは1面トップ、原発の図面や放射能の拡散予想図入りで報じている。6日後、約130キロ離れたキエフではメーデー祭が開催された。事故のことを知らない市民はパレードに繰り出し、大量に被ばくしてしまった。
 福島第1原発事故直後、日本政府はSPEEDIの放射能拡散予測データを公開せず、人々は風下に逃げた。「ただちに健康には……」と官房長官が繰り返していたことを思い出す。国にとって都合の悪いことは、まずは隠されてしまうのだ。旧ソ連も日本も、よー似てるなー。<フリージャーナリスト・西谷文和>」
 チェルノブイリでは、4号炉の過酷事故の発生時、高温度になった溶融核燃料が大量の水と接触し、水蒸気爆発が起きる事を一番恐れて、多くの人たちが命がけで水蒸気爆発爆発防止対策を行った。
 しかし、九州電力はチェルノブイリの過酷事故対策の教訓は全く無視し、わざわざ格納容器に大量の水を貯めて、川内原発1・2号炉の格納容器と原子炉建屋が爆発し、溶融核燃料が野ざらしになるような危険な手段を提案した[10]。そして、審議の結果、[1] のpp.190-195に記されているように、 規制委員会も最終的に了承した。

6. 格納容器に大量の水を貯めれば安心か

 原子力規制委員会の田中委員長は国会で、ヨーロッパでは格納容器と原子炉建屋が水素爆発や水蒸気爆発で破壊される防止対策はコアキャッチャーの採用に成っているのに、川内原発1・2号炉ではコアキャッチャー対策をしない事を追及されると、それは不可能と繰り返し答弁した。しかし、テレビ朝日が「原発の水素爆発防ぐ新たな装置開発」 を次のように伝えている[13]。
 『原子炉でメルトダウンが起きた場合に備え、資源エネルギー庁などが水素爆発を防ぐ新たな装置の開発を進めていることが分かりました。資源エネルギー庁は、「薄型コアキャッチャー」と呼ばれる装置について、国内すべての原発への設置を目指してメーカーに依頼し、開発を進めてきました。核燃料がメルトダウンし、建屋の底のコンクリートが溶けて水素爆発が起きることを防ぐのが目的で、直径は約6mで、内側は熱を逃がしやすい銅でできています。
 東芝原子力システム設計部・薄井秀和部長:「必ずしもこれが必要だ、これがなきゃだめとは思わないが、(安全対策の)手段の一つとして開発し、実際に使えるものにする」
しかし、国内の原発への設置について、原子力規制委員会は「追加の工事が現実的に不可能」として、資源エネルギー庁と意見が対立しています。』(引用終わり)
 ここで、東芝社は「薄型コアキャッチャー」には銅をしようしていると説明している。東芝社の「薄型コアキャッチャー」が一番良い方法とは思われないが、資源エネルギー庁の担当官や東芝社はその道の専門家であろう。
 しかし、原子力規制庁の担当官や九州電力の技術者は、ほとんど知識が無いと思われるのに、「コアキャッチャーの取り付けは不可能、格納容器に大量の水を貯めれば安心」など、実機規模における実証的裏付けのない願望的コメントを出している。

7. まとめ

 原子力規制委員会の審査には重大な不備(欠陥)がある。それは原発事故における「水蒸気爆発(爆轟)」の防止対策である。原発での水蒸気爆発は実際の原発で起きた「想定内」の問題で、多くの研究やモデル実験がなされている。コンピューターのシュミレーション結果(川内原発で水蒸気爆発は起こりえない。圧力の急激な上昇は起こるかもしれないが耐えられるとの想定)の信頼性は低く、九州電力による想定(希望的観測)は当てにならない。
 しかし、原子力規制委員会は独自シュミレーションを実施することなく九州電力の見解を結局は追認してしまった。(旧)原子力安全保安院時代にはこうしたダブルチェックが実施された。九州電力の過酷(重大)事故対策はチェルノブイリ原発事故の教訓を無視しており、溶融炉心を大量に水を張って受け止める対策だが,無謀で危険な賭けである。すなわち、水素爆発・ガス発生・余震などを契機に水蒸気爆発が起こる可能性は否定できない。溶融炉心を耐熱構造で受け止める「コアキャッチャー」は外国の一部の実際の原発では、既に採用されている過酷事故対策だが、川内原発での有効性や採用の是非に関する検討はなされていない。
 したがって、このまま川内原発の再稼働を許した場合、「格納容器が水蒸気爆発で破壊され溶融炉心が環境中にむき出しに曝される」という、福島原発事故以上に酷い原子力災害が発生する恐れがあり、絶対に再稼働を認めることはできない。

付録:新規制基準適合性に係る第102回審査会合(2014年4月3日)の資料1-2-7[10]における実験条件および結果一覧
Tab1-1

Tab2-1


参考文献・参考資料

[1] 原子力規制委員会, 九州電力株式会社川内原子力発電所の発電用原子炉設置変更許可申請書(1 号及び 2号発電用原子炉施設の変更)に関する審査書 (原子炉等規制法第43条の3の6第1項第2号 (技術的能力に係るもの)、第3号及び第4号関連), 平成26年7月16日.
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu140716.html
審査書案 
http://www.nsr.go.jp/public_comment/bosyu140716/gaiyou.pdf
[2] 原子力規制委員会・原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/power_plants.html
[3] 朝日新聞審査1年「再稼働へ先例 原発新基準、ポイントは川内原発『適合』」2014年7月17日。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11247541.html
[4] 世界平和アピール七人委員会「原発再稼働の条件は整っていない」2014年7月18日。 
http://worldpeace7.jp/modules/pico/index.php?content_id=135
[5] 勝田忠広[原発の再稼働 新基準を隠れみのにするな] 2014年7月12日朝日新聞。
http://digital.asahi.com/articles/DA3S11237500.html
[6] 大阪府市エネルギー戦略会議「大阪府市エネルギー戦略の提言」冨山房インターナショナル,2013年。特に、p.15,p.81.p.87など。 
http://www.pref.osaka.lg.jp/kannosomu/enekaigi/teigen.html
[7] Chapter 10(Open Access) Simulation of Ex-Vessel Steam Explosion by Matjaz Leskovar,
http://cdn.intechweb.org/pdfs/17974.pdf
Nuclear Power-Operation, Safety and Environment edited by Pavel Tsvetkov, (open access book)
http://www.intechopen.com/books/bookstat/nuclear-power-operation-safety-and-environment
[8] 高島武雄、飯田嘉宏「蒸気爆発の科学ー原子力安全から火山噴火までー」,
裳華房、1998年http://www.shokabo.co.jp/mybooks/ISBN978-4-7853-8700-6.htm
[9] B. R. Sehgal, Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology, Academic Press, 2012.特に,pp.255-282.
http://store.elsevier.com/Nuclear-Safety-in-Light-Water-Reactors/isbn-9780123884466/
[10] 原子力規制委員会、第102回原子力発電所の新規制基準適合性に係る審査会合、資料1-2-7「重大事故等対策の有効性評価に係るシビアアクシデント解析コードについて(第3部 MAAP) 添付2 溶融炉心と冷却水の相互作用について」
https://www.nsr.go.jp/activity/regulation/tekigousei/h26fy/data/0102_09.pdf
[11] 森山清史他, 「軽水炉シビアアクシデント時の炉外水蒸気爆発による格納容器破損確率の評価」JAEA-Research-2007-072
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Research-2007-072.pdf
[12] 井野博満、滝谷紘一「不確実さに満ちた過酷事故対策ー新規制基準適合性審査はこれでよいのか」,科学、84巻3号(2014年),p.333-345.
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201403.html
[13] 資源エネルギー庁「原発の水素爆発防ぐ新たな装置開発」2014年7月12日。
https://www.youtube.com/watch?v=LUpW_Lp4NRM
[14] 吉井英勝議員(当時)提出の質問主意書(2006 年 12 月 13 日提出,質問 256 号)に対する安倍晋三内閣総理大臣(当時)の答弁 
http://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_shitsumon.nsf/html/shitsumon/a165256.htm
[15] 木村俊雄「地震動による福島第一1号機の配管漏洩を考えるー東京電力「福島原子力事故調査報告書」と新規公開データの考察から」,科学83巻11号(2013年),pp.1223-1230。
http://www.iwanami.co.jp/kagaku/KaMo201311.html 
[16] 毎日新聞 2014年06月09日大阪夕刊.

福岡核問題研究会7/5

福岡核問題研究会が以下の日程・議題で開催されました.

日時:7月5日(土)午前10時より
場所:九大筑紫キャンパス 総合研究棟5階511室
議題:(1)低炭素社会に向けた石炭火力発電の最新技術について(報告:中西)
   (2)内部被ばくについての一考察(報告:三好)

それぞれの報告は,以下にpdfファイルが有りますので参考にしてください.

(1)低炭素社会に向けた石炭火力発電の最新技術についての中西報告
(2)内部被ばくについての一考察についての三好報告

(1)の議題について
 石炭火力発電の最新技術は,低炭素社会に向けて大切であるが,特に,エネルギー自給率の低い日本において,特に大切である.石炭火力発電の最新技術において大切な点は石炭のガス化であるが,石炭ガス化発電設備は,石炭を完全にガス化することと石炭灰を完全溶融してガラス化する無害化処理が必要となる.これらの問題をクリアーしたのが、テキサコ式石炭ガス化炉であった.その後,溶融灰に長期間浸食されない耐火煉瓦の開発によりテキサコ式石炭ガス化炉は実用炉となった.
 石炭ガス化発電は,高温で処理するために,これまでの石炭火力や石油火力に比較して生産電力あたりの二酸化炭素排出量が抑えられる点だけでなく,排出された二酸化炭素を回収して井戸を通して地中に封じ込める技術の実用化に向けたCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)という実証試験がなされているという.もし,このような技術が実用化されれば,大気中の二酸化炭素を吸収して成長した木材によるバイオマス発電から排出される二酸化炭素に対して,CCSが実行出来れば,地球温暖化の主要な要因の一つと考えられている二酸化炭素を減少していくことも,決して夢ではない.

(2)の議題について
 内部被ばくと外部被ばくは根本的に異なった被ばく形態である.
 外部被ばくで問題となるのは,主にγ線であり,α線やβ線はあまり問題にならない.γ線は一定の割合で人体と相互作用して,人体に一定のエネルギーを付与して,元のエネルギーのほとんどを持ったまま体外に出て行く.
 一方,内部被ばくで問題となるのは、α線やβ線であり、γ線はほとんど問題にならない.このα線やβ線の内部被ばくでは,これらの放射線のエネルギーのほとんどは,体内の細胞に付与されることになる.この意味で,α線やβ線の内部被ばくは,γ線の外部被ばくとは,根本的に異なった被ばく形態である.これらの内部被ばくによる被ばく線量がどの程度になるかを考えた.

福岡核問題研究会 5/31

福岡核問題研究会が以下の日程・議題で開催されました.

日時:5月31日(土)午前10時より
場所:九大筑紫キャンパス 総合研究棟5階511室
議題:(1)『美味しんぼ』が提起した問題について(報告:豊島)
   (2)大飯原発差し止め訴訟判決の意義(報告:三好)
   (3)梅田原発労災事件について(報告:三好)

それぞれの報告は,以下にpdfファイルが有りますので参考にしてください.

(1)『美味しんぼ』が提起した問題について豊島報告
(2)大飯原発差し止め訴訟判決についての三好報告
(3)梅田原発労災事件について三好報告

(1)の議題について
 一般的な外部被ばくの場合,鼻血などの急性障害が現れるのは,1シーベルト以上の被ばくの場合であることを根拠に,福島原発事故における地域住民の被ばく(飯舘村や浪江町を含む相双地域の住民の事故後約4カ月の間に受けた推定の外部被曝線量はほとんど10ミリシーベルトである)では,鼻血などの急性障害はでないと主張する識者がいる.一方で,事故後,鼻血の症例が多数あったことを重視して,鼻腔内の局所的な内部被ばくが鼻血に関係しているかも知れないと推論する識者もいる,
 ここでは,鼻腔粘膜への放射性物質の沈着により内部被ばくがどれ程の量であるかを以下のサイトの紹介というかたちで発表した(ただし,同サイトのヨウ素からのベータ線の平均エネルギー0.192keVにミスがあり,その点を修正している).
http://ameblo.jp/study2007/entry-10925145430.html
本試算では,ベータ線に被ばくする鼻腔粘膜の質量を2gとして199ミリシーベルトの被ばくがあるとした.ただ,0.192keVのベータ線の到達距離が約0.5mmであることを考慮すれば,被ばくの鼻腔粘膜2gは明らかに大きすぎで,鼻腔粘膜は局所的に1シーベルト以上の被ばくを受ける恐れがある.

(2)の議題について
大飯原発差し止め訴訟判決の圧巻の文章は
「個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なものであって,その総体が人格権であるということができる.人格権は憲法上の権利であり(13条、25条),また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない.したがって,この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは,人格権そのものに基づいて侵害行為の差 止めを請求できることになる」
「被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性,コストの低減につながると主張するが,当裁判所は,極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり,その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないことだと考えている.・・・このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが,たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても,これを国富の流出や喪失というべきではなく,豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」
などであろう.本判決での主な論点を整理すると
・人格権は憲法上の権利であり,これを超える価値はない
・福島原発事故は原子力技術の危険性の本質を明確にした
・原発稼働は経済活動の自由に属し,憲法上は人格権より劣位にある.人格権が奪われる具体的危険性が万が一にでもあれば,差し止めは認められる.
・原発の安全技術と設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立つ脆弱なもの
・多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるのは,法的には許されない
などであるが,それ以外にも大飯原発から250キロメートル圏内に居住する住民にその人格権が侵害される具体的危険があると判決で認めたことは,今後の原発再稼働に対して反対していく上で大きなことであろう.

(3)の議題について
 梅田原発労災事件についてのレビューを行い,記録なれた雰囲気線量率や労働時間などから外部被ばく量についての推定値を試算してみた.その結果,フイルムバッジによる外部被ばく量8.6ミリシーベルトというのは桁違いに小さな数値であることが判明した.

西日本新聞「原発過酷事故備え万全か」

本研究会メンバー数名を3月に取材した内容を基にして,西日本新聞は4月27日朝刊1面〜2面で,「原発過酷事故備え万全か」という記事を報道しました.


原発過酷事故 備え万全か 懸念残る九電シナリオ… 溶融物 冷却できるか [福岡県]
2014年04月27日(最終更新 2014年04月27日 01時31分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/84829

原発の過酷事故対策が不十分ではないか-。専門家から、そんな疑問の声が上がっている。事故で冷却機能が失われ、原子炉内の核燃料が溶融し、炉を覆う格納容器を破壊して大量の放射性物質を放出させる「過酷事故」。安倍政権は原子力規制委員会の新規制基準を「世界一」と強調するが、世界ではそれを上回る安全性を整えた新設炉が建設されている。新基準では、格納容器内の圧力が高まった際、爆発を避けるため、放射性物質を含む気体を外部に排出させるベント(排出口)と呼ばれる最終手段も、九州電力などの加圧水型軽水炉(PWR)では設置の先送りが認められた。

「コアキャッチャーの設置は求められていなかった。(略)。格納容器の圧が高まっていた。溶け出した核燃料が圧力容器(原子炉)を破壊し、格納容器のコンクリートと反応し、大量の水素と一酸化炭素が発生している証左であった。ベントを行うしかなかった…」

現役国家公務員が「若杉冽(れつ)」のペンネームで原発政策の問題点を告発した小説「原発ホワイトアウト」終盤の一節。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準と電力会社の対応がなお不十分で、過酷事故に見舞われるという設定だ。

小説に出たコアキャッチャーとは、原子炉から溶け出した3千度弱の炉心溶融物を受け止め、近接する貯留部に誘導して冷やすなどする設備だ。フランスのアレバ社は、フィンランドや中国、フランスで建設中の次世代原子炉(欧州加圧水型炉)に設ける。ホワイトアウトが指摘した、溶融物とコンクリートとの反応で、容器を爆発させるような事態を回避するためだ。

だが規制委の新規制基準にコアキャッチャーの設置義務はない。では、九電などPWR保有各社の対策はどのようなものか-。

規制委の審査で九電は、配管の破断で原子炉に冷却水が送れず、電源も失われた過酷事故対策を説明してきた。何とか移動式発電機をつないで格納容器への注入を再開するなどし、原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する溶融物を徐々に冷やすシナリオだ。

この対策に、疑問の声が出ている。

「溶融物がキャビティーに徐々に落ちると、水中で小さい粒になる。粒は膜に覆われ熱を保ち続け、膜が何かのきっかけで連鎖的に破け始めると、最も破壊力がある水蒸気爆発につながる可能性がある」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=はこう指摘する。

一方、水をためなければ「ホワイトアウト」の展開通り、コンクリート反応で水素や一酸化炭素が発生するリスクが高まるという。

燃料溶融で発生する水素で建屋が爆発したとされる福島原発3号機。ただ、国会事故調の報告書では、爆発直前にオレンジ色の閃光(せんこう)が確認されたことに触れ「一酸化炭素の不完全燃焼と推論すると理解しやすい」と、複合要因の可能性を指摘している。

キャビティーに水をためれば水蒸気爆発、水をためないとコンクリートと反応し一酸化炭素などによる爆発の懸念が残る。

九州工業大の岡本良治名誉教授(原子核物理学)は「格納容器の爆発を防ぐには最終的にはベントで放射性物質を外に逃がして減圧するしかない」と説明。ただ、格納容器が大きいPWRは、気体の密度が高まりづらく爆発の危険性が比較的低いとして、ベント設置は5年間猶予された。「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」。岡本名誉教授は指摘する。

東電は、柏崎刈羽原発を抱える新潟県からの「コアキャッチャーを設置しないのか」との質問に、「格納容器下部に耐熱材を敷設するなど、浸食を軽減させるさらなる安全性向上策を検討中」と、新基準を上回る独自の追加対策を示唆している。

=2014/04/27付 西日本新聞朝刊=
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