6月例会 新型コロナウイルスワクチンの評価

6月例会


日 時:2022年6月26日(土)10:00〜12:00
講 演:「日本における新型コロナウイルスワクチンの評価と問題提起
    ——公的機関発表資料から——」   
発表資料
講演者:二宮 清 氏(公益社団法人福岡医療団 千鳥橋病院 医師)

<報 告>

 今回は,新型コロナウイルスワクチンの評価と問題点について二宮清氏(公益社団法人福岡医療団 千鳥橋病院 医師)に講演をして頂いた.二宮氏は始めに,2021年2月から医療従事者への新型コロナウイルスワクチンの先行接種が開始された後,構成員5700人のある医療団における,ファイザー社ワクチン接種後の死亡例を3例紹介された.1つは,70代の医師がワクチン2回目接種の当日夜に嘔吐を繰り返し,救急車で搬送中に心肺停止.もう一つの例は,50代看護師がワクチン2回目接種10日後に突然脳血栓症による脳梗塞を発症し,血栓回収術を受けて一旦小康状態になるも,脳出血で接種30日以内に死亡.最後の例は,50代事務職員がワクチン2回目接種後,勤務中の病院内で突然脳出血により数日後に死亡というものであった.
 これらのワクチン接種後の死亡は,直接的な因果関係を証明できる訳ではないが,ワクチン接種の副作用の1つと推察するのが自然であるという.二宮氏は,ワクチン接種は受けずに,換気確保や目・鼻・口の食塩水による粘膜洗浄などを追加して個人的感染防御レベルを上げた感染対応をしているという.
 厚労省の新型コロナワクチン感染症対策アドバイザリーボードは,2021年9月1日,年齢区分別のワクチン効果のデータを発表しているが,それ以降は開示していないという.それによると,65歳以上のコロナ陽性者のうち,死亡した人の割合(致死率)は,未接種者,1回接種者,2回接種者で2.83%,2.35%,1.22%とワクチン接種の割合が若干減少しておりワクチンの効果がみられるが,全年齢でみると,未接種者,1回接種者,2回接種者の致死率は0.12%,0.41%,0.58%となっており,ワクチン接種を重ねるほど致死率が増加している.これは一体どういうことなのか? いずれにしろ年齢別にワクチンの有効性を考える必要があろう.
 ファイザー社のワクチン有効率は95%といわれているが,それは以下のような内容であるという(注1).ワクチンおよびプラセボ(生理食塩水)を,それぞれ,無作為に選んだ21,720人および21,728人に投与し,接種後7日以上経過してから発症したコロナ感染症例はワクチン投与群では8例,プラセボ投与群では162例であったので,ワクチン接種により162-8 = 154の感染症例の減少が得られた.すなわち,154/162 = 0.95(95%)のワクチン有効性があったと算定される.しかしこの有効率の算定には,ワクチン投与群とプラセボ投与群の母集団が約2万人であったという情報がどこにもない.21,720人のワクチン投与群のなかで154の感染症例の減少があったので,ワクチンの有効率は154/21720 = 0.007(0.7%)という見方もできる.これだと,感染者を一人減らすのに141人のワクチン接種が必要となる.そう考えれば,ワクチンの有効性はそれほど大きいものではないのかもしれない.
 ワクチン接種を受けるか受けないかは,ワクチン接種後の死亡を含む様々な副作用など負の効果とワクチン接種による重症化予防効果・致死率の低下など正の効果の両方を比較して,国民一人ひとりが判断すべき問題であろう.そのために二宮氏は,厚労省の新型コロナ感染症対策アドバイザリーボードは,昨年9月の年齢区分別のワクチン効果のデータを早急にアップデートすべきであるとされた.
(注1)F. P. Polack et al., N. Engl. J. Med. 383, 2603 (2020).

 なお,『日本の科学者』10月号の「科学者つうしん」欄への執筆依頼(22字×31行の字数制限)があり,以上の文章を要約して以下のようなものを送っておいた.

【今回は「核問題」ではなく新型コロナウイルス感染症の問題を二宮清氏(医師)に講演頂いた.
 はじめに,医療従事者への新型コロナウイルスワクチンの先行接種が開始された後,ある医療団における,ファイザー社ワクチン接種後の死亡例を3例紹介された.これらの死は,ワクチン接種後の副反応の1つとするのが自然であろう.二宮氏はワクチン接種を受けずに,換気確保や目・鼻・口の食塩水による粘膜洗浄など感染防御レベルを上げた,個人的な感染対策をしているという.
 厚労省の新型コロナワクチン感染症対策アドバイザリーボード(昨年9月1日)での年齢区分別のワクチン効果のデータでは,65歳以上のコロナ陽性者の致死率は,ワクチン接種回数の増加で若干減少(未接種2.8%,2回接種1.2%)しているが,全年齢では逆に致死率が増加している.
 ファイザー社のワクチン有効率95%は以下のように算出された.ワクチンとプラセボ(生理食塩水)を,それぞれ,無作為に選んだ約2万人に投与したあと7日以上経過して発症したコロナ感染症例は,プラセボ投与群では162例に対してワクチン投与群で8例であった.ワクチン接種により162-8=154の感染症例の減少が得られたので,ワクチン有効率は154/162=0.95(95%).しかし,この有効率の算定には母集団の情報がどこにもない.2万人の母集団の中で,ほんの154だけの感染発症の減少が起きたのであるから,ワクチンの有効率はそれほど大きくはないとも言える.
 ワクチン接種を受けるか受けないかは,その正負の効果を比較して,国民一人ひとりが判断すべき問題であろう.そのためには,最新の年齢区分別のワクチン効果のデータが必要と述べられた.     (三好永作・福岡支部)】

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