4月例会 原子炉級プルトニウムと核兵器

4月例会


日時:2018年4月27日(土)10:00〜12:30
話題:「原子炉級プルトニウムと核兵器」
   (話題提供:岡本良治氏)  報告資料
内容:
内 容:原子炉級Pu を信頼性の高い核兵器に使えるかどうかについて最近の注目すべき文献(*)の要点と日本保有Pu についての論評を紹介し,コメントする.
(*)Greg Jones,
Reactor-Grade Plutonium and Nuclear Weapons: Exploding the Myths, February 20, 2018.
Nonproliferation Policy Education Center.
http://www.npolicy.org/thebook.php?bid=37

<報告>

 本例会での岡本氏の報告は,Gregory S. Jones氏の” Reactor-Grade Plutonium and Nuclear Weapons: Exploding the Myths”(Nonproliferation Policy Education Center, 2018)(*1) の内容に基づいたものであるが,同氏の1月例会での報告「『原発=潜在的核抑止力』論の虚実」のニュアンスを一部変更せざるをえないというものであった.1月例会での論点は,原発と核兵器を同一視することは過度の単純化で,「原発=潜在的核抑止力」論は,技術的,政治的,社会的側面のいずれから考えても根拠薄弱であり,原発技術から出発して核兵器を作ることは困難であるということであったが,今回の論点の中心は,少なくとも技術的な点で一定の前進があれば,原子炉級プルトニウム(プルトニウム240を19%以上含む)を使って核兵器を作ることはそれほど難しいことではないということである.
 プルトニウム239を使用した核分裂爆弾の代表的なものは,長崎に落とされた爆縮型核兵器である.自発核分裂を起こしやすいプルトニウム240が混じってくると意図しない事前核分裂が生きるため,プルトニウム240の割合が少ない兵器級プルトニウム(プルトニウム240の割合は7%以下)が核分裂爆弾には使われることが常識化していた.しかし,Jonesによれば核兵器の内部に空隙を設けることにより,爆縮型核兵器の効率が著しく改善することが1950年代からよく知られているという.このような改良された爆縮型では原子炉級プルトニウムを使って信頼できる核兵器の製造が可能という.
 もう一つの可能性は,ブースト型核分裂兵器の使用である.この核兵器は,少量の核融合物質を使って,核分裂に寄与する中性子を大量に発生させる技術であり,意図しない事前核分裂などを防ぎ,かつ核爆発を増強することができる.この技術によっても原子炉級プルトニウムを使って信頼できる核兵器の製造が可能という.
(*1) http://www.npolicy.org/thebook.php?bid=37

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