10月例会 戦争と科学者&再エネ出力カット問題

10月例会


日時:2018年10月20日(土)10:00〜12:30
話題:(1)「戦争と科学者
       ー戦争に関わった科学者,拒否した科学者とその冒険談など」
     (話題提供:豊島耕一氏) 報告資料
   (2)「九州電力による再エネ出力制御問題」
     (話題提供:岡本良治氏) 報告資料

<報告>

 10月例会では,豊島氏はまず,先輩科学者がどのように戦争に関わりあるいは拒否して来たかについて,具体例を示しながら論じられた.科学者の倫理で最優先の課題は,「人の殺傷に加担しないこと,つまり兵器の開発研究(軍事研究)に関わらない」ことであると同氏は強調された.オッペンハイマーやフェルミ,ニールス・ボーア,ハンス・ベーテなどは,原爆開発(マンハッタン計画)に積極的であったが,オットー・ハーンとともに核分裂を発見した女性物理学者のリーゼ・マイトナーは,1943年に核兵器の開発に加わるよう求められたとき,新しい科学技術が破壊的な目的に転用されるのを望まず,きっぱり断ったという.また,マンハッタン計画に参加していたロートブラッドは,ナチス・ドイツに原爆の開発能力がないことが明らかになると,原爆開発はもはや不要であるとして完成前に脱退した(この時,参加していた科学者の中で同計画から離れたのはロートブラッドだけであった).ユダヤ人の子孫であるニールス・ボーアとリーゼ・マイトナーは,ナチス・ドイツから脱出する際に,それぞれ,ドラマチックな経過があったという.氏は,最後に組織内の個人の新しい倫理規範として「不服従」という問題があると指摘された.大切な指摘であるように思う.
 次に,岡本氏は九州電力による再生可能エネルギーの出力抑制問題についてその問題点を報告された.九州電力は10月13, 14日にわたって太陽光発電の出力制御を行った.再生可能エネルギーのうち太陽光発電や風力発電はその出力は自然条件により変動する.もちろん,電力の需給は常に「同時同量」でなければ,電気機器の損傷や大規模停電が起きることになる.したがって,電力の消費量(需要)の変動に対応して発電量(供給)を調整する必要がある.原発や大型石炭火力などの発電は,起動からフル発電までに数日から1週間程度の時間がかかる.一方,ガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)は1時間程度,さらに水力発電では3〜5分程度でフル発電に達することができる.GTCCや水力発電が電力の需給のバランスをとるためには,高い能力を持つことが分かるであろう.九州電力は,出力の制御を行う順を決めている(注1).これによると,火力発電や揚水発電が1番目であり,太陽光発電は5番目,原発や水力発電,地熱発電は7番目(最後)となっている.九州電力は,原発や水力発電,地熱発電が7番目になっているのは「ベースロード電源」という考えによるものであろうが,この考え方は世界的には少数派になりつつある.さらにこの中に水力発電を入れてその出力制御を最後まで行わないというのも問題である.必要な場合には原発の稼働抑制も行うべきであろう.
(注1)https://www.kyuden.co.jp/var/rev0/0055/4202/ob3v76j5.pdf

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