3月例会 原発処理汚染水の海洋放出&原発事故後10年

3月例会


日 時:2021年3月20日(土)10:00〜12:00
話 題:①「福島原発処理汚染水の海洋放出の危険性」 
    話題提供:森永 徹 氏 
発表資料
    ②「福島第一原発事故後10年の節目についての,種々の団体・個人による
     論考・声明についての情報紹介」
    話題提供:岡本良治 氏 
発表資料

<報告>

3月例会については,『日本の科学者』6月号の「科学者つうしん」欄への投稿依頼があったので以下のような原稿を送った.
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3月20日,福岡核問題研究会では,はじめに森永徹氏から「福島原発処理水海洋放出の危険性」と題して話題提供を頂いた.お話の中心は処理水の中に含まれるトリチウムの健康影響と海洋放出の問題点を明確にすることであった.

トリチウムの健康被害は1970年代から研究され,トリチウムが水として体内に取り込まれればすぐに放出されるが,有機物経由でDNAに取り込まれた場合には放出速度は遅く生体内に溜まり続け,生体濃縮されるという研究が多数ある.

カナダにおいて原発からの距離と植物・食品中のトリチウム濃度が反比例しているという研究もある.さらに,原発から5キロ以内の白血病の有症率がそれ以遠での有症率より増加しているという統計的に有意な結果を示す(ドイツ,英国,スイス,フランスの個別例を総合した)研究があるという.フランスや英国の研究では再処理工場に近づくにしたがい白血病発症の危険度が上昇するという.青森県六ケ所再処理工場では2007年のトリチウム大量放出後に白血病死亡数が増加傾向にある.また,玄海原発を抱える玄海町では,原発稼動後に白血病死亡者が統計学的に有意に増加しているという.

トリチウムは60年間保管すれば,濃度は3.4%にまで減少する.タンクが境界のすぐ外側に設置されれば,スペースの不足を緩和することができるという指摘もあり,問題点の多い海洋放出でない方策をとるべき,と結論された.
残りの時間に,岡本良治氏から原発事故10年の節目における原発に関する種々の論考についての情報紹介があった.        (三好永作・福岡支部)
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依頼原稿の字数制限のため,岡本報告の内容については何も触れることができなかったので,ここでは簡単に補足する.同氏は13の論考・声明を紹介された.NHKの水野解説委員による時論公論「原発事故10年 原子力政策抜本見直しを」(注1)やNature社説の” Nuclear technology’s role in the world’s energy supply is shrinking”(注2)は原発の現状に対する冷静な判断をしている.また,Bulletin of the Atomic Scientists誌,3月号に掲載されたM. Budjeryn, J. Tateno, W. Tobeyによる3つの論文(注3)も注目に値する.

(注1)
https://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/100/444643.html
(注2)
https://www.nature.com/articles/d41586-021-00615-w
(注3)
https://thebulletin.org/2021-03/ から著者名をサーチすれば論文にたどりつく.



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