九電からの回答に対するQ&A

九州電力からの回答にたいするQ&A



公開質問書に対する九州電力からの回答をめぐって若干の質疑応答がありました.録音データをおこすのに時間がかかりましたが,ここにその概略を示します.
(EM,2018.11.16)

(Q1) 原発の審査基準について

原子力規制委員会設置法と電気事業法の目的は「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」と「公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」である.そのために,福島原発事故の様な原子力災害を確実に防止することが政府と九州電力に求められている.
福島原発事故の教訓の最も大切な点は,滅多に起きないが影響の大きい,いわゆる「低頻度・高影響」の事象への対策を無視したことである.原子力規制委員会(以下,規制委)は,国際原子力機関(IAEA)の深層防護における第4層の過酷事故対策の実践を「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」とする「新規制基準の考え方」[1]で審査を行い,水蒸気爆発や航空機激突等の対策を要求していない.この「可能性が小さければ対策しない」という審査基準は,福島で「大地震・大津波対策」を怠り未曾有の公害・人災を招いた考え方と同一である.そもそも,過酷事故のシーケンスの発生確率を精確に見積もることは,容易なことではない.「可能性が小さければ対策しない」との考え方だけでなく,「可能性の小ささ」を単純に信用してしまう態度も大いに問題である.
このように,過酷事故対策は「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」であるという規制委の極めて楽観的な審査基準について九州電力はどう考えているか?

(A1)
当社、福島第一事故を受けまして、核原料物質、核燃料物質および原子炉等規制に関する法律が改正されまして、事故の教訓や最新の技術的知見、海外の規制動向等を踏まえた、原子力発電施設にかかる、新たな規制基準が策定され、その中で新たにシビアアクシデント対策と、-- これがIAEAで言う第四層の過酷事故対策と言うものと考えております。-- それが新設され、その項目として、意図的な航空機衝突への対応、格納容器破損対策、炉心損傷防止、こういったことが重大事故等対策として明記されていると。それと、あと当社の原子力発電所としては、原子力規制委員会より深層防護を基本とした新規制規準に適合しているとの判断を受けていると言うことと考えております。

【Q&A】原発の審査基準について

Q: 第4層は炉心損傷の「防止」だけではなく影響拡大の「緩和」「軽減」である.それを「防止」と言われたが,認識が甘いのでは.
A: ご意見として伺っておきます.

(Q2) 過酷事故時の住民避難等の対策について

 規制委の任務として,設置法では「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全」(第3条)が掲げられている.しかし,過酷事故時の住民避難等の対策(原子力防災)は規制委の審査の対象になっていないため,再稼働の審査は規制委の目的・任務からして重大な欠陥があるといわざるを得ない.原子力施設周辺における放射線影響緩和は,IAEAの深層防護の第5層としても求められており,国際的な観点から見ても原発の稼働にとって不可欠の条件であるが,原発周辺自治体に「丸投げ」され,その有効性についていかなる公的な第三者機関による検証もなされていない.以上の点は,規制委の無責任性を物語るのもではあるが,そのような中で,ひとたび原発の過酷事故が発生すれば,その被害に対する全責任を取るべきは九州電力である.この点について九州電力はどのように考えているか?

(A2)
IAEAによる第五の壁、放射性物質の大規模な放出による放射線影響の緩和については、その前段階である第四の壁、事故の進展防止およびシビアアクシデントの影響緩和、過酷なプラント状態の制御の対策として、放射性物質の放出防止対策として、格納容器破損防止対策として、格納容器の冷却、減圧対策、溶融炉心冷却対策、水素爆発防止対策を講じております。また、万が一放射性物質が放出されるような事象が発生した場合に備え、格納容器の漏洩箇所へ放水することにより、放射性物質の周辺環境への放出を極力抑える対策、あるいは放出された放射性物質を含む水が海水に流れても、外洋への拡散を抑制するシルトフェンス等を設置することとしております。第五の壁については、内閣府にて法体系上整理されておりまして、ご指摘の通り、自治体主導となっております。自治体が作成する原子力防災にかかる地域防災計画、避難計画等について、原子力発電所が所在する地域ごとに、課題解決のためのワーキングチームとして設置された、地域原子力防災協議会がその具体化、充実化を支援しております。協議会では要支援者、避難先への移動手段の確保、国の実働組織の支援、原子力事業者に協力を要請する内容等の具体策について、協議、連絡、調整を行なっております。当社は協議会に積極的に参加するとともに、協議会からの支援要請に誠意を持って対応して行くこととしております。また、協議会においては、避難計画を含む、原子力防災対策の実効性を向上させて行くため、防災訓練の反省点等を関係機関で共有して、改善を図ることとしており、当社においても、住民避難支援にかかる教育を継続的に実施するとともに、原子力防災訓練の結果等も踏まえ、取り組み内容の継続的改善に努めております。

【Q&A】過酷事故時の住民避難等の対策について

Q: 地方公共団体で取り組むのは当然だが,原因企業として,避難が確実に行われるという確信を持てるかどうか,そこまでの責任感を持っているのか? 私たちからすれば,交通渋滞などを考えても,いまの避難計画は「絵に描いた餅」としか思えないが.
A: 安全性を高めることに尽きる.実際の避難では,広域にわたり,自治体が主導しなければならない点がどうしてもある.そういうことから,そちらの言葉を借りれば「自治体に丸投げ」ということになるのかと.
Q: それでいいと思っているのか.
A: いいと思っているかどうか,ここで発言はできない.
A: 地域防災協議会に加わってできる限りのことを積極的にやるというのが我々のスタンス.
Q: 原因企業としてそういう責任感でいいのか?
A: 国の防災会議でも了承されており,我々としても実効性があるものと認識している.我々も訓練に参加して,反省点などを改善して行く.要請を受け,しっかりと支援して行くというのが我々のスタンス.
Q: 規制委員会も「安全を担保することはできない」と言っている.だから規制基準.安全を「担保」出来ているのか?
A: 安全に絶対はないと考えている.いろいろな意見を伺うことでレベルをあげて行こうと考えている.
Q: 2点.まず,「十分な避難の対策が取られているから,動かしていい」という考えなのか?また,もしそうなら,その根拠は何か.
次に,十分に安全だからと思うから運転する,という考えと思うが,その根拠は?例えば,規制委員会がお墨付きを出したから,という回答もありうるが.
A: 避難について,これで完全と考えているかという点だが,私たちとしては,これで十分ということは,ここでは申し上げにくい.十分かそうでないかについて,我々がお答えするべきものではないと考える.
Q: 気にしない,ということ?
A: 自治体主導だが,積極的に関わっていく,ということ.
A: 国の防災会議で実効性ありとされ,我々もそう認識している.
Q: 根拠は防災会議か?つまり,国は「万全」と言ってくることはあり得る.でも事業者としては,最終的な責任を負わなければならない.
A: 規制があるので,我々が勝手に動かせるわけではない.
Q: いや,動かせるという状況になったときの話.かつ,避難についても,国がOKと言っている状況.しかし九電としては,独自の情報・判断で,動かしたくない,ということもあると思う.そういうことはできないのか?
Q: 自主的な判断をするのか,ということ.
A: (安全性は)ある一定レベルに達していることは(我々としても)認識している.避難についても,スキームに則って行動している.
Q: それは,法律で言われた範囲ですよね?
A: 基本的にはそうです.ただ,最低限ということではなく,状況が変わるので,それに合わせて我々も進化(深化?)して行きたいと考える.
Q: だから,九電独自に,(国より)より高い基準で行動することができる立場ではないか,ということを言っている.
A: なるほど.
Q: もしそういうことを現時点でしているのであれば,その独自の根拠は何か.それとも国の決定などだけを根拠にしているのか,そこを聞いている.
Q: 独自の,総合的判断があるのか,ないのか,2つに一つで答えて.自分の頭で考えた判断.
Q: なせ聞くかというと,事故が起きた時みなさんが動くかどうかがかかっているから.国や県に聞いて右往左往するのか,それとも独自の判断も持って,最後まで逃げないで行動するか.これが今の答えでは分からない.
Q: 福島事故の経験でも,現場に責任が被せられた.フランスの例では,300名の突撃部隊もある.そのような覚悟は日本にも,九電にもなさそう.
Q: 安全問題,2つ目の質問は?
A: 基本的には新規制基準.
Q: それ以上のものはない?
A: それ以上のものはないとはいってない.安全に終わりはないと言っている.
Q: 安全性が十分でないことを意味するのではないか.
A: そうではない.絶対はない.上乗せでやっていくということ.

(Q3) 過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について

AEAの深層防護の第4層にあたる安全規則では,必ず想定すべき格納容器破損モードとして水素燃焼や溶融炉心・コンクリート相互作用とともに原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用(Molten Fuel Coolant Interaction, FCI)が含まれている.九州電力は,実機において想定される溶融物(UO2,ZrO2)を用いた「大規模実験」として,COTELS,FARO,KROTOS及びTROIを例に挙げながら,原子炉容器外のFCIのうち,水蒸気爆発は,実機において発生する可能性は極めて低いと申請書に結論して,これを規制委の「審査書」では,無批判に認めている.
しかしFCIは,いわゆる「複雑系」に関わる現象であり,条件のほんの微小な変化により結果が大きく変わることが分かっている[2, 3].KROTOSなど幾つかの「大規模実験」の結果で,FCIの全容が分かるわけではない.KROTOSなどの「大規模実験」とは比較にならないほど大規模な実機でメルトダウンを伴う過酷事故が起きたときには,何が起きるのかは分からないのが現状である.
軽水炉の安全性についての研究において世界的な権威であるB.R. Sehgal教授の編集による最新の報告書[3]や経済開発協力機構(OECD)のSERENAプロジェクト(FCIに関する研究)に参加する研究者達[4]の了解事項は,FCIを伴うメルトダウンの実際の場面(「実機条件」)では,「水蒸気爆発は必ず起きると考えよう」である.
何故に,九州電力はこのような最新の知見を無視して,「実機において発生する可能性は極めて低い」とする結論を強引に下すのか? 規制委の審査書では,溶融した炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策を容認している.しかし,この事故対策は,明らかに「液-液直接接触が生じるような外乱を与え水蒸気爆発を誘発する」ことにほかならず,水蒸気爆発が起こることを覚悟しなければならない.過酷事故をさらに酷くする水蒸気爆発を誘発する恐れがある事故対策をあえて実施する理由は何か?

(A3)
国内の実験では、水プール底から圧縮ガスを供給し、強制的に外乱を与えた実験の結果、一部のケースにおいて水蒸気爆発の発生が観測されており、外乱となりうる要素として圧縮ガスの供給が考えられる。実機の原子力発電所においては、原子炉下部キャビティにおいては圧縮ガスの供給源となるものはなく、また、炉心損傷時には、格納容器下部キャビティによる冷却水の流れ込みで、蒸気膜を壊すような外乱となりうる要因が考えにくいことから、水蒸気爆発が発生する可能性は低い、極めて低いと考えております。また、細粒化した燃料どうしが水中で接触したとしても、溶けた燃料を覆う蒸気膜は安定した状態にあることから、水蒸気爆発に至ることはないと考えております。
水蒸気爆発に関する大規模実験として、COTELS、FARO、およびKROTOSを参照に大規模実験と実機条件を比較した上で、実機においては水蒸気爆発の発生の可能性が極めて低いということを確認しております。加えて、JASMINEコードを用いた水蒸気爆発の評価に置ける条件と、実機の条件との相違を踏まえると、実機においては、水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いことを確認しております。これから、原子炉圧力容器外の溶融燃料・一次冷却材相互作用で想定される物理現象のうち、水蒸気爆発は除外可能であるということを確認しており、規制委員会のパブコメでも回答しております。なお、当社は今後も法令、規格、基準への適合はもとより、新たな知見等があれば積極的に取り入れ、原子力発電所の自主的かつ継続的な安全性向上に取り組んで行きたいというふうに考えております。

【Q&A】過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について

Q: 「実機で外乱は考えれられない」とされたが,これは認識不足.1,2年前に,Sehgal 先生の文献の一部コピーを渡している.この分野の世界の認識とはかけ離れている.水蒸気爆発に関する規制委員会の審査はお粗末.規制委員会を信用しないで,独自に判断してもらいたい.
Q: まず確認.圧縮ガスの実験で,実際の時には起きない,という回答だったがそれでいいか?
Q: 外側にクラストというのが出来る.溶融炉芯の中でガスも発生する.それを皆さんご存知なのに,そこで止まるのが不思議.クラストがひび割れれば中のガスが出てくる.それはまさに外乱では.なぜそれを無視するのか?
A: あくまで,我々は実験結果をもとに評価している.実験の中身は,私たちはお答えできませんが.
Q: この現象を全く考えないのは,思考放棄.
A: そこはご意見として承る.
Q: 実際,水素の発生の可能性は認めている.水を張っても重たい溶融デブリは沈んでコンクリートと接触し,反応する.ここでもクラストは破れる可能性.そんな実験はしてない.なぜなら,核分裂物質を使った実験は一つもないから.
Q: 水蒸気爆発の可能性は「極めて低い」と言われたが,どのくらい低いのか? 数字を見せてください.その計算根拠を見せてください.あるのかないのか,誰が決めたのか,その人は命をかけられるのか.それに社運をかけられるのか.
Q: 頻度が極めて低いから確率は計算できない(ブラック・スワン).
Q: 元原子炉設計者の後藤さんの話では,格納容器に水を張って冷却についてする対策では,まず,水を入れることができない,入れることができたとしても,今度は水蒸気爆発の危険がある,と言っている.それが起きれば,福島事故の比ではない.
A: いまいただいた情報・意見などは社内で共有するようにします.
Q: スケールモデルでの実験はある.実機とは随分大きさが違う.

(Q4) 再臨界の可能性について

過酷事故時においては,炉心から熔融し,炉心外に貫通(メルトスルー)した燃料デブリが格納容器のコンクリート床に落下する.このため溶融炉心コンクリート相互作用(MCCI)生成物の臨界特性が問題となる.ケイ素を主成分とするコンクリートは中性子吸収が少なく,水には劣るが中性子減速効果も持つ.減速された中性子(熱中性子)はウラン235に吸収されやすく核分裂反応を促進する.このように,MCCI生成物がごく少量の水分と共存することで再臨界の可能性を高めることが報告されている[5].
メルトスルーした燃料デブリを水で張った格納容器で受け取るという今回の事故対策では,そのことで水蒸気爆発が起きなかったとしても,この点についての検討が十分になされているとはいい難い.燃料デブリがコンクリート床に次々に落下し,核分裂物質を含む燃料デブリの量が増加し,ケイ素や水の中性子減速効果により核分裂反応が促進され,再臨界の可能性が高まることがありうると考えられる.さらにこの新たな再臨界によって新たな水蒸気爆発が発生することもあるかもしれない.このような危険性に対して,九州電力はどのような対策を考えているのかを教えて欲しい.

(A4)
コア・コンクリート 反応については、万が一大口径配管等の破断により原子炉の冷却水が喪失し、さらに全ての交流動力電源の喪失に伴い、非常用炉心冷却装置や格納容器スプレイ設備が動作しなような過酷事故が発生した場合でも、新たに設置した大容量空冷式発電機や、常設電動注入ポンプによる格納容器スプレイを用いて、原子炉の真下にある原子炉下部キャビティに水を張ることで、落下した溶融燃料を冷却することとしています。従って、炉心溶融、コンクリート相互作用による原子炉格納容器の健全性が失われることはないと考えています。
臨界性については、冠水している残存した溶融炉心については、冠水させている水はホウ酸水と海水の混合水であり、ホウ素濃度が十分確保出来ている状態では、臨界に至る可能性は低いと考えています。なお、海水にホウ素濃度換算で200ppm程度の中性子吸収効果が見込まれると考えております。露出している残存した溶融炉心については、減速材不足のため臨界に至る可能性は低いと。仮に、溶融燃料中に冷却材が侵入し、中性子の最適減速条件が形成されることを想定した場合には、臨界に至ることは考えられますが、炉心形状の崩壊などの要因も考慮すると、その可能性は低いものと考えられます。
以上のように、溶融炉心が臨界になる可能性は低いものの、溶融の形態が特定できないことから、溶融炉心が無制限な臨界状態に至る可能性もできる限り少なくするため、注水に当たっては可能な限りホウ酸水を用いることとしております。
なお炉心の臨界状態はモニタリングポスト、CV内サンプリングによる核分裂性希ガス濃度の測定等により行うこととしております。

【Q&A】再臨界の可能性について

Q: 簡単に再臨界はないと言われるが,それだけでは納得できない.具体的,定量的にそのことを分析したペーパーとか,テクニカル・ノートとか示してもらわないと.ありますか?
A: 今持ち合わせておりません.
Q: ないんですね.みなさんが検討したのは格納容器内のことですね.
A: いや,露出燃料についてもしている.
Q: ではその根拠は.
A: 手元にはございません.
Q: 先ほど,溶融燃料については,特定できないと.それを認めれば再臨界が「起きない」というのはなかなか難しいというか.形状,混合状態によってはありうる.
A: 我々としては,極力ホウ酸を注入することによって避けると.
Q: 注入できればいいが,大抵の事故は,何かがうまくいかない時.一つの要因で起きることはまずない.
Q: 確認したいが,みなさん「低い」とはいったが「起きない」とはいってませんね.
A: 「起きない」とはいってません.
Q: そうですね.問題は,「起きても大丈夫か」ということです.その検討はしてないですよね.
A: 原子炉容器が破損した後については,原子炉容器の破損部に放水するとか...
Q: いやいや,再臨界ですよ.これが起きた時にどうするかを考えているか,ですよ.「低い」と言っても起きるかもしれないので,そこでどうするかを.
Q: 可能性が低いものにはお金はかけられないという・・・
Q: それだったら東電の二の舞ではないか,低いと思ったから切った.皆さんのやっていることとどう違うか.福島がああだったから我々はこうした,国はこういうが九電はここまでやりました,というのがあるか?
A: いまそこらへんの回答については持ってない.
Q: あるなら世界に誇れる.でも福島ではやっている.燃料取り出しで再臨界が起きないか非常に心配している.そこで分かったのは,ホウ素を入れてもダメじゃないかと言うこと.そ言うことは,少なくとも九電の技術者は知ってほしいし知るべきだ.福島の後に,コンクリートと接触すると再臨界しやすいことも分かっている.
A: もしそう言う事実が分かれば検討して対応する必要がある.
Q: これが分かったのは最近のことで,規制基準に十分反映されていない.
A: 反映されないものはやってないと言うわけではない.
Q: でも何かやっているのか?規制基準以上でみなさんがやっているのは,キャビティーにモルタルか耐火煉瓦で遮蔽物を作るぐらいではないのか.他に何かやっているか.
A: 個別には色々やっていると聞いている.
Q: 今回,川内も含め安全対策に1兆円ぐらい使ったと報道されている.
A: 安全対策費9千億,??費百億円と言うのを聞いている.

(Q5) 通常運転時の健康被害について

玄海原発の再稼働によって,過酷事故がありうることは明確であるといわざるをえない.しかし,もしその危険性を無視できるほど小さなものと仮定できるとしても,玄海3,4号機が稼働を再開すれば,通常運転においても原発周辺では健康被害が生じる恐れが大きいことが明らかになっている.玄海原発周辺では,同原発の稼働によって住民の白血病死亡率が高くなったとの報告があり[6],通常運転時に原発から環境に放出されるトリチウムが原因として疑われている.実際,玄海原発は過去の稼働時の 2002年から 2012年に 826テラベクレルと,わが国の原発では最も多量のトリチウムを放出している.これは福島原発事故で発生した汚染水中のトリチウムの量とほぼ等しい.
トリチウムの危険性については,ベータ線のエネルギーが小さいためベクレル当たりの吸収線量は小さい.しかし,トリチウムは生化学的に重要な元素としての水素の同位元素として,生体に容易に取り込まれるため,特別な内部被ばくのリスクがあることを,欧州放射線リスク委員会(ECRR)は2010年勧告[7]で指摘している.このトリチウムの危険性は,まだ科学的に確定されたことではないが,トリチウムの周辺住民への健康影響の危険性が完全に払拭されない限り,玄海原発の再稼働はするべきではないと考えるが,九州電力はこの点をどうのように考えているのか? また,九州電力は玄海原発周辺市町村における白血病の死亡率のデータを調査しているのか?

(A5)
玄海原子力発電所から放出されるトリチウム濃度は国が定める基準値を十分満足している。また年間のトリチウム放出量をもとに発電所周辺の人が受ける放射線量を国が示す指針に従って算出した結果、1年間で0.001ミリシーベルト未満と評価され、自然放射線の1000分の1以下となっております。このため、玄海原子力発電所から放出されるトリチウムは周辺住民の健康に影響を与えるレベルにないと考えています。
これらの調査結果については、定期的に開催される自治体主催の会議において、学識経験者からの指導と助言をいただきながら、検討・評価を行っており、これまで問題がないことを確認しています。
原子力発電所から放出されるトリチウムは、原子炉の型式や原子炉基数などによりトリチウムの放出量が異なっております。このため、玄海原子力発電所と同型を導入している発電所で同数の原子炉を設置している高浜発電所、大飯発電所と放出量を比較したところ、同程度であり、玄海原子力発電所が突出して大きい訳ではないと考えています。

【Q&A】通常運転時の健康被害について

Q: 濃度が規制基準以下だと言うことだが,確かに放射能の規制は濃度規制で,化学毒物とは違っている.しかし濃度が低くても,被ばく者が多ければ「集団線量」は高くなり,障害が発生する.この集団線量という概念が原子力行政のどこにも反映されていないという問題を指摘しておきたい.
住民の線量が年0.001ミリシーベルトとのことだが,この見積もりの詳細がどこかに示されて入ればそれを教えてほしい.どういう手順,どういうモデルで見積もりがされたのか,その文献情報を.もちろん内部被ばくがメインのはずだが.後日でも.
それから,これは元素転換効果は無視していますね.聞かれたことありますか?
A: 自分はちょっと.すみません.
Q: トリチウムは(元素としては)水素なので,ベータ崩壊でヘリウムに変わる.生体内で例えば水素結合の水素であったとすれば,その結合が切れるなど,生体内分子が破壊される.このように放射線以外の悪さをするということがある.この元素転換効果についてECRRが指摘している.ほとんど知られていないが,これから問題になると思うので,注意して頂きたい.
Q: 人体内に一番入りやすい経路は,水分子の水素が置き換わった形.ベータ崩壊でトリチウムが抜けると,残るのはOH+という,危険で活性の高いものができる.これが生体内で悪い影響を与えるということもある.

(Q6) 破壊行為から原発等を守る対策について

玄海原発において,① 使用済み核燃料を水冷保管していることや② 格納容器を空気で充填していること,そして③ 見て分かる航空機対策をしていないことは,疑いようなく周知されている事実である.
海外では取り組みが進んでいる使用済み核燃料の乾式貯蔵は,安全性を格段に高める.玄海原発等の加圧水型原発の格納容器には,沸騰水型に比較して容量が大きいことを理由に窒素充填していない.しかし,加圧水型原発の格納容器に窒素充填することは,格納容器内での水素爆発を抑止するなど安全性を高めることに有効である.航空機の対策については,規制委は「確率」による計算と判断から審査対象から外した.わが国の航空機の対策は,欧米各国の対策・考え方から大きく遅れている.米国での9•11事件や飛行機の墜落を深刻にとらえた欧米各国は,現実的な検討をして具体的で公開された,大型航空機の衝突に耐える2重構造の格納容器などを備える原発を建設されている[8].こうした頑強な構造を持つ原発は従来の原発より安全性は高く,天災等による事故の被害拡大や破壊行為への抵抗性も高いと考えられる.
これらの乾式貯蔵や格納容器への窒素充填,2重構造の格納容器などは,破壊行為から守るためにもこれらの対策が有効である.(使用済み)燃料プールが無ければそれを破壊して冷却を阻害できないし,格納容器に窒素充填していれば内部に侵入するにも酸素ボンベがいるし,窒素を排除するにも時間がかかる.2重構造の格納容器は飛行機で破壊することは困難であろう.このように,原発の安全性を高めることが,破壊行為の抑止にも確実に有効な手段となる.このような高い安全性を持たない玄海原発は,破壊工作によって容易に破壊される危険性が高いと考えられるが,この点について九州電力はどのように考えているか?

(A6)
乾式貯蔵については,プール方式と併用することにより,保管方法が多様化するなど,発電所のさらなる安全向上をはかれることから,国内外の事例の事情収集や貯蔵方法等についての技術的な検討を行っております.格納容器への窒素充填については,水素爆発等について格納容器内の雰囲気が窒素雰囲気であれば,水素・酸素反応による爆発の可能性に比べ著しくその可能性が低くなることは理解できます.ただ,一方,現在のPWRプラントにおいて,燃料被覆管全てが溶融して,それにともない発生する水素量と格納容器内の容量から導き出される酸素量を考慮した結果,水素爆発の濃度に達しないことは,評価されておりまして,原子力規制委員会によっても了承されています.また,原子炉格納容器内での作業に関しても窒素雰囲気である場合,ボンベ等を用いての作業となり作業性が悪くなるという面もございます.また,原子力発電所に航空機が衝突した場合,被害の有無・程度について一概に言及することはできません.ただし,当社の原子力発電所は耐震性や遮蔽の観点から十分な強度と厚さを持った堅固な構造物となっており,外部からの衝撃に対しても相当の耐力を持っていると考えています.また,異常を検知した場合,原子炉は直ちに自動停止するように設計されています.また,破壊工作については当社は,国民保護法(武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律)に基づいて指定公共機関として国民の保護に関する業務計画を定めており,その計画の中で原子力関連の運転停止について次のように想定しております.武力攻撃等について,発電所所在地域が警報の発令地域となった場合または地域を定めずに警報が発令された場合には,当社は直ちに原子炉の運転停止に向けて必要な措置を実施しする.原子力規制委員会からの運転停止命令が発表された時には,運転を停止します.突発的な武力攻撃が発生した場合等,特に緊急を要する時には警報の発令や運転停止命令の発動を待たずに自らの判断により運転を停止することになります.あと,航空機衝突における攻撃については,米国の非営利の連合研究体である電力研究所が,2002年に米国内の原子力施設の代表的なタイプをモデルに,米国同時多発テロ事件のように大型旅客機衝突による影響をコンピュータ解析によりまとめています.これ解析の結果,原子炉格納容器等の施設に多少の損傷を受けたとしても貫通することなく,放射性物質の外部へ放出する危険性は小さいと結論しています.

【Q&A】破壊行為から原発等を守る対策について

Q: 福島の後ドイツが飛行機がぶつかる時どうなるか検討したのをご存知か?その結果色々な問題が分かった.確かに国によって原発の型は違う.こちらの場合はPCCVですね.それに飛行機がぶつかった時に,どの程度のことが起こるか調べているか.先ほど「相当な耐力がある」という表現をされたと思う.コンクリートの厚さとか,何を根拠に言っているのか分からないが,それで十分かどうかの検討をしたのか.何らかの計算をしてみたのか.そういうソフトはあるが.
A: 手元にはない.今お答えしたのは,2002年の英国の電力研究所でやった評価結果では,原子炉容器への貫通するような損傷はなかった.
Q: アメリカはPCCVが一般的でないのは間違いないはず.PCCV 自身が珍しいのだから.PCCVは利点もあるが,欠点は,4層と5層が一緒ということだから,あれが壊れてしまうと中のものが全部出ちゃうということ.これは飛行機衝突のような場合には重要なポイント,弱点になりうるということだ.壊れなくても,隙間が出来てしまうと問題.建屋としてはもっている,しかし中のガスが簡単に出るようでは意味がない.本来の,封じ込めという意味では.先ほどの回答は,計算もしない,単なる印象と聞いていた.なんと仰いました?
A: 「相当な耐力」と言った.
Q: それは根拠があるのか?計算しているか?
A: 計算している訳ではなくて・・・.1mくらいのコンクリート.
Q: 飛行機ぶつかってそれで十分なのか?
A: それは,2002年の英国の評価では貫通しなかったと.
Q: PCCVですか?
A: PCCVだったかどうかは,今は・・・.
Q: そこがポイントではないか.そこが確認できていないのはどうかと思う.小さいことではない.
Q: 格納容器だけではなくて,コントロールセンターも問題だ.そちらは1mの厚さではないだろう.
A: そちらはそれほどない.
Q: コントロールを失うと(大変).そちらの対策も必要だ.
A: そちらの方はまた,おそらく特定事態(?)対処(?)施設というのを5年以内に建設することになっている.

(Q7) 基準地震動の設定値について

基準地震動についても問題としたい.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発の基準地震動は620ガルと低く設定されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合があるが,2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市では1494ガルの地震動を観測している.
玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある[9].これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.このような基準地震動について過小評価になっているとの多数の地震学者の警告を九州電力はどのように考えているか?

(A7)
玄海原子力発電所の基準地震動は,敷地ごとに震源を特定して策定する地震動としてSs-1(540ガル),Ss-2(268ガル),Ss-3(524ガル),震源を特定せずに策定する地震動としてSs-4(620ガル),Ss-5(531ガル)を設定しています.当社は敷地ごとに震源を特定して策定する地震動において徹底した調査により,活断層をもれなく把握しており,直下に活断層がないことも確認しています.また,震源を特定して策定する地震動における地震動評価は,詳細な調査に基づき地下の断層の断層の形状を策定し,放出されるエネルギー,断層の動く方向を決定し,具体的な地震動の計算を行うという一連の流れで実施します.この一連の評価におきましては,まず,実際の地震による原子力発電所敷地で揺れの観測記録と計算による揺れを比較し地震動の計算手法の精度を確認します.その上で,調査結果よりも断層の長さをなおす,あるいは断層を傾斜させることによって面積を大きくする,アスペリティーと呼ばれる地震の際に特に強いエネルギーが放出される領域を断層の中で敷地に最も近い位置に,地下の断層が揺れ動く向きを放出されるエネルギーが敷地に向かう方向にする,など地震動が過小評価にならないよう配慮を行っています.このため当社の地震動評価は十分安全側の評価と考えています.しかしながら,震源を特定する(ママ)策定する地震動は過去に震源断層の全てが地表に現れなかった地震において震源近傍の観測記録が得られていることを踏まえ,その観測記録も耐震設計に極力活用していくという観点で行動が必要なものです.新規制基準では震源を特定せず策定する地震動の策定にあたり観測記録を用いることが求められており,当社は2004年北海道留萌支庁南部地震および2000年鳥取県西部地震の観測記録を反映させSs-4およびSs-5を追加しています.当社は平成30年4月に川内・玄海原子力周辺における地震観測強化の取り組みとして川内原子力発電所周辺において12箇所の地震観測点の増設,合計31箇所で観測し観測結果について観測した地震の数・規模・位置,過去からの変化などを平成31年度から年一回の頻度で公開します.また,玄海原子力発電所周辺については23箇所で平成30年4月から地震観測点の設置を開始し平成31年から地震観測を開始予定としております.当社は,今後とも法令・規格・基準の適合はもとより新たな知見を積極的に取り入れ原子力発電所の自主的・継続的安全性向上に取り組んでまいりたいと考えています.

【Q&A】基準地震動の設定値について

Q: Q7に関して一言.活断層について「漏れ無く把握している」と言われたが,見つかっていない活断層は一切ない,ということか.九電管轄の範囲内で.
A: いや,活断層がは分かっているのは全て.
Q: 分かっているのは分かっている,ということ.だからそれはオーバーステートメントだ.



(Q8) 玄海原発の「立地の適・不適」について

規制委の審査内規である「火山影響評価ガイド」では,160 km火山を検討対象として,火山の噴火にともなう火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合には,原発の立地は不適であるとしている.その噴火の規模が推定できない場合には,過去最大の噴火を想定するとしている.そして,去る12月13日の広島高裁判決では,伊方原発から130km離れている阿蘇カルデラの約9万年前の噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」として,「伊方原発の立地は不適」と判断し,四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定を出した.この広島高裁の決定を基準に考えれば,玄海原発も川内原発も阿蘇カルデラからの距離が伊方原発の場合と同程度であることから,九州電力の「2つの原発の立地は不適」と判断されることになる.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A8)
当社は,九州のカルデラ火山について,噴火履歴の特徴やマグマ溜まり状況などを検討し,いづれのカルデラ火山も運用期間中に破局的に噴火が発生する可能性は極めて低いと評価しており原子力発電所の安全性に問題はないと考えています.さらに自然現象の仕方を踏まえた,万が一の備えということで,カルデラ火山の活動状況に変化がないことを継続的に確認するためのモニタリングを行い,火山専門家との助言を受けながら行っています.なお,5つのカルデラ,阿蘇カルデラ,加久藤カルデラ,小林カルデラ,姶良カルデラ,阿多カルデラ,鬼界カルデラについては,原子炉施設保安規定に基づき平成28年度については6月9日,平成29年度は30年の6月15日に活動状況に変化がないと評価し結果を公表しています.


【Q&A】玄海原発の「立地の適・不適」について

Q: 「破局的噴火(の確率)は極めて低い」と言われたか?その根拠と数字を教えて下さい.火山学会が出せないものをどうして九電が出せるか興味がある.
A: 過去の鹿児島地溝(?)での噴火履歴が過去,9万年ぐらいの間隔であった,最新の噴火の履歴を見ると3万年ぐらい前であったということで,発電所の運用期間で起きる可能性は極めて低いという判断をしている.
Q: その間隔通りになるだろうと.
A: 破局的噴火は,100立方メートルの(??)マグマの流量というのがあるので,これが火山の下あたりに溜まってくるということは,ある程度モニタリングで確認できるのではないかということ.
Q: そのことではなくて,「極めて低い」とした根拠を聞いている.数字はないんですね.
A: それはありません.
Q: 根拠は間隔,また将来もその通りになるだろうという見込みですね.
A: それだけでなくモニタリングもやってます,ということです.
Q: それは万が一のためでしょ.要は,過去の間隔だけですね.それが将来にもわたって信用できるという根拠があるんですか?
A: それだけというわけではない,モニタリングもするということだ.
Q: 要は,確率は信用できないということですね.
Q: 東大の藤井名誉教授は,予測はできないということを言っている.

(Q9) 世代間倫理に反する行為について

原発の再稼働には世代間倫理についての問題もあると考える.原発の稼働により発生する使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業(九州電力)の利益のために作り出されるものであるが,この管理保管には10万年余を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A9)
高レベル放射性廃棄物は地層処分を行う方針としております.この地層処分とは,しかし日本では法律で300メートルより深い地層に高レベル放射性廃棄物を人工バリアを施したうえで処分し人間の生活環境に影響を及ぼさないように,長期にわたり安全確実に閉じ込め処分する処分方法です.人間による長期管理の継続は困難であることから,最終的には人間による管理がなくなったとしても安全に処分できる方法として選択されたものが地層処分です.地層処分は深い地層の岩盤が本来持っている物質を閉じ込めるという性質を利用して高レベル放射性廃棄物を生活環境から離れた地下深部に隔離して,その管理を最終的に自然に委ねる方法です.恒久的な人間による管理が必要ないということで,将来世代に管理の負担を負わせることはないと考えています.当社としては,原子力発電所については安全性の確保を大前提にエネルギーセキュリティー面や地球温暖化対策面等から,その重要性は変わらないと考えており,原子力発電所のさらなる安全性・信頼性向上に取り組んでいくとしています.


【Q&A】世代間倫理に反する行為について

Q: この問題は極めて大事な問題であると思っている.先ほど地層処分して人間の生活に影響を及ぼさないようにと言っていましたが,しかし,そういう地層処分の場所が決まっていないのですね.日本の中でそのような地層処分ができる安全な場所はないというのが常識になっている.どこに埋めるかも分からないような状況で,先ほどのようなことを言われると・・・.
Q: 九電としてはどこか当てがあるのか
A: 九電としては,国と原子力発電環境機構(NUMO)が各地にどこが適地なのかを確認して色ぬりして今から候補地を絞っていこうという状況になっているかと思います.我々としては,その動きと連動して,ただ事業所としては,NUMOが決めるからいいだろうというのではなく,我々として協力できるところは協力して,こうした事業を進めていく.
Q: 人間の管理がいらなくなるから大丈夫と言い切られたけど,そう言い切れる状況ではないのでは?
Q: 10万年後に九州電力が存続しているかどうかも分からない.
Q: 「ここが大丈夫」というのを一例でも挙げられるならともかく,全く言えないでしょ.
A: 確かにそう言い切れる状況ではない.まだ分かっていないので.ただ,いまはそのようなプロセスを進めているという事しかここでは申し上げられませんですね.
Q: それで大丈夫ですか?
Q: 海外の処分場で様々な問題が出ている事をご存知ですか?
米国の核兵器開発の関連の処分場で見込みと違ってその中のものが出てきているとか,ドイツだったと思うが地下水が入ってきて地上にも出てきそうになってきて大問題になっているとか,ご存知ですか?
A: そんな細かいところの情報....
Q: 細かいことではなく,多分知らないんですよ.知らないだろうなと思って聞いています.そういうのは調べないと分からないんです.日本では普通にメディアには出てこないんです.直接,その国のメディアを見ているから私はわかるんです.その国では大問題になってますよ.調べてみると,結構ほかの国では,処分場で問題が起きているんです.
思ったようにいかないことが出てくるんです.やったことがないので仕方ないと思うんですけど.
そういうのを知らないのに大丈夫がと思うのはまずいんじゃないですか,皆さんの立場で.ちゃんとやられているのか関心をもって欲しい.
A: 今は,知られている知見として,例えば火山帯に近いところとか,活断層,将来的に地下の鉱物資源,こう言ったことがないところを,まず文献で整理していく.その中から絞って,詳細な調査をする,ということと聞いている.我々としては,細かいところまで精査したところを言っているわけではなく,そう言った方向でやって行きます,ということ.いずれはなんらかの形で処分していかなければならないので,今は,300メートルぐらいの深さで,人間の管理が届かないぐらいのところで処分していく行ような形でお話しさせていただいています.
Q: それで上手くかどうかは分からない.他の条件の良い場所で問題が出ているんです.
Q: 正直に上手くかどうかは分からないけれども,そう希望していますと言うべきだ.
それしか言えないはずだ.実績がないんですから.
NUMOもダメなところを探しているわけで,大丈夫なところを探しているわけではない.
永久処分そのものが可能かどうかは疑問である.おそらく,100年単位で延々とメンテナンスしていくことが必要となる.
原発の問題はここが一番しんどいところだと思う.
Q: 使用済みMOX燃料,地上で冷やすのに何年かかりますか?
MOX燃料の地上での保管は長くなりますよね.大体でもいいので,覚えてませんか?
A: すみません,残念ながらそれは覚えてません.
Q: (ウランより)長くなりますよね.それは明らかに将来世代の負担になる.九電があるかないか分からない年数,地上で持っていなければならない.ご存知ですよね,MOX燃料の再処理の予定はない.でも(使用済みMOXを)作っている.
Q: 新しく就任した社長が,朝日新聞のインタビューで,高レベル放射性廃棄物の処分は国民全体の課題であるようなことを言いましよね.それはおかしいですね.一企業が出した廃棄物は,ふつうはその企業の責任ですよね.
Q: 資本主義社会の中で一企業が原発を持つのはコスト的にも大変リスクが大きく,同情します.

(Q10) 原発再稼働の民主的手続きについて

最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否について,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.いくら国(規制委)が認めたとしても,このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない,玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されないと考える.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(A10)
福島原子力発電所の事故を踏まえますと,地域の皆様が原子力発電所に対して不安を抱かれていることは当然のことと受け止めています.原子力発電所の拡張にあたりましては自主的・継続的な安全対策を積み重ね,絶えず安全性向上に取り組んでいくとともに,地域の皆様に安全対策等についてご理解いただき安心していただくことが何より重要と考えている.今後もface to faceのコミュニケーション活動を継続してまいりたいと考えています.原子力発電所については経営の最重要課題として規制基準への適合性はもとより,安全性・信頼性のさらなる向上のために自主的・継続的な取り組みを進めていきたいと考えています.

【Q&A】原発再稼働の民主的手続きについて

Q: はっきり言って気にしないですよね.国が「いい」というだけで,(世論が)99%反対したって・・
A: いや,我々も広報部隊ですから・・・
Q: 気にする,という意味は,たくさん反対しているから,運転やめます,なんてことはあり得ないですね.
Q: 広報が答えられることではない・・・.
A: いや,ご理解いただける活動を・・全ての方に賛成いただくことはあり得ないので.
Q: 政権交代で原発がうまくいかなくなることも想定されるのでは?原発なしでうまくやって行くことについて,考えたりしないのか.
A: 我々の基本的使命は電力を安定供給すること.
Q: そう.電力.原発ではない.
A: そうです.その中で,原発というのは,明らかに重要な電源と思っているし,それを運用して行くべきだと思っているので,このような取り組みをしている.もちろんそれだけではなく,再生可能エネルギーなども取り組んでいるのが現状です.原発を動かすことが使命ではない.
Q: だから,社会の政治状況とか,福島のような事故がどこかで起きてしまうと止めるしかないかも知れないですね.ある意味不安定要素のある電源ですよ.普通の経営者の判断だと,(そのようなケースも想定して)どういう財務体制を持つかとか,戦略を持つかということを考えないのか,ということです.
Q: それを考えた上でこの運用をしている,と思っていただいていい.
Q: 特に九州の場合は太陽光発電が伸びている.原発稼働に伴い,太陽光停止を要求することがあるか?
A: 離島ではあるが本島ではまだない.例えば,今年5月など,需要が少なく晴天の時など,需要を超えた分は,揚水で吸収したりとか,火力を下げたりとかで,今の所は吸収できている.
Q: (原発に)賛成が反対の半分しかない.民主主義国ではあり得ないのでは.皆不安を持っている.「九電は原発やめました」と言えば拍手喝采だろう.
Q: 使命は電力の安定供給と言われた.その目的は?みなさんが電力を買う目的は?電気が欲しいから?
A: 普通に生活をしたいからです.
Q: 豊かで幸せな暮らしをしたいからですよね.その中には安心,安全,将来の希望とか,いろんなことが含まれる.それを守るためですよね.
A: そうです.
Q: それに皆さんがよしと思っている原発がすごくマイナスになってるということを認めて欲しい.不安だったり,心配している人はいっぱいいる.それは認めますよね?
A: はい.不安を持っいている人がいることは理解します.
Q: 福島があった以上は言いがかりでもないし根拠のないことでもない,真っ当な心配だということも理解してますね.
A: はい.
Q: それは,原発が止まっているか動いているかにすごく影響されるのもご存知ですね.
A: はい.
Q: であれば,みなさんが良かれと思っていても,原発を動かしていることで,最終的な使命に反することが,幸せな生活を維持じ発展させることに対してすごくマイナスをぶっこんでいるということを理解して欲しい.
A: そこは,捉え方の問題だと思う.
Q: 捉え方ではなくて,そういう人がいるのを分かって欲しい.
A: いるのは分かっています.
Q: 賛成の人はそうは思わないかも知れないが,でもそうでない人,選べないで原発の近くに住んでいる人などは特に – みなさんは財務状況よくなって良かったと思っているかもしれないが – 絶望している人も現にいる.それに対して,罪の意識とまで言わないが,何かやることがあると思う.少なくとも切って捨てないで欲しい.
A: それは我々もしっかり認識していて,しっかりと情報を出していかないといけないと思うし,前社長も申していたが,原発は複雑な問題でもあるので,しっかりと対話をしながら,我々の思想というものを分かって頂くということに労を惜しまないようにしたいと思う.少数だから切っていく,ということではない.フェイス・トウー・フェイスの対話が会社の方針だ.

(以上)

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