5月例会 川内原発と白血病&TROI実験無視

5月例会


日時:2017年5月20日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 川内原発と白血病の関連(報告:森永氏) 発表ファイル
   (2) 加圧水型原発を保有する4電力会社のTROI論文無視問題(報告:中西氏)
    
レジュメ  発表ファイル

<報告>

 はじめに,森永氏より川内原発の運転と周辺市町村の白血病死亡者数に統計的に有意な差があることが報告された.森永氏はすでに玄海原発の稼働前後に玄海町や唐津市における白血病死亡率が,原発に近い市町村ほど高いというデータを示しており,同様な統計的データが川内原発の周辺でも得られたということで,ことは重大である.
 次に,中西氏により加圧水型原発を保有する関西電力,九州電力,四国電力および北海道電力の電力4社がいわゆる「TROI論文」の研究結果を無視していることが報告された.「TROI論文」は,OECDのSERENAプロジェクトのなかの1つであり,韓国の原子力研究所で継続的に行われている,溶融炉心と冷却材(水)との相互作用に関する実験である.これまで,TROI実験以外に,FARO実験,KROTOS実験などがあるが,溶融炉心として大量の酸化ウラン(UO2)などを使った実験で水蒸気爆発が観測されたのは,外部トリガーを使用したKROTOS実験の3件だけであることから,電力4社は実機の過酷事故に際して外部トリガーはないので,水蒸気爆発は実機ではないとしている.実機の過酷事故に際して水蒸気爆発に対するトリガーがないと楽観できるのは驚くばかりであるが,それ以上に驚くのはトリガー無しで自発的な水蒸気爆発を観測したTROI実験を無視していることである.パブリックコメントでTROI実験の無視が指摘されると,規制委員会は水蒸気爆発を観測したTROI実験では溶融温度が高く(3800K),現実的な条件に近い温度では起きないことが確認されているとしている.TROI実験では確かに温度測定に正確でない部分もあり,これらの点には今後検討すべきことがあると思われる.しかし,4電力会社は規制委員会からお墨付きを得られということでTROI論文の無視を続け,水蒸気爆発は起きないとい前提で再稼働が続けられている.

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」

声明「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」


2017年5月3日,福岡核問題研究会の有志は,最近の朝鮮半島の危機を憂い,「朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける」との声明を発表しました.

pdfファイル


朝鮮半島における危機回避と戦争反対の行動を呼びかける

2017年5月3日
福岡核問題研究会有志(世話人:三好永作)
http://jsafukuoka.web.fc2.com/Nukes/index.html

 私たちは1970年代から,核・原子力問題を分析し,研究発表並びに講演会を重ねてきました.朝鮮半島における緊張と戦争の危険が高まっているいま,核・原子力問題に取り組んできた者として,そして市民として,本声明を発表し,広く戦争反対の行動を呼びかけます.
 現在,朝鮮半島における軍事的緊張の高まりにより第二次朝鮮戦争が危惧されています.朝鮮民主主義人民共和国(以下,北朝鮮と略)による核兵器やミサイルの開発は,我が国,特に北部九州への脅威にとどまらず,東アジア全体の平和への脅威です.しかし,北朝鮮を包囲する米軍,基地を提供する日本,米軍と一体となって演習する自衛隊の行動もまた,同様に東アジア和平を脅かすものであり、両者は挑発行動を自粛するべきだと考えます.
 北朝鮮政府関係の声明や米国大統領のツイッター等では,挑発的意見表明がなされ,日本のマスコミは過剰に「危機」を演出しています.しかしながら,軍事的な合理性が関係諸国の指導層に貫徹している限り,この「危機」が「有事」に進展する可能性は低く,冷静かつ沈着な対応が求められます.
 とはいえ,かかる米国の「抑止行為」が,北朝鮮の「捨て身の反撃」を誘発し,核兵器の使用,ひいては,核戦争に進展するリスクが全くないともいえません.影響の及ぶ範囲や予測される戦場が朝鮮半島に限られる保証もなく,日本や東南アジアが巻き込まれる危険性もあります.
 北朝鮮の「挑発」だけを非難し,2ヶ月にもわたる米韓合同軍事演習など米国側の戦争準備行為を問題にしない我が国のメディアや国会の態度は一方的です.特定の国家だけを一方的に「悪」とする言説は,戦争準備行為の一つと見なされます.
 4月末,日本政府は,海上自衛隊に米国艦船を防護する命令を出しました.米艦が他国を威嚇する場合,海上自衛隊の米軍との一体行動は,「武力による威嚇」を放棄した憲法9条に抵触する可能性も生じます.
 私たちは朝鮮半島における現在の危機は,軍事的手段でなく,以下に述べる平和的手段によって解決するべきと考えます.
 第1に,関係する国家の政府間交渉です.旧6ヵ国協議の有効性には異論もありますが,ローマ法王フランシスコが提案したように,旧6ヵ国に,「調停国」としてノルウェーを加えることも検討に値するといえます.
 第2に,政府間交渉だけではなく,われわれ市民も声をあげ,戦争防止のための意見表明と具体的な意志表示や行動をとることです.
 第3に,関連分野の科学者や技術者も,説得力ある提言をし,側面から,米朝両国の緊張緩和や実効的解決のために積極的に行動することです.例えば,長崎大学核兵器廃絶研究センターの提案「北東アジア非核兵器地帯設立への包括的アプローチ」(注1)はその一例です.
 朝鮮半島の危機と戦争回避のために,多くの方の協力と行動とを呼びかけます.
(注1)http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp/dspace/bitstream/10069/35475/1/Proposal_J_original.pdf

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