10月例会 気候危機打開の「レポート2030」

10月例会


日 時:2021年10月9日(土)10:00〜12:00
報 告:気候危機打開の「レポート2030」について
    報告者:三好永作   
発表資料

<報告>

 10月例会では2021年2月に明日香壽川氏(東北大)らの「未来のためのエネルギー転換研究グループ」が発表した「レポート2030」の内容を三好が紹介した.「レポート2030」には「グリーン・リカバリーと2050年カーボン・ニュートラルを実現する2030年までのロードマップ」という副題がついている.グリーン・リカバリー(GR)は,グリーン・ニューディールと同じ意味であるという.政府は2020年12月25日に政府が発表した「2050年カーボン・ニュートラルに伴うグリーン成長戦略」では,目標や政策に大きな変更は見られず,「2050年カーボン・ニュートラル」は単なるスローガンに終わってしまう可能性が高く,政府の基本計画の代替案として「レポート2030」を作ったという.


 2030年までに日本において省エネルギー(以下,省エネ)と再生可能エネルギー(以下,再エネ)を進めることで,温暖化ガスの大幅削減が可能になるだけでなく,国全体と地域経済の発展を実現するシナリオを描いている.再エネ利用が進んでいる米国では,2010年には25セントであった太陽光の発電コストは,2020年には4セントになっており,原発の5分の1,石炭火力の3分の1となっている.日本においても際エネの利用が進めば,再エネの発電コストは米国並みになることは間違いない.

 グリーン・リカバリー(GR)戦略では,2030年までに2010年比で40%減の省エネを行い,一次エネルギーで化石燃料を60%減少させ,原発はゼロにする.そして電力では,電力消費量を30%減らし,化石燃料ではガス火力のみを残して再エネの電力割合を44%という数値目標を掲げている.

 GR戦略では,電力,産業,業務,家庭,運輸のさまざまな分野に2030年までに202兆円の投資を行い,年間254万人の雇用が生まれ,国内総生産(GDP)は205兆円上積みされる経済効果をもたらし,CO2排出量が1990年比で55%減(2013年比では61%減)が得られるという.202兆円の投資のうち,民間からは151兆円,公的資金からは51兆円を見込んでいる.民間投資に対する国からの補助金は,化石燃料などのエネルギー支出の削減額が2030年までに358兆円も見込まれるので,基本的に不要であるという.

 これから2030年までの10年間は,「人類の未来を決定づける10年」ともよばれるようになっている.IPCCの第6次報告は地球温暖化が温暖化ガス(主にCO2)によることを事実と認めた.この10年の間にCO2排出量の1990年比で50%以上削減することができなければ,地球の未来は暗い.

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