10月例会 マンハッタン計画と科学者&バスク州のワインツーリズム

10月例会


日時:2019年10月26日(土)10:00〜12:30
内容:(1)マンハッタン計画と科学者たち −−その政治的及び軍事的役割
      話題提供:伊佐智子氏(久留米大学) 
発表資料
   (2)スペイン・バスク州におけるワインツーリズムの調査
      話題提供:畠中昌教氏(久留米大学) 発表資料

<報告>

 10月例会では,まずはじめに文系研究者である伊佐氏から「マンハッタン計画と科学者たち」とのテーマで科学者が政治的および軍事的に果たした役割を中心とする話があった.原子爆弾を開発したマンハッタン計画は米国で1942年8月から開始されるが,その発端は,英国に亡命していたフリッシュとパイエルスの覚書において,純度の高いウラン235により絶大な破壊力をもつ小型の爆弾が可能であり,必要な量はわずかで済むとの見積もりにある.英国は1940年4月にウラン原爆の実現可能性を検討するためにMOUD委員会を組織した.同委員会には,委員長としてG・P・トムソンを充て,メンバーとしてフリッシュ,パイエルスの他にチャドウィックなどがいた.この委員会の検討結果が米国に伝えられることになる.ニューヨークのマンハッタン・ブロードウェイ270で始まったマンハッタン計画は米国のみならず英国,カナダも参加し,60万人が関与したという.多くの科学者の参加の下に原爆が作られた.1945年6月にシカゴ大学の7名からなる科学者委員会(フランクやシラードなど)が日本に対する原爆の無警告使用反対や戦後の核管理体制実現の重要性などを内容とする報告書(フランク報告)を大統領の諮問委員会に提出したが拒絶された.原爆を作り出した科学者は,原爆投下や核兵器の管理に対する政治的・軍事的な影響力はほとんどなかった.

 次に,畠中氏に専門として最近研究されているスペインのバスク州のワイン・ツーリズムについて報告頂いた.同氏は,人文地理学会や日本都市学会,福岡地理学会のみならずスペイン地理学者協会,九州地区スペイン研究友の会,スペイン・ツーリズム学専門家協会などさまざまな学術団体などに所属されている.2013年にスペインを訪れた観光客数は6000万人を超え,米国,中国に次いで世界第三位になっている.その後も観光客は増加傾向にあり,限度を超えた観光客集中の弊害もあり,反ツーリスト運動も起きているというが,バスク州は外国人ツーリスト数で見る限りその主要対象地ではないという.スペインの南東にありフランスに近いバスク州は山がちで起伏に富み平野部は少なく,大西洋気候で夏は涼しく雨が多く,かつては農業と重化学工業中心であった産業は20世紀後半からサービス業やハイテク産業が中心となっており,「緑のスペイン」と呼ばれる景観をもち緑が豊かであるという.2019年2月27日〜3月10日にこの地方を探索的に調査した内容が報告された.「バスク祖国と自由」(ETA)のテロ終結(2010年9月)によりバスク州の雰囲気は安全になっているという.バスク州・サンセバスチャンなどのレストランは結構クオリティが高く美味であるという.その美味しそうな食事や風景のスライドを見せられて,報告子の次のヨーロッパ旅行の候補地にはスペイン・バスク州が大きな位置を占めることとなった.

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