6月例会 日本の原子力政策&SERENA-2プロジェクト

6月例会


日時:2017年6月17日(土)10:00〜12:30
内容:
(1) 日米原子力協定と日本の原子力政策の歴史的経緯(報告:伊佐智子氏)
    
発表ファイル
   (2) TROI 2007年論文とSERENA-2プロジェクト(報告:中西正之氏)
    
レジュメ

<報告>
 はじめに,伊佐氏は日本の原子力政策の歴史を理研・仁科研究室のGHQによるサイクロトロン没収・破壊命令から始め,24枚のパワーポイントファイルを使って包括的に語られた.1953年12月の国連でのアイゼンハワーの”atoms for peace”演説の後,1954年3月1日に第五福竜丸などがビキニ環礁で被ばくし,中曽根康弘氏らの提案によって同年3月4日に原子力関連予算が可決される.同年9月に第五福竜丸の機関長・久保山愛吉氏の死亡に対して,現在まで米国政府は「放射能が直接の原因ではない」との見解を示しているという.1955年12月に米国から日本へ濃縮ウランを貸与するための日米原子力協力協定が締結され,1956年1月には日本では,原子力委員会が発足することになる.委員長は読売新聞社主の正力松太郎氏であった.湯川秀樹博士は委員の一員であったが,委員長が1957年1月に「原発を5年後に建設する構想」を発表したことに対して「慎重な上にも慎重でなければならない」と強く訴え抗議のために辞任した.1970年代〜80年代に世界においてスリーマイル島(1979年)やチェルノブイリ(1986年)で原発事故が起きるとともに,日本でも原子力船むつの放射能漏れ事故(1974年)や「もんじゅ」のナトリウム事故(1995年)など事故が続出し,2011年3月には福島原発事故が起きることになった.2018年に日米原子力協定が改定予定であるが,自動更新の可能性が高いという.

 次に,中西氏が韓国の原子力研究所で行われているTROI実験についての2007年の論文(Kim et al., Nucl. Technol. 158, 378 (2007))及び経済協力開発機構(OECD)のSERENAプロジェクト2の実験とシミュレーションの論文について報告された.TROI実験は,経済協力開発機構(OECD)の主要な実験の一つであり,融点の高い二酸化ウランUO2と二酸化ジルコニウムZrO2の混合溶融物(擬似デブリ)を使っている点に特徴がある.UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは自発的な水蒸気爆発があったが,他の組成では水蒸気爆発は存在しなかった.実機の過酷事故時には外部トリガーありうるので外部トリガーを加えた実験を行い,UO2 70%:ZrO2 30%の擬似デブリでは,UO2 80%:ZrO2 20%の擬似デブリの時の水蒸気爆発の発生圧力は大きくなったという.SERENAプロジェクト2のシミュレーションの論文(M. Leskovar and M. Ursic, Nucl. Eng. Technol. 48, 72 (2016))では,OECDのSERENAプロジェクトで開発されたMC3Dコードを使用して,水蒸気爆発の圧力をシミュレートしている.それによれば加圧水型原子炉でキャビティを満水にしておくと,水蒸気爆発が起きた場合には,キャビティの側壁に約150気圧の爆発圧力がかかる危険があると報告されている.この圧力でキャビティ側壁が破壊されるかどうかが問題である.

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