10月例会 原発運転差し止め裁判における論旨の問題

10月例会


日時:2017年10月7日(土)10:00〜12:30
話題:原発運転差し止め裁判における論旨の問題
報告:中西正之氏

<報告>

 10月例会では,中西氏により,脱原発弁護団全国連絡会が,2017年6月1日に策定した「『新規制基準の考え方』検討報告書—原子力規制委員会の欺瞞」(以下,「検討報告書」)の解読・解説を行なった.昨年,原子力規制委員会が策定・改訂した「実用発電用原子炉に係わる新規制基準の考え方について」(以下,「考え方」)は,福岡核問題研究会でも取り上げ,批判的に検討してきた.
 「検討報告書」においても,「考え方」は原発訴訟・裁判対策として作成されたものとして捉えている.実際,大阪高裁は,大津地裁の高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定の控訴審において,「考え方」の内容の当否を検討することなく,「原子力規制委員会がそのように結論付けている」という理由だけで「考え方」を安易に採用し,2017年3月28日,高浜原発3・4号機運転差止仮処分決定を取り消したという.ここから,裁判に勝利する上でも「考え方」を適切に批判することの重要性が浮かび上がる.「考え方」では,福島原発事故は津波によって発生したと決めつけているが,国会事故調や政府事故調は,地震を契機として事故が起きた可能性を認めている.
 福岡核問題研究会でも「新規制基準は世界で最も厳しい水準」という虚言を厳しく批判して来たが,「検討報告書」においてもこの点を指摘している(p.40).原子力規制委員会の「考え方」では,原子力規制委員会は,同種の事故を防止するための教訓としては現時点までに明らかになっている事象で十分であるとしている.
 しかし,新規制基準を策定するにあたって最も重要である事故の原因ですら,各報告書等によっても確定できておらず,「検討報告書」では,「原子力規制委員会は,事故原因を正確に把握しないままに新規制基準を策定したのであり,この点からも新規制基準は不合理である」と批判している.また,「検討報告書」では,新規制基準は,IAEAの安全基準に整合していないこと,さらに深層防護の考え方を踏まえていないことを厳しく指摘している.

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