11月例会 北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析2

11月例会


日時:2017年11月2日(土)14:00〜16:30
話題:北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析ノート2—ICBM用「水爆」とその多核弾頭化 
発表資料
報告:岡本良治氏

<報告>

 11月例会では,岡本氏が,『日本の科学者』11月号の論文「北朝鮮の核兵器はどこまで進んだか」の続編ともいうべき「水爆」開発に対する分析を詳細に述べられた.『日本の科学者』来年2月号の「科学者つうしん」欄のために,この例会を要領よくまとめた伊佐氏の文書があるので,これを例会報告として以下に掲載する.
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 2017年11月4日開催の福岡核問題研究会では,九州工業大学名誉教授・岡本良治氏により「北朝鮮の核開発の科学的・技術的分析ノート2—ICBM用『水爆』とその多核弾頭化」が報告された.
 岡本氏は,本誌投稿論文「北朝鮮の核兵器開発はどこまで進んだか」(2017年11月,598号,24頁~30頁)において,北朝鮮による過去5回の核実験を分析し,その核開発技術が十分に進歩し,爆発威力も着実に伸びており,実際の軍事配備の実現も間近にしつつあると説示した.
 そして,本年9月3日にも核実験が行われた.これを受け,韓米合同軍事演習が継続され,双方の挑発行動が続く.軍事的威嚇や経済制裁が真の問題解決になるとは思えないが,北朝鮮の軍事動向を客観的に分析・把握することも不可欠だと岡本氏は述べる.
水爆は,核分裂主体の1次系と核融合主体の2次系で構成される.Gsponerらの熱核爆弾に関する文献(2009年)によれば,現代の水爆の一次系(核分裂系)では,少量の核融合物質(重水素及び三重水素)を添加して,核分裂連鎖反応を促進するブースター原理を採用し,飛躍的に爆発効率を向上させる技術は想定されているよりは容易であるという.米国の水爆(W88)は,2次系を球対称にすることで,熱核融合燃焼を最高度に効率化できるようになっている.
2017年9月3日,6回目核実験が公表され,北朝鮮・核兵器研究所が声明を発表した.そこでは,1次系と2次系からなる「水爆」の中核的な技術的要素目標を高い精度で達成したとしており、岡本氏によれば,北朝鮮の水爆実験は基本的に成功したと見てよいという.北朝鮮の核開発技術は看過できないほど進んでいる可能性も払拭できないということだ.(伊佐智子)

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