9月例会 21世紀の全技術&原爆投下と日本敗戦

9月例会


日時:2019年9月21日(土)10:00〜12:30
話題:(1)現代技術史研究会編『徹底検証 21世紀の全技術』について
     (話題提供:中西正之氏)  
発表資料
   (2)原爆投下は日本の降伏をもたらしたのか
     (話題提供:三好永作氏)  
発表資料  
      
資料「原爆投下・ソ連の対日参戦とポツダム宣言受諾」

<報告>

 本例会では,はじめに中西正之氏が現代技術史研究会編による『徹底検証 21世紀の全技術』(藤原書店,2010年)の内容を紹介された.この本は,福島第一原発事故の起きる前年の10月に出版されたものである.第1部「“生活圏”の技術」,第2部「変わりゆく産業社会の技術」,第3部「技術がもたらす自然と社会の崩壊」からなり,第1部では住居・食・水・家電・クルマ・医療など,第2部では材料・エネルギー・輸送・コンピュータ・大量生産システム・軍事などについて論じられている.第3部では,さまざまな分野で著しい発展をとげた現代技術がもたらした地球全体の環境破壊の問題が取り上げられている.その中の「頻発し巨大化する事故の恐怖」という章の中で,2005年5月のJR西日本の福知山線脱線事故が,日本社会の歪みが悪い形で現れた典型的な事故として詳しく論じられている.さらに「原発事故の恐怖」として,日本の原発にはスリーマイル島原発事故やチェルノブイリ原発事故と同じような過酷事故の発生を予想させるような不気味な事故が多発しており,福知山線脱線事故以上に大惨事となりうると警告されていた.この本が出版された数ヶ月後に福島第一原発事故が起きたことは残念というほかない.われわれの子供や孫の世代が大きな危機に苛まれることなく生きて行けるような人間社会と技術との関わりのためには,これまでとは違った方向への転換が必要であるように思われる.

 次に,三好永作氏が,ポツダム宣言受諾と原爆投下およびソ連の対日参戦の関係について報告した.三好氏は,数年前に『日本の科学者』誌上に「原爆投下・ソ連の対日参戦とポツダム宣言受諾」なる小論(『日本の科学者』Vol.46, No.11, 55-57, 2011)を発表して,歴史学の上では既に確定している「原爆投下が日本の敗戦(ポツダム宣言受諾)をもたらしたのではなく,ソ連の対日参戦が日本の敗戦をもたらした」という一般には知られていない事実を,誰にでも分かるような言葉で紹介する読み物(「まんが」でも可)を書くよう歴史家に呼びかけたが,そうのような書物はまだ現れていないという.自分でそのような書物を書く以外にはないと思い至ったようで,その整理資料の一部が例会に紹介された.もし「「原爆投下が日本の敗戦をもたらしたのではない」ということが事実であるなら「原爆投下により(戦争継続による戦死者の)100万の命が救われた」との原爆投下を正当化する米政府高官の公言は,被爆者をはじめとする日本国民を二重にも三重にも陵辱するものである.

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