2月例会 沖縄県におけるCOVID-19感染拡大の主要因は駐留米軍にある

2月例会


日 時:2022年2月26日(土)10:00〜12:00
話 題:「沖縄県におけるCOVID-19感染拡大の主要因は駐留米軍にある」
報告者:森永徹氏   
発表資料

<報告>

 2月例会では,森永氏に沖縄における新型コロナ感染症(COVID-19)の問題を中心にお話いただいた.はじめに,森永氏は米国が世界有数のCOVID-19感染大国であるとデータを示して指摘された.日本の感染率が3.6%であるのに対して,米国の感染率は24%である.これはフランス,英国に続いて世界第3位の感染率の高さである(世界平均は5.5%).沖縄における米軍基地の面積は,本土の2.5倍あり,米兵の数もほぼ2.5倍という.

 沖縄にいる米軍兵士数は約26,000であり,もし感染率が米本土と同じとすれば在沖米軍兵士の感染者数は6,200となる.林外相は,1月20日の国会で沖縄米軍基地内の感染者が4141に上ることを明らかにした.在日米軍施設やその周辺で感染者が急増したことから,在日米軍は外出制限を実施していたが,その外出制限を1月31日で終了すると米軍から連絡があったと,外務省は28日に発表したという.

 次に森永氏は,「米国でCOVID-19感染者が多いのはBCGを摂種していないため」ではないかという点をいくつかのデータを示しながら論じられた.米国はBCG摂種を一切行っていないが,欧州でもBCG摂種を中断している国が多い.L. E. Escobar等(注1)は,欧州の国々についてCOVID-19パンデミック最初の月の致死率とBCG接種率との関連を見たところ負の相関があった.また,東西ドイツでのBCG接種時期(西ドイツでは現在の20数歳〜60歳のみ接種,東ドイツでは現在の40数歳〜80数歳に接種)とCOVID-19致死率の関連を見たところ,高齢者の接種率の高い東ドイツの死亡率が明らかに低かった.BCG接種は免疫効果を高めるという報告もあるという.

 「米軍は日本入国前の感染検査をしていなかった」ことを,2021年9月に日本政府に伝えていたことを在日米軍司令部が認めたとの「赤旗日曜版」のスクープがあり,在日米軍が感染症の検査をしていなかった時期に,日本から米国への出国の際には感染検査をしていたという.沖縄ではオミクロン株の感染拡大は米軍基地由来とみられている.ここでも不平等な日米地位協定の実態が浮き彫りになった形である.

 講演の後の議論の後半に,沖縄からの参加者から,今回のようなコロナ感染を防止する点では,日米地位協定の問題は国の問題なので政府の消極的な動きしかない状況ではなかなか難しいが,地方自治体での取り組みで有効な方法があるのではないかとあれこれ模索しているとの発言があった.

 研究会の最後に,次回の研究会では,渡辺悦司,遠藤順子,山田耕作著『放射線被曝の争点—福島原発事故の健康被害は無いのか』(緑風出版,2016年)の紹介をしてみてはどうかという提案がなされ,何人かで分担して同書の紹介をすることになった.
(注1)L. E. Escobar et al., PNAS, 117, 17720-17726 (July 9, 2020).

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