3月例会 コアキャッチャー&被曝線量低評価問題

3月例会


日時:2019年3月30日(土)10:00〜12:30
話題:(1)「高温溶融炉心の挙動とコアキャッチャーの必要性」
     (話題提供:中西正之氏)
(2)「早野・宮崎論文の伊達市の被曝線量低評価の問題点」
     (話題提供:森永徹氏)
(3)公開質問書に対する九州電力回答の評価文章の検討
 
<報告>

 3 月例会では,はじめに,中西氏により「高温溶融炉心の挙動とコアキャッチャーの必要性」という報告がなされた.1979 年のスリーマイル島および1986 年のチェルノブイリで起きた過酷事故以来,世界的には過酷事故が起きた場合,その緩和対策が重視されるようになった.チェルノブイリ原発の圧力容器下部には圧力制御のための巨大な地下プールがあり,溶融炉心がそのプールに落下することで水蒸気爆発が起き,プルトニウムを含む微粉末(プルトニウムダスト)が全世界に飛び散る危険があったという.幸いにも3名の決死隊が潜水してバルブを開け排水することでそのような事態は回避できたというが,3名の尊い命が犠牲となった.このことから,溶融炉心を水と分離して受け止めるコアキャッチャーが考えられるようになった.溶融炉心を圧力容器内で保持するIVR(ウェスチンハウス社)や容器外で保持するEVR(アレバ社)の他に,ロシアのるつぼ型コアキャッチャーがあるという.このコアキャッチャーには,水蒸気爆発対策だけでなく,水素発生防止や再臨界防止,溶融炉心コンクリート反応(MCCI)防止の対策も行われているという.いま再稼働されている日本の原発は,このようなコアキャッチャーが備えられているわけでもなく,MCCI 防止対策として溶融炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策が許されている.
 次に,森永氏により「宮崎・早野論文の伊達市の被曝線量低評価の問題点」として,いまネット上や一般週刊雑誌上でもホットな話題となっている宮崎・早野論文の問題点が紹介された.宮崎・早野両氏は,”Individual external dose monitoring of all citizens of Date City by passive dosimeter 5 to 51 months after the Fukushima NPP accident”というタイトルの連続の論文を2016 年と2017 年にJournal of Radiological Protection という英文誌に発表している.その論文は,結果として市民が受けた被ばく線量をひどく過小評価するものになっているという.1つには,市民がガラスバッジを正しく装着していないために起こる線量の過小評価を無視しており,次に,飛行機で測られた空間線量と地上での測定値の差を考慮しておらず,さらに,多方向から来る放射線によるガラスバッジの測定線量を、実効線量とみなしていることなどの問題がある.また,バックグラウンドとして0.54 mSv/年を一律に差し引いていることも問題であるという.これらの被ばく線量の過小評価により,「現在,伊達市で空間線量が高い地域でも,生涯の被曝量もたいしたことはない」とか「除染しても被曝量はさして減らない」とまで言っているという.
 最後に,時間が無くなったため公開質問書に対する九州電力の回答に対する批判についての文章の検討は,メーリングリストを通しての意見交換で行うこととした.

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