4月例会「非常事態のもとでの原子力防災体制」

4月例会


日時:2016年4月23日(土)14:00〜16:30
内容:非常事態のもとでの原子力防災体制 
発表スライド
報告者:吉岡 斉氏(九州大学教授,原子力市民委員会座長)

<報告>

4月例会において,吉岡氏から「非常事態のもとでの原子力防災体制」についての以下のような内容で詳細な報告を受けた.
 1. 日本の原子力安全規制行政の歴史と現在
 2. 原子力安全規制改革の要点
 3. 原子力危機管理の考え方
 4. 福島事故における原子力危機管理の失敗
 5. 原子力危機管理体制は再構築されたか
 6. 放射能の拡散予測とモニタリング
 7. 武力攻撃・破壊工作対策
福島原発事故で期待された機能を果さなかった3つの組織系統レベル(政府中枢,オンサイト,オフサイト)の危機管理体制は,その反省をふまえて3つの組織系統レベルでさまざまの改善策が導入されたが,本質的な改善になっていない.例えば,オンサイトレベルでは,過酷事故対策の設備・機器が増強されが,破壊工作とに対しては全く無力であり,放射能の大量放出を防ぐ最後の壁が破れるか,その瀬戸際に至った場合の危機管理体制についても配慮されていない.また,オフサイトレベルでは,国家レベルでの防災・避難計画がなく,輸送手段の崩壊など最悪の事態が重なった場合の防災計画がないことは重大な問題であるという.
福島原発事故では,放射線モニタリングシステムが崩壊した.ほとんどのモニタリングポストは使用不能となり,SPEEDIと一体的に運用すべき緊急時対策支援システムERSSが使えなくなった.SPEEDIは使用可能であったが,その活用についての行政上のルールが未整備のために有効には使われなかった.原発再稼働に際しては,これらの教訓を踏まえて,放射線モニタリングシステムの事故・災害に対する抵抗力の抜本的強化が必要であるという.

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