西日本新聞「原発過酷事故備え万全か」

本研究会メンバー数名を3月に取材した内容を基にして,西日本新聞は4月27日朝刊1面〜2面で,「原発過酷事故備え万全か」という記事を報道しました.


原発過酷事故 備え万全か 懸念残る九電シナリオ… 溶融物 冷却できるか [福岡県]
2014年04月27日(最終更新 2014年04月27日 01時31分)
http://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/84829

原発の過酷事故対策が不十分ではないか-。専門家から、そんな疑問の声が上がっている。事故で冷却機能が失われ、原子炉内の核燃料が溶融し、炉を覆う格納容器を破壊して大量の放射性物質を放出させる「過酷事故」。安倍政権は原子力規制委員会の新規制基準を「世界一」と強調するが、世界ではそれを上回る安全性を整えた新設炉が建設されている。新基準では、格納容器内の圧力が高まった際、爆発を避けるため、放射性物質を含む気体を外部に排出させるベント(排出口)と呼ばれる最終手段も、九州電力などの加圧水型軽水炉(PWR)では設置の先送りが認められた。

「コアキャッチャーの設置は求められていなかった。(略)。格納容器の圧が高まっていた。溶け出した核燃料が圧力容器(原子炉)を破壊し、格納容器のコンクリートと反応し、大量の水素と一酸化炭素が発生している証左であった。ベントを行うしかなかった…」

現役国家公務員が「若杉冽(れつ)」のペンネームで原発政策の問題点を告発した小説「原発ホワイトアウト」終盤の一節。東京電力福島第1原発事故後の新規制基準と電力会社の対応がなお不十分で、過酷事故に見舞われるという設定だ。

小説に出たコアキャッチャーとは、原子炉から溶け出した3千度弱の炉心溶融物を受け止め、近接する貯留部に誘導して冷やすなどする設備だ。フランスのアレバ社は、フィンランドや中国、フランスで建設中の次世代原子炉(欧州加圧水型炉)に設ける。ホワイトアウトが指摘した、溶融物とコンクリートとの反応で、容器を爆発させるような事態を回避するためだ。

だが規制委の新規制基準にコアキャッチャーの設置義務はない。では、九電などPWR保有各社の対策はどのようなものか-。

規制委の審査で九電は、配管の破断で原子炉に冷却水が送れず、電源も失われた過酷事故対策を説明してきた。何とか移動式発電機をつないで格納容器への注入を再開するなどし、原子炉下のキャビティーと呼ばれるスペースに水をため、落下する溶融物を徐々に冷やすシナリオだ。

この対策に、疑問の声が出ている。

「溶融物がキャビティーに徐々に落ちると、水中で小さい粒になる。粒は膜に覆われ熱を保ち続け、膜が何かのきっかけで連鎖的に破け始めると、最も破壊力がある水蒸気爆発につながる可能性がある」。元燃焼炉設計技術者の中西正之さん(70)=福岡県水巻町=はこう指摘する。

一方、水をためなければ「ホワイトアウト」の展開通り、コンクリート反応で水素や一酸化炭素が発生するリスクが高まるという。

燃料溶融で発生する水素で建屋が爆発したとされる福島原発3号機。ただ、国会事故調の報告書では、爆発直前にオレンジ色の閃光(せんこう)が確認されたことに触れ「一酸化炭素の不完全燃焼と推論すると理解しやすい」と、複合要因の可能性を指摘している。

キャビティーに水をためれば水蒸気爆発、水をためないとコンクリートと反応し一酸化炭素などによる爆発の懸念が残る。

九州工業大の岡本良治名誉教授(原子核物理学)は「格納容器の爆発を防ぐには最終的にはベントで放射性物質を外に逃がして減圧するしかない」と説明。ただ、格納容器が大きいPWRは、気体の密度が高まりづらく爆発の危険性が比較的低いとして、ベント設置は5年間猶予された。「九電は、炉心溶融は起きえないと本心では考えているのではないか」。岡本名誉教授は指摘する。

東電は、柏崎刈羽原発を抱える新潟県からの「コアキャッチャーを設置しないのか」との質問に、「格納容器下部に耐熱材を敷設するなど、浸食を軽減させるさらなる安全性向上策を検討中」と、新基準を上回る独自の追加対策を示唆している。

=2014/04/27付 西日本新聞朝刊=

奈良林直氏の参考人意見陳述について

奈良林直氏の参考人意見陳述について

2014年4月4日
福岡核問題研究会


 去る1月24日に,佐賀県議会・原子力安全対策等特別委員会で,北海道大学大学院教授の奈良林直氏が参考人として意見陳述をされました.その一部始終は
県議会の録画で見られます.
 玄海原子力発電所の再稼働については,目下原子力規制委員会が審査中であり,もし可となった場合は最終的に県の同意が求められます.そのさいに県議会の責任は大きく,それに応えるための準備として,今回の参考人招致が,そしてまた
昨年12月13日の東大名誉教授・井野博満氏の参考人招致が実施されたものと思います.
 そのような重要な意味を持つ参考人陳述ですが,奈良林氏の発言には明かな誤りや,聞き手に誤った認識を生じさせる恐れのある箇所がいくつも存在します.私たちは,奈良林氏と同様に科学技術分野における教育・研究や実務に携わってきた者として,この問題点を指摘しなければならないし,そうでなければ無責任であると考えました.
 そこで,明白な誤りや誤った認識を生じさせる恐れが極めて大きいポイントに絞り,かつ客観的情報が容易に入手できる範囲で,問題点を指摘したいと思います.同時に,奈良林氏ご本人から訂正が行われることを期待しています.

  • この文書は,4月4日,佐賀県議会事務局に議員への配布を依頼,また佐賀県政記者室に「投げ込み」をし,4月7日10時30分よりの記者会見を設定してもらいました.これに先立って,奈良林氏宛に,手紙を付けて郵送しました.
  • 4月7日10時30分よりの記者会見では豊島,三好の出席のもと,佐賀新聞,毎日新聞,読売新聞,西日本新聞,共同通信など7つの報道機関の記者が集まりこちらの説明を聞き,若干の質疑応答がありました.

奈良林直氏の参考人意見陳述について」のpdfファイル

関連ブログサイト(ペガサス・ブログ)

4月8日の毎日新聞の佐賀地方版に以下の記事が載りました.

県議会原子力対策特別委:参考人の奈良林氏「発言内容に問題」 核問題研究会が指摘 /佐賀
毎日新聞 2014年04月08日 地方版

 県議会原子力安全対策等特別委で1月、参考人出席した北海道大大学院教授の奈良林直氏の発言について福岡核問題研究会(三好永作世話人、約10人)は7日、県庁で記者会見し「誤りや間違った認識を生じさせる恐れのある箇所がある」と指摘した。指摘内容は文書で奈良林氏と県議全員宛てに送ったという。
 奈良林氏は1月24日、九州電力玄海原発(玄海町)の再稼働の是非を巡る参考人招致で、再稼働に肯定的な立場で意見を述べた。
 研究会は学識経験者らで組織。会見した会の豊島耕一・佐賀大名誉教授によると、奈良林氏の発言のうち、原子力発電と太陽光発電のコスト比較▽放射線の人体への影響▽高レベル廃棄物埋設の安全説−−など計7項目について「誤り」や「国際的な常識や定説を否定している」などの問題があるという。
 水蒸気爆発の発生条件については「溶融物(核燃料など)が3000度以上で、落下先の水温が30度以下」との奈良林氏の説明に対し「溶融物が3000度以下でも、水温が30度以上でも水蒸気爆発が起きる例がある」と反論した。
 豊島名誉教授は「原発については、科学的で正確な認識を持ってもらいたい」と批判した。【松尾雅也】

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