九州電力への公開質問書

九州電力への公開質問書


2018年1月16日(火)午前11時に玄海原発3・4号機の再稼働に関する九州電力への公開質問書を提出しました.公開質問書の内容は下記の通りです.
なお,九州電力へは,
4年前にも玄海原発3・4号機の再稼働に関する公開質問書を提出していますが,その回答についてはまだ貰っていません.

九州電力との交渉の報告1(2018.2.27)
こちらが公開質問書の回答期限が2月末であったので,2月27日に電話で九州電力に問い合わせたところ,回答は3月中旬にしてほしいということでした.2月末という回答期限もこちらが一方的に設定したものであるのでと思い「3月中旬」という言葉を信じて,では,回答の日時を3月7日(水)までに連絡して貰うことにして電話を切りました.(EM)

九州電力との交渉の報告2(2018.3.7)
3月7日(水)は,九州電力からの連絡を逃さないように,街には出かけず静かに家で過ごしていました.午後3時頃やっと連絡があり,会場などのことで調整ができないので,回答の期日を「3月中旬」ではなく,4月にしてほしいと言い出しました.3月中に再稼働をしてしまってから,再稼働に関する公開質問書に対する回答をするというのは,不誠実きわまる態度であり,受け入れられないと主張しました.しかし,それがどれだけ九州電力に届いたかは不明です.回答の期日と会場を3月12日の午前中(10〜12時)に連絡することを約束して電話を切りました.(EM)

九州電力との交渉の報告3(2018.3.12)
約束した午前中(10〜12時)には連絡はなかった.(EM)
今日はもう電話はないな,と思い始めた夕方の6時過ぎに電話が掛かってきて,「どうしても3月中に回答をする日程を組むことは困難なので,回答は4月になってからにしてほしい」と言ってきました.それなら,4月の何日を考えているのかと尋ねたところ,「今日は回答を4月にすることで了解いただく連絡をしている」とのことでした.再稼働に関する公開質問書に対する回答を再稼働後にするというのは,決して誠意のある態度ではないと念を押して,回答が4月になることを了解しました.そのうえで,4月の何日に回答をするかと尋ねたところ,4月の中旬を考えているが,その日時の回答は,3月15日(木)の午前中(10〜12時)にするということで,その点を了解しました.(EM)

九州電力との交渉の報告4(2018.3.15)
本日も約束した午前中(10〜12時)には連絡はなかった.先日のように午後に連絡があるのかも知れない.(EM)
ついに,本日は,九電からの電話はなかった.やはり,誠実さに欠ける姿勢としか言いようがない.(EM)

九州電力との交渉の報告5(2018.3.16)
午後1時になるが,まだ,九電からの電話はない.(EM)
本日も,九電からの電話はなかった.いったいどうなっているのか.(EM)

九州電力との交渉の報告6(2018.3.30)
本日まで,孫たちがわが家に一週間ほど滞在していてくれていたが,その間も九電からの電話が何時あるか,ずっと気に掛かり,孫たちともじっくり付き合うこともできなかったが,昼過ぎに帰って行った.
4月の中旬には回答したいと言っていたので,3月の末日(営業日)である今日中には,連絡があるかもしてないとかすかな期待を持ったが,その期待もむなしいものとなった.(EM)

九州電力との交渉の報告7(2018.4.6)
連絡がないのは,いくら何でも,誠実さに欠けるとの憤りの気持ちを抑えながら,こちらから電話したところ,「気になってはいたが,あたふたしており連絡しないでごめんなさい」とのこと.随分気楽である.ごたごたがあり「会場のやりくりが付かない」と好い加減なことを言う.3号機の問題で大変なのかと聞いてみたところ,「そうだ」とのことである.事実であるかどうかはわからない.公開質問書に対する回答をいま「書いている」とも言っていたように思う.随分,非力な九電ではないか.
いずれにしろ,いまの状態では4月中の回答は無理で,5月のはじめに回答したいとのことであったが,「5月のはじめ」はGWだがと言えば,GW明けにしたいとのことである.
そちらの設定した日時が,こちらの主要メンバーの都合がつくかどうかも分からないので,その点を考慮して複数の時間設定が必要,あるいは,日時についての決定は,多少のやり取り必要であるとの釘をさしておいた.(EM)





九州電力への公開質問書のpdfファイル

1月16日夕方のFBSの報道(YouTube)



2018年1月16日

日本科学者会議 福岡核問題研究会
連絡先:三好永作
メール:eisaku.miyoshi@icloud.com

九州電力株式会社
代表取締役社長 瓜生道明 様

当研究会は,核兵器や原発の問題を含めた,いわゆる「核問題」を日常的に研究している大学教員やそのOB,元技術者を中心とする研究会です.九州電力は今春の3月と5月に玄海原発3・4号機の再稼働を計画していると新聞が報道しています.これまでの当研究会での研究の成果に基づいて,この再稼働に関連して私たちが疑問に感じている問題点について公開で質問をしますので,2月末までに回答いただくようお願いします.

(1)原発の審査基準について
原子力規制委員会設置法と電気事業法の目的は「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全並びに我が国の安全保障に資すること」と「公共の安全を確保し,及び環境の保全を図ること」である.そのために,福島原発事故の様な原子力災害を確実に防止することが政府と九州電力に求められている.
福島原発事故の教訓の最も大切な点は,滅多に起きないが影響の大きい,いわゆる「低頻度・高影響」の事象への対策を無視したことである.原子力規制委員会(以下,規制委)は,国際原子力機関(IAEA)の深層防護における第4層の過酷事故対策の実践を「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」とする「新規制基準の考え方」[1]で審査を行い,水蒸気爆発や航空機激突等の対策を要求していない.この「可能性が小さければ対策しない」という審査基準は,福島で「大地震・大津波対策」を怠り未曾有の公害・人災を招いた考え方と同一である.そもそも,過酷事故のシーケンスの発生確率を精確に見積もることは,容易なことではない.「可能性が小さければ対策しない」との考え方だけでなく,「可能性の小ささ」を単純に信用してしまう態度も大いに問題である.
このように,過酷事故対策は「(事故の可能性が小さければ)実質的に不要」であるという規制委の極めて楽観的な審査基準について九州電力はどう考えているか?

(2)過酷事故時の住民避難等の対策について
規制委の任務として,設置法では「国民の生命,健康及び財産の保護,環境の保全」(第3条)が掲げられている.しかし,過酷事故時の住民避難等の対策(原子力防災)は規制委の審査の対象になっていないため,再稼働の審査は規制委の目的・任務からして重大な欠陥があるといわざるを得ない.原子力施設周辺における放射線影響緩和は,IAEAの深層防護の第5層としても求められており,国際的な観点から見ても原発の稼働にとって不可欠の条件であるが,原発周辺自治体に「丸投げ」され,その有効性についていかなる公的な第三者機関による検証もなされていない.以上の点は,規制委の無責任性を物語るのもではあるが,そのような中で,ひとたび原発の過酷事故が発生すれば,その被害に対する全責任を取るべきは九州電力である.この点について九州電力はどのように考えているか?

(3)過酷事故時の水蒸気爆発リスク対策について
IAEAの深層防護の第4層にあたる安全規則では,必ず想定すべき格納容器破損モードとして水素燃焼や溶融炉心・コンクリート相互作用とともに原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用(Molten Fuel Coolant Interaction, FCI)が含まれている.九州電力は,実機において想定される溶融物(UO2,ZrO2)を用いた「大規模実験」として,COTELS,FARO,KROTOS及びTROIを例に挙げながら,原子炉容器外のFCIのうち,水蒸気爆発は,実機において発生する可能性は極めて低いと申請書に結論して,これを規制委の「審査書」では,無批判に認めている.
しかしFCIは,いわゆる「複雑系」に関わる現象であり,条件のほんの微小な変化により結果が大きく変わることが分かっている[2, 3].KROTOSなど幾つかの「大規模実験」の結果で,FCIの全容が分かるわけではない.KROTOSなどの「大規模実験」とは比較にならないほど大規模な実機でメルトダウンを伴う過酷事故が起きたときには,何が起きるのかは分からないのが現状である.
軽水炉の安全性についての研究において世界的な権威であるB.R. Sehgal教授の編集による最新の報告書[3]や経済開発協力機構(OECD)のSERENAプロジェクト(FCIに関する研究)に参加する研究者達[4]の了解事項は,FCIを伴うメルトダウンの実際の場面(「実機条件」)では,「水蒸気爆発は必ず起きると考えよう」である.
何故に,九州電力はこのような最新の知見を無視して,「実機において発生する可能性は極めて低い」とする結論を強引に下すのか? 規制委の審査書では,溶融した炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策を容認している.しかし,この事故対策は,明らかに「液-液直接接触が生じるような外乱を与え水蒸気爆発を誘発する」ことにほかならず,水蒸気爆発が起こることを覚悟しなければならない.過酷事故をさらに酷くする水蒸気爆発を誘発する恐れがある事故対策をあえて実施する理由は何か?

(4)再臨界の可能性について
過酷事故時においては,炉心から熔融し,炉心外に貫通(メルトスルー)した燃料デブリが格納容器のコンクリート床に落下する.このため溶融炉心コンクリート相互作用(MCCI)生成物の臨界特性が問題となる.ケイ素を主成分とするコンクリートは中性子吸収が少なく,水には劣るが中性子減速効果も持つ.減速された中性子(熱中性子)はウラン235に吸収されやすく核分裂反応を促進する.このように,MCCI生成物がごく少量の水分と共存することで再臨界の可能性を高めることが報告されている[5].
メルトスルーした燃料デブリを水で張った格納容器で受け取るという今回の事故対策では,そのことで水蒸気爆発が起きなかったとしても,この点についての検討が十分になされているとはいい難い.燃料デブリがコンクリート床に次々に落下し,核分裂物質を含む燃料デブリの量が増加し,ケイ素や水の中性子減速効果により核分裂反応が促進され,再臨界の可能性が高まることがありうると考えられる.さらにこの新たな再臨界によって新たな水蒸気爆発が発生することもあるかもしれない.このような危険性に対して,九州電力はどのような対策を考えているのかを教えて欲しい.

(5)通常運転時の健康被害について
玄海原発の再稼働によって,過酷事故がありうることは明確であるといわざるをえない.しかし,もしその危険性を無視できるほど小さなものと仮定できるとしても,玄海3,4号機が稼働を再開すれば,通常運転においても原発周辺では健康被害が生じる恐れが大きいことが明らかになっている.玄海原発周辺では,同原発の稼働によって住民の白血病死亡率が高くなったとの報告があり[6],通常運転時に原発から環境に放出されるトリチウムが原因として疑われている.実際,玄海原発は過去の稼働時の 2002年から 2012年に 826テラベクレルと,わが国の原発では最も多量のトリチウムを放出している.これは福島原発事故で発生した汚染水中のトリチウムの量とほぼ等しい.
トリチウムの危険性については,ベータ線のエネルギーが小さいためベクレル当たりの吸収線量は小さい.しかし,トリチウムは生化学的に重要な元素としての水素の同位元素として,生体に容易に取り込まれるため,特別な内部被ばくのリスクがあることを,欧州放射線リスク委員会(ECRR)は2010年勧告[7]で指摘している.このトリチウムの危険性は,まだ科学的に確定されたことではないが,トリチウムの周辺住民への健康影響の危険性が完全に払拭されない限り,玄海原発の再稼働はするべきではないと考えるが,九州電力はこの点をどうのように考えているのか? また,九州電力は玄海原発周辺市町村における白血病の死亡率のデータを調査しているのか?

(6)破壊行為から原発等を守る対策について
玄海原発において,① 使用済み核燃料を水冷保管していることや② 格納容器を空気で充填していること,そして③ 見て分かる航空機対策をしていないことは,疑いようなく周知されている事実である.
海外では取り組みが進んでいる使用済み核燃料の乾式貯蔵は,安全性を格段に高める.玄海原発等の加圧水型原発の格納容器には,沸騰水型に比較して容量が大きいことを理由に窒素充填していない.しかし,加圧水型原発の格納容器に窒素充填することは,格納容器内での水素爆発を抑止するなど安全性を高めることに有効である.航空機の対策については,規制委は「確率」による計算と判断から審査対象から外した.わが国の航空機の対策は,欧米各国の対策・考え方から大きく遅れている.米国での9•11事件や飛行機の墜落を深刻にとらえた欧米各国は,現実的な検討をして具体的で公開された,大型航空機の衝突に耐える2重構造の格納容器などを備える原発を建設されている[8].こうした頑強な構造を持つ原発は従来の原発より安全性は高く,天災等による事故の被害拡大や破壊行為への抵抗性も高いと考えられる.
これらの乾式貯蔵や格納容器への窒素充填,2重構造の格納容器などは,破壊行為から守るためにもこれらの対策が有効である.(使用済み)燃料プールが無ければそれを破壊して冷却を阻害できないし,格納容器に窒素充填していれば内部に侵入するにも酸素ボンベがいるし,窒素を排除するにも時間がかかる.2重構造の格納容器は飛行機で破壊することは困難であろう.このように,原発の安全性を高めることが,破壊行為の抑止にも確実に有効な手段となる.このような高い安全性を持たない玄海原発は,破壊工作によって容易に破壊される危険性が高いと考えられるが,この点について九州電力はどのように考えているか?

(7)基準地震動の設定値について
基準地震動についても問題としたい.基準地震動とは原発の耐震設計において基準とする地震動(地面や地中の揺れ)のことで,玄海原発の基準地震動は620ガルと低く設定されている.地震は,すでに見つかっている活断層で起きる場合と,活断層が未発見の場所で起きる場合があるが,2016年10月21日の鳥取県中部地震(M6.6)はこれまで知られていない断層が動いたものとの見解を政府の地震調査委員会が発表した.この地震では震源近くで震度6弱を記録し,倉吉市では1494ガルの地震動を観測している.
玄海原発の付近は地震が比較的少ない地域であるが,このような未発見の断層による地震で起きる危険度は小さいとは言いきれない.玄海原発直下で鳥取県中部地震を超える規模の地震が起きる可能性は否定できない.また,九州電力や規制委による活断層を特定した基準地震動の評価法では,過小評価になっているとの多数の地震学者の警告がある[9].これらを考えれば,今回の玄海原発再稼働審査によって原子炉格納容器を含めた原発の耐震性が確かめられたとは到底言えない.このような基準地震動について過小評価になっているとの多数の地震学者の警告を九州電力はどのように考えているか?

(8)玄海原発の「立地の適・不適」について
規制委の審査内規である「火山影響評価ガイド」では,160 km火山を検討対象として,火山の噴火にともなう火砕流が原発に到達する可能性が十分小さいと評価できない場合には,原発の立地は不適であるとしている.その噴火の規模が推定できない場合には,過去最大の噴火を想定するとしている.そして,去る12月13日の広島高裁判決では,伊方原発から130km離れている阿蘇カルデラの約9万年前の噴火で「火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない」として,「伊方原発の立地は不適」と判断し,四国電力伊方原発3号機の運転差し止めを命じる決定を出した.この広島高裁の決定を基準に考えれば,玄海原発も川内原発も阿蘇カルデラからの距離が伊方原発の場合と同程度であることから,九州電力の「2つの原発の立地は不適」と判断されることになる.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(9)世代間倫理に反する行為について
原発の再稼働には世代間倫理についての問題もあると考える.原発の稼働により発生する使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物は,一私企業(九州電力)の利益のために作り出されるものであるが,この管理保管には10万年余を要する.これ以上の高レベル放射性廃棄物を「負の遺産」として,未来の世代に残すことは世代間倫理に反する.この大地は私たちの「子孫からの借りもの」であり,再稼働により「負の遺産」を増やすことは子孫への犯罪的な行為で許されない.この点を九州電力はどのように考えているのか?

(10)原発再稼働の民主的手続きについて
最後に,民主主義の問題もある.朝日新聞社が2017年2月18, 19日に実施した全国世論調査では,原子力発電所の運転再開の賛否について,「反対」は57%で「賛成」29%の2倍となっている.他の世論調査でもほぼ似たような結果である.いくら国(規制委)が認めたとしても,このような世論のもとで,しかも,安全性についての十分な保証もない中で,多くの国民の納得が得られない,玄海原発3,4号機の再稼働は,民主主義の問題としても許されないと考える.この点を九州電力はどのように考えているのか?

参考文献
[1] 原子力規制委員会「実用発電用原子炉に係る新規制基準の考え方について」(平成28年6月29日,同8月24日改訂).
http://www.nsr.go.jp/data/000208520.pdf
[2] 高島武雄・飯田嘉宏,「蒸気爆発の科学-原子力安全から火山噴火まで」(裳華房,1998年).
[3] “Nuclear Safety in Light Water Reactors: Severe Accident Phenomenology” ed. by B.R. Sehgal (Academic Press, 2011).
[4] J.H. Kim et al., Nucl. Technol. 158, 378-395 (2007). S. Leskovar and M. Ursic, Nucl. Eng. Technol. 48, 72-86 (2016).
[5] K. Izawa et al., J. Nucl. Sci. Technol. 49, 1043-1047 (2012).
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/search/servlet/search?5036965
[6] 森永徹,「玄海原発と白血病の関連の検討」,社会医学研究,第56回日本社会医学会総会講演集(2015)p.94.
http://jssm.umin.jp/lectures/2015.pdf
[7] C. Basby et al., “ECRR 2010 Recommendations of the European Committee on Radiation Risk: The Health Effects of Exposure to Low Doses of Ionizing Radiation” (May 2010).
[8] 原子力安全保安院 「シビアアクシデント対策規制の基本的考え方に関する検討」(平成24年7月12日).
http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/3532877/www.nisa.meti.go.jp/shingikai/
800/34/006/6-1.pdf
[9] 毎日新聞 2016年6月17日 東京朝刊.
https://mainichi.jp/articles/20160617/ddm/008/040/036000c

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