11月例会 東電刑事裁判判決&核戦争の被害推定

11月例会


日時:2019年11月30日(土)10:00〜12:30
内容:(1)
東電福島原発刑事裁判地裁判決の問題点
      話題提供:森永 徹氏 
発表資料
   (2)
印パ核戦争と米ロ核戦争による被害推定と関連する分析
      話題提供:岡本良治氏 発表資料

<報告>

 11月例会では,まず,森永氏が東京電力の3被告に対する刑事裁判の地裁判決についての問題点を報告された.3被告は東電旧経営陣の勝俣恒久元会長(79),武黒一郎元副社長(73),武藤栄元副社長(69)であり,彼らは,巨大津波が発生し原発事故が起きる恐れがあるとの報告を受けながら,対策する義務を怠り,結果として事故を招き,大熊町・双葉病院の入院患者ら44人を避難に伴う体調悪化で死亡させたとして,検察官役の指定弁護士は3人に「禁錮5年」を求刑していた.2019年9月19日,東京地裁は3人に対して無罪の判決を言い渡した.大切な点は,2008年に東電が受け取った,政府機関・地震本部の長期評価を基に15.7 mの津波が起こる可能性に触れた試算の取り扱いである.日本原子力発電の東海第二発電はほぼ同様の試算を受け取り,これに基づき津波対策を講じることでかろうじて大事故を免れることが出来た.しかし東電はこの試算結果を把握していたにもかかわらず,試算に基づく防波堤建設などの津波対策案を無視して福島原発事故が起きた.多くの地震学の研究成果を取り入れ,地震学の専門家集団が作成した地震本部の長期評価を,判決では,「客観的に信頼性,具体性のあったものと認めるには合理的な疑いが残る」として,3被告の津波対策無視を擁護している.「原発に極めて高度の安全性は求められていない」,「本件事故を回避するためには、本件発電所の運転停止措置を講じるほかなかった」などの判決文も大いに問題である.

 次に,岡本氏が核戦争による被害推定について中間的な報告をされた.いま,9ヵ国が約1万5000発の核兵器を保有しており,それらの核兵器は意図的な政策や意図的ではない事故により発射可能な状態にあり,核のホロコーストを引き起こしかねない状況にあるという.『原子力科学者会報』(Bulletin of the Atomic Scientists)の世界の終末(午前零時)を象徴的に示唆する「世界終末時計」の針は,2分前となっており冷戦終結以来もっとも午前零時に近づいている.米露二核超大国は依然として多数の核弾頭を保有し,そのうち2000発以上は15分以内に発射可能なミサイルに搭載され,他国の都市を30分破壊することができる.米露の2国がこの巨大な核戦力を保有し続ける限り,意図的である偶発的であれ,それらが使用される現実の危機が存在する.1979年以来,少なくとも5回,自らが攻撃の危機にさらされているという誤認に基づいて超大国の片方が他方に対して核攻撃の開始を準備するという事態があったという.核兵器禁止条約が2017年に122ヵ国の賛成で採択されその批准も進んでいるが,いったん核兵器が使用されると,核兵器の応酬へ,さらに全面核戦争へと拡大するリスクが小さいわけではない.全面核戦争に到らなくとも限定的な数の核爆発とその結果としての火災などにより莫大なチリや煤の発生で,急激な温度低下が起こる可能性がある(「核の冬」など).核戦争防止国際医師会議が2013年に発表した研究によると,インド−パキスタン間の限られた範囲での核攻撃でさえ,10億人が飢餓に陥り,さらに13億人が寒冷化による深刻な食糧不安の危機に晒される危険性があるという.以下のサイトには,米露核戦争についての最新研究によるシミュレーション動画がある.
シミュレーション動画サイト:
https://youtu.be/2jy3JU-ORpo

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