4月例会 今の多重危機の時代に原発を活用すべきか

4月例会


日 時:2023年4月22日(土)10:00〜12:00
話 題:気候・生態系・エネルギー・国際安全保障の多重危機の時代に原発を
    活用すべきか
報告者: 岡本良治氏  
発表資料

<報告>

 4月例会では,岡本良治氏が今の多重危機の時代に原発を活用すべきなのかということをテーマに講演をされた.現在の危機は,気候,生態系,エネルギー,さらには国際安全保障の分野で深刻化している.気候危機は,人類にとってだけでなく,生態系にとっても危機であり,これらの危機に同時に対処するには「自然を活用した解決策」(NbS, Nature-based Solutions)が重要であるという.ただし,人類によるCO2排出の大幅削減なしに,NbSに依拠するだけでは,気候変動の進行を止めることはできないという.
 欧州会議は,昨年7月に天然ガス発電や原子力発電を気候変動の抑制に寄与する投資対象とする欧州連合(EU)の規則案を拒否する動議を反対多数で否決した.天然ガスは「グリーン」とは程遠く,原子力も持続可能とはいえないとの諮問機関の見解があるなかで,原発への依存度が高いフランスや石炭の使用料が多いポーランドが規則案を支持したという.また,「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の第6次評価報告書の第3次WG報告には原発活用を示唆する多くの記述がある.
 日本では昨年12月に,岸田政権は脱炭素を議論するGX実行委員会で「原発を最大限活用する」との基本方針を決めた(核問題研究会は即刻これに対して批判する声明を発表した).
 岡本氏は,「脱炭素電源として再エネとともに原発も使うべきか」との問に対して,以下の理由(①〜)から原発は使うべきでないと結論された.①原発を大規模に導入した国はCO2排出が削減されなかった.②再エネによる発電量が増えるとCO2排出量が減る.③原発と再エネの普及には負の相関がある.④原発は,ライフサイクルで見た場合にはCO2排出はゼロではない.⑤有限のエネルギー関連予算の中で原発と再エネは競合する.
 原発なしで気候危機にどう対処すべきかという問に対して,エネルギー源の脱炭素化とともに,大切なのは省エネであり,これにはエネルギー需要の削減とエネルギー効率の2つの点で取り組むことが大事であるとされた.

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