6月例会 川内原発の運転期間延長にかかわる経年劣化問題

6月例会


日 時:2023年7月1日(土)10:00〜12:00
話 題:川内原子力発電所の運転期間延長の検証における設計の経年劣化問題
報告者: 中西正之氏  
発表資料

<報告>

 6月例会は日程が合わず7月に入って開催された.鹿児島県の川内原発について「運転期間延長の検証に関する分科会」が2022年1月から12回にわたって開かれた.6月例会では,その内容について中西正之氏(元燃焼炉設計技術者)から詳細な報告を受けた.分科会の目的は,運転期間延長に関する検証を集中的かつ効果的に行うことにあるという.分科会の委員は,釜江克宏(京大特任教授),佐藤暁(原子力コンサルタント),守田幸路(九大教授),大畑充(阪大教授),橘高義典(都立大教授),後藤政志(元原発設計技術者),渡邉英雄(九大准教授)の7名である.

 「設計の経年劣化問題」,すなわち設計の古さという問題について委員から質問を受けた九州電力は,ATENA(原子力エネルギー協議会)の「設計の経年化評価ガイドライン」(2020年9月)に沿った対応をするとしているが,そこでは米国AP-1000や欧州EPRなどで導入されている新型のメルトダウン対策炉は比較の対象とはせず,非常用炉心冷却系(ECCS)の設計変更など小規模のものに限られているという.九州電力はIAEA(国際原子力機関)の深層防護第4層を軽視していると言わざるを得ない.

 なお,後藤委員の水蒸気爆発についての質問に対する九州電力の回答「欧州,中国の一部のプラントでは,溶融燃料の冷却手段の一つとしてコアキャッチャーを採用しているが,国内外の既設プラントの多くは当社と同じ,原子炉下部キャビティに水を張り溶融燃料を受け止める手段を採用しており,新規制基準の適合性審査の中で原子力規制委員会に確認をいただいている.なお,コアキャッチャーは一度溶融燃料をドライ環境で受け止めた後に,水を張り,溶融燃料を冷却する手段であり,溶融燃料を水で冷却するという点は同様である.どちらの対策も原子炉格納容器の下部に落下した溶融燃料の冷却において有効な手段であり,問題となるものではないと考えている」(第9回分科会,資料3-3,p.6,7)は,このような人の集団が原発を動かしているのかと思うと空恐ろしくなる.コアキャッチャーと九州電力が採用している水を張った下部キャビティに溶融燃料を受けとめる方法の差を理解していない.

 第12回分科会で釜江座長(第1回分科会で選出)が中心になって作成された「分科会報告(案)」(2023年4月)について,橘高委員,大畑委員,守田委員は,全面的に賛成の意見を表明されたが,後藤委員からは,運転期間延長に関する問題点は殆ど切り捨てて,九州電力の説明のみを詳しくまとめてあり,一方的な報告書になっており,とても承認できるものではないとの意見が表明された.しかし,分科会の役割は,九州電力の報告内容が法律的に問題ないかどうかを検討することにあるとして,後藤委員の意見は無視されたようである.

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