11月例会 気候危機ー各政党の政策&エネルギー革命

11月例会


日 時:2021年11月9日(土)10:00〜12:00
報 告:(1)「各政党の気候変動エネルギー政策の評価」
    報告者:岡本良治   
発表資料
   :(2)「エネルギー革命とエネルギー移行戦略」
    報告者:岡本良治   
発表資料

<報告>

 11月例会では始めに岡本氏が「各政党の気候変動エネルギー政策の評価」について報告された.JSA会誌『日本の科学者』2020年9月号に掲載された各政党へのアンケート(2030年までの温室効果ガス排出量削減目標,石炭火力,自然エネルギー,原発の存続など)の結果をもとに,以下のようにまとめられた.集中豪雨による洪水の増加などを見ても,現状は待ったなしの気候危機の中にあり,温室効果ガス削減はこの10年間が決め手である.各政党の中では立憲,共産,社民の政策は温室効果削減につながると評価できる.しかし,より高い目標を掲げることを期待したい.自民,公明,維新の政策は問題をはらんでいる.国民は原発ゼロを2030年代に先送りしている.科学的な知見に基づいた国民世論の形成が最も重要である.

 その上でアンケートについて以下のようなコメントをされた.「気候変動問題」から「気候危機問題」への格上げは適切である.アンケート項目に明示されていない省エネ・エネルギー有効利用について論評したことはよかった.「現状は待ったなしの気候危機の中にある」という情勢判断をするのであれば,各政党の政策の中の設定目標の高さだけではなく,その目標をできるだけ確実に達成するための移行戦略の評価も行うべきである.再生可能エネルギーが自然エネルギーと同じであることをことわってはいるが,科学者集団の研究委員会が自然エネルギーという用語を使用することは適切とは言いがたいとした.

 次に,NGO気候ネットワークによる各政党政策の分析の要点を示され,概ねJSA会誌の編集委員会の評価と一致していると紹介された.その中で,2021年9月に発表された「気候危機の打開する日本共産党の2030戦略」は,省エネと再エネで2030年度までに温室効果ガス排出を50~60%削減するという移行戦略の提案として高く評価されるとした.

 政府・与党には,経済界主流(大企業群)とさまざまな官僚組織が支援し,関係するシンクタンクもあるが,立憲野党には官僚組織もなく関係するシンクタンクもない.したがって,立憲野党を支持する科学者,技術者の人数は決して多くはないので集団的な運動をより効果的に行い,市民運動・労働者運動との適宜な連携も含めて,「科学的な知見に基づいた国民世論の形成」に向けて,理論政策的な貢献が必要とされた.

 「エネルギー革命とエネルギー移行戦略」の第2の話題では,岡本氏は気候危機の影響緩和のためにいま進めようとしているエネルギー転換は「エネルギー革命」であるという話をされた.第1次エネルギー革命は人類が火の使用を始めたことであり,第2次エネルギー革命は石炭による蒸気機関であり,第3次エネルギー革命は石油や電気を組み合わせて利用するようになったことをいう.脱炭素社会に向けて現在進行中のエネルギー転換は,社会システムや生活のあり方がかなり変化するので,「エネルギー革命」と呼ぶのがよく,歴史から第4次エネルギー革命であるという.この「エネルギー革命」は脱炭素社会,再エネ100%社会を目指すという意味で再エネ革命と呼んでもよいかもしれない.

 岡本氏は,第4次エネルギー革命におけるエネルギー移行戦略として以下の4本柱を提案された.①エネルギー需要の低減,②効率の改善,③エネルギー転換,④電化の促進.①については,日本を含む先進諸国は大量生産・大量消費・大量廃棄のエネルギー高依存社会になっていることを考えれば,生活レベルを低下させずにエネルギー需要を低減することは可能という.パッシブシステムへの設計変更により,世界のエネルギー消費の73%が節約できるという試算もある.省エネという点でも日本は欧米から大きく遅れており,省エネを進める余地は十分にあるという.スイスの「2000ワット社会」は大いに参考になる考えである.②については,技術のみでなく,それを普及させる社会システムやエネルギー消費に関わるライフスタイルなどにも関わる.例えば,技術では建物の断熱化やLED照明があり,社会システムでは建築物の断熱基準や環境税など,ライフスタイルでは小型自動車やカーシェアリング,またクールビズの定着などがある.③については,自動車ではEV化や燃料電池化,航空機燃料では温室効果ガスを排出しない代替燃料への転換も必要となろう.④については,温室効果ガスを大量に排出している生産工程は可及的に電化すべきであるとされた.

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