福岡核問題研究会 5/31

福岡核問題研究会が以下の日程・議題で開催されました.

日時:5月31日(土)午前10時より
場所:九大筑紫キャンパス 総合研究棟5階511室
議題:(1)『美味しんぼ』が提起した問題について(報告:豊島)
   (2)大飯原発差し止め訴訟判決の意義(報告:三好)
   (3)梅田原発労災事件について(報告:三好)

それぞれの報告は,以下にpdfファイルが有りますので参考にしてください.

(1)『美味しんぼ』が提起した問題について豊島報告
(2)大飯原発差し止め訴訟判決についての三好報告
(3)梅田原発労災事件について三好報告

(1)の議題について
 一般的な外部被ばくの場合,鼻血などの急性障害が現れるのは,1シーベルト以上の被ばくの場合であることを根拠に,福島原発事故における地域住民の被ばく(飯舘村や浪江町を含む相双地域の住民の事故後約4カ月の間に受けた推定の外部被曝線量はほとんど10ミリシーベルトである)では,鼻血などの急性障害はでないと主張する識者がいる.一方で,事故後,鼻血の症例が多数あったことを重視して,鼻腔内の局所的な内部被ばくが鼻血に関係しているかも知れないと推論する識者もいる,
 ここでは,鼻腔粘膜への放射性物質の沈着により内部被ばくがどれ程の量であるかを以下のサイトの紹介というかたちで発表した(ただし,同サイトのヨウ素からのベータ線の平均エネルギー0.192keVにミスがあり,その点を修正している).
http://ameblo.jp/study2007/entry-10925145430.html
本試算では,ベータ線に被ばくする鼻腔粘膜の質量を2gとして199ミリシーベルトの被ばくがあるとした.ただ,0.192keVのベータ線の到達距離が約0.5mmであることを考慮すれば,被ばくの鼻腔粘膜2gは明らかに大きすぎで,鼻腔粘膜は局所的に1シーベルト以上の被ばくを受ける恐れがある.

(2)の議題について
大飯原発差し止め訴訟判決の圧巻の文章は
「個人の生命,身体,精神及び生活に関する利益は,各人の人格に本質的なものであって,その総体が人格権であるということができる.人格権は憲法上の権利であり(13条、25条),また人の生命を基礎とするものであるがゆえに,我が国の法制下においてはこれを超える価値を他に見出すことはできない.したがって,この人格権とりわけ生命を守り生活を維持するという人格権の根幹部分に対する具体的侵害のおそれがあるときは,人格権そのものに基づいて侵害行為の差 止めを請求できることになる」
「被告は本件原発の稼働が電力供給の安定性,コストの低減につながると主張するが,当裁判所は,極めて多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いの問題等を並べて論じるような議論に加わったり,その議論の当否を判断すること自体、法的に許されないことだと考えている.・・・このコストの問題に関連して国富の流出や喪失の議論があるが,たとえ本件原発の運転停止によって多額の貿易赤字が出るとしても,これを国富の流出や喪失というべきではなく,豊かな国土とそこに国民が根を下ろして生活していることが国富であり,これを取り戻すことができなくなることが国富の喪失であると当裁判所は考えている」
などであろう.本判決での主な論点を整理すると
・人格権は憲法上の権利であり,これを超える価値はない
・福島原発事故は原子力技術の危険性の本質を明確にした
・原発稼働は経済活動の自由に属し,憲法上は人格権より劣位にある.人格権が奪われる具体的危険性が万が一にでもあれば,差し止めは認められる.
・原発の安全技術と設備は、確たる根拠のない楽観的な見通しの下に初めて成り立つ脆弱なもの
・多数の人の生存そのものに関わる権利と電気代の高い低いという問題を並べて論じるのは,法的には許されない
などであるが,それ以外にも大飯原発から250キロメートル圏内に居住する住民にその人格権が侵害される具体的危険があると判決で認めたことは,今後の原発再稼働に対して反対していく上で大きなことであろう.

(3)の議題について
 梅田原発労災事件についてのレビューを行い,記録なれた雰囲気線量率や労働時間などから外部被ばく量についての推定値を試算してみた.その結果,フイルムバッジによる外部被ばく量8.6ミリシーベルトというのは桁違いに小さな数値であることが判明した.
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