6月例会 六ヶ所村の白血病&川内原発行政訴訟

6月例会


日時:2016年6月25日(土)14:00〜16:30
内容:(1)
六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連
      報告:森永氏 レジュメ
   (2)川内原発の行政訴訟について
      報告:三好氏 
発表資料

<報告>

6月例会において,はじめに森永氏より六ヶ所村における白血病と核燃料再処理施設の関連に関して実証データに基づく報告があった.六ヶ所村の核燃料再処理工場は,2006 年から実際の使用済み核燃料を用いた運転による施設の調整(いわゆる「アクティブ試験」)を行っている.アクティブ試験が終了すれば本格運転となるが,さまざまな理由からアクティブ試験終了は延期に次ぐ延期となって,2009年終了予定が現時点では2018年終了となっている.このアクティブ試験中にも核燃料再処理で出るトリチウムは海洋に垂れ流される.2006, 2007, 2008年の3年間で海洋に垂れ流されたトリチウムの量は,それぞれ,490, 1300, 360テラベクレルと大量である(加圧水型で比較的トリチウム放出の多い玄海原発でも年間放出量は100 テラベクレル以下の程度).核燃料再処理施設から放出される放射性物質のほとんどはトリチウムであるという.英国のセラフィールド再処理工場からの距離が離れるにしたがって白血病発症の危険度が低下することがM.Gardner らの研究で確かめられている.また,トリチウム放出量が六ヶ所村再処理工場より少ない玄海原発周辺でも稼働後に白血病死亡率が増加していることが確かめられている.六ヶ所村ではトリチウム大量放出後に白血病死亡率が増加傾向であることが実証データにより確かめられたという.

次に三好が,原告33名で6月10日に福岡地裁に提訴された川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟について報告を行った.三好本人も原告になっているこの行政訴訟は,原子力規制委員会が許可した川内原発1号炉及び2号炉に対する設置変更許可を取り消すことを請求している.弁護団の共同代表は,河合弘之弁護士と海渡雄一弁護士である.訴訟までの経過は以下のとおりである.
①原子力規制委員会は,九電の川内原発の設置変更申請について許可した(2014年9月10日)
②原告らは,原子力規制委員会に対し,前記①の設置変更許可に対し,行政不服審査法による異議申立てを行った(2014年11月7日)
③原子力規制委員会は,前記②の異議申立てを棄却する旨の決定を行った(2015年12月11日).
④本件設置変更許可は,設置許可基準規則6条1項などに違反し違法であり,訴訟をおこした(2016年6月10日).

本年4月6日に福岡高裁宮崎支部は「川内原発1, 2 号機の運転差止めを求める仮処分」にたいして抗告棄却の(差止めを認めない)決定を出した.しかし,この決定の中には,火山ガイドは噴火予測が可能であることを前提としている点において不合理であること,過去に火砕物密度流が到達した原発は原則として立地不適であること,5つのカルデラ火山が破局的噴火を起こす可能性が十分低いとした判断過程が不合理であること,姶良カルデラが近いうちに噴火する可能性がありそれが破局的噴火に発展する可能性が否定できないことなど,正当な認識が含まれている.これらの正当な認識にも係わらず,この裁判が民事であったことから「リスクはあるが社会通念上無視しうる程度の危険である」という不当な理由で差止めが認められなかった.弁護団は,川内原発の設置変更許可処分(再稼働許可)の違法性を問う行政訴訟であれば,裁判所は同じレトリックは使えないはずであるとして,論点を火山の問題に絞り,早期の勝訴判決をめざすとしている.

inserted by FC2 system