12月例会 福島原発処理汚染水&女川原発パブコメ

12月例会


日時:2019年12月21日(土)16:00〜18:00
内容:(1)
福島原発処理汚染水海洋放出の危険性
      話題提供:森永 徹氏 
発表資料
   (2)
女川原発のパブリックコメントの提出
      話題提供:
中西正之氏 発表資料

<報告>

 本例会では,はじめに森永氏が「福島原発処理汚染水海洋放出の危険性」について報告された.福島第一原発の敷地内タンクにたまる汚染水の海洋放出などが議論となっている.昨年9月10日には原田環境相兼原子力防災担当相(当時)は「思い切って(海に)放出して希釈する以外に,ほかにあまり選択肢がない」と発言したという.汚染水には,多核種除去設備(ALPS)で処理できないトリチウムが大量に含まれている.
 資源エネルギー庁は,「トリチウムでは外部被ばくはほとんどしない」,「トリチウムは体内に蓄積されない」,「トリチウムは生物濃縮しない」,「有機結合型トリチウムでも多くは40日程度で体外に排出される」などとトリチウムの「安全性」を宣伝している.しかし,一方では,トリチウムの危険性を示す多くの実験的研究がある.メダカでの研究では,トリチウムはDNAに取り込まれその排出は極めて緩慢であるという.トリチウムは濃度依存的にユスリカ幼生の染色体異常を誘発し,マウスの白血病を誘発する傾向がある.
 冷戦時代に核兵器の原料であるプルトニウムを製造してきた原子炉5機のあるサバンナ川流域では,トリチウムによる内部被曝を含む累積の放射線量が白血病死に大きく関係しており,カナダ原子力委員会がまとめた報告書では,ピカリング原発周辺の小児の白血病死亡率は高いことが報告されている.大量のトリチウムが放出される核燃料再処理施設の周辺では,地元産の魚介類の摂取や浜遊びの頻度が高いほど白血病を発症しやすいとの報告(フランス),また距離が離れるにしたがって白血病発症の危険度が低下するとの報告(英国)があり,日本でも六ヶ所再処理工場からのトリチウム大量放出後に白血病死亡数が増加傾向にあることが分かっている.さらに,加圧水型の玄海原発はトリチウムを大量に放出しており,森永氏自身の研究()からも玄海原発稼働後に玄海町での白血病死が統計的に有意に増加している.
 同氏は最後に「トリチウムの生物濃縮を否定する研究者もいるが,実験結果や原発周辺の環境調査ではトリチウムの生物濃縮が確認されている.したがって,福島原発処理汚染水は海洋放出するのではなく,タンカーによる長期保管等の他の対策をとるべきである」と結論された.

 次に,東北電力女川原発2号炉の設置変更許可申請書に関する審査書(案)についてのパブリックコメントが2019年11月28日から12月27日までの間公募されていたが,中西氏は,それに対して7件のパブリックコメントを提出し,その内容について報告された.内容は,①女川原発資料のTROI実験温度は偽装されている,②水蒸気爆発によるソースタムに関する影響の検討が審議されていない,③水蒸気爆発対策問題の偽装は実験溶融物を二酸化ウラン・ジルコニアに限定したことから始まっている,④適合性審査案はTROI実験の水蒸気爆発生時デブリサイズ資料を無視している,⑤適合性審査案は水蒸気爆発生時のペデスタル強度検討を無視している,⑥適合性審査案の実炉トリガーなし水蒸気爆発不可能論は問題である,⑦東北電力のMCCI対策検討におけるMAAPのDECOMPの使用は大問題がある,など科学的・技術的問題について多岐にわたっている.その詳細は,福岡核問題研究会ホームページの12月例会における「発表資料」からダウンロードにより見ることが出来る.

 例会は午後6時に終了し,博多駅筑紫口まで出向いて年忘れの忘年会を行い,例会における議論とはまたひと味異なる議論に花が咲いた.

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