1月例会 カーボンニュートラルにおけるアンモニアと水素

1月例会


日時:2021年1月30日(土)10:00〜12:00
話題:「カーボンニュートラルにおけるアンモニアと水素」 
   話題提供:中西正之 氏   
発表資料

<報告>

 1月例会では,中西氏に2050年カーボンニュートラルのためのエネルギー源として水素とアンモニアについての技術的な問題についての報告をいただいた.

 2020年6月にドイツは「水素戦略」を発表し,世界の気候目標を達成するために水素を未来のエネルギー源とする技術の分野で先駆的な役割を果たすとした.ここでは,再生可能エネルギー由来「グリーン水素」の利活用に力点が置かれ,再生可能エネルギーの貯蔵やエネルギー集約型産業での利用,産業用原料としての利用拡大も取り組まれているという.

 日本においても,2020年12月に開催された第6回成長戦略会議では,2050年カーボンニュートラルにともなうグリーン成長戦略が発表された.そこには,2050年に2000万トン程度の水素をエネルギー源として目指すと説明されている.これは100万kW原発67基分の一年間の発電量に相当するという.

 しかし,液体水素(水素の沸点は-253℃)の運搬や貯蔵のインフラは日本では十分ではないことから,水素(H2)と空気中の窒素(N2)からハーバー・ボッシュ法などで比較的簡単に生成されるアンモニア(NH3)が注目されている.アンモニアは液化しやすく(20℃で約8.5気圧に加圧すると液化する),古くから化学肥料などの原料として生産されているので流通などのインフラは日本でも整備されている.これまでもアンモニアは水素貯蔵の一つとして研究されてきた.アンモニアは400℃近くまで加熱して適当な触媒を使えば次の吸熱反応で水素を生成する.
   2NH3 → 3H2 + N2

 水素やアンモニアをエネルギー源とした発電に対する課題として,①発電技術の開発(水素のみで燃焼させるときは,逆火を防ぐとともに高い発電効率を達成するために,安定的な燃焼性を確保する燃焼器を開発する必要があり,アンモニア発電においてもNOxの発生制御や安定的な燃焼を確保する技術開発が必要)とともに,②安価で大規模な水素やアンモニアの調達(年間2000万トンの水素確保が必要.安価で大量の水素を国内で調達できない場合,海外からの輸入)が必要という.

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