10月例会 第6次エネルギー基本計画について

10月例会


日時:2020年10月31日(土)17:00〜19:00
話題:第6次エネルギー基本計画について
   (話題提供:中西正之氏)  
発表資料

<報告>

 2021年夏に策定予定の第6次エネルギー基本計画(以下,「基本計画」)についての本格的議論が始まっており,中西正之氏がこの基本計画について経産省などの動きを詳細に報告された.
 本年10月13日に,経産省の諮問機関である総合資源エネルギー調査会の基本政策分科会で「基本計画」についての議論が始まった.会合では,再生エネルギーの活用のみならず,水素やカーボンリサイクルの技術の活用のほかにも,「原子力の活用を明確にするべき」として国民の信頼を深めて,原発の稼働基数を増やさなければならないとの意見が多いという.
 10月14日には,経産省とNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の主催で「水素閣僚会議特別イベント」が開催され,水素社会構築に向けた世界の気運の維持拡大に向けて,水素製造や利活用に向けた取組を共有し,脱炭素化における水素の役割や技術開発などが議論されたという.その中でJERA(東京電力と中部電力の関連事業の統合会社)が2050年にCO2排出量実質ゼロ目標を発表し,主力の火力電力の燃料をCO2フリーのアンモニアに転換していくという報告があったという.この技術の実現可能性は,企業の発表であるので未知数であるが,窒素酸化物の除去を含めた安全な技術が開発されれば,有望なものになるのかもしれない.
 そのような中で,10月26日に所信表明演説において,菅首相は遅きに失したとはいえ,国内の温暖化ガスの排出を2050年までに「実質ゼロ」とする方針を表明した.しかし,この方針にはしっかりした技術的な対策が具体的に存在している訳ではないようである.いずれにせよ,日本が取るべき気候危機対策のためには,2021年夏に策定される「基本計画」の検討が重要であることは間違いない.
 9月例会でもあったように,第48回IPCC総会で承認された「1.5℃特別報告書」では,2℃上昇と比較して1.5℃上昇の場合は熱波や豪雨の極端現象が少なくなり,穀類の生産量減少の割合が少なくなるなど大きな違いがあることが明らかにされている.気温上昇を1.5℃に抑えるためには,2050年までに「実質ゼロ」とするだけでなく,これからの10年の対策により2030年までにCO2排出量を劇的に減らすことが大切であろう.

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