7月例会 電力会社による最近の格納容器補強工事

7月例会


日時:2016年7月23日(土)14:00〜16:30
内容:電力会社による最近の格納容器補強工事について
   ー玄海原発の格納容器補強工事計画と新潟原発の格納容器補強工事終了が示した新しい過酷事故対策問題ー

   報告:中西氏 
レジュメ

<報告>

7月例会において,中西氏より電力会社が最近行なっている自主的な新しい過酷事故対策についての報告があった.例えば,東京電力は,柏崎刈羽原発7号機(沸騰水型)の圧力容器直下の格納容器内に溶融炉心(コリウム)の流入を防ぐためのコリウムシールド工事を本年5 月27 日までに完了したと発表した.このコリウムシールド壁には融点2715℃のジルコニア煉瓦が使用されているという.溶融炉心がMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により薄いコンクリート底面(厚さ20 cmしかない)を溶かし格納容器境界を突き破り大量の放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があり,これを防ぐことを目的としている.

また,九州電力も過酷事故時に溶融炉心の格納容器外への漏洩を防ぐことを目的にして,玄海原発3,4号機(加圧水型)の格納容器のキャビティ側壁に高さ1.2 m,厚さ30 cm のコンクリート壁を増設する補強工事を行なうことを申請している.この補強はキャビティ側壁には6.4 mm の鋼板がむき出しになっており,流れ込んだ大量の溶融炉心により鋼板が損傷して放射性物質が格納容器の外部への流れ出す危険があるからである.ただ中西氏によれば,九州電力が予定しているのは融点が1200℃のコンクリートであるという.これで2600℃以上にもなると想定される溶融炉心に耐えられるかは疑問である.

これらの電力会社の過酷事故対策は,現在の原発には過酷事故に耐えられない欠陥があることを自ら認めたことになる一方で,比較的安価に実行できる対策の一つのみを行い,安全対策を行なっているというポーズをとる意図が見え隠れしている.なお,九州電力はメルトダウンした溶融炉心を水張りした格納容器で受け止める対策を基本としているが,その水量が多い時には水蒸気爆発の危険が高く,少ない時にはMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)により多量の水素ガスや一酸化炭素を発生しながらコンクリートが浸食される危険がある.九州電力は,これらの水蒸気爆発やMCCI(溶融炉心・コンクリート反応)については複雑で「現状では知見が十分あるとはいえない」と認めている.この分野の研究者の中では,高温の溶融炉心が大量の水と接触すれば確率1で,つまり,必ず水蒸気爆発が起こるということが国際的合意となっている.水を張った格納容器で溶融炉心を受け止めるという原子力規制委員会が認めた対策は,明らかにこの国際的合意を無視あるいは軽んじている.このような不十分な知識の中でさらに,一部の安価な過酷事故対策のみで玄海原発の再稼働を急ぐのは冷静に見て危険ではないか.

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