1月例会 福島第一原発の地質・地下水問題

1月例会


日 時:2022年1月22日(土)10:00〜12:00
話 題:「福島第一原子力発電所の地質・地下水問題 -原発事故後 10年の現状と課題-」
報告者:中西正之氏   
発表資料

<報告>

 1月例会では,中西氏により論文集「福島第一原子力発電所の地質・地下水問題-原発事故後10年の現状と課題-」(*)の紹介があった.この論文集は,地学団体研究会(地団研)の有志が集まり発足した福島第一原発地質・地下水問題団体研究グループ(原発団研)が福島第一原発の汚染水問題について6年間に及ぶ詳細な学術的研究をまとめたものであり,汚染水が減少しない原因を分析して,今後の汚染水対策についての提言なども行っている.この論文集は9章からなり,以下のようになっている.

 第1章 福島第一原発事故の経緯と原発団研の活動
 第2章 福島第一原発の汚染水問題とこれまでの対策
 第3章 浜通り地域と福島第一原発周辺の地形と地質
 第4章 福島第一原発の地下地質
 第5章 福島第一原発の水文地質
 第6章 福島第一原発の地下水流動
 第7章 福島第一原発の汚染水対策の評価と課題
 第8章 福島第一原発の地盤問題
 第9章 福島第一原発廃炉の課題-地質・地下水の視点から-

 事故から10年が経過しても溶け落ちた核燃料の取り出しは始まってさえおらず,放射性物質による汚染水問題も解決していない.国や東電が汚染水対策のために使っている地下の地質の様子を表す地質断面図は非常に単純なもので,実際の地下水の流れは国や東電の図よりも複雑になっていることが明らかとなり,このような単純化された地質断面図では効果的な汚染水対策の立案や地下水の管理を十分に行うことは出来ないという.

 本論文集が,今後の安全で確実な汚染水対策や廃炉作業の計画と実施の一助となり,原発の危険性や問題点を地質や地下水の観点から指摘した専門書として広く活用されることを期待したい.

(*) chidanken@tokyo.email.ne.jpに連絡すれば1冊1,000円+送料180円で送って貰える.

以上

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