12月例会「世界の原発産業と日本の原発産業」

12月例会


日時:2015年12月12日(土)14:00〜16:30
講師:中野洋一氏(九州国際大学)
講演:「世界の原発産業と日本の原発産業」

<報告>

 12月例会において,中野洋一氏(九州国際大学)に「世界の原発産業と日本の原発産業」というタイトルで講演をして頂いた.中野氏の専門は国際経済学である.核問題研究会で経済学者の話を聞くのははじめてである.氏によれば,石油危機の発生が,米国をはじめとした先進国における原発の本格的導入の契機となったという.
 1973年の第一次石油危機では,OPEC(石油輸出国機構)は原油価格を1バレルあたり3ドルから12ドルに跳ね上げ,1979年の第一次石油危機では36ドルにまで高騰させた.先進国が原発依存を急速に進めたのは,このようなOPECに対抗して,中東湾岸諸国の原油への依存を低下させるためであったという.そのために,原発は安全であり発電コストが低いというプロパガンダを大規模に展開した.その後,1979年のスリーマイル島の原発事故,1986年のチェルノブイリ原発事故により,市民の反発や電力自由化により初期投資の大きな原発は避けられ,米国やヨーロッパでは原発の新設は困難となる.
 しかし,日本ではこれらの事故にもかかわらず原発の新設が続いた.2005年,米国発の「原子力ルネサンス」により原発新設の波が発生し,2006年には東芝は米国のウェスチンハウス社を買収した.2009年に政権交代した民主党政府も自民党の原発推進政策を踏襲した.そのような中で2011年3月に福島原発事故が起きた.この原発事故にもかかわらず,安倍政権は原発輸出政策を強力に押し進めている.2013年には,トルコおよびUAEと二国間原子力協定を結び,2015年12月には,インドとの間で原子力協定の早期妥結で原則合意した.
 中野氏は,日本の原発輸出に関連する問題点として次の点をあげた.①インドでは原子力損害賠償法があり,そこには製造者責任が明記されている.インドは核不拡散条約の未加盟国であることも問題である.②日本は原発輸出促進のため「原子力損害の補完的な補償条約」(CSC)に加盟した.この条約には,「異常に巨大な天災地変」の免責事由が明記されているが,この免責事由は「改定パリ条約」や「改定ウィーン条約」では含まれていない.③米国のサンオノレフ原発の水漏れ事故に関連して,三菱重工業に巨額(約9300億円との見通し)の賠償請求がなされている.④日本の輸出原発の安全確認が形だけという問題もあるという.⑤原発メーカーの安倍政権への政治献金は倍増している.

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