公開質問Q3と九電の回答

<公開質問Q3>

IAEAの深層防護の第4層にあたる安全規則では,必ず想定すべき格納容器破損モードとして水素燃焼や溶融炉心・コンクリート相互作用とともに原子炉圧力容器外の溶融燃料-冷却材相互作用(Molten Fuel Coolant Interaction, FCI)が含まれている.九州電力は,実機において想定される溶融物(UO2,ZrO2)を用いた「大規模実験」として,COTELS,FARO,KROTOS及びTROIを例に挙げながら,原子炉容器外のFCIのうち,水蒸気爆発は,実機において発生する可能性は極めて低いと申請書に結論して,これを規制委の「審査書」では,無批判に認めている.
しかしFCIは,いわゆる「複雑系」に関わる現象であり,条件のほんの微小な変化により結果が大きく変わることが分かっている[2, 3].KROTOSなど幾つかの「大規模実験」の結果で,FCIの全容が分かるわけではない.KROTOSなどの「大規模実験」とは比較にならないほど大規模な実機でメルトダウンを伴う過酷事故が起きたときには,何が起きるのかは分からないのが現状である.
軽水炉の安全性についての研究において世界的な権威であるB.R. Sehgal教授の編集による最新の報告書[3]や経済開発協力機構(OECD)のSERENAプロジェクト(FCIに関する研究)に参加する研究者達[4]の了解事項は,FCIを伴うメルトダウンの実際の場面(「実機条件」)では,「水蒸気爆発は必ず起きると考えよう」である.
何故に,九州電力はこのような最新の知見を無視して,「実機において発生する可能性は極めて低い」とする結論を強引に下すのか? 規制委の審査書では,溶融した炉心を水で張った格納容器に受けて冷却するという事故対策を容認している.しかし,この事故対策は,明らかに「液-液直接接触が生じるような外乱を与え水蒸気爆発を誘発する」ことにほかならず,水蒸気爆発が起こることを覚悟しなければならない.過酷事故をさらに酷くする水蒸気爆発を誘発する恐れがある事故対策をあえて実施する理由は何か?

<Q3に対する九電の回答>

国内の実験では、水プール底から圧縮ガスを供給し、強制的に外乱を与えた実験の結果、一部のケースにおいて水蒸気爆発の発生が観測されており、外乱となりうる要素として圧縮ガスの供給が考えられる。実機の原子力発電所においては、原子炉下部キャビティにおいては圧縮ガスの供給源となるものはなく、また、炉心損傷時には、格納容器下部キャビティによる冷却水の流れ込みで、蒸気膜を壊すような外乱となりうる要因が考えにくいことから、水蒸気爆発が発生する可能性は低い、極めて低いと考えております。また、細粒化した燃料どうしが水中で接触したとしても、溶けた燃料を覆う蒸気膜は安定した状態にあることから、水蒸気爆発に至ることはないと考えております。
水蒸気爆発に関する大規模実験として、COTELS、FARO、およびKROTOSを参照に大規模実験と実機条件を比較した上で、実機においては水蒸気爆発の発生の可能性が極めて低いということを確認しております。加えて、JASMINEコードを用いた水蒸気爆発の評価に置ける条件と、実機の条件との相違を踏まえると、実機においては、水蒸気爆発の発生の可能性は極めて低いことを確認しております。これから、原子炉圧力容器外の溶融燃料・一次冷却材相互作用で想定される物理現象のうち、水蒸気爆発は除外可能であるということを確認しており、規制委員会のパブコメでも回答しております。なお、当社は今後も法令、規格、基準への適合はもとより、新たな知見等があれば積極的に取り入れ、原子力発電所の自主的かつ継続的な安全性向上に取り組んで行きたいというふうに考えております。
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