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講演会「核兵器禁止条約の意義と課題」

日本科学者会議福岡支部講演会


日 時: 5月14日(金)15:30〜17:00
会 場: 久留米大学福岡サテライト・天神エルガーラオフィス6階
講 師: 岡本良治氏(九州工業大学名誉教授)
講 演:
核兵器禁止条約の意義と課題―核抑止論批判の深化と『安全保障』概念の再考
    報告資料
主 催:日本科学者会議福岡支部
入 場:無料

<報告>

支部定期大会の後、恒例のJSA福岡支部の公開講演会がもたれました。残念ながら当日の参加者は決して多くはありませんでしたが、講師である岡本先生が、大部な資料に基づいて、演題にある問題について歴史的・論理的に詳細な報告をされました。まず、この問題に限るものではないが、「概念や課題を定義することの意義」がいかに大切であるかという話から始まり、核兵器禁止条約が核兵器の違法性を明確に規定し、軍事力による国家安全保障概念の中心戦略としての核抑止論を人道的な観点から否定したものであることを条約の成立の背景も踏まえて紹介され、また、条約の抱える課題についても朝鮮半島を巡る情勢にも言及されながら解説をされました。
その後、核抑止論は論理的に自己矛盾を抱えるもので、核の傘の有効性は実証的裏付けもないことをその歴史的背景も含めて詳細に解説され、その論理の曖昧さは国際関係の不安定要因でもあることを強調されました。具体的な事例として、ミサイル防衛構想は非有効的なものであるだけでなく、核抑止論と矛盾する構想であることなどを解説されました。さらに、最近の米国の新核戦略―核体制見直し(NPR2018) の中身、それに「高い評価」を与える被爆国日本の政府の姿勢、NPT(核不拡散条約)の抱える問題点についても言及されました。
引き続き、「安全保障」の概念について、その歴史的系譜も踏まえて問題提起がなされました。安全保障概念の構図として「国家安全保障」、「国際安全保障」「人間の安全保障」の3つがあげられ、特に「国家安全保障」については、外圧・仮想敵国の脅威を利用しての国内統治と「愛国主義」との関わりと軍事力による国家安全保障自体の抱える軍拡競争を不可避のものとしてしまうジレンマが指摘され、非軍事的な安全保障としての平和主義の憲法の重要性が強調されました。岡本先生は、最後に、「人間の安全保障」の観点について、カント、ベンサムに遡っての歴史的経緯、また、国連の「持続可能な開発のための2030アジェンダ」との思想的重なりの指摘も含めて概説し、その重要性を提起して講演を結ばれました。
(報告:小早川義尚)



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