ニュース バックナンバー

講演会「立憲主義からみた自民党改憲案の問題点」

5.12講演会の案内

立憲主義からみた自民党改憲案の問題点

JSA福岡支部大会のあとに標題の講演会を開きます.要領は下記の通りです.ご関心のある方の多数の皆様のご来場を期待します.


日 時:2013年5月12日(日曜日)開場15:00 開始15:30〜17:00
場 所:大丸エルガーラ 6F 久留米大学・福岡サテライト(国体道路側入口より)
講 演:「立憲主義からみた自民党改憲案の問題点」
講演者:星野圭弁護士(福岡第一法律事務所)
入場料:無料
事前の参加申込は不要です.

【講演要旨】

立憲主義とは何か.簡単に言えば,生まれながらに対等平等な国民が,相互の社会契約に基づいて,憲法によって立つ統治体制を作り,それによって自分たちの基本的人権を守ろうという考え方です.立憲主義のもとでは,国民の基本的人権の擁護こそが国家の最大の義務であり,そのために国家が存在していると言っても過言ではありません.
ところが,2012年4月27日に自由民主党が公表した憲法改正草案では,国民自身が自助,共助の精神の中で基本的人権を尊重する義務を負うものとされ,さらには国民自身に憲法尊重擁護義務が課せられています.自民党改憲案では,国民の基本的人権の擁護が,国家の義務から国民の義務へと置き換えられているのです.
自民党改憲案を貫く思想は,人類が,そして我われ日本人が歴史の中で実践,形成してきた立憲主義を根本から否定するものとなっています.なぜそのように評価できるのか,その点を指摘していきたいと思います.

主 催:日本科学者会議 福岡支部
連絡先:小早川義尚 九州大学基幹教育院教授
電 話:092-642-3901
メール:kbykwrcb@kyushu-u.org

【会場の案内】
map1


【講演を聞いて】


 自民党安倍内閣は、経済再生・景気回復をうたい文句に、極端な金融緩和政策(円のばらまき)を実行している。それは、制御不能に陥っているカジノ資本主義状態とも言われる大火事に見舞われているといってよいような世界経済の状況に油を注ぐようなものである。その結果、輸出依存型大企業・証券業といった一部の業種だけは一時的な利益を上げている。しかし、安倍内閣によれば、一部大企業の儲けのおこぼれに預かれるはずの庶民のところまでその利益はまだ回ってこない(永遠に回ってこない?)。一方で、円安による食料・エネルギーといった日常生活に不可欠な部分での値上がりが続き一般庶民の生活はますます苦しくなっている。消費税増税も目前に迫っている。
 こうした状況下で,間もなく参院選挙が行わる。そこに、安倍内閣は「改憲」を大きな政策として押し出そうとしている。その「改憲」の中身は、自民党の「日本国憲法改正案」として提示されている。その中身の酷さについてはあちこちで批判が行われているが,今回の星野弁護士の講演では、まず、「憲法は私達の生活に関係があるのか?」という指摘のもと、過労死事件「憲法13,27,28条」、障害者差別「憲法13,14,25条」,生活保護バッシング「憲法13,25条」の話から始まった。そこからこそ、「憲法とは何で,何から私達を守っているのか」という問題・「立憲主義(安倍首相を始め大多数の自民党代議士には理解不能の考え方?)」が明瞭になってくることを指摘された。この点は、学生時代・大学院生時代を京都の蜷川府政のもとで一人暮らしを始めた経験のある私には実にしっくりときた。「憲法を暮らしの中に生かそう」という、かつて京都府庁に掲げられた垂れ幕を今こそ再びという気持ちにさせてくれる。
 講演内容は、その後「立憲主義」についての基本的な考え方を,安部支障(ミスタイプです。安倍首相)のよくはご存じなかった芦部信善の「自由は立憲主義の根本的な目的であり価値である」といった引用も含め、政治権力を制約し国民の権利を保障することそれを明記するものが憲法であり,立憲主義の根幹であることを実に分かり易く講演された。
 つぎに、自民党改憲案が目指しているものは何か?として、それが、「立憲主義」のもとで本来の憲法の持つ意義を180度反転させて、国民主権・人権保障・社会保障における国の責任などの面での大幅な後退、国民への「義務」の押しつけ、平和主義の放棄を目指していることを端的に指摘された。続いて、まず、憲法96条を改正しようという欺瞞についても詳しく説明がなされた。
 最後の部分において、再び私達の暮らしに密着した問題に話は戻る。憲法本体こそまだ改悪はされていないものの,いわゆる実質改憲とも言われるような立憲主義の破壊・壊憲が今も進行している実態(社会保障問題・生活保護引き下げ、マイナンバー法など)を紹介された。最後に、参議院選挙を間近に控えた今こそ、立憲主義に基づく「日本国憲法」を守り,それを国民の手に取り戻して生かしてゆく時であると講演を結ばれた。
 講演を聴き終えて、まず憲法についての考え方がすっきりと整理でき、「憲法を暮らしの中に生かす」ことの大切さを再確認できた。科学者会議のメンバーとして「憲法を学術研究の場や科学者の役割を果たす時に生かす」という観点をいつも気にしながら、日々の生活を丁寧に生きて行きたいと思う。

(以上文責:小早川)

inserted by FC2 system