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講演会「軍学共同を考える」

日本科学者会議福岡支部講演会


日 時: 10月7日(金)午後6:00〜8:00
会 場: 九州大学 箱崎文系キャンパス 104講義室
講 師: 豊島耕一氏(佐賀大学名誉教授)
講演題目: 「科学の軍事利用と科学者の抵抗」
主 催:日本科学者会議福岡支部
入 場:無料
連絡先:小早川義尚 電話:092-802-6014
         メール:kobayakawa@artsci.kyushu-u.ac.jp
内容:2015年度に3億円の規模で始まった,防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は,今年度には6億円に増額され北海道大学や大阪市立大学など新たに5つの大学が軍事研究に手を染めることになりました.さらに,来年度にはこの制度に対する概算要求額が110億円と突出し,すべての大学・研究機関をターゲットにして軍学共同を一気に推進しようという意図が明確になっています.
このような動きは,1950年代に「学者の頬っぺたを札びらで叩け」との政治家のかけ声で原子力研究に突き進んでいった歴史を想起させますが,いま問題になっているのは軍事研究であることを考えれば,ことはさらに重大です.

・防衛省がいう「公開の自由」は本当に守られるのか
・科学界の「九条」,学術会議の非戦声明を守れるのか
・「デュアルユース」に対する科学者の責任は
・ 経常研究費削減は研究者への「経済徴兵制」が目的か
・ 日本国憲法の平和主義との関係をどう考えるべきか
・ 私たちは学問の成果をどのように利用してほしいのか

軍学共同に関連したさまざまな問題を考えるために下記のように講演会を開催します.多数の参加により講演のあとの実りある討論がなされることを期待します.


<報告>
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 2015年度に3億円規模で始まった防衛省の「安全保障技術研究推進制度」は、今年度には6億円に増額され北海道大学や大阪市立大学など新たに5つの大学が軍事研究に手を染めることになりました。九州地区の各大学に於いてもこの「安全保障技術研究推進制度」への対応をどうするかが問われています。実情は、今年度の応募は見送ると対応した大学、大学としての対応を表明していないところ、事務方が一般的な研究費の公募情報として全学に情報を流してしまった大学など様々です。また、来年度にはこの制度に対する概算要求額が110億円と突出し、すべての大学・研究機関をターゲットにして軍学共同を一気に推進しようという安倍政権の意図が明確になっています。更に、それに呼応するかのように、日本学術会議において大西会長の提案により「安全保障と学術に関する検討委員会」が設置され、その課題として「近年、軍事と学術とが各方面で接近を見せている。その背景には、軍事的に利用される技術・知識と民生的に利用される技術・ 知識との間に明確な線引きを行うことが困難になりつつあるという認識がある。他方で、学術が軍事との関係を深めることで、学術の本質が損なわれかねないとの危惧も広く共有されている。本委員会では、以上のような状況のもとで、安全保障に関わる事項と学術とのあるべき関係を探究する」としています。委員会の具体的な審議事項としては、「①50年及び67年決議以降の条件変化をどうとらえるか、②軍事的利用と民生的利用、及びデュアル・ユース問題について、③安全保障にかかわる研究が、学術の公開性・透明性に及ぼす影響、④安全保障にかかわる研究資金の導入が学術研究全般に及ぼす影響⑤研究適切性の判断は個々の科学者に委ねられるか、機関等に委ねられるか」という5項目を掲げ、これまでに4回の審議を重ねています。
 こうした状況に於いて、JSA福岡支部としてもこの問題にたいして「防衛省がいう『公開の自由』は本当に守られるのか」、「科学界の『九条』とも言うべき学術会議の非戦声明を守れるのか」、「デュアルユースに対する科学者の責任は」、「大学における経常研究費削減は研究者への『経済徴兵制』が目的か」、「日本国憲法の平和主義との関係をどう考えるべきか」、「私たち科学者は学問の成果をどのように利用してほしいのか」といった問題意識をもって、大学構成員・市民がともに考えて行く必要があると判断しました。その最初の取り組みとして、10月7日(金)18時より、九州大学箱崎キャンパスの文系講義室104において、支部主催で「軍学共同」を考える講演会を開催しました。
 会は、講演会を開催した趣旨が支部事務局長の小早川から説明された後、豊島耕一佐賀大学名誉教授の「科学の軍事利用と科学者の抵抗」と題する講演が行われました。講演では、第2次世界大戦前後の科学の軍事利用の動きとそれに抵抗してきた科学者について、「ラッセル・アインシュタイン宣言」や広島で開催されたパグウォッシュ会議における「湯川・朝永宣言」の取り組みを始め、様々な事例が詳しく解説されました。また、戦勝国であるアメリカと敗戦国である日本の戦後における科学者の軍事研究に対する対応の違いについても、また、上記のような現在の日本の科学者・大学の置かれている状況についても多面的な解説・問題提起がなされました。なお、豊島氏の講演内容に関連して、是非「日本の科学者」7月号をご参照ください。講演の後の討論では、九州大学の名誉教授での中山正敏氏(物理学)が、軍学共同について考えるためには現状のそれも数値に基づいた正確な情報とその理解が必要であるとして、世界各国の研究費・国分研究費等のデータを資料として示しながら、各国の差異について意見を述べられました。その中で、日本の現状は、まだアメリカのように大学の研究が大きく軍事研究費に依存・関連しているという状況ではないが、昨今の動きをみるとこれまで日本の大学の研究者がとってきた軍事研究には荷担しないという基本的な姿勢がそのまま維持できるのか、アメリカのような方向へ向かうのかの岐路にあるとの指摘がありました。その他にも、30名ほどの大学人や市民の参加者から様々な意見が出され活発な討議がなされました。最後に9月末に結成された「軍学共同反対連絡会」や「軍学共同反対アピール署名」などの紹介がなされ、JSA福岡支部としても今後、この問題について大学人に限らず広く市民とともに考えて行くことを表明して、講演会は閉会しました。会場には、新聞社、TV局の報道陣も来場しており、講演会の様子は翌日のNHK福岡のニュースとして報道されました。
(文責:小早川)
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