公開質問Q4と九電の回答

<公開質問Q4>

過酷事故時においては,炉心から熔融し,炉心外に貫通(メルトスルー)した燃料デブリが格納容器のコンクリート床に落下する.このため溶融炉心コンクリート相互作用(MCCI)生成物の臨界特性が問題となる.ケイ素を主成分とするコンクリートは中性子吸収が少なく,水には劣るが中性子減速効果も持つ.減速された中性子(熱中性子)はウラン235に吸収されやすく核分裂反応を促進する.このように,MCCI生成物がごく少量の水分と共存することで再臨界の可能性を高めることが報告されている[5].
メルトスルーした燃料デブリを水で張った格納容器で受け取るという今回の事故対策では,そのことで水蒸気爆発が起きなかったとしても,この点についての検討が十分になされているとはいい難い.燃料デブリがコンクリート床に次々に落下し,核分裂物質を含む燃料デブリの量が増加し,ケイ素や水の中性子減速効果により核分裂反応が促進され,再臨界の可能性が高まることがありうると考えられる.さらにこの新たな再臨界によって新たな水蒸気爆発が発生することもあるかもしれない.このような危険性に対して,九州電力はどのような対策を考えているのかを教えて欲しい.

<Q4に対する九電の回答>

コア・コンクリート 反応については、万が一大口径配管等の破断により原子炉の冷却水が喪失し、さらに全ての交流動力電源の喪失に伴い、非常用炉心冷却装置や格納容器スプレイ設備が動作しなような過酷事故が発生した場合でも、新たに設置した大容量空冷式発電機や、常設電動注入ポンプによる格納容器スプレイを用いて、原子炉の真下にある原子炉下部キャビティに水を張ることで、落下した溶融燃料を冷却することとしています。従って、炉心溶融、コンクリート相互作用による原子炉格納容器の健全性が失われることはないと考えています。
臨界性については、冠水している残存した溶融炉心については、冠水させている水はホウ酸水と海水の混合水であり、ホウ素濃度が十分確保出来ている状態では、臨界に至る可能性は低いと考えています。なお、海水にホウ素濃度換算で200ppm程度の中性子吸収効果が見込まれると考えております。露出している残存した溶融炉心については、減速材不足のため臨界に至る可能性は低いと。仮に、溶融燃料中に冷却材が侵入し、中性子の最適減速条件が形成されることを想定した場合には、臨界に至ることは考えられますが、炉心形状の崩壊などの要因も考慮すると、その可能性は低いものと考えられます。
以上のように、溶融炉心が臨界になる可能性は低いものの、溶融の形態が特定できないことから、溶融炉心が無制限な臨界状態に至る可能性もできる限り少なくするため、注水に当たっては可能な限りホウ酸水を用いることとしております。
なお炉心の臨界状態はモニタリングポスト、CV内サンプリングによる核分裂性希ガス濃度の測定等により行うこととしております。
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