10.29第3回原発シンポジウム

10.29第3回原発シンポジウム


原子力発電と代替エネルギーの展望


2011年3月11日,東北地方太平洋沖地震に端を発した福島第一原発事故から半年を過ぎようとしています.この事故は,いったん原発事故が起きると,それがいとも簡単に制御不能となり破局へと突き進むことを明確に示すと同時に,地震国日本には安全な原発はそもそも存在しないということをわれわれに教えてくれました.放射能汚染による被害は現在でも進行しています.

原発がこのような危険なものであるならば,日本の取るべき道は脱原発しかありません.しかし,脱原発に舵をきるにしてもその代替エネルギーについての展望はあるのか.地球温暖化の主要因と考えられている二酸化炭素の問題は大丈夫か.再生可能な自然エネルギー資源の潜在力はどの程度あるのか.それぞれの自然エネルギーの開発状況と将来展望はどうなっているのか.

これらの問題に焦点をあてたシンポジウムを企画しました.九州大学において風力および地熱の有効利用について優れた研究をしている研究者にそれぞれ将来展望について講演していただくとともに,自然エネルギーの潜在力と脱原発の方向性を探るシンポジウムにしたいと考えています.関心をお持ちの方,多数の来場を期待します.ただし,会場の広さから,先着140名に限らせていただきます.

           記

日 時:2011年10月29日(土曜日)開場 13:00 開会 13:30
場 所:九州大学・箱崎キャンパス・国際ホール(下図参照)  
    地下鉄「箱崎九大前」徒歩10分  
    西鉄貝塚線「貝塚」徒歩10分
    西鉄バス「九大北門」徒歩 5分
講 演:(1) 青野雄太(九州大学)
     「自然エネルギーの潜在力と脱原発」   
     → 発表ファイル
    (2) 江原幸雄(九州大学)
     「地熱エネルギー利用の現状と将来展望」 
     → 発表ファイル 
    (3) 大屋裕二(九州大学)
     「風力エネルギーの有効利用と将来展望」
     → 発表ファイル
    (4) 質疑討論
参加費:500円
主 催:日本科学者会議福岡支部
共 催:核問題研究委員会 エネルギー研究会 福岡環境研究会
    NPO法人・再生可能エネルギー推進市民フォーラム西日本
連絡先:日本科学者会議福岡支部事務局長
    小早川義尚 九州大学大学院理学研究院
電 話:092-642-3901
E-mail: kbykwrcb@kyushu-u.org, eisaku.miyoshi@kyudai.jp

<シンポジウムの報告>

当初,本シンポジウムは140名の席しかない会場があふれることが想定され,それが心配の種であった.その理由は,九州大学において自然エネルギーの2分野において先進的に研究している2名の研究者がはじめて同一会場で講演するシンポジウムということにあった.そのような理由から,10月にはいってから当シンポジウムの宣伝を控えたことが災いしたのであると思われるが,当日参加の総人数は,70余名であった.

しかし,大変勉強になるシンポジウムであった.そのことは後で示す当日のアンケート結果にも現れている.シンポジウムに参加されなかった方のために,3名の講演者にお願いして,当日の発表講演に使われたパワーポイントのファウルを本サイトに掲載することにする.

当日の発表では,まず,青野氏は,持続可能な社会へ移行するには地産地消の仕組みが大切であり,現在の消費電力の1/3〜1/2程度の自然エネルギーによる発電が可能であると話された.また,現在の自動車中心の生活と経済はやめるべきで,そのことでは悲観するほど不便になることはないであろうと言われた.最後に,原発は廃止すべきであり,そのことに何の支障もないと締めくくられた.

次に江原氏は,地熱エネルギー利用について話された.地球体積の99%は1000℃以上であり,100℃以下の部分は0.1%であるという.日本は世界第3位の地熱資源大国であり,日本において推定されている2000万kW以上の発電量に対して現在開発されているのはわずか54万kWに過ぎないという.地熱発電は,昼夜を問わず安定的に電力を供給できるという点で大きな特徴であると強調された.わが国には,地熱以外にも有望な自然エネルギーがあり,それぞれ,全電力需要量の10〜20%の貢献をすることで,2050年には全体として全需要の2/3を自然エネルギーで賄うという試算「2050年自然エネルギービジョン」があるという.

最後に大屋氏は,風力エネルギーの有効利用についてさまざまな国内外のエネルギー利用情報とともに話された.風車による発電量は風速の3乗に比例するが,うまく風を集め風速を少しでも高めることが出来れば,発電量の飛躍的な増加が期待される.風エネルギーを局所的に集中して飛躍的に発電量を高めた,大屋氏オリジナルの「風レンズ風車」の原理と開発に関わる話しを詳しく話された.この新しい風車の発電量は,従来風車の2〜3倍であるという.騒音も少なく,さらにバード・ストライクもこれまでの実験および実証運転の中で一度も起きていないという.中国で6台,福岡市との共同試験で計4台,また,九大の伊都キャンパスに2台(トップの写真)の「風レンズ風車」が設置されてる.この11月末,博多湾に洋上風力発電の第一歩が踏み出されるという.

それぞれの講演者が発表に使われたファイルをpdf化して上にリンクしていますので,ご参考にしてください.この点で,発表ファイルを快く提供していただいた3名の講演者に感謝します.

<アンケートの結果>

アンケートの回収率は45%でした.(前回回収率より減少)

(1)参加比率は女性38%,男性62%.(女性の参加率が若干減少)
(2)シンポジウムについての情報源は,友人・親族から25%,
 新聞から3%,ウェブサイトから9%, メール28%,チラシ16%,
 その(FAX等)25%.
今回は,新聞からの情報が前回に比べて激減しました.
(3)シンポジウムについての感想は,大変有用79%, まあまあ12%, 無回答9%でした.
無回答も自由記述欄で「非常に勉強になりました」などの記述
(4)過去2回のシンポジウムの参加については,第1回(4/17)も参加が20%,第2回(7/24)も参加が17%,今回初めてが63%.
(今回初めての方が2/3程度もあった)
(5)今後,有望と思われる自然エネルギー(複数回答可)
 太陽光発電(50%),風力発電(70%),地熱発電(83%),
 小水力発電(37%),太陽熱発電(13%),潮流発電(30%),
 その他(10%)

前回調査(7月24日)で関心のある自然エネルギー調査に比べて,今回取り上げた風力発電と地熱発電への期待が大きくふくらんだと同時に,太陽光発電を含めてその他の自然エネルギーへの期待が減少しています.

<自由記述>の欄の内容と主催者からのコメントを含めて以下に掲載させてもらいます.(2011.11.04)

・とてもよい勉強になりました.これからは自然エネルギーを重要なこととして考えていけないと思います.1,2ヵ月に1回ぐらいの勉強会をやってほしいと思います.要望として京大の助教・小出裕章先生を講師でお呼びしてほしいと思います.(女性60代)
・自然エネルギー開発は時間がかかると思っていましたが,勉強させてもらって,ずい分,いま進んでいることを知ってよかったです.しかしそれにしても原発を早く撤退させるために中間的にガス・コンバインなどを使うことも必要だと思います.八丁原や百道浜などの見学計画を地域でたてたいと思いました.(女性60代)
・地熱とレンズ風車の講演で自然エネルギーに多いに希望が持てました.研究の発展を願っています.(男性50代)
・純国産でベースロードでもある地熱発電はこれから伸びると思います.(男性50代)
・風レンズ風車のことがよく分かりました.11・13集会にこれのデコレーションを作って参加したい.(男性50代)
・風力発電の効果には懐疑的だったのですが,将来性のある技術だと思いました.自然エネルギーに対する理解を広げ研究開発や法整備などで市民の力でバックアップしていかなくてはならないと思う.(男性30代)
・江原,大屋両氏の研究は世界を救うかもしれない.真剣にそう思った.(男性40代)
・3人の先生の講演,学び吸収するところ大でした.大屋先生の風レンズ風車をあちこちでPRしています.12月の実証実験は「ぜひ視察したい」との問い合わせも受けています.6月にTNCの番組で地熱発電(八丁原)が取り上げられ,私もにわか地熱ファンになりました.普及が進むよう私もがんばります.(男性50代)
・代替エネルギーについては思考中です.広瀬隆さんが話していることなど...(女性70代以上)
・大変よかった.インターネットでさらに検索してみます.(女性50代)
・地震国にふさわしい,原発以外の発電を多様な形でやっていかなければならないと思います.コストの問題でいくつかに決めた方がよいのかもしれませんが,ありとあらゆる技術を開発していってほしいと思いました.(女性40代)
・大変勉強になりました.多くの人に知っていただきたいと思いました.(女性50代)
・とても興味深いお話でした.原発抜きで持続可能なエネルギーの社会は国民の努力で作り上げていくものと確信を持てました.もっと学んでいきたいです.(女性20代)
・「原子力に替わるエネルギー」という発想は否定しませんが,それらが問題だらけの日本の社会体制でどのように利用されていくのかが大事.原子力も「夢の未来のエネルギー」として科学者が宣伝して,それを鵜呑みにしてきた多くの人たちが原子力村を許容してきた.これまでの反省を,自然科学を扱う学者・研究者がどのようにやるかを,先生方に聞いてみたいと思いました.(女性20代)
【主催者からのコメント】
科学者や技術者がそれぞれの分野での自分の研究成果がどのような社会的影響を持つかと言うことにどれだけ関心を持つかは,研究者・技術者ごとに人それぞれ異なるものと思います.「原子力はCO2を出さないので地球優しい」というような耳に心地よいようなことは多いに宣伝するが,しかし,その危険性についてはきちんと説明しないというのが「原子力村」にたむろする研究者でした.
しかし,科学者・技術者が原発の危険性から国民の命と暮らしを守るためには,強力な勢力である『原発利益共同体』と全面的に対峙する覚悟が求められる,というような決意を新たにしている研究者(『日本の科学者』11月号立石論文)もいます.また,安斎育郎名誉教授(立命館大)や小出裕章助教(京都大)のように,冷遇されながらも原発の危険性を告発し続けてきた研究者もいます.私たちも,もし原発事故が起きたら原発周辺住民がどう行動すればよいかについての適切な案内書がないことを憂慮して,20数年前に『原発事故 その時あなたはどうするか』という本を出版しました.
ある技術についての安全性や危険性につては,公開の場で議論していくことが基本です.その技術を積極的に推進していくかそれとも撤退するかを決めていくには多くの市民の力が必要です.科学者も一市民でありますが,科学者にはその技術の安全性や危険性につての利点・欠点を含めた正確な情報を一般市民に提供していくことが課せられていると思います.
日本科学者会議は,会則に「科学の反社会的利用に反対し、科学を人類の進歩に役立たせるよう努力する」ことを重要な目的として活動している会です.私たちは,一刻も早く脱原発の方向に舵をきり再生可能な自然エネルギーを利用することで地球の快適な環境を保持しそれを未来の子どもたちに残すように会の活動を続けていきたいと考えています.自然エネルギーを研究されている2人の先生方(江原先生と大屋先生)も同じ思いで研究されていると思います.
・第一線の研究が聞けて大変よかった.(男性60代)
・(1)省エネ,(2)天然ガス+コジェネ,(3)石炭ガス化,(4)自然エネルギーの順が,原子力の代替の順と考えます.とにかくエネルギー源の多様化・分散化に注力すべきです.(男性60代)
・大変面白く,また,まったくの素人の私でもなかり理解出来ました.市民に広く話しをしていただければ幸いです.理論と実験経過だけでなく環境,経済(コスト)から政治的側面にいたるまで多面的に考えられお話いただいたことにも大変好感がもてる講演だったと思います.(男性70代以上)
・日本での一流の研究者の最新情報を聞けてとても勉強になりました.八丁原発電所には行ったことがありますが,今日の講演を聞いてまたいってみたいと思いました.一刻も早く脱原発して自然エネルギー政策に転換してほしい.(男性60代)
・企業も太陽光発電など大きな投資をしている例が増えている.新しい産業を育成し,景気回復へ努めるべきである.電力の独占もやめさせること,そのためにも送電・発電の分離が重要と思われる.新しい発電を認めれば企業の参入も増え原発の必要性はなくなるはずである.固定価格買取制度もきちんとした形での実施が望まれる(電力会社の妨害を排除して).(男性70代以上)
・非常に勉強になりました.事務局の皆様は運営に大変と思いますが,今後もがんばってください.(男性40代)
・原発をやめさせる必要あり.(男性60代)
・風力発電について,もう少し詳しく聞きたかったです.最後の方の時間が足りなくて聞けなかったので.また機会があれば聞きたいです.(男性40代)
・早く現実化できるよう願っています.普及しましょう.(男性60代)
・家を建てる場合の窓のあけ方も,ただ広くとるということでなく,あけ方として南窓より北側の窓を大きくあけることで解消できるかなと考えました.(女性70代以上)

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