脱原発をめざす

放射線暫定規制値は大きすぎる

放射線暫定規制値は大きすぎる

2011.11.18


放射能を正しく恐がることはいまの日本では特に大切です.例えば,放射能に汚染された食物の経口摂取によりどの程度の被ばく線量を受けることになるかについ てはある程度自分で判断できれば,放射能汚染された食料品を正しく恐がることが出来ます.現在,飲料水や食糧に対する放射能の暫定規制値がいま問題となっています.セシウム137に関する飲料水・牛乳・乳製品については1 kgあたり200ベクレル,野菜・穀類・魚介類・肉類・その他が1kgあたり500ベクレルというのがいまの放射能に対する暫定規制値です.この規制値が高すぎるのではないかということが問題になっています.通常,日本人成人の平均摂取量は,飲料水・牛乳・乳製品1.1 kg,それ以外の野菜・穀類・魚介類・肉類などが1.9 kgです.これらの飲食料を暫定規制値ぎりぎりのものを1年間食べ続けたときに,どれほどの被ばく線量(ミリシーベルト,mSv)になるかを計算してみま す.
経 口摂取された放射能量(ベクレル,Bq)から被ばく線量(mSv)に換算する場合に,預託実効線量(mSv)という形で被ばく線量を計算することになりま す.体内に摂取された放射能は,その半減期および代謝機能に従って徐々に減衰していきます.この間に放出される放射線によって被ばくします.預託実効線量とは,摂取後50年間(子供の場合は70年間)に受ける被ばく線量の総計をいいます.この預託実効線量を計算するためには,その放射線元素ごとの実効線量係数(mSv/Bq)が必要になります.経口摂取の場合のセシウム137の実効線量係数(mSv/Bq)は,0.000013となっています.
暫定規制値ぎりぎりのセシウム137を含む飲料・食品を1年間(365日)摂取したときには,
{200 Bq/kg x 1.1kg + 500 Bq/kg x 1.9 kg}x 365 x 0.000013 mSv/Bq
 = 5.6 mSv
の被ばくを受けることになります.これはセシウム137からの被ばくのみであることに注意して,この被ばく量がどのような意味を持つかをみてみましょう.1 年の公衆被ばく線量限度は1 mSvです.公衆被ばく線量限度は,一般公衆が1年間にこれ以上人工放射線から被ばくしない方がよいと,国際放射線防護委員会(ICRP)が勧告している 限度です.また,日本において自然放射線からの平均年間被ばく線量は,1.5 mSvです.これらに比べれば数倍です.ブラジル・ガラパリにおける自然放射線からの年間被ばく線量は10 mSvですので,それに比べれば小さい.それで安心する人がいるかもしれませんが,先ほどの「放射線は浴びないにこしたことはない」という放射線防護の原 則からいえば,特に放射線に弱い子供の被ばくに関しては決して無関心でいられる被ばく線量ではないでしょう.第2回原発シンポジウムで講演された長山淳哉氏は今秋出版された著書『放射線規制値のウソ』という本の中でいまの放射線暫定規制値は,10分の1にしなければならないと述べています.
このような計算が出来れば,放射能・放射線を正しく恐がることの第一歩になるのではないでしょうか.そのためにも,いくつかの放射性元素についての経口摂取の場合の実効線量係数(mSv/Bq)をあげておきます.
ストロンチウム90   0.000028(mSv/Bq)
ヨウ素131      0.000022(mSv/Bq)
セシウム137 0.000013(mSv/Bq)
バリウム140    0.0000025(mSv/Bq)

(2011.11.18/ E.M.)

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