2014.12月号

読書会日時:2014年12月8日(月曜日)午後2時〜5時
読書会場所:ふくふくプラザ(福岡市市民福祉プラザ)604室

<特集>排外主義の深層と共生への展望

樋口直人:日本型排外主義の背景──なぜ今になってヘイトスピーチが跋扈するのか
森千香子:反ヘイトスピーチ法はレイシズムを抑えられるのか?──フランスのイスラモフォビアの事例から
福田友子:日本に生きるパキスタン人移民の社会適応──1980年代以降の南アジア系移民排斥政策の流れのなかで
髙 賛侑:在日韓国・朝鮮人から見る排外主義と共生の展望 
jjs2014.12
<読書会の記録>

樋口直人著「日本型排外主義の背景─なぜ今になってヘイトスピーチが跋扈するのか」
 在特会を中心とした排外主義運動の活動家34名への聞き取り調査に基づいて,著者は「不安定雇用にある若者が排外主義運動の担い手である」という見方を否定している.彼らの多くは,天皇崇拝など戦前的イデオロギーを保持し,安倍政権を支持し,左翼的なものに嫌悪するという.しかし,これらは排外主義に直結するわけではない.排外主義者への回路は,歴史修正主義との出会いから,「反日」たる近隣諸国への憎悪が醸成されるという.排外主義運動が見ている在日コリアンは,その生身の姿ではなく,歴史修正主義のレンズで歪められた朝鮮半島像が作られ,それを鏡として映し出すことでデマでしかない「在日特権」なるものを信じてしまうことになるという.このような認知過程はインターネット上で起きているという.著者は,歴史修正主義を克服しない限り近隣諸国をなくならないと指摘する.

(報告:T.Y.)


髙 賛侑著「在日韓国・朝鮮人から見る排外主義と共生の展望」
 著者は,在日韓国・朝鮮人として本論文を書いている.著者は,最近深刻化しているヘイトスピーチ問題などの排外主義の背景には,日本政府による長年にわたる民族差別政策があるという.例えば,文部省は朝鮮高等学校生徒の国公立大学受験資格を認めようとしなかったが,1990年代に認める大学が続出し,ついに2003年に国立大学受験の扉が開かれた.また,インターハイ出場が実現されたのは,1997年9月のことである.高校無償化問題においても,朝鮮学校に対する日本政府の不当な取り扱いが続いている.著者による中国・米国・旧ソ連での調査によれば,法・制度的に韓国・朝鮮人が差別されているのは日本だけであったという.「一つの差別を許容する社会は,性・障害・民族・貧困・学力等々あらゆる差異を口実にして差別の連鎖を拡大していく」「同時にその反作用によって,差別社会に住む人間の精神をも蝕んでいく」と著者は警告する.
(報告:Y.S.)

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